ページID:77789更新日:2017年2月17日

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平成29年2月県議会知事説明要旨

平成29年2月定例県議会の開会に当たり、提出致しました案件のうち、主なるものにつきまして、その概要を御説明申し上げますとともに、私の所信の一端を申し述べ、議員各位並びに県民の皆様の御理解と御協力をお願いしたいと存じます。

時代の大きな潮流の中で山梨の発展を捉えると、2017年は大きな節目の年であると言えます。
我が国の武家社会が終わりを告げ、近代国家への転換点となった大政奉還が行われたのは1867年、本年はそこから150年であります。
また、本年は日本国憲法の施行から70年、更には、同日の地方自治法の施行から70年であります。
地方自治法に位置付けられた知事公選制のもと、これまでの70年間で、7人の先人が知事の職を務め、時代の先を見据えた新たな施策を展開し、本県の発展に尽力されてきました。
特に、周囲を高い山に囲まれ、隣接地域の交流に制約があった本県は、他の地域との交流の拡大が発展の契機となってきました。
我が国が高度経済成長期を迎えた昭和30年代から40年代にかけ、桑畑などを果樹園へと転換し、山梨は東京をはじめとする大消費地と結び付くことで、果樹王国としての地位を築きました。
また、交通ネットワークの整備は、本県の経済発展に特に大きな影響を与え、昭和57年に全線開通した中央自動車道は、物流の高速化や、機械電子産業などの先端技術産業の集積を促進するとともに、観光地としての本県の発展を支えてきました。
本年は、2027年のリニア中央新幹線開業まで、いよいよ10年という節目の年でもあります。
リニア中央新幹線という世界最先端の高速交通は従来の国土軸を大きく変えるとともに、国内外との更なる交流や産業創出をもたらすことが期待され、本県が更に飛躍していくための最大の切り札であると言えます。
アジア諸国などが経済発展を続け、市場としての存在感を高めている今、富士山や八ヶ岳をはじめとする四季折々の豊かな観光資源があり、果樹農業や機械電子産業、特色のある地場産業など、世界に通用する産業を有する本県においては、大きな好機でもあります。
現在、本県を訪れる観光客はアジア圏を中心に増加傾向にあり、平成27年には本県への外国人宿泊者数が過去最高の125万2千人に到達しました。
また、山梨ワインの輸出量は平成26年度の約3万2千本から27年度には約4万2千本、日本酒は約3万5千本から約6万6千本へと大幅に拡大しているほか、県産果実の輸出額は27年度に約5億9千万円と、調査開始時の20年度の3倍以上に伸び、いずれも過去最高を記録しています。
10年後のその時に向けて、県民の皆様と一丸となって準備を進め、本県の地域資源を磨き上げる中で、世界の中でひときわ輝く山梨を創り上げて参りたいと考えております。

私が知事に就任してから、本日で2年が経過致しました。
この2年間、常に全力で県政運営に当たって参りました。
先ず、任期1年目においては、107の公約全てについて、6月補正予算までに着手し、平成27年度末までに、県政運営の新たな指針である「ダイナミックやまなし総合計画」をはじめとする県政各分野の62に上る計画を策定し、本県の進むべき方向性をお示ししたところであります。
任期2年目は、各種計画を本格的に実行に移す年と位置付け、現在に至るまで、様々な施策・事業を着実かつスピーディーに実行に移してきたところであります。

先ず一つ目は、人口減少対策の推進であります。
県では、昨年秋、東京有楽町において、県・市町村合同の「オール山梨移住セミナー&相談会」を初めて開催し、約六百人の方々にお越しいただいたほか、「日本一健やかに子どもを育む山梨」を県内外に様々な形で発信し、本県への移住を促進して参りました。
昨年、東京圏の子育て世代を対象として行った、産前産後ケアセンターや本県の保育施設などを実際に体験していただくツアーにおいては、参加者から、本県の子育て環境の素晴らしさに対する評価の声が多く寄せられたところであります。
やまなし暮らし支援センターを通じた移住者の数も、この1年間で163人、平成25年6月の開設から3年半の間で553人と着実に実績を上げているところであり、今後もこうした流れが拡大していくよう、本県の魅力を更に高め、それを強力に発信して参ります。

