トップ > 県政情報・統計 > 知事 > 開の国やまなし こんにちは。知事の長崎です。 > 施政方針 > 令和8年9月県議会知事説明要旨
ページID:127833更新日:2026年9月25日
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令和8年9月定例県議会の開会に当たり、提出いたしました案件の御説明に先立ち、その背景にある政策の基本的な考え方と、県政運営に関する私の所信を申し述べ、議員各位、そして県民の皆様の御理解と御協力をお願い申し上げます。
本県は、県民所得の向上と地域価値の向上を目指す「価値創造県やまなし」の実現に向け、「県民生活の強靱化」と「開の国づくり」の2本の柱を中心に、施策を進めております。
世界とつながることで新たな価値を生み出し、その価値を、県民一人ひとりの暮らしの豊かさに変えていく。
働いた人が、働いた分だけ豊かになる。
頑張れば報われる山梨をつくる。
本議会に提出した補正予算も、この考え方に沿って編成したものであります。
以下、先ず県民の暮らしに直結する施策から、順を追って御説明申し上げます。
先ず、県民生活の強靱化についてであります。
中東情勢に起因するエネルギー価格の高騰と、それに伴う物価上昇が長期化し、県民の暮らしと県内経済に大きな影響を及ぼしております。
こうした状況の下、現下の困難な状況から県民の暮らしを守りつつ、賃金の向上や若者の挑戦を後押しすることにより、県民所得の向上を阻む構造的な課題に取り組む必要があります。
このため、「生活支援」「賃金向上に向けた支援」「若年層支援」を三つの柱とする経済対策を実行いたします。
物価高の下で暮らしを守り抜く最も確かな道は、物価の上昇を上回って所得が伸びていくこと、すなわち、働く人と企業の稼ぐ力を高めることであります。
この考え方に立ち、生活支援は、物価高騰の影響を特に強く受けている世帯に重点を置いた臨時的な措置とし、財源の重心は、賃金と生産性の向上、そして若者の挑戦に置きました。
当面の暮らしを守りながら、その先の所得が上がる仕組みをつくる。
この二つを同時に進めることこそが、県民生活の強靱化であります。
(生活支援)
先ず、経済対策の第一の柱である生活支援についてです。
本県には、古くから「結」と呼ばれる相互扶助の営みが息づいております。
困ったときには互いに支え合う。
その考え方に立ち、県ではこれまでも、灯油券や支援金の支給を実施して参りました。
しかし、中東情勢の緊迫化や円安による物価高騰の影響は、深刻かつ長期化しており、この異例の事態にあって、特に物価高騰の影響を受けやすい生活困窮世帯や子育て世帯の家計は大きな打撃を受けております。
このため、県では、生活困窮世帯及び子育て世帯を対象に、臨時的な措置として支援金を支給することとし、本補正予算に総額23億円余を計上いたしました。
その際、物価への影響等を勘案し、支援の必要性が高い世帯に対象を絞り、重点的な支援を行うことと致しました。
具体的には、生活困窮世帯への支援につきましては、住民税非課税世帯に対し、日常生活に不可欠な食料費の上昇分と灯油代として、1世帯当たり1万円を支給いたします。
また、子育て世帯への支援につきましては、児童手当の受給者に対し、生活に必要な経費の上昇分として、児童1人当たり1万円を支給いたします。
対象となる方々へ支援が迅速かつ確実に届くよう、円滑な事業執行に万全を期して参ります。
(賃金向上に向けた支援)
次に、第二の柱である賃金向上に向けた支援についてです。
本県では、県民所得の向上を県政運営の最重要課題に位置付け、「賃金水準の引き上げ」「生産性の向上」「労働参加率の向上」を三つのレバーとして所得構造改革を推進して参りました。
働く人のスキルアップ、企業の収益アップ、そして賃金アップの好循環を、企業・働き手・行政が一体となって進める「豊かさ共創スリーアップ」は、認証企業数が6,270社に達し、毎月勤労統計調査においても、本県の労働者1人当たりの現金給与総額の伸び率は全国平均を上回っております。
しかしながら、物価上昇の影響は依然として大きいことから、賃上げの流れを一過性のものに終わらせるのではなく、物価上昇を上回る持続的な所得向上へとつなげていくことが重要であります。
その鍵となる三つのレバーのうち、第一のレバーは、賃金水準の引き上げであります。
かねてから申し上げているとおり、賃金アップこそ県民生活強靱化の一丁目一番地であります。
賃金水準向上の最初の歯車である最低賃金は、先月28日、山梨地方最低賃金審議会において、国の目安額を5円上回る61円の引き上げが答申されました。
全国的に見て高い水準の引き上げが示されたことは、賃上げに取り組んできた県内企業の皆様の御努力の表れとして評価する一方で、近隣県との最低賃金の格差はなお残っており、必ずしも十分なものとは考えておりません。
最低賃金の上げ幅について、毎年の答申のたびに一喜一憂するのではなく、公労使が中長期の目標を共有し、計画的に引き上げていくことができないか。
この問題意識の下、関係者との議論を始めたいと考えております。
併せて、長引く物価高騰により厳しい経営環境が続く中にあっても、賃上げに踏み切る中小企業に対し、県として連帯する意思を示すため、時限的かつ緊急的な措置として、企業に対する直接支援金制度を創設することとし、これに要する経費として、22億円余を本補正予算に計上いたしました。
本制度は、スリーアップ認証を受けた中小企業が、従業員の賃金を50円以上引き上げ、今回答申された最低賃金額以上とした場合に、賃上げに伴う増加賃金の約6箇月分について、その5割から7割程度を支援するものであり、小規模事業者を中心に幅広い企業に活用いただけます。
働く人の給料を実際に上げる。
その決断をした企業を、県が後押しする。
この直接支援金をはじめとする各種助成制度を通じて、県全体の着実な賃金水準の向上につなげて参ります。
