ページID:77401更新日:2009年2月1日

ここから本文です。

平成16年度 年度はじめ知事訓示(要旨)

詳細内容

訓示の様子(JPG:87KB) 平成16年度
年度はじめ知事訓示(要旨)

日時 平成16年4月5日(月)午前9時30分~10時
場所 恩賜林記念館
 
 おはようございます。桜の花も満開となりまして、大変清々しい季節を迎えました。
 過日、3月の末には202名の皆様方が退職なされました。ほとんどの方々が30年、40年という永きにわたりまして、県政の推進に大変ご尽力を頂きました。
 戦後の経済の発展途上という頃から、経済大国と言われる日本において活躍をして頂きました。時にはまた、経済の低迷という時もありましたが、いくつかの波を乗り越えながら世界第二位の経済大国に押し上げた原動力となって活躍をして頂いた方々ではないかと思います。
 しかし、退職前の10数年間はバブル崩壊の中、日本経済の非常に苦しみの時代での県政の運営に対して、知恵をしぼってご活躍を頂いた方々であります。
 こうした方々が築き上げてくださった県政を今、しっかりと継承しながらさらに発展をしていかなければと、思っているところです。
 加えまして、退職なさった皆様方が桜花爛漫の人生を送って頂くことを願っています。
 また、3月が別れの月だとすれば4月は出会いの月です。新たに194名の新人を迎えました。
 こうした方々がこれからの山梨県を背負って立って、活躍をして頂くことをまずもって期待をするところです。
 私も就任してちょうど2年目になるわけでありますが、この1年間は皆様方にご指導頂き、多くの体験をさせて頂きました。そうした中で私が感じましたことを申し上げます。
 今まで行政というものは、経済の動向というものにはあまり左右されることなく、どんどん進んで来たという感じです。したがって、県民に対して一定の行政サービスを提供することが出来ました。
 しかし、今までは地方自治体の財務会計が単年度決算であり、毎年毎年の収支のバランスが取れていればそれで良かったのでしょうが、地方自治体を取り巻く環境の変化の中で、積み残された起債というものが各自治体の大きな負担になってきています。そこで編み出されたものが三位一体の改革ということであります。
 これは、国の補助金を3年間で4兆円削減し、その分の税財源を地方に移譲しましょうということで、平成16年度からスタートしたわけであります。
 当面、16年度は補助金1兆円を削減し、その分の税財源を移譲するという形で動いたわけですが、結果的には税財源の移譲は4千数百億円程度で止まってしまったわけであります。
 また、地方交付税が非常に少なくなってしまいましたが、これは全国どこの県でも共通したものです。
 そして、後2年間で残りの3兆円の補助金削減をやっていこうということですが、税源がそれに見合うものが移譲されるならば収支のバランスは取れるわけですが、そうではないということで、全国どの県もあわてふためいているというところです。
 特にその中でよく耳にされると思いますが、義務教育費の国庫負担金約2兆5千億円程度を無くしてしまえば、今年の1兆円と合わせて、廃止・縮減した分が4兆円近くになり、政府の最初の目標に近づくということになります。義務教育費の国庫負担金廃止分を地方交付税でまかなっていこうということですが、現状の中でそれが約束されるかというと、非常に難しい部分があるのではないかなと私は思っています。
 この点を私ども注視していかなければならないのではないかと思います。
 これは、大きな都市を抱えた県は、税源が移譲されるとプラスになる分があり、一概に全部の県がというわけではありませんが、私は、地方と大都市との格差が広がってくるのではないかと思います。私ども小さな県としては、これは受け入れることはできないということで、小さな県同士話し合っているところでもありますが、私は、やはり教育という問題に対しては一番注視していかなければならないと、国の根幹をなすものだと思っています。
 あのアフガニスタンにしてもイラクにしても一番先に手を付けていくのは、子供たちの教育ということでありまして、日本の戦後においても既に立証されているわけでして、教育をまず手始めに何とかしていかなければならないということで、人創りが国を創っていくということにつながっていくわけです。
 そのことを考える時に非常に私は、地方と大都市圏との格差が広がってきてしまうのではないかと思っているわけであります。