二つ目は、子育て支援策の充実であります。
県では、これまで、待機児童ゼロを維持しながら、乳幼児医療費の窓口無料化や、休日や夜間でも医療が受けられる小児救急医療センターの設置、産科医の確保など、「日本一健やかに子どもを育む山梨」の実現に向けて、子育て支援策の充実に取り組んで参りました。
また、昨年1月には、県内全市町村との連携により、産前産後ケアセンターを開設し、出産前後の母親への支援を行って参りましたが、センターが実施する宿泊型産後ケアには、先月末までに、170組の母子の利用があり、利用された全てのお母さん方から、「不安が軽減し、育児に自信が持てた」、「心身の休養が図れ、次の子の時も利用したい」など、高い評価と満足の声をいただいております。
更に、昨年4月からは、子育て世帯の経済的負担を軽減するため、県内全市町村との連携による第二子以降三歳未満児の保育料の無料化を実施しているところでありますが、本事業に関しても、子どもを持つ親御さんから、「働く親として、とても有り難かった」、「これをきっかけに、もう一人子どもを産むことを決めた」などの反響があり、大きな手応えを感じているところであります。

三つ目は、企業立地の推進であります。
本県経済を発展させ、将来にわたり活力あふれる地域を創り上げていくためには、産業を集積させ、雇用の創出を図っていくことが必要不可欠であります。
このため、本年度、本社機能の移転や事業の拡張を行う企業に対して不動産取得税や法人事業税などを大幅に軽減する優遇制度の創設や、安価な電力を供給する「やまなしパワー」の創設、産業集積助成金の対象の拡充などを通じ、全国トップレベルの企業立地制度を構築したところであります。
こうした取り組みの結果、昨年4月には、リードスイッチで世界トップシェアを誇る株式会社沖センサデバイスの東京・立川市から甲府市内への本社移転が実現したほか、10月にはファナック株式会社において、200人規模の新規雇用を伴う研究所が新設されるなど、県内への企業立地が着実に進展しております。
なお、東京電力と共同して開始した「やまなしパワー」によって、企業局において増収となった利益については、明年度から、県の子育て支援事業の財源として活用して参ります。

四つ目は、東京オリンピック・パラリンピック事前合宿誘致の推進であります。
県では、スポーツを通じた交流の促進を図るとともに、本県の魅力を世界に発信する好機として、市町村や競技団体などと連携しながら、2020年東京オリンピック・パラリンピックの事前合宿の誘致を積極的に推進してきたほか、市町村に対しては、連絡会議を通じた情報提供やスーパーバイザーによる専門的な立場からの助言など、誘致に向けた支援を幅広く行って参りました。
こうした取り組みの結果、本年度、県と8市町村を主体とする7件の取り組みがホストタウンに登録されたところであります。
この登録件数7件は全国第3位の状況であり、県内でのオリンピック・パラリンピックに向けた機運の高まりを示すものであります。
こうした中、フランスのラグビー競技に関し、先月、県、富士吉田市と同国ラグビー協会との間で、事前合宿を富士北麓公園で行うことについての基本合意が交わされたところであります。
また、これに続き、先日、昨年夏にトップセールスを行ったタイのウエイトリフティング協会と笛吹市との間で、市内の施設や日川高校を会場とする事前合宿の実施に向けた基本協定が締結されたほか、富士河口湖町と鳴沢村へのフランスのトライアスロン競技、忍野村へのフランスのバスケットボール競技についても、事前合宿を最優先で検討する旨の覚書が締結されるなど、これまでの誘致活動が着実に実を結びつつあります。

この2年間の県政運営において、様々な施策に取り組んで参りましたが、その中でも、産前産後ケアセンターと「やまなしパワー」、太陽光発電施設の適正導入ガイドラインの3つの施策については、本年度、全国知事会において、本県からは初めてとなる「優秀政策」を受賞し、対外的にも高く評価されたところであります。
様々な施策を展開するうえで、私が重視してきたのは、県が積極的に触媒としての役割を果たすことにより、地域間、産業間など、多様な主体の連携を強化することにあります。
先ず、都道府県間での連携については、昨年12月、静岡、神奈川両県知事との三県サミットを富士吉田市内で開催し、富士箱根伊豆地域における燃料電池自動車の普及促進や、スポーツを通じた交流の拡大などについて、また、本年1月には、静岡、長野、新潟の各県知事と中央日本四県サミットを甲府市内で開催し、各県が連携して「育水」の推進を行うことや、海外での山岳観光や物産情報の発信、首都圏における安全登山のキャンペーンを展開することなどについて、合意されたところであります。
このほか、リニア中央新幹線の開業に向けた取り組みや中央自動車道の渋滞解消に向けた活動の推進など、本県が抱える広域的な課題に対しては、これら隣接県との連携した取り組みを引き続き強化して参ります。
また、県内市町村との連携については、産前産後ケアセンター事業や第二子以降三歳未満児の保育料の無料化など「日本一健やかに子どもを育む山梨」の充実に向けた対応をはじめ、幅広い取り組みを行っております。
更に、県と産業界との連携については、「やまなしパワー」のほか、東レ、東京電力、東光高岳というエネルギー分野において世界をリードする企業3社との協定に基づく「パワー・ツー・ガスシステム」の技術開発、産業界と工業系高校が連携した専門的人材の育成などに取り組んでおります。
また、様々な産業間での連携として、峡東地域における世界農業遺産認定に向けた取り組みやワインリゾート構想の推進、峡北地域における「食」をテーマにした情報発信などを展開しております。
福祉と農業との連携を図り、障害者の農業分野への就労を支援する農福連携障害者就労促進事業についても、本年度中に、十以上の農業法人などにおいてモデル事業が実施できる見込みであります。
今後も引き続き、様々な主体との「連携」をキーワードに施策を展開し、県民の総力を結集して新しい地域づくりに取り組んで参りたいと考えております。

