インタビュー

《NPO法人》 窪田真弓
Vol.10 【NPO】環境コミュニティ・ビジネスへの挑戦
今回のゲスト
《NPO法人》 窪田真弓さん
(増穂町)
NPO法人スペースふう 事務局

主婦からの転身。

平成11年9月から、環境問題に関心を持つ女性が集まって、古着やおやきの販売、牛乳パックや油の回収、喫茶店などを行っていた任意団体『ふう』は、事務所を近隣住民にコミュニティスペースとして開放していました。当時から、ビーズ・アクセサリー教室の講師をしていた窪田さん。教室の場所が欲しかった時、知り合いを通じて、ビーズ・アクセサリー教室をここで始めました。お茶やケーキを食べながらの楽しい教室だったそうです。しかしまだ、主婦業をしながらアクセサリー教室講師が中心的活動。やがて転機が訪れます。アクセサリー教室の傍ら、おやき販売の店番を手伝うことになった窪田さん、『ふう』の永井代表が、平成13年からエコロジー先進国ドイツで行われているリユース食器を試験的に増穂町のイベントに導入したことを知ります。「最初から、地球環境を守ろうなどと言う志はなかったんですよ」と快活に語る窪田さん、次第に『ふう』の活動にのめり込んで行きます。平成14年9月にNPO法人『スペースふう』として認可されると同時に正式なスタッフとなり、事務局を務めるようになりました。

環境問題をビジネスに転換。

「試合がひとつ終わると、すごい量のゴミが出ていたんですよ」ヴァンフォーレ甲府の試合を観戦に来たお客さんたちが買うドリンクにリユースカップを提供しているNPO法人『スペースふう』。事務局を務める窪田さんは普通の家庭の主婦でありながら『コミュニティ・ビジネス姫』と言われている業界の草分け的存在です。
コミュニティ・ビジネスとは、社会の中で課題となっているテーマをビジネスとして成り立たせながら、解決してゆく活動のことです。『スペースふう』では、エコロジー先進国であるドイツの事例に習い、いち早くリユース食器に着目。地元企業、大学、県、増穂町などと連携して、イベント時のリユース食器レンタルサービス事業を始めました。現在では、サッカーJ2ヴァンフォーレ甲府の試合以外にも「やまなし・ゆめふじ国体」や県内外のイベントなどに食器を貸し出しています。リユース食器に入った飲食物を買い求めるお客さんは、代金とともに預かり金100円を支払います。そして食器を返却すれば100円が戻ってくるというデポジット制度を採用。このシステムがイベント会場やスタジアムから大量のゴミを消しています。
「平成15年9月に本格的にこの事業を始めてから現在まで、全国各地にレンタルした食器の数は31万個です。これを紙コップに換算して積み重ねると、富士山の高さの5倍プラス7合目まで。この分の使い捨て食器を減量したということです。CO2の削減量は18.6トンにもなるんです。これってすごいことでしょう?」その思いを熱く語る窪田さん。
平成16年2月には、全国からリユース食器事業を行う団体を集め『第1回全国リユース食器フォーラムINますほ』を開催し、窪田さんは、リーダー的な存在として活躍されました。ネットワークを充実させ、関係機関との連携を強くして、『スペースふう』のリユース食器事業はビジネスとして確実な成長を遂げはじめています。

