インタビュー

《株式会社ベーネユナイテッド常務取締役》  内藤千恵
Vol.41 【起業】ジュエリーで思いを伝える!
今回のゲスト
《株式会社ベーネユナイテッド常務取締役》  内藤千恵さん
(甲府市)

起業までのキャリア

 大学卒業後、普段の生活の中では到底出会えないような人たちに関われるような仕事をしたいという思いで、皇室御用達のアパレルメーカー(株)ジュン アシダへ就職。最初の半年間の研修では、厳しい日本語の指導を受けましたが、この時のお客様に対する「礼」への思いが私の原点になっています。
 その後、父親の薦めもあり、県内の宝石メーカー(株)ラッキー商会へ転職し、ここで初めてジュエリーの仕事に携わりました。ジュエリーの商品企画を担当し、2年目には女性初の課長になりました。また、プライベートではこの時期に結婚し、長男を出産しました。社長の計らいで、フレックスタイムを導入していただき、さらには事務所にベビーシッターを呼んでいただくことで、仕事を続けることができました。
 しかし、子育てをしていくうえで、働く女性として仕事も続けていきながら、子供の成長に常に関わっていたいという気持ちがありました。そこで、2人目の子供を出産したことを契機にフリーのジュエリープランナーに転向しました。夫の転勤などで8回の引越しを経験しましたが、フリーになったおかげで子育てをしながら仕事を続けられてきたと思っています。

夢はかなえるもの

 フリーで仕事をする中、自分の企画した商品が、問屋から卸、小売店へと流通する過程で、在庫として残ってしまうこと、商品に込めた自分の思いが止まってしまうことに不満がありました。「宝石を通して何が言いたかったのか?何をやりたかったか?お金がほしかったのか?そうではない」「自分たちの言葉でジュエリーをお客様に伝えたい!」という強い思いを感じるようになりました。
 そんな折、ある宝石職人と宝石メーカーの営業マンとの出会いがありました。「このままでは納得する仕事が出来ない」「収入はあるけど、満足してない!」私たちには共通の不満がありました。3人で語り合う中で「本当に願ったものを手に入れよう!」という思いが融合し、これまでにないコンセプトの起業を実現しようと決意しました。
 平成16年9月に3人でお金を出し合って、(有)トゥットベーネ(現(株)ベーネユナイテッド)を設立しました。フリーの時と比べて年収を大きく落とすことになりましたが、迷いはありませんでした。何より「コンセプトがあってこういうことを伝えたい」という強い信念がありました。家族は反対せず、夢を追うことを支持してくれました。
 小売店の出店は資金不足で難しいことから、インターネットの販売に挑戦してみようと考え、平成16年11月に自社工房での手作りジュエリー専門店として、インターネットショップ「ジュエリー工房 ベーネ・ベーネ」を楽天市場にオープンしました。
 私は「夢はかなえるもの」だと思います。本当に心の底からほしいもので、手に入らないものはありません。手に入らないものは本当にほしいとは思っていないということです。

通例にとらわれない

 最初から宝石業界の通例の中で仕事をするのは止めようと思い、宝石業界の通例を越えたところに私たちの生きる場所があると考えました。
 ある時、ブローカーから手元に一握りのグリーンダイヤモンドがあるが、色がまちまちで売れないという話を耳にしました。宝石業界の通例では、全部同じ色のグリーンだけを集めて宝石を作るので、色の合わないものは、在庫となり、リスクになります。このとき、発想を転換して、色がばらばらのグリーンダイヤモンドの細いリングに、“世界中の緑をここに集めました”というキャッチコピーをつけてみました。すると、これがたちまち大ヒット。逆に偶然色がそろってしまった時には、苦情が来るほどでした。
 また、宝石業界ではコストを抑えるために、1つのデザインをたくさん作ってサイズ直しをする方法が一般的でした。でも、私たちはサイズ直しのためであっても、商品に切れ目を入れることはしてはいけない。なぜなら強度に問題が出来てしまうから。お客様から一個一個オーダーをいただいた後、ご要望のサイズ、金種で最初からお作りさせていただこうと決めました。
 ものづくりの原点は、「お客様がほしい、望んでいるものを作るだけではなくて、自分たちがきちんと責任を持ってこれがジュエリーだと言えるものを作り続けていく」ということだと考えています。正しく宝石を伝えることは私たちの使命です。

お客様のハッピーのために

 ベーネの梱包には、通常包装と簡易包装の2種類があります。通常包装には7回のサプライズが込められており、手元に来た時の衝撃、開けた時にどんな楽しみ方があるかというストーリーを、ベーネのコンセプトに盛り込んでいます。また、どんなに忙しくても、手書きのメッセージカードに自分たちの思いを込めることは欠かすことができません。
 ある時、自宅を引っ越したお客様から、簡易包装による注文がありました。お客様の要望とは違ったのですが、私自身引越しの疲れは身をもってわかっているため、疲れを少しでも癒していただければとの思いを込めて、ポプリの香りがする通常包装でお送りしたところ、お客様から感激のお電話をいただきました。私たちの思いが通じた瞬間でした。
 周囲からは、インターネットで心が通じることはありえないと言われてきましたが、ベーネはインターネットでお客様の心にふれることができています。会社の社訓“ベーネのすべてはお客様のハッピーのために”という原点がぶれないよう心掛けています。

 私の周りすべての人たちが豊かに自分を表現していることに、内藤千恵という存在が関わっていたいと願っています。女性も男性も自分の感情を豊かに表現できることは、本当に素晴らしいことだと思います。
 私のチャレンジはまだまだ終わりません。今度は、ベーネのノウハウを全員と共有することによって地場産業を活性化し、宝飾業界を盛り上げていきたい!と考えています。


☆これからチャレンジする女性へのメッセージ☆
 「原点に返る」ということが大切です。あなたの原点は何でしょう?私の原点は、「礼」の気持ちです。いろいろな出会いを通して、「私って磨かれている、磨いてもらっている」と感じ、感謝することで原点に戻ることができます。今まで私に関わってくれた皆さんに、仕事の仲間達に、両親に、家族にありがとうと感謝しています。
 あなたは常に満ちあふれていますか?いつも自分が乾いていて、ほしい、足りないと思っていると、人は満足するために自分の器を小さくしてしまいます。自分の足りないものや弱みは、あなたの周りが補ってくれますので、自分の強みを生かすことが大切です。自分を肯定することは何よりも素敵なことだと思います。


株式会社ベーネユナイテッド
〒400-0851 甲府市住吉1-16-4
TEL:055-226-3439 FAX:055-226-3422
メールアドレス::info@bene-bene.com

楽天市場「ジュエリー工房 ベーネ・ベーネ」ホームページ
http://www.rakuten.co.jp/bene/info.html
(取材日 平成21年7月9日)

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内藤さんのこれまで

甲府市出身。大学を卒業後、大手アパレルメーカー(株)ジュン アシダを経て、(株)ラッキー商会でジュエリーの商品企画を担当。2年目で女性初の課長に抜擢される。

2人目の出産を機に退職し、フリーランスのジュエリープランナーへ転向。

平成16年9月に志を共にする宝石職人、宝石営業マンと3人で(有)トゥットベーネを設立。同年11月にインターネットショップ「ジュエリー工房 ベーネ・ベーネ」を楽天市場にオープン。

平成19年に、ベーネ・ベーネが楽天市場ショップ・オブ・ザ・イヤー2007を受賞。重ねづけリングやサプライズ梱包など、独自のアイデアで高い支持を集めている。

内藤(ジュエリー1)
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