次に、当面する県政の課題についてであります。
先ず、働き方改革についてであります。
少子高齢化社会の進展に伴い、本県の総人口は、最高を記録した平成12年の88万8千人から27年には83万5千人へと約5万人、このうち生産年齢人口は、57万7千人から48万9千人へと約9万人減少しております。
こうした状況を踏まえ、働き盛りの世代はもちろん、子育て中の女性や高齢者を含むすべての人々がやりがいや充実感を感じ、仕事と生活の調和を図りつつ、長い期間にわたって働くことができる環境の整備が必要であります。
このため、まず県庁が先駆けとなって、業務の効率化や意識改革などに取り組みながら一層質の高い行政サービスを提供することを目指す、「仕事と生活の“こぴっと!”両立宣言」を1月4日に行ったところであります。
また、明年度は、企業の働き方改革の推進を支援するため、アドバイザーの訪問を通じて現状分析や改善策の提案などを行っていくほか、女性が活躍できる職場環境づくりを推進するための、経営者を対象としたセミナーや、男性社員の育児参加を推進するための、人事労務担当者を対象とした研修会などを開催して参ります。
更に、高齢者の生きがいにもつながる就労の促進を図るため、本年度実施した高齢者の就労などの実態調査の結果を踏まえつつ、高齢者や、経済団体などからの意見を伺いながら、高齢者が働きやすい勤務体制や職場環境などについての検討を行って参りたいと考えております。
今後とも、幅広い主体と連携しながら、本県の働き方改革を積極的に推進して参ります。

次に、リニア中央新幹線の開業に向けた取り組みについてであります。
先ず、市町村振興資金における新たな貸付枠の創設についてであります。
現在、沿線の自治体においては、緩衝帯を利用した側道の整備や、移転する公共施設の機能拡充などに向けた動きがあり、県としても、こうした取り組みを一層円滑に推進する観点から、市町村振興資金貸付金に新たな貸付枠を創設し、沿線自治体の円滑な資金調達を支援するとともに、後年度の財政負担を軽減できるよう、元利償還金の2分の1を助成することとしております。
次に、リニア環境未来都市整備方針と総合球技場の整備についてであります。
総合球技場の整備については、昨年12月、検討委員会から、施設の機能や規模、建設場所などに関する報告をいただいたところであります。
その中で、総合球技場の建設場所については、リニア駅前と小瀬スポーツ公園周辺の二箇所の候補地について、双方にメリットと課題が認められること、また、地域住民の生活環境や企業の経済活動などに最大限配慮すべきとの意見もいただいたところであります。
このため、建設場所の決定にあたっては、周辺の住民や企業、更には県議会からの御意見を伺いながら、丁寧に検討する必要があると考えております。
一方、リニア環境未来都市の整備方針については、昨年十月に、駅周辺に不可欠な機能や、近郊の目指すべき姿などを示した中間素案をお示しさせていただいたところであります。
また、地元市町が主体となったまちづくりを推進するために、土地利用の基本的な考え方についても早急にお示しする必要があることから、整備方針については、今月10日、素案を公表し、現在、パブリックコメントを実施しているところであり、総合球技場の建設場所の決定に先んじて、年度内の策定を目指して参ります。
更に、今後は、この整備方針を踏まえ、リニア環境未来都市の一層具体的な姿を明らかにし、産業立地や観光振興に与える効果、リニア駅からの30分圏域の拡大など、リニアの開業効果を全県に波及させるため、これまで以上に関係部局が連携し、組織横断的に取り組む必要があると考えております。
このため、明年度、総合政策部内に、新たに司令塔となる組織を設置し、リニア交通局は、測量や調査、用地取得などリニア本体の建設に関する業務に特化して参る考えであります。
今後は、新たな組織体制の中で総合球技場の建設場所を早期に決定し、それを具体的な姿として、県民の皆様にお示しするとともに、整備方針で示した駅周辺の機能などについても、更に具体化に向けた検討を進めて参ります。
また、リニア開業まであと10年という節目を迎え、開業が県民生活にもたらす効果やその後の本県の姿についてもわかりやすく発信することにより、県民全体のリニア開業に向けた機運の更なる醸成を図って参ります。