第二のレバーは、生産性の向上であります。
持続的な賃上げを実現するためには、生産性向上を通じて賃上げの原資を生み出していくことが不可欠であります。
このため、直接支援金制度を活用し、賃金水準を引き上げ、かつ、生産性向上に資する設備投資を行う事業者に対し、上限300万円、総額18億円余の補助金を用意いたします。
賃上げに踏み切った企業に限って、生産性向上への投資を支援する。
これが、賃上げと生産性向上を一体で進める本県の一貫した考え方であります。
併せて、人手不足が深刻な介護の現場において、ICT機器導入の効果を定量的に「見える化」する実証事業と、医療・介護現場において、テクノロジーを活用してサービスの質を高める担い手となる、アドバンスト・エッセンシャルワーカーの育成に要する経費として、6,000万円余を本補正予算に計上いたしました。
第三のレバーは、労働参加率の向上であります。
障害や疾病の有無にかかわらず、能力や希望に応じて活躍できる環境をつくることは、労働参加率を高め、豊かさを分かち合える社会の土台であります。
このため、就労機会の拡大と、労働力の離脱防止という観点から、必要な取り組みを進めて参ります。
先ず、障害や疾病の特性のある生活保護受給者等を対象に、福祉専門職によるアセスメントを通じて、一人ひとりの「働きづらさ」を可視化し、受入協力企業の開拓から就労後の定着まで一貫して支援する新たな就労支援スキームを構築することとし、2,000万円余を本補正予算に計上いたしました。
また、望まない介護離職を防ぐ「介護離職ゼロ社会」の実現に向けては、今月から「ケアラーコンシェルジュサービス」を開始したところであり、引き続き、ケアラー目線での分かりやすい情報提供や一元的な案内の在り方、関係機関との連携強化について、更なる効果的体制を検討して参ります。
併せて、介護する人が、介護される人とともに安心して旅を楽しめるよう、入浴介助サービス付きの新たな旅行形態を認定施設で体験いただくことで「ユニバーサルツーリズム」を促進することとし、所要の経費を本補正予算に計上いたしました。
こうした取り組みを一体的に展開することにより、誰もが自分らしく働き、活躍できる社会環境づくりを推進して参ります。
(若年層支援)
次に、第三の柱「若年層支援」についてです。
人口減少や若者の県外流出が進む中、民間シンクタンクによる県民調査では、18歳から29歳までの若い世代は、幸福度や地域への満足度が全ての世代の中で最も低く、「新たなことに挑戦し、成長する機会」を強く求めながらも、その機会を十分に得られていないという結果が示されております。
少人数教育をはじめ、これまで進めてきた将来への投資は、次代を担う人材を育む中長期的な取り組みであり、今の若者世代には、その効果が直接届きにくい面があります。
若者が新たな学びや事業に挑戦すること、あるいは就職や進学、転職を機に新たな暮らしを始めることは、自らの可能性に挑み、人生を切り拓く「挑戦の入口」であります。
そこで、若者が近い将来に効果を実感できる施策として、「挑戦の入口における負担を、県がともに引き受ける」という考え方の下、「学ぶ」「住まう」「興す」の三つの観点から、若者の挑戦を総合的に支援して参ります。
第一に、学びへの支援であります。
本県の人材育成の核である「やまなしキャリアアップ・ユニバーシティ」において、若年層との意見交換会やオンラインによる提案募集を実施し、その声を反映した新たな講座を開設することとし、これに要する経費として、2,200万円余を本補正予算に計上いたしました。
これは、従来の「行政が用意した講座を提供する」方法から、「学ぶ側が欲する学びを、学ぶ側の声に基づいて提供する」方法へと転換する第一弾であり、今後、この路線を更に強化して参ります。
第二に、住まいへの支援であります。
若者が就職や進学、転職を機に新生活を始める際には、敷金や礼金、引越し費用などの初期費用が大きな負担となります。
しかしながら、これまでの若年層への支援は、主に結婚や子育てといったライフイベントを中心とするものでした。
そこで今般、就職、創業、リスキリング等の挑戦を志す若者が、県内で新生活を始める際に、1人当たり10万円を上限として初期費用を支援する制度を創設いたします。
併せて、県営住宅の空き住戸の一部を若年層の居住ニーズに沿う間取りにリノベーションし、若者向け住宅として提供することとし、これらに要する経費として、6,900万円余を本補正予算に計上いたしました。
第三に、起業への支援であります。
創業時の資金負担が最初の一歩をためらわせる要因となっていることから、その解消に向け、若者のビジネスチャレンジを後押しする創業資金の支援制度を構築することとし、1,600万円余を本補正予算に計上いたしました。
これら「学ぶ」「住まう」「興す」の支援に要する経費として、総額1億円余を本補正予算に計上いたしました。
若者一人ひとりが挑戦の一歩を踏み出せる環境を整え、若者に選ばれる県づくりにつなげて参ります。
(女性の安全と自立を支える体制づくり)
県民生活の強靱化は、経済対策にとどまりません。
暴力や生活困窮など、困難な状況に置かれた女性が、安心して相談し、生活を立て直し、再び社会で力を発揮できるようにすることも、県民生活の強靱化の一部であります。
先月のインド訪問において、訪問団の女性活躍調査グループは、相談から各種支援までを一体的に行う女性向け相談窓口「ウィメン・パワーライン1090 」などを視察し、今月9日、「女性の安全確保から社会参画までの一体的な支援が重要である」との政策提言を提出されました。
本県では、相談、保護、生活支援、就労支援の受け皿自体は整っておりますが、それぞれの窓口が分かれているために、支援を必要とする方が自ら適切な相談先を探し回らなければならないという課題があります。
提言の核心は、1人の女性を中心に支援を組み立てることにあります。
