Vol.6 【介護】心が通いあうデイサービスセンターを目指して |
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今回のゲスト
《デイサービスセンター代表》 青木 志保さん(市川大門町)有限会社 栄進ケアサービス 水の郷居宅介護支援事務所 デイサービスセンター水の郷(さと) 代表 |
「おじいちゃんとおばあちゃんを頼む」父の遺言が起業するきっかけに。
青木さんがお父さんを亡くされたのは1年と10ヶ月ほど前のこと。住宅の水まわり設備工事を請け負う会社を営んでいた青木さんのお父さんは、病床にありながら従業員の再就職の手配や清算業務を済ませたといいます。
「夜は私が病院に泊まりこんで看病していたのですが、年老いた親のことをしきりに気にかけていたんです。毎晩のように『おじいちゃんとおばあちゃんを頼むよ』って。それだけが心残りだったんでしょうね」
青木さんは、その言葉を自分にあてた父の遺言と考え、高齢者介護の施設を立ち上げることを思いたちました。
「もともと介護の仕事をしていたので私にはこれしかなかったんですが、祖父母の面倒を見るということがデイサービスセンターをつくろうと思ったいちばんの理由です。でも、起業っていったいどうすればできるのか何も知らなくて」
そんなとき、ふと目にとまった新聞の折り込みチラシを手に『中小企業支援センター』の説明会に参加しました。起業までの手順、保証人や担保などの資金計画書、経営内容などの事業計画書の書き方など、やるべきことを『中小企業支援センター』で学んだといいます。
公的融資の条件「同業6年以上の勤務経験」をクリアしていた青木さん。『中小企業支援センター』の支援で女性起業家資金として国民金融公庫から融資を受けることができました。こうして、お父さんが残してくれた土地にデイサービスセンターを建設する運びとなったのです。
周囲の人に恵まれた幸運。人と人のつながりが何より大切。
「家族は猛反対でした。そんな大それたことをひとりでやるなんて無謀だと」
それでも青木さんは起業への道のりを歩き始めました。
7年間勤務した介護老人保健施設を退職。「勤務先の理事長には本当にいろいろ助けていただきました。『一度決めたことならひとりでやり通せ、わからないことは何でも聞きに来い』って。とにかく周囲の人に恵まれたんです」
事業の内容については職場の先輩や同僚の知恵を借りることができました。建物の建設に関しても、紹介してもらった建築家から誠意あるアドバイスを受けることができ、さらにお父さんの時代に働いていた職人さんたちが駆けつけて設備工事を引き受けてくれたそうです。父と子、二代にわたる人柄のよさが素晴らしい人脈となって青木さんを支援しているように思えます。
「もう、このあたりまで進んだら家族も反対しなくなり、逆に応援してくれるようになりました」
少しでも長く現場にいたいと会社設立のひと月前まで、勤務を続けた青木さん。ケアマネージャーの資格も取りました。
「会社を興すってすごくエネルギーが必要で大変なことです。でも、最後まであきらめないこと。そうすれば何とかなるものです」
若いから無理だろうと思われがちな起業。でも、青木さんの場合は若いからこそ達成できたのかもしれません。
欲がなく、経営者としては落第?肩の力を抜いてゆっくりやっていきたい。
現在『デイサービスセンター水の郷』のスタッフは8名。最大20人のお年寄りを受け入れることができます。朝8時から夕方5時まで、あたたかな陽だまりのようなフロアになごやかな声が響きます。もちろん、青木さんの祖父母も毎日利用。孫との楽しい時間を過ごしています。お年寄りが全員帰宅されても、青木さんの仕事は終わりません。ときには夜中に携帯電話が鳴り、お年寄りを訪問することも。
「べッドから落ちたとか転んだとか。老人だけの世帯が多いものですから」
さらに日中も青木さんは訪問介護に出かけます。息をつく暇もない毎日。
「お年寄りに『ここに来てよかった』と言ってもらえると、この施設を始めてよかったなあと思いますね。励みになります」
近年、デイサービスを行う介護施設数は飛躍的に増えています。近くにも同じようなデイサービスセンターが2ヵ所ほどありますが、経営のほうは順調なのでしょうか。
「私は優れた経営者ではないと思います。儲けたいとか、増やしたいとか、残したいとかっていう欲はないんです。ただ、月々のローンをきちんと返済できてスタッフにお給料が出せればそれでいいんです。地域のお年寄り全員のお世話をうちだけでできるなんて当然思っていませんし、福祉業界は共存共栄です」
肩の力を抜いて、何ごともプレッシャーだとは思わずにマイペースでやっていきたいと言う青木さん。気負いはなく清々しささえ感じられます。
「父が水道屋だったので『水の郷』と名づけました」
亡き父から商売の事を色々聞かされていた青木さん。その思いは若き起業家のパワーの源となり、夢を実現させました。まだ二十代。彼女の本当の活躍はこれから始まります。
取材日:平成17年2月15日
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青木さんが施設を開くまで
急逝した父親が最後まで心配していた祖父母の介護を自分の手でしようと決意。
『中小企業支援センター』に相談。約1年間の猛勉強。
支援センターを介して国民金融公庫の融資を受け、施設を着工。
7年間勤務した介護老人保健施設を退職。
平成16年9月1日、デイサービスセンター水の郷を開所。