次に、中小企業高度化資金貸付金に係る調停の件についてであります。
協同組合ファッションシティ甲府に係る中小企業高度化資金貸付金については、昨年11月、組合が、貸付金の債務の軽減と免除を求める要望書を県に提出するとともに、県を相手方とする特定調停を、甲府地方裁判所に申し立て、以後、これまで関係者による協議を重ねてきたところでありますが、過日、裁判所から調停案が示されたところであります。
検討の結果、調停案は、裁判所において公正性、妥当性、経済的合理性を有するものとして示されたこと、県の債権の最大限の回収が図られ、県民負担の最小化が可能となる内容であること、県が中小企業基盤整備機構から借り入れている元金などが免除されることなどから、これを受け入れるべきと判断し、今定例県議会に議案を提出しております。

次に、平成29年度当初予算の編成に当たりまして、その基本的な考え方を申し上げます。
明年度の本県財政は、歳入面では、実質県税総額は本年度とほぼ同程度、地方交付税については、臨時財政対策債を合わせた実質交付税が若干増加する見込みであるものの、全国の輸入総額が減少傾向にあることから、地方消費税清算金の大幅な減少が見込まれ、一般財源の総額としては、本年度と比べ25億円余、0.9パーセントの減となっております。
一方、歳出面では、介護保険・高齢者医療などの社会保障関係費の増加が避けられないこと、県立学校の改築整備や警察署の建設など、先送りすることのできない大規模事業も実施しなければならないことに加え、明年度を、これまで掲げてきた「輝きあんしんプラチナ社会」の実現に向けた取り組みを一層加速させるための1年と位置付け、「ダイナミックやまなし総合計画」や「山梨県まち・ひと・しごと創生総合戦略」の実現に資する施策については、これを積極的に予算計上しております。

次に、平成29年度当初予算案のうち主なるものにつきまして、「ダイナミックやまなしプロジェクト」に基づく6項目に沿って、御説明申し上げます。
その第一は、「やまなし創生推進プロジェクト」についての施策であります。
これまでも「山梨県まち・ひと・しごと創生総合戦略」に掲げた施策を積極的に展開して参りましたが、明年度は、この取り組みを更に加速していくこととし、国の地方創生推進交付金を活用した事業について、五億円余を計上したところであります。
また、各地域県民センターに、県、市町村、地域住民などからなる「地域創生連携会議」を設置し、地域資源の発掘や地域課題に関する情報収集を行い、課題解決に向けた具体的な取り組みを検討し、官民協働で地方創生を一層推進して参ります。
更に、大村智人材育成基金による若者海外留学支援について、明年度から高校生の長期留学枠を拡大するなど、より幅広い若者に対して留学の機会を提供して参ります。

