Vol.38 【市議会議員】勉強だけでなく、議員になろう! |
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今回のゲスト
《山梨市議会議員》小野 鈴枝さん(山梨市) |
女性も政策決定の場に
現在、山梨市議会議員の小野さんは、以前は夫が起業した建設会社に社員として働きながら、PTAや地域活動にも積極的に関わっていく毎日を過ごしていました。
2人の子供の幼稚園から中学校までPTA役員を引き受け活動しながら、昭和63年、他地域で始まった子ども劇場を、是非とも地域の子どもたちのためにつくりたいと、「峡東子ども劇場」を立ち上げました。このような活動をしているなかで、市役所へ何回か訪れた際に、「私たちのような女性のための窓口がほしい。」と話したところ、職員に「窓口をつくってほしいじゃなくて、女性の議員を出せばいいんだよ。」と言われたことが、強烈な記憶として残っているそうです。
平成10年、議会に女性を送り出そうという自主勉強会「リメイク・ノウソン」がメンバーを募集しており、即座に応募し参加しました。そして、「やまなし女性県議会」にも応募し参加。これまでの社会問題についての学習から、それらに対する実際の施策を学び、また、多くの女性たちと関わったことで、新たな思いも湧き上がってきたといいます。
みんなで学ぶための学習会。家族へ思いを伝え、そして議員へ
「私一人が学んだって意味がない。自分が学んだことを今度は地域の人と共有し、共に学び合いたい。」と地域の仲間たちが集まり学び始めます。当時話題となっていた環境問題や雇用機会均等、介護保険についてなど、市職員などにお願いし勉強を続けました。
そのような中、統一地方選挙の話題が出て、「この学習会の中から、女性が一人もいない山梨市議会に候補者を立てよう。」ということになり、それぞれの思いを話し合い、全員が一致した意見で、小野さんが立候補することになりました。
「俺のご飯はどうなる!」。家族に相談した小野さんが、義父にまず言われた言葉でした。夫も、これまで小野さんが外で活動していることについては、「勉強するのは良いことだ」と言っていましたが、立候補については、「勉強とは違う。なぜお前なのか!」との第一声でした。小野さんを応援するメンバーが家族に伝える熱意と、「あくまで挑戦することにこそ意義がある」という小野さんの固い意思に、家族は、「出るからには応援する。落ちたらこの地に住めない。」などと言いながら、家族挙げて応援してくれました。特に義父は指南役となり、メンバーだけでは気づかないような助言が多くあったそうです。
仲間たちとの学習会は「鈴の会」へと発展し、政党組織によらない手づくりの選挙活動を実践。「無我夢中だったけれど、充実して楽しかった。」と小野さんは言います。平成11年4月、小野さんは初当選を果たしました。その時、山梨市にはなんと3人の女性議員が誕生したのです。
選挙活動、そして議員活動を通じて、小野さん自身を一番認めてくれたのは義父だったといいます。初当選後、2期目の選挙を4月に控えた11月、病気療養中の義父を看病していました。「次の選挙には出られないかもしれない」と悩んでいた小野さんに、義父が突然、「家の仕事がどうとか関係ない、お前はお前で、自分の信念があるなら議員を続けるべきだ。迷わずに選挙に出るべきだ。」と言ってくれたそうです。「この言葉がいまでも私を支えてくれている。」と小野さんは言います。「私を、そして、私の仲間を認めてくれた。そう思えました。」
地域活動として「やまなしし朝の市の会」
小野さんが、地域で特に取り組んでいることの一つに環境問題があります。地域の仲間と地元の業者にお願いし、ゴミを分別すると廃棄物がどれくらい減少するかを実験したことがあります。数字で示すとわかりやすく、ゴミの分別の必要性が実感でき、理解を得やすかったそうです。
また、学習会で「山梨市の活性化」「まちづくり」を取り上げたところ、現実的なアイディアがたくさん出て、「ここまで皆が考えているなんて!何かできるかもしれない。」となり、幅広く声かけをしたところ、「やまなしし朝の市の会」が立ち上がりました。月に一度、山梨市駅前の夢の実広場で農産物や雑貨、陶器などを持ち寄り、朝市を開催したところ、駅前がひととき賑わいをみせました。回を重ねるごとに参加者やお客様がしだいに増えていき、やがて販売だけでなく、ウォーキングやミニ講座など多彩なイベントも始まり、週末の顔となりました。平成19年10月には、メンバーの思いと利用者の願いが地域の協力につながり、常設店舗「ひとやすみ」をオープンすることができました。
「『この地の仲間とお店を持ちたい』という気持ちは、以前から持ち続けていた思い」だったという小野さんは、このコミュニティビジネスといえる場が山梨市の活性化につながってほしいと願っています。「ひとやすみ」にはレンタルスペースがあり、ミニショップを開店できます。「ここから更に起業へと発展していけば、こんなにうれしいことはない。それこそ目的とするところです。」と小野さん。「特に女性が、持てる能力に気づき、経済的に自立するきっかけとなるような新たな場を作れたら。」と更なる展望があるといいます。
小野さんからのメッセージ
先ず、思いを声に。そして、勇気を持って行動すること。常に仲間とともに楽しむ心も持ちましょう。
やまなしし朝の市の会(常設店舗:「ひとやすみ」)
毎月第二日曜日にJR山梨市駅前で開催。H19.10、駅前通りに店舗「ひとやすみ」をオープン。
〒405-0018 山梨市上神内川74-4
電話番号:080(5042)1083 (代)
(取材日 平成20年3月26日)
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小野さんのこれまで
昭和58年に夫が起業、そこで会社員として働き始める。同時に、PTA役員を積極的に引き受けて活動する。更に地域の子どもたちのために峡東子ども劇場を立ち上げる。その後、「リメイク・ノウソン」、「やまなし女性県議会」に参加し、社会の諸問題について学習を始める。
学んだ知識や情報を地域の女性たちと共有するため、学習会を開催する(後の「鈴の会」)。市議会議員として立候補を決意し、当初は反対だった家族の理解を得て、平成11年4月の統一地方選挙で初当選。
平成17年10月「やまなしし朝の市の会」を立ち上げる。平成19年10月には、常設店舗「ひとやすみ」をオープン。