ページID:77408更新日:2009年2月1日

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平成18年度 年度はじめ知事訓示(要旨)

詳細内容

訓示を行う山本知事の画像(JPG:401KB) 平成18年度
年度はじめ知事訓示(要旨)

日時 平成18年4月6日(木)午前10時00分
場所 恩賜林記念館

 おはようございます。今日、ここへ来ますとお城の桜も満開でありまして、平成18年度の仕事始め式にとっては最高の日ではないかと思います。
 ちょうど今、隣の部屋にいましたら、昭和25年の4月4日、植樹祭の天皇皇后両陛下のお写真が飾ってありました。この辺りの写真です。それもちょうど桜が満開の様子で、やはり時代は変わっても季節というものは同じように変わらないのだなと、こんな感じを持ったところであります。今日は、恒例により仕事始め式の挨拶を申し上げたい思います。
 昨年度末をもちまして、190名の方々が退職をなされました。この方々は昭和40年代前半に入庁された方々であります。当時はまだ経済成長のまっただ中であり、その後、ドルショック、オイルショック等々があり、平成に入り、バブル崩壊という大変厳しい環境もありましたが、県政推進のためにご苦労頂いた方々であり、団塊の世代と言われる方々の先駆けとして第二の人生を大らかに楽しく、目標を定めてしっかりと元気に歩んで行って頂くことを、まずもって期待するものであります。
 そして4月に入りまして、134名の皆さんが新たに入庁されました。この若い方々がこれからの21世紀の山梨づくりを担って頂く方々でありますので、多いに期待を抱くところであります。是非職場の中で、皆さん方が誤りない方向を示して頂き、ご指導されることをお願いする次第であります。
 さて、本年度は組織の改編が行われまして、振興局を廃止し、各部局に理事を置かせていただきました。それぞれ目的に添って迅速、的確な対応を図って頂くようお願いするわけであります。
 振興局がなくなりましたが、やはりこれからは本庁・出先機関との連携をしっかり保つ中で、今まで以上に市町村、あるいは県民の間に入って行って県民の声を行政に反映できるように、またでき易くするようにご尽力を頂きたいと思います。
 本日はそこで、この県政の抱える課題についてお話をすべきでありますが、時間も限られておりますので、本年度の重要施策事業、あるいは進行管理事業については、各部局におきましてしっかりと対応して頂き、職員一丸となって積極的に取り組んで頂くことを期待しながら、本日は、私の思いつくままのことについてお話をさせて頂きたいと思います。
 ご案内のように今では、日本の経済も大分回復してきたと言われており、株価も上昇し、景気回復基調にあります。
 県内経済を見ますと、これも皆さん方ご案内のとおり、非常に企業間の格差はありますが、ほぼ順調に上昇してきているのではないかと思います。特に機械電子産業、これはここ数年増収増益を続けてきておるわけでして、昨日も新聞発表がありましたが、税収面におきましても大変貢献をしていただいているところであります。
 企業間格差、あるいは大企業と中小企業の格差、あるいは市場経済原理ということをよく言っておりますが、本日は時間の都合もあり、その二つについては控えさせて頂きます。
 県内企業では、特に宝飾産業が低迷を続けておりましたが、実は今日から、ジュエリーフェアーが開催をされておりまして、宝飾産業が今度は、プラチナを使ったプラチナジュエリーというかたちで、世界に売り出して行こうという取り組みを進めていると聞いております。
 これも非常に良い事ではないかと思いますし、また、ワイン業界につきましても、今まではフランスとかイタリアとか、最近ではアメリカのカリフォルニアワインとか、あるいはチリのワインなど入ってくる方ばかりでしたが、これを業界ぐるみで輸出に向けて検討を始めているということも聞いております。
 業界が独自の発想をもって、一体となって取り組んでいる姿というのを見ると大変心強いものを感じます。是非これを持続的に事業が継続して拡大されていくように、我々としても力を入れていかなければならないのではないかと思います。
 こうした状況を考えた時に、行政としてはどうなのかということでありますが、同じように行政もこうした広域的な取り組みに対し、一体となって取り組んでいかなければならないという時代に来ているということであります。
 三位一体の改革が、ある程度の結果を出しながら徐々に進んできているのですが、この三位一体の改革による影響というものは、各県とも苦しいものを強いられております。そういう意味での大都市圏と地方との格差が出てきているということは事実であります。
 こういうことは、もう以前から大きいところと小さいところの格差は当然あったわけでありますが、最近盛んに格差という言葉が出てきているということは、やはりこれをなんとか是正する方向へ向けていくことも大事ではないかと感じています。 
 そこで今、道州制という問題が議論のまっただ中にあります。2月28日に地方制度調査会(地制調)が総理に答申をいたしました。その枠組みというのは13が良いのか、9が良いのか、そういうことは今から定めていくわけでありますが、いずれにしても道州制は避けて通れる問題ではないと、いずれ近々そういう方向に動いていくということは間違いないと思います。