第二は、「基幹産業発展・創造プロジェクト」についての施策であります。
先ず、県経済を牽引する基幹産業の発展についてであります。
本県経済の発展と安定的な雇用を確保していくためには、基幹産業を維持発展させるとともに、新分野への進出などにより裾野の拡大を図り、グローバル化や景気変動の影響を受けにくい足腰の強い産業構造への転換を進めていく必要があります。
このため、今後成長が見込まれる燃料電池関連産業や医療機器関連産業などへの県内企業の参入や事業拡大を支援することによる正社員雇用の創造、成長分野を支える人材の育成確保、県内企業のIoTなどへの理解と導入の促進を図る、「やまなし新産業構造対応雇用創造プロジェクト」を明年度から三カ年にわたって展開して参ります。
また、企業立地の推進は、産業振興のみならず、人口減少対策の観点からも有効であります。
本県は、今後、中部横断自動車道などの整備により、交通アクセスが飛躍的に向上し、企業立地の可能性が高まると考えられる一方で、造成済みの工業用地が不足していることや、工場立地動向調査結果によれば、最近の企業立地は1ヘクタール程度の立地が主流であることを踏まえると、市町村が、適正規模の工業団地を効率的かつ迅速に整備できるよう、対応を進めることが重要であります。
このため、市町村が行う工業団地整備のための基礎調査や基盤整備に対する助成制度を創設するなど、市町村の企業誘致活動を支援して参ります。
併せて、商工業振興資金の企業立地促進融資について、全国トップレベルの水準に利率を引き下げるとともに、融資枠を10億円に拡大し、企業側の資金調達についても積極的に支援して参ります。
次に、自立・分散型エネルギー社会の構築についてであります。
水素を日常生活や産業活動で利活用する水素エネルギー社会の実現に向け、本県の今後の目標や取り組みの方向性を示した「やまなし水素エネルギー社会実現ロードマップ」を策定して参ります。
また、昨年11月、企業3社と協定を締結し、太陽光発電から得られた電力により、水素を製造、貯蔵及び輸送し、燃料電池自動車などに利用する「パワー・ツー・ガスシステム」の技術開発と実証研究を開始したところでありますが、明年度は、システムの基本設計を終え、実際に水素を発生させるために必要となる水電解装置の開発などに着手致します。
次に、産業を担う人材の育成と確保についてであります。
甲府工業高校に設置する全日制の専攻科については、新たに専用の校舎を建設することとし、明年度は、用地測量や校舎の設計に着手し、平成32年度の設置に向け、着実に準備を進めて参ります。
また、成長分野における人材の確保を支援するため、都内の理工系大学生などに、県内企業の魅力を伝え、本県への就職につなげていくためのコーディネーターを設置するとともに、合同就職面接会を開催して参ります。
加えて、特に、県内高校出身で県外に進学した学生に対しては、ユースバンクやまなしへの登録を積極的に呼び掛けるとともに、メールマガジンなどを通じて、面接会などの情報を積極的に発信し、学生と県内企業とのマッチングに向けた支援を強化して参ります。
次に、中小企業の成長と持続的な発展についてであります。
意欲ある中小企業・小規模企業が、自らの努力と創意工夫を基本としながら、持てる力を十分に発揮し、新しい価値の創出や生産性の向上を図っていくことが重要であります。
このため、明年度は、商工業振興資金の全てのメニューについて、貸付利率を引き下げ、中小企業の成長を金融面から強力に支援して参ります。
また、中小企業が抱える新商品開発、販路開拓などの諸課題に対し、商工団体などが連携して支援を行う体制を構築し、専門家チームの派遣のほか、商品開発や市場調査に要する費用に対し助成して参ります。

