トップ > 組織案内 > 山梨県産業技術センター > 山梨県産業技術センタープロポーザル > 山梨県産業技術センタープロポーザルR0810
ページID:128017更新日:2026年10月14日
ここから本文です。

【山梨県産業技術センタープロポーザル】
産業技術センターをより活用していただくため、センターの研究や設備などをわかりやすく紹介します。
当センターでは、県内企業の製品開発や品質評価、試作支援などを目的として各種機器を整備しています。
今回、丹波山村役場様からのご相談を受け、特産品である原木舞茸のレプリカ製作に取り組みました(写真1)。製作に使用したX線CT検査装置及び樹脂インクジェット3Dプリンターの活用事例としてご紹介します。
![]() |
![]() |
写真1:X線CT検査装置で取得した三次元データを基に、樹脂インクジェット3Dプリンターで造形し、着色を施した原木舞茸レプリカ(本物に見えますが、2枚の写真とも今回製作したレプリカです。)
丹波山村の特産品である原木舞茸は、両手で支えるほどの大きさと重みがあり、一つひとつ形状が異なることに加え、複雑に入り組んだひだや重なりが特徴です。
見本展示に活用できるレプリカの製作を検討する中で、「実物の特徴をできるだけ忠実に再現したい」というご要望がありました。
当初は3Dスキャナによる形状取得も考えられましたが、舞茸特有の複雑なひだが重なった内側までを精度よく計測することは容易ではありません。そこで、対象物の内部構造を非破壊で三次元データ化できるX線CT検査装置を活用し、得られたデータを樹脂インクジェット3Dプリンターで造形することで、実物に近い形状の再現を目指しました。
■非破壊で三次元データを取得できるX線CT検査装置
富士技術支援センターに導入されたX線CT検査装置(テスコ(株) TXS-CTN 300 micro、写真2)は、試料にX線を照射し、取得した断層画像から三次元データを生成する装置です。最大管電圧300kVのマイクロフォーカスX線源を備え、機械部品や電子部品、樹脂製品などの内部構造や材料欠陥の観察・評価に活用されています。

写真2:X線CT検査装置(テスコ(株) TXS-CTN 300 micro)
この装置は、製品を破壊することなく内部形状を把握できることが大きな特長です。品質評価や不良解析、設計検証など、ものづくりのさまざまな場面で活用されています。
本事例において、原木舞茸はひだが複雑に入り組み、3Dスキャナによる測定では形状把握が難しい対象でした。そこで、X線CT検査装置を用いることで、その特徴的な形状を三次元データとして取得することができました(写真3)。普段は工業製品の内部構造評価などに活用している装置ですが、複雑な自然物の形状取得にも有効であることが確認できました。
![]() |
![]() |
写真3:X線CT検査装置で取得した三次元データ
■高精細な立体造形を実現する樹脂インクジェット3Dプリンター
甲府技術支援センターに設置されている樹脂インクジェット3Dプリンター(Stratasys J850 Prime、写真4)は、三次元データをもとに高精細な立体モデルを造形する装置です。フルカラー造形や透明材料、柔軟材料にも対応しており、製品開発におけるデザイン確認や試作品の製作などに活用されています。また、最小積層ピッチ0.014mmの高い造形性能により、複雑な形状や微細な表面形状の再現が可能です。

写真4:樹脂インクジェット3Dプリンター(Stratasys J850 Prime)
取得した原木舞茸の三次元データを用いて造形を行った結果、舞茸特有の繊細なひだや重なりを高精度に再現することができました(写真5、6)。また、造形にはゴムのような柔らかさを持つ特殊な樹脂を使用し、見た目だけでなく触感についても舞茸特有の柔軟性を感じられるようにしました。
3Dプリンターでは、モデルの造形を支えるためのサポート材も同時にプリントされます。そのため、取得したデータをそのまま造形すると、入り組んだ内側のひだ部分に配置されたサポート材を除去できなくなります。また、造形物の重量も増加するため、外観から見えにくい内部については中空構造となるよう形状を一部編集しました。その結果、見た目を損なうことなく造形性や実用性を確保できるようになりました。このように、プリントデータの作成にはさまざまな工夫を施しました。
![]() |
![]() |
写真5:3Dプリンターで造形中の原木舞茸レプリカ
![]() |
![]() |
写真6:3Dプリンターでの造形が完了した原木舞茸レプリカ
■産業用途で培われた技術の応用事例
X線CT検査装置による三次元計測と、樹脂インクジェット3Dプリンターによる高精細造形を組み合わせることで、実物の特徴を忠実に再現したレプリカを製作することができました。
これらの装置は本来、機械部品や電子部品、樹脂製品などの設計・開発・品質評価を支援するためのものです。本事例は、その技術を応用することで複雑な形状を持つ対象物の高精度な再現が可能であることを示した一例となりました。
■丹波山村役場ご担当者様からのコメント
収穫期間が極めて短く、収穫時の状態での保存が難しい原木舞茸を、産業技術センターの高い技術によって忠実に再現していただくことができました。
見た人に「本物ですか?」と驚かれるほどの想像以上の仕上がりに大変満足しています。
丹波山村の原木舞茸の魅力をより多くの方に知っていただけるよう、レプリカを活用していきたいと思います。
■連絡先
X線CT検査装置:富士技術支援センター 機械電子技術部(TEL:0555-22-2100)
樹脂インクジェット3Dプリンター:甲府技術支援センター デザイン技術部(TEL:055-243-6111)