すなわち、支援メニューを提供するに当たっては、これまで供給者側の視点だったものを、受け手側の視点に転換することが本質であります。
相談に来られた方を制度ごとの窓口へつなぐのではなく、その方を中心に据え、必要な支援のほうを持ち寄り、相談から生活再建、経済的自立、社会参画までを切れ目なく支える。
この考え方に立ち、今月15日、私を本部長とする「女性の自立・社会参画総合支援推進本部」を設置し、18日の第1回会議において、相談者を中心に支援をつなぐコーディネート機能の構築、分かりやすい相談体制の整備、住まいや就労、リスキリングなど自立を支える施策の連携、女性の視点からの安全対策の再点検の4点について、部局横断で検討するよう指示いたしました。
10月を目途に中間報告を取りまとめるとともに、「山梨版ワンストップ伴走支援体制」の構築に向け、外部有識者の助言を得ながら検討を進めることとし、これに要する経費を本補正予算に計上いたしました。
世界で得た知見を、県民の暮らしの安心に変える。
これもまた、「開の国」の成果を県民生活に還元する取り組みの一つであります。
(暮らしと産業を守る備え)
そして、県民生活の強靱化は、暮らしと県土を守る備えなくしては成り立ちません。
本年は、7月の熊本地震に加え、千葉県や北陸地方など、各地で豪雨災害が相次ぎ、大規模な災害により甚大な被害が生じております。
改めて、お亡くなりになられた方々の御冥福をお祈りするとともに、被災された皆様に心からお見舞いを申し上げます。
本県においても、6月には震度6弱の地震が、今月には断続的な大雨が発生しており、各被災地の応急対策の教訓を踏まえ、十分な備えをしておく必要があります。
熊本地震では、酷暑の下での避難所の冷房確保が大きな課題となりました。
これを踏まえ、本県では、指定避難所となっている県立学校などの県有施設において、停電時にも冷房機能を確保できるよう、スポットクーラーや発電機を緊急整備することとし、本補正予算に2,100万円余を計上いたしました。
また、千葉豪雨においては、道路冠水の被害が多発したことに鑑み、本県では、県管理道路の冠水注意箇所の設備と、豪雨時の体制の再点検を徹底したところであります。
南海トラフ地震や富士山噴火など、本県でも大規模災害の発生が懸念される中、県民の皆様の生命・財産を守るため、災害対応力の強化に一層取り組んで参ります。
加えて、災害対応は発災直後の避難や救助にとどまらず、被災者の生活を長期にわたり支え続けるものである必要があります。
奇しくも本日は、昭和41年に発生した足和田災害から60年に当たります。
足和田災害では、集中豪雨による土砂災害で、多くの住民が移転を余儀なくされました。
県では、被災者の移転先として県有地を長年貸し付けてきましたが、居住者の方々が将来にわたり安心して住み続けられるよう、売り払いに向けた手続きを進めており、本補正予算では、その前提となる分筆登記に要する経費として、1,500万円余を計上いたしました。
被災された方々に寄り添い、その歩みを支えることで、災害からの復興を実現して参ります。
災害への備えと同様に、県民の暮らしや地域産業を脅かす突発的なリスクに対しても、迅速かつ的確に対応していく必要があります。
本年7月、桃や桜をはじめとするバラ科樹木に甚大な被害を及ぼす特定外来生物クビアカツヤカミキリが、県内で初めて確認されました。
本県の基幹産業である果樹産業と地域の景観に関わる極めて重大な事態であり、成虫が産卵することによる更なる被害拡大を防ぐためには、早急な対策が不可欠であります。
そのため、県では、7月と8月の2回にわたり、合計21億円余の一般会計補正予算を専決処分し、市町村やJAなどと一体となって、オール山梨で早期封じ込めに取り組んでおります。
本議会に提出した補正予算では、これに加え、秋以降の被害木の伐採処理などの防除経費として、7,400万円余を計上いたしました。
早期発見・早期防除を基本に、県民共通の財産である果樹産業と景観を守り抜くため、全力で取り組んで参ります。
次に、「開の国」づくりについてであります。
ここまで申し上げた、暮らしを守り、所得を上げる仕組みを、将来にわたって支え続けるためには、その原資となる新たな価値を生み出し続けなければなりません。
人口が減少する中で、県内だけを見ていては、この原資は細る一方であります。
だからこそ、山梨の可能性を世界に開き、世界の成長と結びついて価値を生み出し、それを県民の暮らしの豊かさに変える。
これが「開の国」づくりの考え方であり、県民生活の強靱化と一対をなす、もう1本の柱であります。
(インド訪問の成果)
その具体的な一歩が、先月のインド訪問であります。
私は、先月18日から23日にかけて、本県として前例のない産学官一体、総勢220名の訪問団とともに、インド共和国デリー準州及びウッタル・プラデーシュ州を訪問して参りました。
今回の訪問の成果の中核は、県及び県議会として締結した六つの協力文書を土台に、具体的な事業を継続して進めることで、県民の暮らしの豊かさに還元される四つの回路ができたことにあります。
第一に、水素であります。
今回の訪問では、ウッタル・プラデーシュ州政府から、本県が進めるP2Gシステムのパイロットプロジェクトに対し全面的な協力を得ました。
令和11年度に稼働予定であるカナデビア株式会社都留工場の水電解装置と、その部品を供給する県内企業に、海外の市場が開かれる。
これは、県内のものづくり産業の成長と所得向上に直接つながる回路であります。
第二に、観光であります。
相互送客の合意に基づき、今週、ウッタル・プラデーシュ州の観光事業者が来県し、北杜市や甲府市の観光施設を視察されました。
今月27日には、富士北麓においてファムトリップを実施いたします。
加えて、インドの富裕層を顧客とする旅行企業や、日本への送客部門を新たに設けた旅行会社から、本県を訪れたいとの申し出も寄せられております。