第三は、「地域産業元気創造プロジェクト」についての施策であります。
先ず、地域資源を最大限に活かす観光の推進についてであります。
観光産業は、農業や林業、地場産業など、多様な業種とのかかわりを持つ「裾野の広い産業」であり、地域活性化を考える上では欠かすことのできない重要な産業でありますが、生産性の向上や人材不足といった課題も表面化しております。
このため、本県観光産業の「稼ぐ力」や「働く魅力」を高めることを目的に、明年度からやまなし観光推進機構の組織体制を「観光地域づくり支援部」、「観光・物産PR部」、「ツーリズムビジネス活性化センター」に再編し、日本版DMOとして、観光産業のマーケティングや経営に対する支援を強化して参ります。
また、新たに、観光事業者のマーケティング戦略の策定などに要する費用を助成するとともに、専門家による経営改善のための講座を開設して参ります。
更に、スポーツによる観光振興を図るため、スポーツイベントなどの受け入れ支援をワンストップで行う窓口「スポーツコンシェルジュ」を観光部内に設置し、スポーツツーリズムを推進して参ります。
また、本県における昨年の山岳遭難数は、149件、160人と過去最多となっており、富士山を抱える日本有数の山岳県として、早急に対応を図る必要があります。
このため、登山の安全対策について、条例の制定を含めた検討を行って参ります。
次に、豊かな森林資源の利活用についてであります。
東京オリンピック・パラリンピック大会組織委員会が定めた木材の調達基準においては、選手村などの施設の建設材料や家具に使用する木材について、国産認証材を優先的に利用する方針が示されております。
本県の県有林はその約九割、14万3千ヘクタールにおいてFSC森林管理認証を取得しており、その面積は全国のFSC森林管理認証面積の36パーセントを占めております。
県ではこれを好機ととらえ、建設予定施設への県産FSC材の活用を、事業者などに対して幅広く働きかけて参ります。
また、地域の森林資源を地域内で活用する体制を構築し、間伐材など未利用材の有効活用を図るため、新たに、市町村などが行う未利用材の受け入れや集積のための施設整備を支援して参ります。
更に、クロアワビタケやダイオウなど新たな特用林産物の産地化や販路拡大に引き続き取り組んで参ります。
こうした取り組みにより、本県の豊かな森林資源を多岐にわたって活用し、地域経済の活性化へとつなげて参ります。
次に、高品質化・販路開拓による儲かる農業の展開についてであります。
東京オリンピック・パラリンピックにおいては、選手村などで提供される食材の調達基準として、農業生産工程管理の認証、いわゆるGAPの認証が要件となる見込みであり、これを契機に、今後、流通業者や消費者のGAPに対する認識が高まってくることが想定されます。
本県においては、これまで関係機関と連携しながら、GAPの導入に向けた検討を進めて参りましたが、明年度から新たに「やまなしGAP」の認証制度を開始することとしており、この認証制度を通じ、安全・安心な本県の農産物をPRすることで、産地競争力の一層の強化を図って参ります。
また、県立八ヶ岳牧場においては、現在実施している預託放牧に加えて、県産ブランド牛である甲州牛の増産が可能となるよう、和牛子牛を育成するための施設を整備して参ります。
更に、水産技術センターで開発したマス類の新魚や地中熱ヒートポンプを活用した夏秋イチゴなど、新たな特産品の開発を推進して参ります。
次に、活気に満ちあふれた農山村の創造についてであります。
農業を将来にわたり維持・発展させるとともに、美しい農村風景を守り育てていくためには、多様な担い手の確保を図る必要があります。
このため、新たに醸造用ぶどうの栽培体験などによる担い手の育成に取り組むとともに、引き続き、親元就農した農家子弟の規模拡大への支援、企業の農業参入の促進などを積極的に進めて参ります。
また、農家の営農意欲を維持し、耕作放棄地化を防止するためには、野生鳥獣による農林業被害を減少させていく必要があります。
被害の約6割を占めるニホンジカについては、これまで捕獲体制の強化を図ってきた中で、平成27年度末の推定生息数が、前年度の7万7千頭から7万1千頭へと調査開始以来初めて減少に転じ、着実に成果が現れているところでありますが、野生鳥獣による農林業被害額は約六億円に上り、依然として深刻な状況が続いております。
このため、明年度も本年度に引き続き、1万6千頭を目標に捕獲に取り組むこととし、平成35年度までに生息数の半減を目指して参ります。
併せて、捕獲に取り組む民間事業者の活用や、若手ハンターの確保を図り、今後の捕獲体制の強化も図っていくほか、捕獲後のシカ肉については、ジビエとして特産品化するための認証制度を明年度から導入し、地域資源としての有効活用を図って参ります。
次に、個性あふれる地場産業の振興についてであります。
世界に通用するワイン産地の確立に向けて、需要が拡大している醸造用ぶどうの生産拡大を図る必要があります。
このため、明年度から、民間による供給が不足している甲州種苗木の生産を新たに農業振興公社が行うとともに、荒廃農地などにおける醸造用ぶどうの作付け、栽培体験などによる新たな担い手の育成などに取り組み、醸造用ぶどうの生産拡大を進めて参ります。
併せて、醸造用ぶどう生産における収益向上を図るため、新植・改植時の未収益期間の短縮化や省力化などの技術開発にも引き続き取り組んで参ります。
県産織物については、本年度、ファッションやテキスタイルの業界で世界的な影響力を持つフランスの企業、トレンドユニオン社と産地が共同して行う生地の開発を支援して参りました。
同社は、世界の一流ブランドやデザイナーなどを対象に、この生地の発表会を、今月のパリを皮切りに世界の主要都市で開催しており、明年度も引き続き、産地の技術力などの県産織物の魅力を海外のデザイナーなどに対し発信して参ります。

