ページID:118501更新日:2024年12月4日

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令和6年12月県議会知事説明要旨

 令和6年12月定例県議会の開会に当たり、提出いたしました案件のうち、主なるものにつきまして、その概要を御説明申し上げますとともに、私の所信の一端を申し述べ、議員各位並びに県民の皆様の御理解と御協力をお願い申し上げたいと存じます。

 先ず、富士山における新交通システムについてです。

 今般、富士山五合目の来訪者コントロールを行うための方策として、これまで検討を積み重ねてきた鉄軌道を断念し、新たに「富士トラム」という革新的な交通システムを提案いたしました。

 この新構想は、県民の皆様の鉄軌道に対する御懸念を受け止め、ゴムタイヤで走行するモビリティへの転換を図るものであります。

 新構想の射程は、富士山の課題解決にとどまらず、ゴムタイヤで一般道を走行することで、リニア中央新幹線の開通時には富士山とリニア新駅を結び、新駅をもう一つの「富士山の玄関口」とすることでリニアの停車本数の増加を目指して参ります。

 更には、リニア新駅をハブとして、県内各地へ富士トラムを延伸し、県全体の二次交通をネットワーク化するなど抜本的な高度化を目指して参りたいと考えております。

 この富士トラムは、電車とバスの両方のメリットを併せ持つモビリティです。

 動力源には、本県が誇る水素エネルギーの活用を想定し、エネルギーの地産地消の観点からも本県の産業基盤の強靱化に貢献しうるものと考えております。

 加えて、道路上に設置する磁気マーカーや白線などを認識しながら、これに沿って走ることができ、自動運転も可能であります。磁気マーカー等は軌道とみなされうるものであり、軌道法の適用をもって、一般車両の進入規制、すなわち、来訪者コントロールが可能と考えております。

 磁気マーカーや白線の設置・メンテナンスには、当然ながら大規模工事は不要であり、大幅なコストダウンが見込まれます。

 海外におきましては、既に複数の都市で、この富士トラムと同様のシステムが稼働しております。

 それらの技術に着目しながら、県では既に国内メーカーとの接触を始めており、将来的には、国産化の期待もしているところであります。

 このように、新構想は、富士山における来訪者コントロールは言うまでもなく、県内全域における二次交通網の抜本的高度化、産業の振興、地理的優位性の確保など、多くの波及効果を期待できるものであります。

 今議会には、技術開発や検証、運行システムの地域適合性など、必要な調査に係る予算を提出しております。

 議会の御承認を得た後には、これまでの構想に反対されてきた方々を含め、県民の皆様に丁寧に説明し、御理解を得て参りたいと存じます。

 この新構想の主旨につきましては、後ほど改めて御説明申し上げます。次に、少人数教育の拡充についてです。この度、来年度から25人学級を小学校5年生に拡大し、令和8年度には全学年に導入することと致しました。

 ここ山梨においては、未来を支える子どもたち一人ひとりが、その置かれた環境にかかわらず、夢と希望に向かってまい進できる、可能性にあふれた「ふるさと」であってほしい。

 こうした思いから、少人数教育を最重要公約の一つとして位置付け、令和3年度に、全国で初めて公立小学校に25人学級を導入いたしました。

 現在、4年生まで対象を拡大しており、5年生以降への導入に向けて検討を重ねてきたところですが、これには二つの大きな課題がありました。

 すなわち、「財源の確保」と「教師不足への対応」であります。

 一つ目の「財源の確保」については、来年度以降、電気事業会計からの繰入金を更に増額することと致しました。

 二つ目の「教師不足への対応」については、「少人数教育推進検討委員会」から具体的な献策があり、これを取り入れることで、全学年への導入が可能と判断いたしました。

 今後は、来る2月議会に提出いたします来年度当初予算案において、5年生までの25人学級に要する予算を計上し、県議会の御承諾を得たいと考えております。

 25人学級の実施により、保護者の方々や学校現場からは、子どもたちの学習意欲や自己肯定感の向上、教師の負担軽減に寄与しているなど、多くの賛同の声をいただいております。

 検討委員会からいただいた報告書においても、子どもたちへの教育的効果などから、『5年生以降についても25人学級を継続して導入するべき』との方向性が示されております。