こうした動きを、本県の魅力を盛り込んだ観光商品の開発につなげて参ります。
世界最大の人口を持つ国からの来訪者の増加は、宿泊、飲食、農産物と、県内の幅広い事業者の売上向上につながる回路であります。
第三に、人材であります。
人材育成に関する覚書を締結したガルゴティアス大学との間では、介護人材に関する連携の一環として、送り出し前の現地研修に、日本での生活習慣と介護の基礎技能を含めることで合意いたしました。
介護の現場を支える担い手に、本県が選ばれる。
これは、介護を必要とする県民と、その家族の暮らしを支える回路であります。
第四に、次世代であります。
県内の高校生13名がヨギ州首相と面会し、参加した生徒からは「世界の成長の勢いや異文化への理解を深めることができた」との声が寄せられております。
今回の交流が、両地域の若者の生涯にわたるつながりの第一歩となるとともに、世界に目を向けて挑戦する人材を育む回路となることを期待しております。
そして、今回の訪問による経済効果は、実証事業などの取り組みが予定どおり進むことを前提に、3年間で約13億円、10年間では54億円規模を見込んでおります。
その前提、算式、出典は資料として議会にお示ししており、今後、商談実績などを反映しながら四半期ごとに更新して参ります。
一方、訪問に要した県費は、契約額で1億1,600万円程度であり、現時点で約3,500万円の経費削減が見込まれ、今後の精算により更に減額となる予定であります。
また、今回の訪問は、行政と議会が一体となったオール山梨での訪問となり、先般、県議会からいただいた政策提言の趣旨は、本補正予算に最大限反映しております。
県としては、この度構築した協力関係を一過性のものに終わらせないため、県庁内にウッタル・プラデーシュ州との連携を総合的に担当する「UP デスク」を設けるとともに、外国人旅行者の受入環境の充実、介護人材の受入体制の研究、県内企業の海外展開を支える制度融資の創設など、協力文書の内容を事業化するための経費を本補正予算に計上いたしました。各分野の事業の詳細につきましては、本議会の審議を通じて丁寧に御説明して参ります。
(全県ファウンドリー構想)
世界に開くのは、販路や交流だけではありません。
世界が成長するとき、最も確実に富を得るのは誰か。
かつて、ゴールドラッシュで最も確実に富を築いたのは、金を掘った者ではなく、その道具である「ツルハシ」を売った者でありました。
どのような産業分野が成長しようとも、そこに必要となる技術や部材を山梨から供給する、いわば世界の成長産業を支える「ツルハシ」の役割を担うこと。
この考え方こそが、私の掲げる「全県ファウンドリー構想」であります。
先月、政府が進める地域未来戦略の下、「成長産業横断型全県ファウンドリー化計画」を策定したところであり、中でも、次世代の成長分野であるフィジカルAIについては、私自ら、世界的企業であるファナック株式会社を訪問し、山口社長に本県との連携を直接お願いいたしました。
加えて、今般、県内企業がフィジカルAI関連産業への参入や取引拡大を進められるよう、展示会への出展やセミナーの開催を直ちに実施するとともに、先進的な人材育成に取り組むアメリカ・オハイオ州の実地調査を行うこととし、医療機器分野の支援と併せ、2,000万円余を本補正予算に計上いたしました。
半導体製造装置で鍛えた技術を、医療機器、航空・宇宙へ、そして、フィジカルAIへ。
山梨のものづくりの裾野を、世界の成長分野へと広げて参ります。
(水素社会の実現と国際的な知の拠点)
そして、「開の国」づくりの中核となるものが、グリーン水素の社会実装であります。
米倉山に始まるP2Gプロジェクト、白州における国内最大級の水素製造拠点の稼働、水電解スタック量産工場の整備と、本県の挑戦は今、世界から注目を集める実装の段階へと進みつつあります。
去る7月には、本県の「水素社会実現を牽引する地域産業クラスター計画」が、政府の地域未来戦略の先行事例として選定され、私自身、関係副大臣等会議の場で発表を行いました。
しかしながら、技術的優位性は永続するものではありません。
世界各国が投資と開発を加速させる中、本県が目指すべきは単なる技術先進地ではなく、水素に関する知見、人材、企業、投資が集積する国際的な「知の拠点」となること。
そして、その先に見据えるのは、新たな価値が次々と生み出される「梁山泊」のような存在であります。
来月、本県で開催する国際水素サミット「富士ハイドロジェン・サミット」は、その重要な第一歩であります。
8箇国12地域をはじめ、国内外の自治体、企業、研究機関が山梨に一堂に集う場で、本県が蓄積してきた実装知を世界に向けて発信いたします。
併せて、山梨大学や民間企業と設立した水素コンソーシアム「LIGHT 」を核とした人材育成と、県内における配管施工企業の水素産業への参入障壁となっている低圧水素配管の標準化に向けた実証試験に要する経費として、2,800万円余を本補正予算に計上いたしました。エネルギー転換という世界共通の課題に対し、水素という可能性を切り口として、山梨を世界の知が集う舞台へと高め、その成果を県内産業の成長と県民所得の向上につなげて参ります。
次に、世界遺産富士山の持続可能な管理についてであります。
世界遺産富士山の普遍的価値を確実に保全しながら、その価値を地域の発展につなげていくこと。
これこそが富士山を巡る問題の本質であります。
来訪者の急増に伴う安全上の問題や環境への負荷、火山防災、地域交通、受入環境など、富士山を取り巻く課題は年々複雑さを増しており、行政だけで解決策を講じる時代は既に過去のものとなりました。
そこで、関係市町村、民間事業者などが参画し、官民が知恵と技術を持ち寄って課題解決と価値創造を図る枠組みとして「富士山官民共創コンソーシアム」を設立することとし、4,200万円余を本補正予算に計上いたしました。
