ページID:77399更新日:2017年1月31日

ここから本文です。

平成20年度 年度はじめ知事訓示要旨

詳細内容

平成20年横内知事年度はじめ訓示の様子(JPG:31KB) 平成20年度 年度はじめ知事訓示要旨
 平成20年4月3日(木)午前10時から
 恩賜林記念館


●(はじめに)
 皆さん、おはようございます。
 「雪の峰、しづかに春ののぼりゆく」という飯田龍太先生の俳句がありますけれども、春が昇っていくように周囲の山々の雪が少しずつ溶けていく、そんな季節になりました。
 今の時期は、例年ではありますけれども、出会いと別れの季節であります。3月末には、261名の退職者をお送りし、この4月には131名の若い諸君ををお迎えしたところであります。
 今回、退職された皆様は、昭和40年代前半に入庁をされまして、オイルショックとか高度経済成長とか、バブル、そしてその崩壊を経験し、失われた10年といわれる経済の停滞と構造改革を経験された、非常に大きな我が国の社会経済の変動の中で、40年の長きにわたりまして懸命に県政を支えてこられた方々でして、長年のご労苦に感謝を申し上げるとともに、これからのご活躍をお祈りしたいと思います。
 また、新たにお迎えした職員の皆さんには、自分たちの力で暮らしやすさ日本一という山梨を創っていくんだという志と気概を持って、若い力を存分に発揮していただくことをご期待したいと思います。

●(本年度のスタートにあたり)
 平成20年度は波乱の幕開けとなりました。暫定税率延長に関する与野党の合意がまとまることができずに、暫定税率が期限切れとなりまして、地方行政と国民生活に大きな混乱を招いております。国民生活を守ることが使命である政治が原因となって、国民生活が混乱するということはあってはならないことだと思います。
 まだ道路の整備は必要でありますし、なんと言っても国と地方を合わせまして1兆円にならんとする借金がある。大変厳しい財政状況にある中で、暫定税率を廃止できる状況ではありません。与野党が十分に協議をして、暫定税率を復活できることを強く希望したいと思います。
 さて、昨年度は、大変に忙しい1年となりました。通常の業務に加えまして実質上の政策予算となりました6月の補正予算や、「チャレンジ山梨行動計画」や「行政改革大綱」の策定とか、新たに設置された県議会予算特別委員会への対応など、職員の皆さんには、大変に忙しい1年であり、相当なご負担をおかけしたと思っております。私にとっても、全力投球の1年でありましたけれども、幸い公約は、中部横断自動車道の県民負担の軽減とか、県債残高の圧縮といったことをはじめといたしまして、既に3割程度は達成することができ、残りの公約につきましても、ほぼ全ての項目について、チャレンジ山梨行動計画において実現に向けての道筋をつけることができました。これも皆様方のご協力の賜と、心からお礼を申し上げたいと思います。