 同時に、教師不足という現実的な課題を踏まえ、『教師の欠員が発生しうる当面の間、25人学級の制度自体は維持しつつも、教師が確保できる可能な範囲での柔軟な運用を行うべき』との提案もありました。

 加えて、学級を分割する代わりに教員を一名加配する「アクティブクラス」についても、『より活用しやすいよう、改善を図るべき』との指摘もいただき、これらの素晴らしいアイデアを積極的に取り入れ、少人数学級を推進して参ります。

 県としても、国における教師の処遇改善の議論を注視し、引き続きこれを強く求めるとともに、国・市町村と一丸となって教師の確保に取り組んで参ります。

 子どもたちが、きめ細やかな教育を受け、自らの可能性を拓き、将来に羽ばたくことができる教育環境を、持続可能なものとして確立できるよう、引き続き尽力して参ります。

 最後に、県庁組織の強度化について御説明申し上げます。

 申し上げるまでもなく、県民生活の今と将来を力強く支え、牽引していくのは、本県職員の仲間に他なりません。

 「県民一人ひとりが豊かさを実感できる山梨」、その実現へのステップにおいては、実働を担う県庁という組織、そして、そこに集う個々の職員が「いかにしてパフォーマンスを最大化させていけるか」が重要となります。

 そのため、これまでも県庁における人事制度を大きく改革し、職員の意欲を高め、能力を引き出す取り組みを進めてきましたが、これを更にバージョンアップして参ります。

 先ず、高い理想を持ってチャレンジする職員が、しっかりと報われる職場、成長意欲が旺盛な若い職員が自己実現を図れる職場を創出します。

 そして、育児や介護を抱える職員はもとより、全ての県庁の職員に対しても、多様で余裕のある働き方を更に広げて参ります。

 自らの職務に精一杯取り組むことはもちろん重要ですが、職員も同時に県民の一人です。

 また、職場を離れた地域や家庭での活動が、職務への新たな創意や地域の担い手不足の解消に寄与し、結果として県政発展の重要なエンジンとして、必ずや躍動をもたらすものであります。

 これに加えて組織体制についても、変化著しい社会経済情勢と私自身の2期目の折り返しに当たり、あらゆる県政課題に対し、政策の企画力及び推進力の強化を図るため、既存の組織を大きく再編したいと考えております。

 詳細につきましては現在検討しており、来年2月の定例県議会にお諮りしたいと考えております。

 働き方改革と政策推進力の強化は、決して、どちらかを立てればどちらかが没する、反作用の関係であってはなりません。

 相互に補完し改革を進めることで、職員の誰もが自らの人生や生活を思いやりながら同時に職務に情熱を傾け、その総体として県庁組織全体の力が最大限発現されるようにすることで、今日こんにちの多くの困難な課題を解決できる基盤を、しっかりと形成して参ります。

 次に、補正予算に計上した主な案件について御説明いたします。

 いずれも、県民生活強靱化に向け、喫緊の課題に対応するものであります。

 先ず、JR中央線の定時性確保に向けた取り組みについてです。

 御案内のとおり、JR中央線は、本県と首都圏を結ぶ唯一の鉄道路線でありますが、特に本年度は例年を上回る頻度で遅延が発生しております。

 その原因としては、本県内においては、シカとの衝突が最も多くなっております。

 そのため、今般、中央線におけるシカとの衝突事故の減少に向け、集中的に対策を行うこととし、総額約1億円の経費を計上いたしました。

 具体的には、現在、一部地域で実施しているシカの動態調査について、対象エリアを県内の中央線沿線全域に拡大するとともに、沿線における緊急捕獲事業を、関係自治体と連携して実施して参ります。

 中央線の定時性確保は、県民の日常生活、経済活動の利便性・効率性を担保することであり、まさに県民生活の基盤の強靱化そのものであります。

 県として定時性の確保に真摯に取り組みつつ、JR東日本にも、早急かつ本格的な対応を求めて参ります。

 次に、女性のデジタル人材育成・就労支援緊急対策事業についてです。

 本件については、6月議会に関連予算を計上し、家事や育児・介護などで時間的制約があり、主に非正規で働く女性をデジタル人材として育成し、就労を支援する事業を進めているところです。