11月に予定している設立総会に向け、静岡県をはじめとする関係自治体や国の関係機関へ、広く参画を呼び掛けて参ります。
コンソーシアムにおいては、来訪者コントロール、火山防災、次世代モビリティによる域内交通、受入環境の整備や投資の誘致などのテーマごとにワーキンググループを設け、機動的に検討して参ります。
こうした検討と併せて、富士北麓地域の将来像を「グランドデザイン」として取りまとめ、保全と活用の好循環を次世代へ引き継いで参ります。
また、富士山の価値と安全を将来にわたり守り抜くためには、無謀登山への対策も欠かせません。
無謀登山を抑止するため、閉山期における富士山の危険性を国内外へ広く周知するとともに、富士登山届出制度(仮称)を創設し、登山計画や装備の届出を受け、県の定める基準に照らして助言を行うことにより、遭難させないための仕組みへと転換して参ります。
併せて、閉鎖された登下山道への侵入防止対策を強化するほか、閉山期の富士山において消防防災ヘリコプターによる救助を受けた方に、その救助に要した費用の負担を求める制度を、来年の閉山期から実施したいと考えております。
なお、事前に届出を行い、必要な安全対策を講じていた方については負担を減免することとし、備えある登山と無謀な登山とを明確に区別して参ります。
更に、富士山の持続可能な管理を支える基盤として、富士トラムとリニアを軸とした二次交通網の高度化を進めて参ります。
富士トラムは、富士山における来訪者の総量管理や混雑の平準化を図るための重要な管理インフラであり、現在、車両編成や運行ダイヤのシミュレーションを行うなど、基本計画の策定を鋭意進めております。
また、富士トラムは富士山の課題解決にとどまらず、リニア中央新幹線の開業効果を県内全域へ波及させる戦略インフラでもあります。
本年7月に、静岡県知事による静岡工区の着工容認がなされるなど、リニアの早期開業に向けた機運は、これまでになく高まっております。
リニアの開業により、本県は東京とおよそ25分で結ばれますが、開業しただけで、その効果が自然に生まれるわけではありません。
富士トラムを将来的に山梨県駅まで延伸し、富士山方面と直結することができれば、山梨県駅は名実ともに富士山観光の玄関口となります。
これまで富士山へのアクセスが容易でなかった中京・関西方面からも、リニアと富士トラムを乗り継いで富士山を訪れる新たな流れが生まれます。
この新たな需要を山梨県駅の停車本数の増加につなげ、リニアを県民が普段使いできる交通手段へと変えて参ります。
富士山を守るための挑戦を、山梨の未来を切り拓く挑戦へと発展させて参ります。
最後に、100年先への投資についてであります。
本県が取り組む教育の目的は、二つであります。
一つは、頑張った人がきちんと報われるようにすること。
もう一つは、家庭の事情や住む地域、性別や障害の有無にかかわらず、全ての人が自らの可能性を最大限に発揮できるようにすることであります。
教育は、産業に必要な人手を供給する仕組みではありません。
しかし、一人ひとりが可能性を発揮すれば、その結果として、産業も地域も強くなる。
この順序を逆にしてはならないと考えております。
この考え方に立ち、高校教育の魅力向上、諦めずに選べる山梨づくり、そしてスポーツによって、人への投資を一層強化して参ります。
先ず、高校教育の魅力向上についてです。
高校は、生徒一人ひとりが、自らの可能性を見つけ、自らの価値を高める方法を身につける場であります。
少子化に伴う生徒数の減少に加え、高校授業料の実質無償化により進路選択の幅が広がる中で、公立高校が魅力を高め、生徒や保護者から選ばれるためには、各校の強みを生かした特色ある教育の充実が求められます。
選ばれるのは、生徒ではなく、学校の側であります。
本県では、国の「ネクストハイスクール構想」の下、四つの拠点校が採択され、地域や産業界と連携した特色ある教育の実践に取り組んでいるところであります。
こうした取り組みの効果を十分に引き出すため、入学者の全国募集を見据えた効果的な広報戦略を策定するとともに、若年層の域外流出が懸念される県境地域の高校では、地域資源を活用した魅力ある学習活動を推進することとし、これに要する経費として、600万円余を本補正予算に計上いたしました。
また、地域の実情や社会のニーズに応じた多様で質の高い学びをいかに発展させていくのかは、本県高校教育の将来を左右する重要な課題であります。
私は、その解決の糸口は、四つの拠点校で開発した新たな教育モデルを、全県的なネットワークを通じて展開していくことにあると考えております。
このような本県の公立高校改革の基本的な方向性については、できるだけ早い時期に、総合教育会議において私の考え方をお示ししたいと考えております。
次に、諦めずに選べる山梨づくりについてです。
自らの可能性を発揮できるかどうかは、学校の中だけで決まるものではありません。
働くことと、子どもを持つこと。
いつ、どのような人生を歩むのか、どのように産むのか。
そのどれかを諦めなければならないのであれば、可能性を最大限に発揮できているとは言えません。
近年、若年層、とりわけ女性の県外流出が顕著となっております。
働きながら安心して子育てを続け、自らのキャリアを実現できる。
そのような環境があって初めて、山梨は若い女性に選ばれます。
本県を実証フィールドとした科学的分析の成果を取りまとめた、人口減少対策に関する調査・研究プロジェクトの最終報告書では、企業は柔軟な働き方の必要性は認識しているものの、制度の導入状況や職場での運用に差があることが示されました。
そこで、県内企業における両立支援制度と実際の運用状況とのギャップを把握し、人材定着につながる効果的な方策を分析・検討するとともに、県内企業へ横展開を図って参ります。
併せて、分析にとどまらず、企業とともに両立支援を実際に動かす具体的なプロジェクトの実行についても検討を進め、「仕事と子育てを両立できる山梨」として、女性から選ばれる地域づくりにつなげて参ります。