●(産業経済の活性化について)
 とりわけこの1年で私が力を入れたのは、山梨を元気にする、つまり産業経済の活性化ということでありました。今日、地域間競争、都道府県間競争が非常に激化しているわけでありますけれども、そういう地域間競争に本県が立ち後れつつあるのではないか、そういう強い危惧を抱いたからであります。1年経過しまして、山梨が活性化したか、元気になったかと言われれば、まだまだ道半ばであります。しかしながら、県民の皆さんや、県庁職員の皆さんのご努力によりまして、我が山梨の、この未来にいくつか明るい光が見えつつあると思っており、このことは間違いないと思います。
 たとえば、第1にリニア中央新幹線、夢のまた夢に終わるのではないかと、多くの人が思っていたわけでありますが、いよいよ具体化をし始めました。JR東海が、ご承知のように2025年に東京・名古屋間で実用化するということを決定し、その費用5兆円を全額自社で負担をすることを発表しました。いよいよ実験線の延伸工事が始まるわけであります。
 また、中部横断自動車道につきましても、10年以内の開通に向けまして、事業の本格化が進みつつあります。さらに、静岡県の区域ではありますが、本県にとっても大きなネックであった、東富士五湖道路の東名高速道路への延伸については、いよいよその二つを結ぶ御殿場バイパスが具体化をする方向になりつつあります。これらのプロジェクトの実現というものは、山梨の立地条件を飛躍的に改善して行くに違いないわけであります。
 第2に、山梨大学が、燃料電池の我が国におけるセンターのひとつでありますけれども、この度NEDO新エネルギー開発機構の委託によりまして、山梨大学において7年間で70億円の燃料電池研究プロジェクトが進められることになりました。日本内外から40人の研究者が集まってくる、大規模な研究プロジェクトであり、山梨大学はじめ関係者の皆さん方に敬意を表したいと思います。燃料電池は、可能性の高いエネルギー技術であり、クリーンエネルギーであり、しかも産業のすそ野が非常に広い技術であります。したがって、この燃料電池技術研究というものが、将来、山梨がクリーンエネルギー産業のメッカとなる、センターとなる、そういう可能性を秘めている訳であります。
 県としても、産学官連携という観点から、積極的に支援をしていきたいと考えております。
 3番目に、産業立地についてでありますけれども、平成18年は企業立地件数が7件でありました。全国47都道府県の中で43番目でした。これではいけないということで、企業誘致の努力をしたわけですけれども、平成19年は20件、33番目ということになりました。今年度は経済が減速化傾向にありますから、なかなか厳しい客観情勢でありますけれども、さらにできるだけ多くの産業立地をめざしていかなければならないと考えております。また産業立地のネックになっております、技術系の人材確保策につきましては、昨年皆さんが、計画を作ってくれましたので、これを本格的に、力強く実施をしていかなくてはならないと考えております。
 4番目に、甲府市の活性化についてであります。県都甲府市の活性化は、山梨の活性化にとっても大事であります。北口県有地の高度情報エリアとしての整備をはじめとしまして、県市の具体的なプロジェクトが動き始めてきておりまして、県市一体となってこれを進めていく体制もできてまいりましたので、早晩甲府市の活性化が具体的に目に見えるかたちで現れてくるのではないかと思っております。
 また、農業や地場産業にも、新しい動きが出て参りました。果樹農業あるいはワインとか、ジュエリーといった当県の地場産業は、長期低落傾向を続けてきたわけですけれども、桃やブドウといった果物について、台湾や香港への輸出の取り組みが本格化しはじめましたし、ワインも甲州ワインが和食に合うワインということで、海外でも評価をされて、フランスのシラク前大統領が、自分の退任パーティに甲州ワインを使ったとか、注目をされております。県内のワイナリーもこれを輸出していこうという意欲に燃えておられます。ジュエリーも山梨ブランドKooーfuが好評でありまして、関係者の皆さんの前向きな動きが農業や地場産業で目立ってきております。
 観光については、昨年風林火山ブームということで好調でありましたが、今年度もデスティネーションキャンペーンがいよいよ始まります。昨年度と同程度のものが実現できるのではないかと期待をしております。外国人観光客も着実に増加をしてきております。この4月には、私も神奈川県知事や静岡県知事と一緒に、上海に行って観光キャンペーンをして参りますけれども、一層海外に対してPRを強めていきたいと考えております。
 7番目に、富士山の世界文化遺産の動きについてでありますが、昨年ユネスコの暫定リストに登載をされ、それをきっかけにして富士山というものが、内外に注目を集めるようになって参りましたが、富士登山客も大幅に増加したわけであります。特に外国人の関心が高いものがありまして、平成23年度の本登録を目指して、地元市町村と一緒に頑張っていかなければならないと考えております。また、これとあわせて富士北麓地域を国際コンベンションゾーンとしてグレードの高い国際観光地に育成していくというコンセンサスも、段々とられつつあるという状況であります。
 8番目に平成25年に国民文化祭が山梨で開催されるこが決定されました。県外から多くの方々が訪れることになります。特に本県は東京に近いという有利性を最大限に活用して、県民の知恵を結集して、今までの国民文化祭にはない、新しい、ユニークなイベントにしていきたいと考えております。
 今年度は、以上のような本県の未来に見えてきた活性化の可能性というものを更に大きくするよう、皆さんと共に努力をしていきたいと考えております。

●(医師確保対策)
 産業経済の活性化と同時に、克服すべき大きな課題がいくつかあります。一つは医療問題でありまして、医療は、言うまでもなく県民の安全・安心の根幹であります。現状では、医師不足、とりわけ産婦人科、小児科の医師不足が深刻になっております。
 昨年度は、医師不足への対応として、医学生への奨学金制度を創設したところ、173人という非常にたくさんの応募がありました。山梨大学も地域枠を設けるなど、対策の充実を図っていただいておりますので、年が経つにしたがって、何年か後には、この医師不足問題も緩和していくと見込んでおります。しかし一方で、当面の厳しい医師不足を何とかして欲しいという県民の切実な声に応えていかなければいけません。
 今年度は、郡内地域への小児救急医療センターの設置だとか、県立中央病院の経営形態の見直しなどの問題も含めまして、本県の医療体制の再構築を大きな課題として取り組んでいかなければならない年であります。

●(防災対策)
 2番目が防災対策でありまして、県民の生命・財産の安全確保ということは、県政の最も基本的な任務であります。今後、発生の確立の高いと言われる東海地震の備えを急がなければいけないと思います。消防力の強化を図るとともに、住宅や学校、庁舎などの耐震化を大幅に促進をしなければならないという現状に来ております。特に、耐震性が著しく低い県庁舎につきましては、県民情報プラザなどの敷地内に新庁舎を建てて、そこに防災機能を集約することとしたところであります。
 県庁職員全員で知恵を出して、県民の安全をしっかり守る防災センターとなり、同時に、県民に使いやすく、親しまれる県庁舎づくりを進めていきたいと考えております。

●(総合的な環境対策)
 3番目が総合的な環境対策でありまして、今年度は山梨の総合的な環境政策を構築していきたいと考えております。地球温暖化が進行する中、本県としても、地球温暖化対策を本格的に検討することが必要であります。また、循環型社会の形成や、クリーンエネルギーの開発と活用、さらには景観対策も含めた美しい県土づくりなども大きな課題であります。このため、今年度は有識者による会議を設置し、本県の総合的な環境政策のあり方について検討を進めるとともに、地球温暖化対策条例の制定にも取り組んでまいりたいと考えております。