 また、特に日本の国の一番の課題というものは、私は少子化だと思います。少子化がこのまま進んでいったならば、これは大変なことになるわけでして、出生率1.32という今のままの数字でいきますと2025年には、今の人口の1億2千7百数十万人が1億2千百万人、650万人程度少なくなるということでありますし、100年後には7千万人になるということ想定されているわけであります。
 子供が少なくなるということは、国がだんだん衰退していくということにつながっていくわけでして、私たちの身の回りを見てもそうですが、以前は山村地帯の小学校にも2クラス3クラスとたくさんの子供たちがおりました。どこの村へ行っても学校もあるし、子供たちも大勢いました。今はその山間地帯の学校はどんどん閉鎖されてきています。ある程度人口が集中しているところに学校が増設される程度でありまして、当時、我々の小学校の頃、皆さん方も記憶があるでしょうが、大勢の子供たちがいたのですが、いなくなってしまいました。
村、山自体も人が住まなくなってしまいました。これが全国的なレベルで起きたならば、大都市圏には人口が集中しますが、地方都市には人がいなくなるということを非常に私は危惧するところでありまして、少子化というものを何としても防いでいくことが第一に重要なことであると思っております。
 このことで過日、山梨県の出身で東京で企業を盛んにやっておられる方に、山梨県に企業誘致をということでお願いを致しました。ところが、その社長曰く「私もふるさと山梨に何とか会社を持っていきたい。このことを社員に相談したところ、『山梨は良い所だ。自然も美しく過ごしやすそうだが、行くには抵抗がある。子育て環境が整っていない。また、学校・教育施設も都会と比べるとちょっと落ちるのではないか。小児医療体制もまだ不十分だ。こういう所だと家族を連れて山梨へ行くことにはちょっと抵抗がある』と言っていました」とその社長が私に言われました。
 このことを考えた時に、そういうことを何とか整備していかないと、この山梨県の少子化というものを防ぐことは出来ないのかなと、また、ましてや若年労働者の失業率も高いということを考えると、これにも目を配っていくことによって、問題も解決できるのかなと思ったわけでございますけれども、確かにそういうことを考えますと、少子化に対する対応というものをしっかりと取り決めていかなければならないと思うわけであります。
 そこで私どもも「次世代育成行動計画」を策定しまして、少子化対策に積極的に取り組んでいきたいと思っています。
 また一方、高齢化率というものも高くなってきていまして、2000年では17.3%が2025年には28.7%となると想定されているわけであります。
 今の年金問題がゴタゴタしているのも、こういう数字からきているわけでありまして、少子化対策さえ上手く進んでいけば、こうした問題もそんなに問題にならなくて済むのではないかなと思っているわけでして、この少子高齢化対策に取り組んでいかなければならないと思っています。
 一方、高齢者に対する対応につきましては、県民の意識調査をしましたところ、64%の方が生涯にわたる学習意欲というものが高いということでありました。
 学んで、意欲を持つということは、健康で過ごせるわけでありますので、生涯学習の充実というものは大変重要なことであります。
 特に最近のIT社会に対応した施設整備が求められてきているのではないかと思います。
 そしてその学ぶ中においては、山梨県に住んでいて良かった、またこれからも子供たちも孫たちもずっとここに住んでいられるように、そのためには、郷土というものに誇りを持つ、そのためには郷土の歴史とか文化というものを大切にし、そしてそれを学んでいく機会というものを作っていかなければならないのではないかと思います。
 そのために今建設中の博物館というものは、郷土に誇りを持ち、歴史と文化を学ぶ機会を作っていくという意味において、時宜を得たものではないかなと私は思っていますし、またこれからもそういう方面には力を入れていくべきものではないかなと思っております。
 また、一方では今地方分権というものが盛んに進められておりまして、その受け皿となりますのがご案内の市町村合併なのではないかと思います。
 この市町村合併につきましては、昭和35年の4月に豊村が櫛形町
に編入されて以来、43年間、64市町村の状態が続いてきましたが、既に、南部町、南アルプス市、また富士河口湖町が合併しました。
