Vol.2 【NPO】人と人とのネットワークを広げてつくったおひさま発電所 |
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今回のゲスト
《NPO法人理事長》 芦澤 公子さん(増穂町)NPO法人『みどりの学校』 理事長 |
チェルノブイリ原発事故で知った放射能汚染の恐ろしさ。それが環境問題と深くつき合うきっかけに。
昭和61年、世界を震撼させたチェルノブイリの原発事故。当時、芦澤さんは三人目のお子さんを出産された直後、放射能に汚染された乳製品などがヨーロッパから輸入され、それを原料として作られた加工食品が日本にも多く出回っているという信じがたい現実。知らず知らずのうちに自分や子どもたちがそれらを口にしているかもしれないと思ったときの言い知れぬ危機感。それが芦澤さんの活動の原点となりました。その後、反原発団体に加入し『コープやまなし』の活動に積極的に参加するなかで、地球環境という広い分野でさまざまなことを学ぶこととなった。
「このままでは子どもたちが暮らせない地球になってしまうと思ったんですね。子育て中の女性だからこそ、環境問題に深く関心を持ったのかもしれません」
と、当時のやむにやまれぬ思いをそう語ってくださいました。
自然の力、そしてたくさんの人の力。それこそが、地球でいちばんクリーンなエネルギー。
平成9年に地球温暖化防止京都会議が開かれました。その際、自転車をバトン代わりに日本列島を走って市民のメッセージを京都へ届けるという『ストップ!地球温暖化—列島縦横エコリレー』が実施されました。山梨でも多くの参加者により自転車リレーが行われましたが、芦澤さんはこの『エコリレー山梨』の事務局長を務めていました。
「山梨県は全国でいちばん集まったメッセージ数が多かったんですよ」
このことから、芦澤さんは山梨に住む人の環境問題への関心の高さをあらためて知ることとなりました。放射能も二酸化炭素も放出しないクリーンなエネルギー。自然の力を有効利用した発電。全国でも日照時間がいちばん長いといわれる山梨県だから、太陽光を利用した共同発電所をつくりたい。芦澤さんの思いはそこへ到達します。
平成14年8月、次世代が安心して暮らせる社会づくりをめざして設立された環境市民団体は、翌年6月、山梨県から特定非営利活動法人の認証を受けます。NPO法人『みどりの学校』の誕生です。認証取得に当たっては県の県民生活課に相談されたそうですが、その後の運営に関してはボランティアNPOセンターがアシストしています。
地域で使うエネルギーだから、地域の資源を生かし、地域の人々が関わって、管理して、大事に使う。
子育て中の主婦を中心に当初6名の仲間で立ち上げた『みどりの学校』。その後、賛同してくれる人を集め、現在では50名のメンバーで活動しています。平成15年12月には、甲府市の法光寺の屋根にソーラーパネルを設置し、山梨県で第1号の市民立共同発電所をつくりました。名づけて『国母おひさま発電所』。
「なにより大変だったのは、やっぱり資金」
かかった諸費用は300万円。そのうちの半額はNEDO(独立行政法人 新エネルギー産業技術総合開発機構)の助成を受けることができたのですが、残りの150万円を集めるために苦労されたようです。協力を求める手紙を150通発送したり、学習会や説明会を開催したり、ホームページやメールで呼びかけたり、奔走の毎日。でも、その甲斐あって、9つの企業や団体、260名を超える個人からの寄付やカンパで無事集めることができたといいます。
「関心を持ってくれた方が、周囲の方に呼びかけてくださったりして、人から人へのネットワークの力って偉大です。『マンション住まいで、自分の家で太陽光発電を利用することができないから協力したい』という方もいらっしゃって、うれしかったですね」
ひとつの大きな目標を成し遂げた達成感は、次の活動への原動力にもなっているようです。
食べ物もエネルギーも地産地消。それは、とても自然でとても当たり前な考え方。
現在『みどりの学校』は、自然エネルギーに関する調査研究活動、さまざまな学習会、地域や学校へ出向いての環境教育プログラムの実践など多彩な活動を繰り広げています。そして、今後の目標としては共同発電所の2号、3号を作りたいということでした。
「できれば公民館などの公共施設に設置したいですね」
たとえば災害時に市民が避難場所として使用するような施設で発電できれば、避難生活中に電気を利用することができるというわけです。そして、地域のコミュニティとして地域の人々の団結を図り、暮らしやすい社会づくりへと波及させていくのが狙いとのこと。
自然が作り出すエネルギーと人のネットワークが作り出すエネルギー。芦澤公子さんとNPO法人『みどりの学校』は、このふたつのエネルギーがよりよい社会環境をつくりだすということを活動を通じて実証しています。
取材日:平成17年2月7日
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芦沢さんがNPO法人を設立するまで
昭和61年チェルノブイリ原発の事故を受け、環境問題の勉強を始める。
「山梨県郡内労働者生協」理事となり、環境情報の発信、資源回収運動、大気・水質の測定活動などを行う。
平成9年「ストップ!地球温暖化エコリレー山梨」の実行委員会事務局長を務め、京都会議会場周辺で行われたNPOイベントに参加。
平成10年「山梨エコネットワーク」が設立され事務局長となる。市民環境オンブズマン・ウーマン活動、「エコメッセやまなし」の開催、環境セミナーの開催などを行う。
安全なエネルギーの地産地消をめざす環境市民団体「みどりの学校」を設立、代表となる。
「みどりの学校」が県より特定非営利活動法人の認証を受け理事長となる。