 先般、デジタルスキル習得のための研修受講者を募集したところ、定員の6倍を超える応募がありました。

 現下の厳しさを増す生活環境に鑑み、全ての応募者が研修を受講できるよう、追加で緊急的に予算を確保することと致しました。

 一人でも多くの方々にスキルアップを促し、より良質な雇用につなげることで、まさに一人ひとりに「豊かさを実感」していただきたいと強く願う次第であります。

 スキルアップを通じて経済的な自立を図ることは、物価高騰対策、人口減少危機対策、人材確保対策いずれの観点からも極めて重要であり、県としても更なる機会拡充を図って参ります。

 次に、ブドウAI選果機導入・実証支援事業についてです。

 今般、国内初となる、AIや光センサーにより糖度などを判別できる選果機の開発・普及に向け、JA及び選果機メーカーと共同で実証を行います。

 近年、シャインマスカットについては、国際市場において安価な韓国産や中国産が増加し、産地間競争が激しさを増しております。

 本県産のシェア拡大のためには、圧倒的な品質の高さによる差別化が不可欠であります。

 そこで、本事業を通じて、本県のシャインマスカットを、糖度を保証することで更に高付加価値化させ、海外の消費者に品質の高さを強力に訴求して参ります。

 来年の夏には実証を開始し、可能な限り速やかに生産者の所得向上につなげて参ります。

 最後に、県職員等の給与費の補正についてです。

 県職員、学校職員並びに警察職員に係る給与につきましては、去る10月16日、人事委員会から給料月額や期末・勤勉手当の引き上げなどを内容とする勧告がありました。

 こうした状況を踏まえ、勧告に沿った対応を行うとともに、特別職等の期末手当についても、一般職の給与改定等に鑑み、引き上げることと致しました。

 これらの結果、必要となる補正額40億円余を計上し、併せて関係条例について所要の改正を行うこととしております。

 以上の内容をもって編成いたしました結果、一般会計の補正額は、84億円余、既定予算と合わせますと5452億円余となり、今回の提出案件は、条例案8件、予算案3件、その他の案件12件となっております。

 その他の案件につきましては、いずれも、その末尾に提案理由を付記しておりますので、それによりまして御了承をお願い致します。

 なにとぞ、よろしく御審議の上、御議決あらんことをお願い申し上げます。

 さて、立ち返りまして、富士トラム構想に至りました経緯について改めて御説明申し上げます。

 知事就任以来、未来における富士山と地域がどうあるべきかを考え続けて参りました。

 2013年に世界遺産となってから10年余という時を経る中で、本県のみならず、日本の宝として、富士山を後世にどう遺せるのか。

 更にその存在の大きさをどう活かし、伝えていくことができるのか。

 考え続けて参りました。

 コロナ禍をまたぎ、その方向性と在り方を、山梨県民の皆様、国民の皆様とともに議論し続けて参りました。

 ここまでの議論の中で一つの結論に達したのは、登山鉄道構想だけが全ての解決策を担うわけではないということです。

 もちろん、オーバーツーリズムや弾丸登山への対応など、登山環境や来訪者の安全を守ることは、眼前の危機として最優先で対処すべき課題ではありました。

 しかし、それだけが、本県が富士山に対して向き合うべき命題ではありません。

 守るべきものがあるとき、守りの姿勢のみでは、時にその目的を達成することさえ難しくなることがあります。

 就任以来、富士山を巡る課題に限らず、あらゆる行政課題や現実対応においても、常に未来志向の積極的なアプローチを取ることが必要であると考えてきました。

 それは、数年前に経験したコロナ禍における命を守る戦いにおいても同様でした。

 守るためにこそ、常に未来志向の、積極的な一手を積み重ねていく。

 そこにおける試行錯誤があってこそ、示されるべき「最適解」は、結果として私たち県民に効果や恩恵をもたらしうるものとなるのではないでしょうか。

 富士山登山鉄道構想を掲げ、その実現可能性を模索してきた過程では、来訪者や観光客にとって心地よい交通路を整備するだけでなく、富士山が育んできた日本という国の歴史と文化をどう後世に伝え、更には、富士山という「文化と国土の象徴」を更に誇りあるものへとどう築きうるのか討議する場となりました。

