Vol.49 【働く】女性醸造家としての挑戦!〜甲州ワインへの思いを胸に〜 |
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今回のゲスト
≪中央葡萄酒株式会社 醸造家(ワインメーカー)≫三澤 彩奈さん |
醸造家としてのチャレンジ
ワインには興味はすごくありましたし、この街が好きでしたので、いずれはワインの道にと思っていました。もともとワイン造りに漠然とした憧れはあったのですが、私が小さい時は女性が蔵に入るということ自体があまりなく、「醸造に携わる女性」のイメージが湧かなかったこともあり、当時は自分がまさか醸造家になるとは思ってもいませんでした。
ただ、祖父も父も醸造家なので、父が一生懸命ワイン造りをして街が活性化するところを見ていましたので、そういう姿を格好良いと子どもながらに思っていたのは覚えています。
具体的に醸造家を目指そうと思ったのは、フランスに留学をしてからです。24歳の時に留学をしてワインの勉強を始めたのですが、その時にワインを売ったり、ソムリエとしてレストランで働くよりは、ワイン造りに携わりたいと思いました。留学中は勉強しかない毎日で、とにかく必死に勉強をしました。
フランス、南アフリカと留学を終え、帰国をしてからも毎年3ヶ月程海外へ行き、ワイン醸造の勉強を続けています。これまで訪れた国の中で、技術的に一番勉強になったのはオーストラリアですが、自分にとって特別な国として印象に残っているのはチリです。チリには2010年の大地震の後に行ったのですが、現地の人達は、災害にも負けない陽気な人が多く、その明るさに元気をもらいました。
また、チリでは、ワイン造りは雇用の創出など地域貢献性の姿があること、人件費が安ければ安いワインができますが、日本のワインは安さばかり追求してしまうとダメになるのではないかなどいろいろと考えさせられました。チリは醸造家として私をすごく成長させてくれた国でしたね。
醸造家としてのこだわり 〜甲州への想い〜
2008年からは中央葡萄酒株式会社で栽培と醸造の責任者をしていますが、日本のワインに足りないのは栽培だと思います。栽培については自社農園があり、自社農園だからこそ造り手の意見をぶどうに反映することができます。ワインの場合はぶどうが大事なので、自社農園で一から管理したものを自分自身で醸造と連想していけるのは醸造家にとって、とても魅力だと思います。
「甲州」についてもぶどう栽培から行っています。甲州は醸造家として適切な言い方ではないかもしれませんが、純粋さもあり、とてもピュアなワインです。飲んでいくうちにスルスルと飲めてしまうワインで、一杯しか飲めないワインでは絶対にありません。ぶどうの歴史も1000年程度と長いことが特徴です。1000年も歴史があるぶどうというのは、なかなかありません。また、和食との相性が良いのも甲州ワインの魅力です。
甲州は、イギリスをはじめ8ヵ国に輸出をしていますが、醸造家としては、甲州のことを説明してくれる人がいるような適所で飲まれてほしいという思いがあります。マーケットを海外に開くのはとても大変なことですが、今回山梨が日本のワイン産地としては、初めて地理的表示として指定されたことで、ワイン産地として「山梨」という表示をすることができるようになりました。今後はコツコツ地道に市場を切り開き、定着させ、甲州という品種、ワイン産地としての山梨が世界中の人々にインプットしていただけるようになると嬉しいですね。
今後の挑戦 〜理想のワインを目指して〜
ワインマーケティングはとても女性が強く、活躍している方もたくさんいますが、ワインメイキングの分野では、国内外を通じてまだ女性の醸造家は少ないのが現状です。
確かにワイン造りは、体力的な面などで男性の方が向いている点もありますが、ワイン造りには芸術的な面も大事だと思いますので、そういう部分では女性の感性が活かせるのではないかと思っています。
私自身も好きなワイン、造りたいワインのスタイルというものがあるので、自分自身の感性を活かして、最終的には自分にしか造れないもの、人の心に残るようなものを造っていきたいという気持ちはあります。こうした造り手としての目標に加えて、甲州を自分がどこまで広められるかにも挑戦していきたいと思っています。
新しい女性としての生き方へのチャレンジ
女性は自分の望む生き方と周囲から求められる生き方が違うことがあるなど、同年代の女性たちが苦労や辛さを感じています。
私自身も辛いときはありますが、頑張っている彼女たちに今年もワインを飲んでもらいたいという思いで頑張れる部分もあります。
将来的には、私も苦しんでいる女性のために何かができればと思っています。そういうところにも、今後賛同してくれる女性がいると嬉しいですね。
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三澤さんのこれまで
中央葡萄酒株式会社の三澤茂計4代目オーナーの長女として産まれる。
2005年:単身で渡仏、ボルドー大学ワイン醸造学部DUADを卒業。
2007年:南アフリカ・ステレンボッシュ大学大学院へ留学。
同年:中央葡萄酒株式会社のワイン造りに携わり始める。
現在:中央葡萄酒株式会社の醸造責任者として、ぶどう栽培から責任ある立場でワイン醸造に従事している。