 これもやはり中央集権から地方分権へ変わっていくことが眼目でありますので、そういう意味でその時に山梨が取り残されないような、なんらかの魅力をつくっておかないといけないということで、私は常々「森の国、水の国やまなし」ということを提唱させて頂いているわけです。
 これからの21世紀というのは、まさに水と空気の時代だと言われ最も大切なものであります。これを活かした中で、その周辺の地域との連携ということも考えていかなくてはならないと思っています。業界も今、一体となって大企業に対抗しようとか、あるいは外国に向けて自分たちを発信していこうとか、色々な取り組みをしております。そうした中で、行政も周辺との一体感というものを醸成して、その地域の魅力というものを創り上げていく、そういう時代になってきたということではないかと思います。
 そこで国土形成計画というものが作られようとしているのですが、18年の秋頃までには計画部会の中間取りまとめを行って、最終的には19年の中頃までを目途に全国計画を閣議決定し、そして1年後に広域地方計画が決定されるということであります。これは簡単に言いますと、単一の県だけで事業を行うというのではなく、やはり周辺の地域との連携の中で事業を進めていくということであります。
 ちなみに本県に関わるものとしては、リニアモーターカーとか、あるいは中部横断自動車道、あるいは観光振興とかということであります。一つひとつ細かく説明申し上げませんが、こういう事業をそれぞれ関わりのある県との連携の中で押し進めていこうというのが、この国土形成計画ということの中に盛り込まれて来るのではないかと思っています。
 ひとつその中で、広域観光というものを組み立てていかなければならないのですが、これは既に一昨年、関東知事会の中で広域的な観光振興を進めていこうということで、すでにアジア地域への観光宣伝というものも広域の中で取り組んでやってきております。国のビジット・ジャパン政策に則って、観光客を倍増して、500万人を1,000万人にしていこうと5年計画で始めたものですが、既にその目標は達成できるような状況にきており、観光客も大勢外国から来ているということであります。
 今まで観光振興は国としては非常に遅れておりましたが、これをいよいよ本格的に進めていくということです。その時に、やはり観光客を山梨に誘導することが大事なことで、山梨の地域ブランド力の向上などについては、県がしっかりと役割としてやっていかなければならないと思います。
 幸いにも来年は、「風林火山」の放映が決定されており、「武田信玄」の放映の時と同じように多くの観光客の来県を期待するものでありますが、同時にこれを契機に、定着したリピーターに来県を願うような施策を、今からしっかりと捉えていかないといけないと思います。
 その中のひとつとして、観光振興ばかりではないのですが、富士山の世界遺産登録もありまして、今回、担当の理事も置かせて頂きましたが、今静岡県と連携を取って早期に文化遺産登録の暫定リストに登載してもらう準備を進めているところであります。
 この問題はやはり、本県の文化振興、観光振興ばかりでなく、環境問題への意識を高揚させるということにおいては非常に良いものだと思いますし、やはり富士山と言いますと、世界に冠たる富士山でありますので、これは日本の大きな観光のシンボルでありまして、この問題へはしっかり対応を図って行きたいと考えております。
 次は、少子化問題についてであります。テレビ等でも盛んに少子化の問題を取り扱っていますが、人口減少の時代に入ってしまいました。人口が減少するということは生産人口の減少にも繋がるわけでして、もうひとつは本県のように中山間地域を抱える県にとりますと、急激に過疎化が進んでくることが考えられるわけであります。
 現在、山梨県の耕作放棄地の割合は全国で2番目に多いと言われておりますが、人口の減少は、山間地における過疎化の進行ということにもなるわけです。
 また森林の荒廃が進むということもありまして、これにともなう災害も併せて心配しなければなりません。そこで今回、環境公益林の整備ということで、公益的機能が低下している民有林への支援を実施していく予算も計上したところであります。
 農山村の活性化ということは、本県にとって重要な課題であると思います。従いまして、大規模農業経営体の育成や森林ビジネスの創出を支援したり、また集落営農や農業経営の近代化、さらには農村女性のビジネス支援といったことにも力を入れていかなくてはなりません。
 もうひとつ、少子化問題につきまして、過日横浜で、猪口担当大臣が出席され、関東地域の知事、政令市の市長との懇談会が開催されました。
 その時に各県で取り組んでいる少子化対策が報告されたわけですが、ほとんどが財政支援であり、乳幼児の医療費の無料化とか、あるいは保育料の無料化、出産の費用負担などでありましたが、その時に私が申し上げたことは、「資料によると、各県とも少子化対策への支援策を講じていて、47都道府県の中でも東京などではあらゆる支援をし尽くしているくらいやっている。また一方では、まだ多くのことをやらなければならない県というものもある。そうした県同士を比較してみると、財政支援を非常に多くしているところとまだ足りない県との出生率の問題ですが、逆にやっていないところの方が高いという結果も出ている。ですから、財政支援が全てではないのではないか」と大臣に申し上げたら、「それはそうですね」とおっしゃっていました。