第四は、「まなび・子育て環境創造プロジェクト」についての施策であります。
先ず、安心して子どもを産み育てられる社会づくりについてであります。
やまなし出会いサポートセンターによる結婚支援、不妊治療に対する経済的支援や安心して出産ができる体制の確立、産前産後ケアセンターによる出産前後の母親への支援、第二子以降三歳未満児の保育料の無料化による子育て世帯の経済的負担の軽減など、若い世代が将来に希望が持てる社会を構築するために、これまで、結婚、出産、子育てを通じた切れ目のない支援を講じて参りました。
明年度は、これを更に加速していくこととし、保育所などへの看護職員の配置を進め、体調を崩した子どもへの緊急的な対応が可能な保育施設を県内全域で増やすことにより、子育て中の不安や負担感を軽減し、仕事との両立をサポートして参ります。
また、病気などで集団保育が困難な子どもを、病院などに併設された専用スペースで看護職員が一時的に保育する事業、いわゆる病児・病後児保育事業については、全国で初めてとなる全県レベルでの広域利用の仕組みづくりを進めて参ります。
子どもの心のケアに係る総合拠点の整備については、本年度、地質調査や用地測量、各施設の基本・実施設計などに着手したところであり、明年度は、建設予定地内の職員研修所の移転・解体や埋蔵文化財調査などを実施して参ります。
また、施設の建設と併せて、医師や心理士などの専門スタッフの確保を図るとともに、医療、福祉、教育などの関係機関との全県的な支援ネットワークの構築を進め、全国に先んじた高度な支援体制を整備して参ります。
更に、高校入学に際しては、授業料に加え、制服の購入など入学準備に多額の経費を要することから、経済的に余裕のない世帯に対し、国の奨学給付金に加え、県独自に給付金を支給して参ります。
こうした取り組みを通じて、「日本一健やかに子どもを育む山梨」の一層の充実を図って参ります。
次に、個性と学力を伸ばす教育の充実についてであります。
昨年の全国学力・学習状況調査において、本県は、一部の教科で改善は見られたものの、依然、全8科目のうち6科目で全国平均を下回っており、学力向上は、早急に対応すべき課題であります。
このため、本年度から、授業改善、教員の資質向上、家庭・地域との連携の三つの視点による学力向上総合対策に取り組んでいるところでありますが、明年度においても、本県独自で実施している学力調査の早期分析による授業改善、小中学校の連携の在り方に対する研究、中堅教員を対象とした研修の実施、家庭学習の習慣化を図るための事例集の作成などを通じ、これを強力に推進して参ります。
また、教員の多忙化を解消し、子どもと向き合う時間が十分に確保できるよう、新たに、公立中学校の教員に代わって休日の部活動指導を行う顧問の任用を支援して参ります。
次に、やまびこ支援学校の移転整備についてであります。
やまびこ支援学校は、開校から37年が経過し施設の老朽化が進んでいることや、傾斜地における移動時の安全確保など、教育環境の面で課題があることから、大月市猿橋町桂台地区へ移転整備することとし、平成32年1月の移転を目指し、明年度は、用地測量や設計に着手して参ります。
次に、スポーツ・文化の振興と魅力の発信についてであります。
2020年東京オリンピック・パラリンピックや2019年ラグビーワールドカップ日本大会の開催に当たり、陸上競技やラグビーの事前合宿の会場として期待されている富士北麓公園について、明年度、フリーウエイトトレーニング室、屋内練習走路などの整備を実施して参ります。
このうち、屋内練習走路については、CLT工法による建築物として全国有数の規模となるものであり、今後、積極的にPRを行って参ります。
また、明年1月から2月にかけて、本県において開催される国民体育大会冬季大会及び全国高等学校総合体育大会スケート競技大会については、競技団体など関係機関と密接な連携を図りながら、大会の成功に向けて万全の準備を進めて参ります。

第五は、「健やか・快適環境創造プロジェクト」についての施策であります。
先ず、安心して暮らせる地域づくりについてであります。
高齢者の方々が自宅や住み慣れた地域で安心して生活ができるよう、地域全体で介護を支える体制づくりを推進していく必要があります。
このため、市町村介護保険事業計画に基づく介護施設などの整備を推進するとともに、在宅療養者などを支援するため、訪問看護・訪問介護を24時間必要に応じて提供するサービスの普及促進を図って参ります。
また、在宅介護と在宅医療におけるそれぞれの多職種が、効果的に連携し、在宅療養者の症状などに応じたきめ細かなサービスを提供するための人材育成を進めて参ります。
次に、自殺対策についてであります。
山梨県自殺対策に関する条例の趣旨を踏まえ、昨年12月に山梨県自殺対策推進計画を策定したところであり、明年度は、計画に掲げた目標の達成に向け、市町村や関係機関との連携を強化しつつ、県民運動を展開する民間団体への支援を拡充するなど、官民一体で自殺対策を推進して参ります。
次に、県民の健康増進と医療の充実についてであります。
日本一である本県の健康寿命の更なる延伸を目指し、これまで、都道府県で初の取り組みとなるピロリ菌除菌治療費への助成による胃がん予防のほか、子宮頸がん検診の受診率向上対策、肝炎陽性者の早期発見・早期治療への取り組み、生活習慣病への対策などを積極的に進めて参りました。
これらに加え、明年度は、本年度中に策定する第二次肝炎対策推進計画に基づき、新たにC型肝炎治療終了者のフォローアップに取り組むなど、肝炎対策の一層の充実を図って参ります。
また、昨年の六月定例県議会における子宮頸がんワクチンの被害者救済などを求める請願の採択を踏まえ、医療費などを給付する本県独自の救済制度を創設し、ワクチン接種後に健康被害が生じた方の救済を図って参ります。
次に、「やまなしライフ・ワークスタイル」の推進についてであります。
東京有楽町に設置しているやまなし暮らし支援センターについては、引き続き、市町村と一体となったオール山梨での移住セミナーや相談会を開催し、一層の利用促進を図るほか、首都圏での積極的なPRなどを通じて、本県の魅力を強力に発信して参ります。
また、人口減少対策の推進に当たっては、将来の山梨を担っていく若年層に向けて、重点的に働きかけを行っていくことが効果的であると考えております。
このため、明年度、進学を契機とした若年層の県外への転出を抑制するため、新たに、県外の大学などに通う学生に対して通学定期券の購入費用を助成する市町村を支援するほか、県内の高校や大学などに通う学生に対して、本県で暮らすメリットや魅力についての情報発信を行って参ります。
また、首都圏のIT企業などをターゲットとして、サテライトオフィスの誘致を進めて参ります。