また、若い世代が将来のライフデザインを主体的に考えられるよう、大学生や高校生を対象とするプレコンセプションケアの普及啓発を強化するとともに、日本銀行の協力を得て、家計や資産形成を含めて人生の設計を考える金融教育を、これと一体で展開して参ります。
加えて、本人の希望に応じて出産できる環境を整えるため、無痛分娩の導入や実施体制の拡充に取り組む医療機関を支援することとし、これらに要する経費として、2,400万円余を本補正予算に計上いたしました。
働くことも、子どもを持つことも、自らの人生も、諦めずに選べる。
そのような山梨を、若い世代とともにつくって参ります。
次に、スポーツを通じた可能性の発揮についてです。
スポーツもまた、一人ひとりが自らの可能性を試し、伸ばす場であります。
努力を重ねた選手が、自らの限界に挑み、その力を出し切れる。
住む地域や学校の規模にかかわらず、子どもたちが打ち込める競技に出会える。
障害の有無にかかわらず、競技の舞台に立てる。
そのための環境を整える最大の契機が、令和14年に本県で開催予定の国民スポーツ大会及び全国パラスポーツ大会であります。
私は、この大会を単なるスポーツの祭典として終わらせるつもりはありません。
人口減少社会を見据え、活力ある地域づくりや共生社会の実現にいち早く挑戦する「課題解決型大会」と位置付け、大会の成果をレガシーとして、大会後も続く県民生活や地域経済、教育の質の向上につなげるべく、必要な投資を行って参ります。
先ず、選手であります。
選手一人ひとりが、持てる力を最大限に発揮できるよう、選手ファーストを基軸とした指導体制の充実、練習や大会出場の機会の確保、競技団体への伴走支援、競技会場の効率的な改修に向けた調整を進めて参ります。
その力を結集し、天皇杯の獲得を目指します。
財源を、選手の力を引き出すことに集中して投じ、同じ目標を掲げる県スポーツ協会や競技団体を力強く支援し、県民の皆様に夢と希望を届けて参ります。
次に、子どもたちであります。
少子化の下、学校単位の部活動では、やりたい競技を続けられない子どもが生まれております。
そこで、学校単位で担ってきた部活動を地域全体で支える広域地域クラブの設立に向けたモデル事業を実施いたします。
住む地域にかかわらず、子どもたちがスポーツで可能性を伸ばせる環境を、大会のレガシーとして残して参ります。
これらに要する経費として、1億2,000万円余を本補正予算に計上いたしました。
このほか、本補正予算には、特別支援学校の教室不足の解消に向けた新棟増築工事や、工業団地造成に係る基盤整備を行う市町村への助成、農産物の高収益化に向けた取り組みを行う農家への助成などに要する経費を計上しております。
以上の内容をもって編成いたしました結果、一般会計の補正額は、134億円余、既定予算と合わせますと5,903億円余となり、今回の提出案件は、条例案3件、予算案3件、その他の案件4件となっております。
その他の案件につきましては、いずれも、その末尾に提案理由を付記しておりますので、それによりまして御了承をお願いいたします。
以上、提出案件について御説明申し上げました。
なにとぞ、よろしく御審議の上、御議決あらんことをお願い申し上げます。
結びに当たり、この7年半の県政と、これからの山梨について申し上げます。
7年前、私は「停滞から前進へ」と訴え、県政をお預かりいたしました。
当時の私にあったのは、山梨を変えたい、という一心でありました。
できない理由を探すのではなく、どうすればできるのかを考える。
国から与えられるのを待つのではなく、地域から課題を示し、地域から答えをつくる。
その思いで、県政を前へ進めて参りました。
振り返れば、この7年半で変わったのは、個々の政策や数字だけではありません。
県政の仕事の仕方そのものが、変わったのであります。
象徴的なのが、中部横断自動車道であります。
7年前、この道路の建設に伴う本県の実質的な負担は、約164億円にまで膨らんでおりました。
国に負担の軽減を要請することは、それ以前から続けられておりました。
しかし、お願いするだけでは、根本的な解決にはならない。
なぜ、山が多く、トンネルや橋梁の割合が高い地域ほど、大きな負担を負わなければならないのか。
その前提そのものに踏み込み、地方交付税の算定の在り方を国と議論し、新たな措置につなげました。
議員各位の御支援も得ながら、約164億円であった実質的な県負担は、約1億円まで圧縮されたのであります。
教育も、同じであります。
7年前、小学校に25人学級の制度はありませんでした。
子ども一人ひとりに先生の目が行き届く教育環境を、山梨でこそ実現したい。
しかし、新しい政策を恒久的に続けるには、理念だけでは足りません。
必要なのは、持続可能な財源であります。
「財源がないからできない」。
そこで諦めるのではなく、財源そのものを生み出す仕組みをつくる。
ここでも、従来の仕組みから組み替えました。
県民共有の財産である県有資産を、ただ保有するのではなく、その価値を最大限に引き出し、県民福祉の向上に振り向ける「県有資産の高度活用」という考え方を打ち出しました。
企業局の皆様の理解と尽力も得ながら、電気事業会計から一般会計への繰入金を拡充し、基金として、未来への投資である教育に振り向ける。
県政改革によって生み出した財源も、これに充てる。
必要な政策があるなら、財源ができるのを待つのではなく、財源の仕組みまで自らつくる。
その土台の上に、1年生から1学年ずつ25人学級を広げ、今では小学校の全学年で実現しております。
25人学級は、教育の改革であると同時に、県有資産と財政の在り方を、未来への投資という視点から組み替えた成果でもあります。
農業も、価値の生み方を変えました。
7年前、本県の農業産出額は900億円余りでありました。
