インタビュー

《研究者》 岡村美好
Vol.35 【理工系分野】がんばっています! Woman Civil Engineer
今回のゲスト
《研究者》 岡村美好さん
(甲州市)
山梨大学大学院医学工学総合研究部助手

土木で初の女子学生だった

ものをつくることに関わりたかったという岡村さんは、親の希望もあり地元の山梨大学工学部へ進学しました。入学してから山梨大学で土木系初の女性ということがわかったそうです。「土木と建築の違いも分からなかったし、女性がいないことを知らなかったんですね。でも高校で理系クラスだったので女性が少ないことに慣れていて、そんなものかなと。」

誰にでも使いやすい、歩きやすい街づくりをしたい

 山梨大学大学院で修士号を取得、助手として大学に勤務し、研究者として歩み始めました。平成11年に博士号を取得、平成13年に土木学会で論文を評価され「田中賞」を受賞。それまでの構造力学・構造工学の研究に区切りをつけて、以前から関心のあった歩行空間のユニバーサル・デザインの研究を始めました。土木からの福祉工学へのアプローチはまだ始まったばかりだそうです。
 「自転車で街を走った時に、歩道で怖い経験をして、土木ではこんなものを作ってきたのかとショックを受けました。私自身、これまで橋などの土木構造物の強さを研究してきましたが、車椅子や歩行者などのことはほとんど考えてきませんでした。土木構造物を使う人の視点から見直したいと思いました。」

土木にもっと女性を!

 平成13年、岡村さんは山梨大学工学部土木環境系クラスの女性卒業生89名にアンケートを実施、仕事や生活の状況、職場の労働環境、仕事に対する展望などを調査しました。結果は、回答者の約3割が仕事を辞めていて、その理由の多くは出産・育児であること、しかし将来的には復職を希望しているというものでした。自由記述欄には、女性の少ない分野での働きづらさや、ロールモデルとする先輩のいない職場環境の厳しさ、そのような中で懸命に仕事や家庭のことに取り組んでいる様子が綴られていました。
 「私も教えてきた立場ですから何とか辞めないで続けてほしいと思っていましたが、アンケートをして、辞めたくて辞めているんじゃないとわかってからは、子育てが大変なときは辞めてもいいから、なんとか復帰できる環境を整えてあげたいなという思いが強くなりました。」
 土木の分野でも、目標数値等を定めて女性の人数を増やさないと、意識改革や労働環境の整備が進んでいかないと考えるようになり、土木技術者女性の会で活発に活動するようになりました。
 土木技術者女性の会では女性技術者を増やそうと、岡村さんが中心となって『Civil Engineerへの扉2006年版』を作成しました。
 「この冊子を見て、中高生に自分のやりたいことを選んで欲しい。そして今勤めていて結婚や出産や夫の転勤などで辞めようかなと思っている人には、しなやかに続ける努力をして欲しいと思います。」

*土木技術者女性の会 https://womencivilengineers.secure-ymc.jp/

☆岡村さんからのメッセージ☆

好きなことをしていこうという気持ちを大切にして。
でもがんばりすぎないで。肩の力を抜いて、自分を見失わず、目標に向かって努力を続けていけば、夢は叶うと思います。

バックナンバー

岡村さんのこれまで

昭和52年山梨大学工学部へ入学。土木系初の女性だった。

大学院に進み、構造工学の研究者として歩み始める。平成11年工学博士号を取得。平成13年に土木学会賞「田中賞」受賞。歩行空間のユニバーサル・デザインの研究を始める。

土木技術者女性の会で、女子中高校生・女子大学生向けに土木の仕事を紹介するための冊子『Civil Engineerへの扉2006年版』を作成

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