 鉄道構想に対する期待や懸念、賛成や反対の声もまた、それぞれ「富士山」という価値の大きさに対する人々の思いが、地域の枠はもとより、県境・国境を超えて共有されていることを再認識させるものであり、そして、であるがゆえに、今や世界から愛される存在となった富士山の行く末は、世界からの目線に耐えられるものでなければならないという方向性についても、多くの皆様と共有できたものと考えております。

 このような登山鉄道構想を巡る議論の過程で得た多くの知見と意見はまさに集合知と呼ぶにふさわしいものであったことに、今改めて感謝を申し上げます。

 すなわち、住民説明会や各種団体との意見交換において、皆様の御意見に耳を傾け、真摯に議論を重ねた結果、本県は、現時点で最適解と考えられる「富士トラム構想」にたどり着くことができました。

 まさに、万民に開かれた「開の国」における集合知の形成そのものと言えるのではないか。

 そして、この構想の先にある本県の未来は、万国に開かれた「開の国」そのものではないか。

 そうあるべきと感じる次第であります。

 更にもう一点、これまでの登山鉄道構想に関する議論のプロセスにおいて、対話に関わられた全ての人々と、未来に向かって共有できたのは次の一点に他なりません。

 すなわち、富士山は決して、特定の者の特定の利益のためのものではありえないということです。

 富士山は、かつてから今日こんにちまで、決して特定の何人なんぴとにも帰属することのない、ニッポンという精神そのものであったのです。

 その富士山が世界遺産として世界に開かれている今、その姿のみならず、価値と意味を世界に対して更に解き放っていくこと。

 そして、併せて、足元においても、富士山からの恩恵に誰もが浴することができるようにしていくこと、これが、将来にわたって富士山を「護る」べき、本県と県民の皆様とが協働すべき責務ではないでしょうか。

 本県は今、日本の次世代における基幹交路となるリニア中央新幹線の開通を待つという幸運に恵まれております。

 リニアから世界へ。

 世界と富士をつなぐ。

 世界に開かれた、人と文化の流れを全県全域に活力として導き、もれなく英気を通わせていくべきと決意します。

 富士トラムから、世界を開く。それは、世界に開かれる山梨の豊かさを支える象徴となるべきです。

 リニア中央新幹線、そしてこれと直結する富士トラムが運ぶのは、本県への来訪客や観光客だけではありません。

 トラムは、本県各地を隅々まで取り結ぶ新しい交通ネットワークとして、将来にわたり県民の脚となり、生活の基盤となるべきものです。

 富士山の恵み、そして、リニア中央新幹線開通による恩恵は、私たち県民の隅々にまで、もれなく届けられなければなりません。

 もたらされるべきは本県全体の豊かさであり、享受すべきは生活の豊かさであるべきです。そこに利益の独占や権益の発生があってはなりません。

 私が目指している豊かさ共創社会とは、全体がもれなく、あまねく、互いに豊かさを育み、分かちあうべき、ふるさとの姿です。

 「富士トラムネットワーク」は、その来るべき県土発展の上で、まさに生活の動脈として、本県で暮らす全ての人々にとって、この豊かさへのアクセスを可能にするべきものです。

 それゆえに、富士トラムネットワークは、富士山麓に限定されるものではありません。

 リニア中央新幹線の新駅を起点とし、峡北、峡南、峡東へと、それぞれの地域の動脈として延び、それぞれの地域の町づくりやビジョンに織り込まれる新しいライフライン、県民の皆様の共感と期待、そして何よりも生活実感に支えられるライフラインとしたい。

 そのように決意する次第であります。

 今こそ世界に山梨の富を誇り、世界からヒト、モノ、すなわち文化という新しい富を呼び込み、それぞれの地域の豊かさ、そしてそれぞれの地域に住まわれる県民の皆様の豊かさの実感を共鳴させる交通網を築きたい。私はここに「開の国」と「ふるさと強靱化」という二層一体の将来展望を通貫し、次の世代の山梨の誇りとなるべき、富士トラムネットワーク構想を提案します。

 リニアによって本県は大きく変わらなければなりません。

 新しい発想で、全県に豊かさという血を巡らせる。県議会議員の皆様、そして県民の皆様とともに、新しい発想で、新しい構想をともに築いて参ります。

 

 令和6年12月3日

 山梨県知事 長崎 幸太郎

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