農業を「つくる」ことだけで考えていては、生産者の所得を大きく伸ばすことはできません。
何を、どのようにつくるのか。
どう運ぶのか。
どこで、誰に、どう売るのか。
そして、山梨の農産物の価値を、どのように伝え、正当に評価してもらうのか。
これらを別々に考えるのではなく、生産・流通・販売を三位一体で高度化する。
「山梨」というブランドそのものの価値を高め、海外の成長市場へ販路を広げる。
品質を高め、ブランドで価値を高め、より高く評価される市場に届け、その価値を生産者の所得へと返す。
農業を、そうした一つの仕組みとして組み直して参りました。
その結果、本県の農業産出額は、昨年、1,338億円となり、過去最高を記録いたしました。
生産「量」ではなく、生産「額」。
こうした価値の生み方の転換が、生産額を押し上げる力になっているのであります。
そして、賃金であります。
賃上げを、企業に「給料を上げてください」とお願いするだけの政策にはしたくありませんでした。
原資がなければ、どれほど必要性を訴えても、賃上げは続きません。
ならば、その原資が生まれる循環をつくる。
働く人が新しい知識や技能を身につけ、その力を生産性と企業収益の向上につなげ、生み出した成果を賃金へと還元する。
スキルアップ、収益アップ、賃金アップ。
この三つを一つの循環として回す「豊かさ共創スリーアップ」であります。
働く人に努力だけを求めない。
企業に負担だけを求めない。
行政も、外からの掛け声だけにとどめない。
働く人には、学び直しの機会を。
企業には、設備投資、DX、人材育成、新たな事業展開への支援を。
そして、成果を賃金として働く人に返す企業を、県が更に後押しする。
最低賃金の引き上げは、この循環を動かす最初の歯車であります。
賃金の底を持ち上げると同時に、その挑戦を企業だけに背負わせず、企業自身が稼ぐ力を高める。
努力して技能を高めた人が報われる。
人を育て、価値を生み出した企業が成長する。
その成長の果実が、働く人に返ってくる。
「頑張れば報われる」という当たり前を、精神論ではなく、経済の仕組みとして実現する。
これが、スリーアップに込めた考えであります。
そして、水素であります。
7年前、米倉山では、将来につながる研究と実証が続けられておりました。
しかし、山梨県が水素に取り組んでいることを知る人は、ごく一部の関係者に限られておりました。
どれほど優れた技術も、知られず、使われず、産業につながらなければ、その価値を発揮することはできません。
だからこそ、研究室の中で終わらせない。
山梨の技術として世に問い、実際に使い、産業にする。
その結果が、白州での製造拠点の稼働であり、都留での量産工場の整備であります。
研究から実装へ。
実装から産業化へ。
そして、山梨から日本へ、世界へ。
水素は今や、本県を代表する成長分野の一つへと歩みを進めております。
富士山の火山防災も、同じであります。
7年前、富士山の防災は、平成16年に作られたハザードマップを前提としておりました。
新たな科学的知見を踏まえて17年ぶりに改定した結果、避難対象となる人口は、約1万6,000人から約11万6,000人へと、およそ7倍になりました。
古い想定に現実を合わせるのではなく、現実に合わせて計画をつくり直す。
避難の考え方を全面的に見直し、富士北麓に火山防災対策室を置き、全国で初めて火山防災を専門とする県職員を採用しました。
そして、1県だけでは解決できないのであれば、国の仕組みを変える。
火山を抱える都道県に呼びかけて、火山防災対策強化推進都道県連盟をつくり、本県が代表幹事として国に働きかけ、活火山法の改正、火山調査研究推進本部の設置、「火山防災の日」の創設へとつなげて参りました。
国際交流も、同じであります。
人口78万人の本県が、人口2億4,000万人を超えるインド・ウッタル・プラデーシュ州と向き合う。
規模だけを見れば、対等に付き合える相手ではありません。
1県の規模で足りないのであれば、ここでも仲間を集める。
日本側の知事に呼びかけて「日印友好交流促進知事ネットワーク」を設立し、本県が主導して、12県にまで広げました。
相手方から見れば、山梨と手を結ぶことは、日本の12県と手を結ぶことであります。
その上で、8月には、経済界、大学、そして県議会の皆様とともに大訪問団を編成し、六つの協力文書を結びました。
世界で最も速く成長する国の、その最大の州への扉を、山梨自身の手で開いたのであります。
水素の市場、観光客、人材、そして次の世代の学びの機会。
この扉から入ってくるものを、一つひとつ、県民の所得と暮らしにつなげて参ります。
中部横断自動車道、25人学級、農業、スリーアップ、水素、火山防災、国際交流。
一見すれば、全く異なる政策に見えるかもしれません。
しかし、全て同じ方向を向いた取り組みであります。
制度に課題があるなら、制度を変える。
財源が足りないなら、財源を生み出す。
価値が評価されないなら、ブランドと市場をつくる。
賃金が上がらないなら、スキルと収益と賃金が循環する仕組みをつくる。
技術が研究で止まっているなら、社会に実装し、産業にする。
1県では国を動かせないなら、仲間を集め、国の制度を変える。
相手が大きすぎるなら、日本の側にまとまりをつくり、山梨と手を結ぶ理由をつくる。
待つのではなく、つくる。
与えられた条件の中で、できることを探すだけではない。
県民のために必要であるならば、その条件を生み出している仕組みそのものに手を入れる。
私は、この7年半、そのような県政を貫いて参りました。
そして、ここが最も大切なところであります。
これらは、ばらばらの改革ではありません。
全ては、山梨そのものを、未来にふさわしい姿へ変えていくための改革であります。
頑張っても報われない状態を、頑張れば報われる社会へ。
良いものをつくっても十分な価値がつかない経済を、価値が正当に評価され、所得として返る経済へ。