事業への取り組みの中で得たさまざまなノウハウから始まるコミュニティ・ビジネス。

『スペースふう』のリユース食器事業を飛躍的に大きくしたのは、なんと言ってもサッカーJ2ヴァンフォーレ甲府の本拠地、小瀬スタジアムへの進出。きっかけは大分トリニータのホームスタジアムで平成15年3月からリユースカップを導入したという情報からでした。しかし、それ以前の平成14年11月から食器リユース事業をテスト導入していた『スペースふう』道筋は既に出来上がっていました。「山梨にはヴァンフォーレがある。だったらまずメインスポンサーの『はくばく』さんを訪ねようということになって。社長室ってどんなところだろう。なんて、ちょっとした好奇心からついていったんです」
ちょうどその頃、経済産業省の平成15年度「企業・市民等連携環境配慮活動活性化モデル事業(環境コミュニティ・ビジネス事業)」があることを知りました。その事業の採択までの事務を引き受けた窪田さん。軽い気持ちで引き受けたもののその重責を徐々に感じることになります。まずは事業計画書の提出。「利益の見通しを計算して簡単に書けばいいと思ったんですね。ところが、それはとんでもない思い違いだったんです」洗浄器などの設備の予算から、電気代や水道代、食器のデザイン料などさまざまな要素を一冊の事業計画書にまとめるという作業が始まりました。「県の職員の方に手伝っていただいて、何度も却下されながらつくりました。とにかくすべてが知らないことなのですごく大変でした。カップのデザインも『保証金100円を無駄にしてまで持って帰りたくなるおしゃれなカップでなければ。持ちやすい形でなければ』ということで県工業技術センターからは、いろいろなアドバイスをいただきました」連日、作業は深夜まで続いたといいます。
「全国から200件以上の応募があり、一次の書類審査で40件ほどに絞られました。二次審査はヒアリングで直接、経済産業省に説明をしに行ったんです。経済産業省の担当者が女性だったのにはちょっと驚きましたね」
第二次審査も無事とおり『スペースふう』は晴れて平成15年度の経済産業省の委託を受けることとなりました。
「普通の主婦ですからね、本当に大変でした。気がつくとコミュニティ・ビジネスの専門家のように言われていますけど、この仕事が私を育ててくれたんです」

行動の原点には、公私の区別があってこそ。

「リユース食器の返却所にいるとね、皆さん『ありがとう』って言って100円を受け取るんですよ。それがなんだか嬉しいんです」そこには人と人との温かい心の交流があります。「環境問題は、少数の人だけが必死に取り組んで解決することはできません。地球に暮らす全ての人がほんの少し気を付けたときにはじめて大きな力となるのです」
環境問題をビジネスにするとき「参加した人にメリットがある」「参加することがおしゃれである」と思えるようなイメージを訴求し、誰もが気負わすに参加できるエコロジー活動とすることが大事」だと窪田さんは言います。「そういうコンセプトを生かしてイベントコンサルタントもやっています。リユース食器はもちろん、ゴミの分別係を派遣したりして、お任せいただいたイベントはそっくりエコ・イベントになります」
窪田さんは、『スペースふう』の事務局でありながら、ビーズ・アクセサリー教室を月に5回ほど開いたり、フラメンコのダンサーでもあります。愛車は真っ赤なスポーツカー。毎日をエネルギッシュに過ごす行動派です。「『スペースふう』での活動が多忙な時でもビーズの仕事やフラメンコは続けていきたい」と言います。「社会のためにすることと自分のためにすること。両方の世界を持ってきたからこそ、『スペースふう』での活動も続けてこられたような気がします。いろんな世界を持っている方が楽なんです」と明るく元気に語る窪田さん。エコロジーを実践する人とは思えないイメージが「誰もが普通にエコする時代」が来たことを実感させられます。

取材日:平成17年3月24日(木)

バックナンバー

窪田さんのあゆみ

平成11年から古着などのリサイクルショップを始めた任意団体『ふう』は、コミュニティスペースとして近隣の住民に事務所を開放。そこでビーズ・アクセサリー教室を開いたのをきっかけにボランティア活動に参加。

平成14年に『スペースふう』がNPO法人として認可されると同時に正式なスタッフになる

リユース食器を環境コミュニティ・ビジネスとして本格的にスタート。その中心的役割を担う。

平成15年度の経済産業省の環境コミュニティ・ビジネス事業を受託。コミュニティ・ビジネスの先駆者として活躍。

「第1回全国リユース食器フォーラムINますほ」を開催。そのリーダー的な存在となる。

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