第六は、「安全安心・交流基盤創造プロジェクト」についての施策であります。
災害に強い県土・地域づくりについてであります。
昨年四月に発生した熊本地震を踏まえ、12月に県防災会議地震部会から提出された報告書では、熊本地震への対応において、避難所運営体制や支援物資の供給体制、全国各地からの支援チームの受け入れ体制の三点について課題があったことが指摘されております。
このうち、避難所運営体制については、避難所運営マニュアルの基本モデルを年度内に作成することとしており、明年度は、市町村と共同して、この基本モデルを活用しながら各避難所における自主運営体制の強化を図るほか、地域防災リーダーなどの育成を一層進めて参ります。
支援物資の供給体制については、運送事業者などで構成する検討会において、より実効性の高い体制の構築に向けた検討を行っており、年度内には骨子を取りまとめて参ります。
支援チームの受け入れ体制については、災害時に円滑に支援チームをコーディネートするための受援計画を年度内に策定し、明年度は、医療救護活動の調整などを担う災害医療コーディネーターの養成や、被災者に対し統一的・継続的な心のケアを提供するためのマニュアルの作成を行って参ります。
また、災害時における情報の収集・共有・提供を迅速かつ適切に実施するための総合防災情報システムについては、来月1日から運用を開始して参ります。
今後は、災害対応が一層円滑に実施できるよう、県地域防災計画を年度内に改正し、市町村と連携を図りながら、本県の防災体制強化に鋭意取り組んで参ります。

以上の内容をもって編成した結果、一般会計の総額は、4604億円余となっており、本年度当初予算と比較して、1.3パーセントの減となっております。
この財源と致しましては、地方法人特別譲与税を含む実質県税1048億円余、地方交付税1287億円余、国庫支出金502億円余などのほか、臨時財政対策債を含めた県債569億円余を計上しております。

次に、条例案のうち、主なるものにつきまして申し上げます。
山梨県市町村振興資金条例の改正についてであります。
先ほど申し上げました、市町村振興資金の元利補給金の交付対象となる事業に、リニア中央新幹線の建設を促進するための事業を追加するものであります。

最後に、平成28年度2月補正に係る提出案件について御説明申し上げます。
先ず、補正予算のうち主なるものにつきまして申し上げます。
社会福祉法人が行う障害者支援施設の移転改築に対し助成する経費を計上致しております。
また、農産物の産地競争力の強化を図るため、高収益化や低コスト化に向けた取り組みに対し助成する経費を計上致しております。
また、今回の補正予算案につきましては、事業費の確定による減額補正などにより、財源対策による基金の取り崩し額をできる限り削減した結果、本年度の基金の取り崩し額は、当初予算計上額の160億円から35億円となり、平成28年度末の主要基金の残高は、運用益と合わせて640億円余となります。

以上の結果、一般会計の補正額は146億円余の減額となっております。
その他の案件につきましては、いずれも、その末尾に提案理由を付記しておりますので、それによりまして御了承をお願い致します。
私が知事に就任して、三年目の県政がスタート致します。
2017年は私の干支にもあたる、「丁(ひのと)酉(とり)」の年であります。
「鳥の目」を持ち、大きな歴史の流れや国際情勢、また、10年先、20年先の山梨の将来の発展に思いを馳せながら、本県が抱える課題を積極果敢に解決して参る所存であります。
山梨を守り、発展させていくとの固い決意のもと、全身全霊を傾け、努力して参る所存でありますので、議員各位をはじめ、県民の皆様の一層の御理解と御協力を賜りたいと存じます。
なにとぞ、よろしく御審議の上、御議決あらんことをお願い申し上げます。

 平成29年2月17日

 山梨県知事  後 藤 斎

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