地方だから機会が少ないという現実を、世界と直接つながり、人と知恵と資金が集まる環境へ。
それが、私たちが進めてきた「構造変革」であります。
その先にある山梨の姿が「頑張れば報われる山梨」であります。
住む人にとっての「桃源郷」であります。
挑戦する人、世界から集まる人にとっての「梁山泊」であります。
この三つは、一つの循環であります。
頑張る人が報われる経済が、誰もが安心して質の高い暮らしを営める「桃源郷」をつくる。
その暮らしと環境と産業の魅力が、国内外から人、知恵、資金を呼び込み、「梁山泊」として新たな価値を生み出す。
そして、そこで生まれた価値が、再び県民の所得と暮らしの豊かさへと返ってくる。
本定例会で申し上げた「県民生活の強靱化」と「開の国づくり」。
この2本の柱は、この循環を、山梨の新しい土台として定着させるためのものであります。
そして、この構造変革は、まだ途中であります。
最低賃金は上がりました。
しかし、物価を上回る実質の賃上げは、なお道半ばであります。
25人学級は完成しました。
しかし、その先の中学や高校で、子どもたちが山梨で自分の可能性を伸ばせる環境づくりは、これからであります。
水素は産業になり始めました。
しかし、それが県民の所得として返ってくるのは、これからであります。
インドへの扉は開きました。
しかし、その扉から何を持ち帰り、どのように暮らしにつなげるかは、これからであります。
そして、「県民生活の強靱化」と「開の国づくり」の2本柱を、二度と停滞に戻らない山梨の土台にすることも、これからであります。
25人学級を、理念ではなく財源の仕組みで支えたように。
賃上げを、掛け声ではなく3者の循環として回したように。
一つひとつの政策を、人が変わっても、時代が変わっても、止まらない仕組みとして山梨に根づかせる。
7年前に掲げた「停滞から前進へ」。
その前進は、もう始まっております。
これからの仕事は、その前進を、山梨の当たり前にすることであります。
そして、その全てを一段大きくする最大の好機が、リニアであります。
リニアが開業すれば、山梨は東京とおよそ25分で結ばれます。
その上で山梨には、東京にはない空間と、ゆとりある暮らしがあります。
東京の集積のメリットと、山梨の空間とゆとり。
どちらかを選ぶのではなく、その両方を1人の暮らしの中で持てる。
住む人にとっての桃源郷とは、そのことであります。
7年前にも、山梨県駅への停車本数を増やす必要性は認識されておりました。
しかし、公表された計画に具体化されていた方策は、JR東海に増便を要請することが中心でありました。
「もっと停めてください」とお願いするだけではなく、JR東海にとって「山梨県駅に停める理由」を、山梨自身がつくる。
その一つの答えが、富士トラムであります。
リニア山梨県駅と、世界的な観光地である富士山をつなぐ。
山梨県駅を富士山観光の玄関口とすることで新たな需要をつくり、それを停車本数の増加へとつなげる。
お願いするのではなく、需要をつくる。
中部横断自動車道で、25人学級で、水素で、インドで、この7年半に積み上げてきた仕事の仕方を、暮らしの全ての分野に、そしてリニアという最大の好機に、注ぎ込む。
それが、これからの仕事であります。
4年前、私は「山梨を更に前に」と申し上げました。
ようやく動き始めた山梨を、ここで止めてはならない。
その思いでありました。
そして今、私は、7年前とも、4年前とも違う確信を持っております。
「山梨は変えられる」。
それは、もはや願いや期待ではありません。
できないと思われていたことを、一つひとつ、実際にできることへと変えてきた。
その積み重ねによって得た、確かな実感であります。
だからこそ、今、問われているのは、山梨を変えられるかどうかではありません。
山梨の土台を、どこまで未来にふさわしいものへと変えていけるか。
その果実を、県民一人ひとりの豊かさへ、どこまで届けられるか。
そして、その前進を、二度と停滞に戻らないものにできるか。
そこまで来たのであります。
6月、私は、今は「胸突き八丁」であると申し上げました。
その認識は、今も変わりません。
坂は、まだ続いております。
しかし、私たちは、確実に登っております。
そして、ここまで登ってきたからこそ、見える風景があります。
県民生活が強く、世界に開かれ、外から人、知恵、資金を呼び込み、山梨の中から新しい価値を生み出す。
その価値が、働く人の給料へ、地域の所得へ、子どもたちの学びへ、県民一人ひとりの暮らしへと返っていく。
そのような山梨の姿であります。
25年前、当時の天野知事は、未来の山梨に「開の国」という言葉を託されました。
人口減少の中で山梨の豊かさをどう大きくするかを考え抜いた末に、私たちがたどり着いた言葉もまた、「開の国」でありました。
先人が思い描いた未来を、まさに今、私たちは現実の姿にしようとしております。
同時に、25年後の県民から見れば、今を生きる私たちもまた、先人であります。
25年後に振り返って、「あの時代に、山梨は大きく前へ進んだ」、「あの時の決断が、今の山梨につながった」、そう言ってもらえる仕事を、今、しなければなりません。
好機は、待ってはくれません。
人口減少も、待ってはくれません。
時代が動き、世界が動いている。
だから、山梨も動く。
お願いするだけではなく、自ら動かす。
与えられた未来を待つのではなく、自ら未来をつくる。
頑張れば報われる山梨へ。
住む人にとっての桃源郷へ。
世界から人と知恵が集まる梁山泊へ。
山梨そのものを、未来にふさわしい姿へ変えていく。
その変革が生み出す豊かさを、県民一人ひとりの暮らしへ届ける。
そして、この胸突き八丁を、登り切る。
議員各位、そして県民の皆様とともに、山梨の可能性を、山梨の豊かさに変える。
そして、25年後の県民に、胸を張ってこの山梨を手渡す。
その決意を申し上げ、私の所信と致します。
令和8年9月25日
山梨県知事 長 崎 幸太郎