●(教育の充実)
 4番目は教育・人づくりでありまして、明治の政治家の後藤新平の言葉に「金を残すは下、事業を残すは中、人を残すは上」という言葉がありますけれど、人づくり・教育というのは県政の基本であります。本県は少年犯罪の発生率が全国で最も少ない県でありまして、これは誇るべきことであります。長い間、学校、地域、家庭のそれぞれが努力をしてこられた、人づくりを進めてこられたたまものだと思っております。今年度も、いわゆる中1ギャップに対処するための少人数学級化の「はぐくみプラン」を実施するといったことをはじめとして、教育の一層の充実を図っていきたいと考えております。
 以上、今年度の主要な課題について述べてまいりました。

●(県政運営の基本方針)
 さて、私は、昨年の2月、知事に就任をしましたときに、県民の民意というものは変革を求めているんだと、山梨を変えてもらいたいと願っているんだと、そして山梨を変えていくためには、まず、県庁が変わっていかなければいけないんだと申し上げまして、その改革の柱として3つのことを皆さんにお願いしたところであります。

 一つは創意工夫を凝らし挑戦する県政、「チャレンジ県政」ということであります。二つ目は簡素でスピーディーな県政、「スピード県政」ということであります。三つ目は県民に開かれた県政、「オープン県政」ということであります。

 「チャレンジ県政」については、この1年で職員の間にかなり意欲が出てきたということは実感として受けているわけでありますが、しかし、まだまだ過去の慣習にとらわれたり、これは必要なことではありますけれど、他の県の状況にあまりにも流され過ぎたりとか、そういうこともあるわけでありまして、さらに新しいものにチャレンジする姿勢というものをお願いしたいと思うわけであります。
 昔の侍は、敵に向かっていって体の前についた傷を「向こう傷」と言うわけでありますけれど、その向こう傷というものを誇りとし、敵から逃げて、そうすると背中に傷がつく、これを「後ろ傷」と言うわけですけれど、後ろ傷を恥としたわけです。そういうように皆さんも、「向こう傷」を恐れず、「後ろ傷」を恐れるという、そういう考え、姿勢で、前向きのチャレンジ精神を持っていただきたいと、そういうふうにご期待を申し上げたいと思います。

 それから「スピード県政」という面で言いますと、例えば「クイックアンサー」というようなことを始めたわけでありますけれど、私も全部読んでおりますが、大変適切にそれぞれ対応をしていただいていると思っておりまして、忙しい中での対応でありますから、大変にご苦労が多いと思い、感謝申し上げたいと思います。しかし、まだ難解な表現があったり、もうちょっと、今ひと工夫したらどうかなというようなことも見受けられるようでありますので、更にわかりやすい改善をしていただきたいと思います。
 また、県民の皆さんと直接接触する立場にある現場機関の皆さんには、なお一層、県民の皆さんの目線に立った行政、県民の皆さんというのは、我々が考えている以上に役所というものの敷居が高いわけであります、したがって、県民と同じ目線に立って、懇切丁寧な対応をしていただきたいとお願いを申し上げたいと思います。

 それから、「オープン県政」という面では、過日、全国市民オンブズマン連絡会議の情報公開度ランキングが公表されましたけれど、本県は昨年の37位から6位へと大きく順位を上げました。皆さんのご努力によりまして、情報公開というものが着実に進んできていると、大変うれしく思っております。これはある人が言ったことでありますけれど、県政の理想というのは寿司屋のカウンターだと、ある人が言いました。確かに寿司屋のカウンターというのはそうでありますけれど、お客さんである県民の注文を受け、その場所で、どういうものを使って、どう作るか、お客さんの見ている前でオープンに仕事をしていくというのが県政の理想であろうと思うわけであります。そんなオープンな県政を進めていきたいと思っております。

 なお、昨年度も、酒気帯び運転など何件かの不祥事事件が発生しまして、懲戒処分など処分を余儀なくされました。ちょっとした不注意や出来心で、本人の人生を大きく狂わせ、なによりもかけがえのないご家族を傷つけ、悲しませるということになるわけであります。公務の内外を問わず、常に自覚と倫理観を持って行動をしていただきたいとお願いしたいと思います。

 本年度はチャレンジ山梨行動計画に沿って、施策を本格的に実行し、展開していく、そしてさらなるステップアップを図っていくという重要な年であります。
 また忙しい年になると思いますし、皆様方には大変ご苦労をおかけするわけでありますけれど、共に創意工夫を凝らし、知恵を出し、汗をかきながら頑張っていきたいと思います。
 私も先頭に立って努力していく決意であることを改めてお伝えをいたしますとともに、暮らしやすさ日本一の県づくりに向けて、職員一丸となって取り組んでいただくことを重ねてお願い申し上げまして、年度はじめの私の訓示といたします。

(了)

リリース日:2008年4月3日

このページを見た人はこんなページも見ています

県の取り組み

pagetop