 このような時代ですから、子育て環境を整えるためには財政支援が必要ではありますが、それが全てではないということが、その数字に表れているのではないかと思いました。
 またその際に、「農産物の自給率をもっと高めることが必要なのではないですか。今は40%を切るような状況にあるわけですが、農業で生計を立てられる、自立できるようになったときに、はじめて農家にお嫁に行く人が増える状況になると思うわけであります。農村社会というところは、子育て環境も、あるいは男女共同参画社会もそこに作り上げられているのだから、是非、国がもっと自給率を高めることを考えていただいて、農業振興を図っていただくことが良いのではないでしょうか。日本は工業振興、工業生産に主体を変えてきてしまったために農産物の自給率も落ちてきたが、WTO協定によって難しい面もあるのですが、農業振興が必要なのではないですか」と言いましたら、猪口担当大臣が「目から鱗だわ」とびっくりされていました。
 やはりそうしたことは、我々のような地域に住んでいるからこそ非常に感じることだと思うわけであります。
そのことについては、静岡県の知事も同意見の発言をされていました。もっと問題の根本を考えていく必要があるのではないかと感じたことを述べさせていただいたわけですが、少子化の問題は、このようにいろいろな角度から検討していかないと、人口減少に歯止めがかけられないのではないでしょうか。
 社会保障問題を含めて、様々な面で影響がでてくるということでありますので、非常に大きな課題としてとらえていかなくてはいけないと思っております。
 今、ベストセラーの「国家の品格」という本にも同じように、農業振興ということをしっかりやらなくてはいけないということが書かれています。農業振興と少子化という問題を結びつけて考えることも大事ではないでしょうか。
 次にもうひとつ、安全・安心ということについてであります。安全・安心ということは、大きな行政課題、国家的課題といってもよいのではないかと思います。昔は安全ということに関しては、犯罪、災害、その二つが主なものであり、そのための治安対策とか防災対策として、対応策が図られてきたわけであります。
 安全の反対は不安、ということになるわけですが、今では、不安という問題があまりにたくさんありまして、これに対する対応策が強く迫られています。食品の安全であるとか、医療、薬品、あるいは福祉であるとか、最近では老後の不安というものもあり、子育ての不安というものも出ています。そのような、老後であり、子育て、食品などに対する不安は、以前であれば一人ひとりの生活の知恵の中で解決できた問題であったと思うわけであります。
 しかし、今では国や行政がその不安を解消していかなくてはならないことが多く、そうしたことが求められる時代であると思っています。従って、それに対しては、しっかりとした行政対応を図っていかなければならないと思います。
 付け加えて言いますと、道路交通の問題がありまして、実は今日から春の全国交通安全運動が始まっています。
 先ほど出発式が行われたわけでありますが、その中の一つの重点項目として、飲酒運転撲滅というのがあります。これについては多くは申し上げませんが、昨年度のいくつかの職員の不祥事問題を考えたときに、飲酒運転ということは絶対あってはならない、ということをしっかりと肝に銘じ、部下にも指導をしていただきたいと思います。
 もうひとつは同じようなことで、耐震偽装の問題とか、あるいは粗雑工事についてであります。これについても不安というものがついて回るわけであります。こうした不安を県民に与える、国民に与えるということは、これは行政として、よく考えなくてはいけない事であります。耐震偽装は誰がどのように責任をとるのか、未だに明白にされておりません。これから建物を建てようとする人が、不安で不安で建てることができないのではないかという声も聞こえるわけであります。また、粗雑工事等に対する責任の所在というものも、明確にしておくことが大事ではないかと思います。
 こうした問題を考えますと、我々もちょっと考えさせられる部分があります。それは、何か事を起こそうという時には、必ず行政として外部の審議会とか、委員会というものに意見を求めようとし、その審議結果である意見に基づいて、事業の方向性を県民に示しています。
 このことを考えてみますと、専門家に意見を聞くこと自体は大事なことでありますが、それに全て頼って事業を行うということは、私には疑問があるのです。やはり皆さん方は、公務員という行政のプロであります。そのプロの皆さん方が、ある程度の判断というものを持っていて、審議会・委員会の審議結果の中にも、自分たちの考え方というものをしっかりと求めていって、事業の結果責任に対しては、自分たちが負っていくのだという心構えで臨んでほしいと思います。