 今、7つの法定合併協議会が協議を進めていますので、約30くらいの市町村になっていくのではないかと思いますが、いずれその後に来るものは、道州制ということでありまして、この道州制という論議もこれからどんどん起きてくるのではないかと思います。
 道州制というものが、日露戦争直前に、日本の国を16か18の区分にしていこうということで話が進んでいたのですが、日露戦争が勃発してご破算になったという経過があります。
 ですから以前から、日本の国を道州制のような形でやっていこうという動きはあったのであります。
 現実の問題としては、先月の1日に第28次地方制度調査会が発足をしまして、道州制の本格的な論議が開始されました。
 これからどのようにやっていくかということですが、区域をどのように設定していくのか、あるいはまた、国の権限をどこまで移譲していくのか、全国一斉にやるのか、可能な所から進めていくべきか、などが論じられているわけですが、こうしたことを見越していきますと、必ずや我が山梨県も直面する時が間もなく来るのかなと思うわけでありまして、その時に山梨県が魅力ある県でないと他の都県等から「山梨、一緒になろうじゃあないか」と言われない。
 「まあ、山梨はどっちでもいいや」なんてことになるとこれは大変なことですから、やっぱりそのためには十分な魅力を今から創り上げていく必要があるのではないかと思います。
 幸いにも本県は、富士山、南アルプス、八ヶ岳など3,000メートル級の山々に囲まれた所であり、自然も豊かな所でありますし、果物等、他県にはないくらいの多くの特産物を有する所でもあります。
 そしてまた歴史的な遺産というものも残っているすばらしい所であります。
 特にそのためには、この山梨の中心都市である甲府市、先の二月県議会においても、県都・甲府市の活性化が山梨県全体の発展につながっていくのではないかとのお話も頂いたところでありますが、確かに歴史的な遺産というものも豊富でありますので、この甲府市のさらなる整備をして中心都市としてふさわしい都市にしていくことは大事なことであると思っています。
 このことは、先月の26日に、東京大学の教授をなさったり、自治省の特別顧問をされた月尾嘉男先生、都市計画の専門家であります西村幸夫先生をお招きし、お二人と話し合いをさせて頂きましたが、その中で、「甲府は、中世、近世、近代の歴史的遺産が多いと同時に、眺望も良い」というお話を頂きました。
 ちょうどこの舞鶴城も見学をして頂きまして、天守閣があったと言われる辺から甲府盆地を見渡しながら「とてもすばらしい眺望である。こうしたものを地域の人々の共通した価値観として持つことが大事なことではないか」とのことでありました。
 「郷土の歴史というものに誇りを持つ、これが街の発展につながっていく」とのことでした。
 確かに私もそうだと思います。どちらかと言いますと、山梨の歴史というものに対して私ども、もう少し深く認識を持って、他県から来た人に対して全ての県民がガイド出来る、説明出来るようにしていくためには、一人一人が歴史というものについてもう少し学びながら説明をしていく必要もあるのではないかと思います。
 その時のお話の中で、「三重県の熊野古道(くまのこどう)の復元」ということを言われました。それは、「ロマンのある目標を立てていく」ということでありまして、「こうした目標を定めながら多くの人々が訪れてくれることが、山梨の魅力を国内外に発信することにつながっていくんだと」ということを言われました。
 確かにそういう意味では観光振興ということは大事なことであると思います。
 観光振興について、お話を申し上げますと、国においても、現在外国人の観光客というのが約500万人くらいと言われていますが、これを1,000万人にしていこうということで、観光立国ということをうたい、盛んに力を入れ始めたところであります。
 ちなみに先進諸外国56カ国の中で、国の総生産の中で観光の占める比率が何パーセントかということを見ますと、日本は56カ国中56番目だそうです。
 観光での収入というものがいかに少ないかということだと思いますが、これを何とか上位にしていかなければならないということで、観光立国をうたったわけであります。
 これに呼応して、山梨県も何とか外からの交流人口を増やしていこうということで、観光立県ということを目指していくわけですが、これも計算によりますと、観光として訪れる人が消費する額は、そこに住んでいる人の1日の消費の約6倍の額を消費するそうです。
 どこかに行くのにも、タクシーに乗ったり、電車に乗ったりし、有料で宿泊する、外食もするということで、6倍くらいの消費量があるということですから、1,000人観光客が来れば定住者6,000人分の消費をしていくということになります。
 したがって、観光振興というものは非常に地域の活性化につながっていくと思うところであります。
 これを何とか私ども振興させていこうと、そのために「観光立県富士の国やまなし観光振興戦略」を策定していきたいと考えるものであります。
 加えまして、今までの観光と違って、農業観光もあります。あるいは、トレッキング等の山岳地帯を散策する観光というものもあります。
 ですから、従来の観光に加えて、軽登山を含めた林業、果樹地帯の農業、あるいは体験農業、あるいは歴史的なことを学ぶということであれば、教育関係も非常に関わりが深くなってくるのではないかと思います。
 こういうことから言えば、農産物でいいますと地産地消ですし、地場産業などの物産等もブランド化を図ることが出来るということになるわけで、観光部ばかりでなく、農業、林業、教育関係、その他全ての部がこの観光振興策を図っていくことが最も大事なことではないかなと思っています。
 このようにして、県庁の全ての部がそれぞれ緊密な横の連携を保っていくということは、私は小さな県であるからこそ出来るのではないかと思います。
 そういう意味では、小さくても、とにかくその存在を示していくことが大事だと思いますので、是非とも連携を密にして頂きたいと思っています。
 新しい組織機構を構築しましたし、副知事も就任して頂くことになりました。この副知事を中心に各部、機関とも緊密なる連携を保って、新しい長期計画を進めていく上でも、是非しっかりとスクラムを組んで取り組んでいって頂きたいと思っています。
 そういう意味では、行政というものはどちらかというと前例踏襲というのが多かったと思いますが、その中でも良いものは残し、悪ものはこれを切り捨てていくという勇気が必要ではないかと思っています。
 昨日、高校野球の決勝戦で創部3年目初出場の四国愛媛県の済美高校が劇的な勝ち方をしながら優勝しました。高校野球と言いますと、出場何十回、連続何回という名だたる伝統校が優勝候補だとか強豪だというふうに表現をされてきました。
 しかし、昨日優勝した済美高校は、創部3年目の初出場ということで、誰もまさか優勝などとは思っていなかったのではないかと思いますが、こうした学校が優勝するということは、伝統校であるとか、優勝何回だとかいうことは、全く関係なくなったのではないかと思います。
 全国のどの学校の球児たちにとっても、大きな夢を与えてくれた出来事であると私は思います。
 このことを考えた時に、経験がものを言うという場合もありますが、しかし経験がないからこそ思ったことを出来るのだということもあると思います。
 是非、皆さん方がそれぞれの分野で「自分は、今までこういうところを歩いてきたから、こういう部分でなければ力を発揮できないんだ」というのではなく、そうしたものを糧として、新たな分野で新しい発想のもと、県民に夢を与えて頂けるような仕事を精一杯頑張ってやって頂きたいということをお願い申し上げる次第であります。
 最後になりますが、ユダヤの格言の中でこんなことが書かれていました。それは、「何も打つ手がない時、一つだけ打つ手がある。それは勇気を持つことである。天は自ら助くる者を助くということがあるが、全ては勇気から始まるのである。祈るよりも勇気である。」という言葉がありました。
 これからの厳しい時代を切り拓いていくためには、皆さん方が勇気を持って、そして、その持てる底力を存分に発揮して頂くことによって、県政がさらに大きく進展いくことにつながるのではないかと思います。
 是非とも皆さん方のさらなるご尽力を心からご期待を申し上げまして、ご挨拶にかえさせて頂きます。
 本年度もどうぞよろしくお願いを申し上げます。

リリース日:2004年4月9日

広聴広報課 (ホームページ管理者)

山梨県甲府市丸の内1-6-1 本館2F
TEL:055(223)1337
FAX:055(223)1525

より良いウェブサイトにするためにみなさまのご意見をお聞かせください

このページの情報は役に立ちましたか?

このページの情報は見つけやすかったですか?

このページを見た人はこんなページも見ています

pagetop