 その最高責任者は私でありますから、私は、皆さんのそうした努力を全て受け止めてやっていきたいと、そのような思いをこの偽装問題、あるいは粗雑工事の問題等々をみて、やはり審議会・委員会の意見を尊重する中にも、しっかりとした行政としての対応というものを前面に出して進んでいくことの方が、私は県民にはわかりやすいのではないかと、感じたわけであります。どうぞこれからも遵法精神というものを発揮して、事業執行やあるいは許認可事務などに対し、厳正、厳格な対応をしていただきたいと望むところであります。
 まだ時間が少しありますから、もうひとつは、こうしたことをやるにつけても、やはり全ては人が行うことだということであります。是非ひとつ、人づくりということについて、教育現場ということではなくて、職場の中でも、日々、人づくりということに対してお互い研鑽を積んでいって頂きたい、このことをお願い申し上げる次第であります。
 また、高校教育問題につきましては、高等学校が新たな制度でスタートするわけでありますが、是非関係者への周知に努めて頂いて、円滑な導入が図れるように関係当局のご尽力をお願いしたいと思います。そして、個性豊かでたくましい人づくりに繋がるようなそんな教育であって欲しいと、願っておるところであります。
 最後になりますが、皆さん方にはいろいろ申し上げましたが、ここにひとつ資料があり、昨年の11月、東京で「新しい山梨づくり懇話会」が開催されまして、その時に、「日本の国の在り方、あるいは日本というよりも世界の流れというものが今後大きく変わっていくのではないか」というような話がありました。
 これは、実はブータンの国王が言っている国民総幸福量宣言というものがあるのですが、「人々の幸福な生活を可能にしてくれる自然環境、精神文明、文化・伝統、歴史遺産などを破壊し、家族、友人、地域社会の絆までをも犠牲にする経済成長は、人間の生活する国家の経済成長とは言わない」ということを言っております。そして、国王は、今までの国の力関係というものをGNP→Gross National Product、これからはGNC→Gross National Cool(Coolは文化)、それからさらには GNH→ Gross National Happinessになってきていると。そこで国民の総幸福度というGNH、これをもって国民の満足度を評価していくのだということを言っておりました。
確かにそうだなということを、私も感じるわけであります。やはり人間は、生産するということで生きているということも言えるわけでありますが、現実は、この生産というものが前面に出すぎてしまって、そしてその文化や幸福というものが、生産より後でついて回っているというのが、今の実態ではないかというように思います。
 これでいいのかということを考えさせられるわけでありますが、この前テレビを見ていましたら、野球のイチローが、ワールドベースボールクラシックで日本が優勝し、世界一になった後のインタビューに答えていました。「今の感想はどうか」という質問の中で、「今まではイチローという名が先行していて、安打製造機のようにヒットをどんどん量産していく。世界のナンバー1だということを言われる。イチローという名前がどんどん先に行って、自分自身である鈴木一朗は、後をついていくようなものであって、私自身実感がわかなかった。しかし、ワールドベースボールクラシックで自分を表に出して戦って、ようやくイチローという名前と同じか、あるいは一歩前に出たような気がする」ということをインタビューで言っていました。
 なるほどなと思って考えてみたら、今のこの話から、生産というものの後に文化とか幸福度というものがついて歩くのではなくて、やはりそれを超したぐらいの満足度というものが、人々の心の中に実感として受け止められなければ駄目だということが、イチローの言葉の中で、私は教えられました。やはり世界一になっただけのことはあるなと感じました。その意味では、今言った生産より文化や幸福度が後をついて行くのではなく、もっともっと前を進んでいくような、そうした時代を創っていくことができればと思うわけであります。
 そこで、「小さな県庁、大きなサービス」ということを言っておりますが、この大きなサービスを計る尺度というものは事業量ではない、ということであります。県民の声、あるいは県民の期待というものに如何に答えて、そして県民の幸福度を増すことができるのか、これが私は、「大きなサービス」だと思っております。そういうことを考えます時に、大変厳しい財政環境の中ではありますが、是非皆さんも自分をしっかりと見つめながら、そして行政マンとして、公務員として何をなすべきか、しっかりとした意思のもとに対応を計っていただくことを切に願ってやみません。
 年度の初めに説教じみたお話をして申し訳なく思っておりますが、県民の幸福度が増すような行政執行に、皆さんの先頭に立って頑張って参るつもりでありますので、よろしくご協力を賜りますとともに、健康で活躍されることを願いながら私の年度はじめの挨拶とさせていただきます。

リリース日:2006年4月6日

添付ファイル

知事政策局広聴広報課

甲府市丸の内1-6-1 本館2F
TEL:055(223)1336
FAX:055(223)1525

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