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ページID:121364更新日:2025年6月23日
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【山梨県産業技術センタープロポーザル】
産業技術センターをより活用していただくため、センターの研究や設備などをわかりやすく紹介します。
産業技術センターでは、山梨県産のブドウを用いたブレンド技術に関する研究成果を活用し、‘甲州’と‘プティ・マンサン’という2つのブドウ品種を用いたブレンドワインを試作しました。
山梨県を代表する白ワイン用品種‘甲州’の繊細な香りと、近年、本県に適した品種として注目される品種’プティ・マンサン’のシャープな酸味が調和したワインが製造できました。
産業技術センターでは、令和3年度から令和5年度にかけて「山梨県の新しいブレンド白ワインに関する研究」という研究テーマで、山梨県の主要品種‘甲州’を主体としたブレンド白ワインの開発について研究を行いました。
この研究では、山梨県で栽培されている様々な白ワイン用ブドウ品種を用いて、品種ごとに白ワインを醸造し、‘甲州’とブレンドすることで、調和のとれた新しいブレンド白ワインを開発することを目的としました。‘プティ・マンサン’は研究実施当初から研究対象の候補として挙がっていたものの、当時は生産量も少なく、原料調達が不可能であったため、試験醸造およびブレンドワインの試作が出来ませんでした。
今回、‘プティ・マンサン’の入手が可能となったことから、県産の‘プティ・マンサン’の栽培・醸造を検討されている県内ワイナリー等への技術支援を目的として、‘甲州’と‘プティ・マンサン’を用いたブレンドワインの製造技術を検討しました。
■開発の概要
◯山梨を代表する品種‘甲州’と近年国内で栽培面積が増加している‘プティ・マンサン’
‘甲州’のワインは、近年の高品質化に伴い、フレッシュで旨味のあるワイン、樽を使った重厚感のあるワイン、柑橘系の爽やかな香りがするワイン、軽快なスパークリングワインや味わい深いオレンジワインなど多様な製品が開発されています。主にフレッシュな柑橘系の香りと軽やかで穏やかな酸、ピュアで繊細な味わいが、出汁や素材の味を活かした和食に合うワインとされています。
一方で、近年の気候温暖化・猛暑化に伴い、原料ブドウの酸が減少しやすい傾向があるとされ、酸が低いワインは、場合によって味わいの薄いワインと評価されてしまうこともあります。今回のフォローアップ事業では、‘甲州’の特徴を活かしつつ、温暖な山梨県の気候でも高い酸味を確保できるとされる‘プティ・マンサン’に着目しました。
プティ・マンサンは、南フランス・ピレネー山脈の麓が原産とされ、小粒で房が小さく、雨に強いため、高温多湿である日本においても高い糖度・酸度の両立が可能であるとされています。国内では2006年に栃木県で初めて栽培が始まり、近年、山梨県でも栽培するワイナリー数が増加しています。
供試した原料ブドウの外観(左:プティ・マンサン、右:甲州)
ブレンドワインのイメージ図
試験区名 | A | B | C | D | E | F |
---|---|---|---|---|---|---|
プティ・マンサン | 100% | 60% | 45% | 30% | 15% | 0% |
甲州 | 0% | 40% | 55% | 70% | 85% | 100% |
今回は山梨市で栽培された‘プティ・マンサン’と甲州市で栽培された‘甲州’を用いて原酒ワインを製造し、4種類のブレンドワインを試作しました。成分分析および官能評価から、‘甲州’の繊細な香りと、’プティ・マンサン’のシャープな酸味が調和したワインが製造できたことを確認しました。
◯県産ブドウを用いたワインの品質を客観的に(数値で)捉える
ワイナリーでは、新しくワインを作ってみたい品種があっても、すぐにブドウを調達することは困難です。醸造用ブドウを新しく栽培するには新しい畑も必要となり、さらに醸造用に十分な量を確保するまでには、一般的に植樹から3~5年かかるとされています。加えて、農作物であるブドウの品質は、その土地の土壌や気候に大きく影響を受けるため、実際にワインになったとき、思ったほどの品質を確保できていない可能性もあります。
産業技術センターでは、ワイン醸造に関する技術情報を客観的に数値で捉えられる様に、様々な試験醸造や成分分析を実施しています。
■担当からひと言
今回は、近年、山梨県で注目される品種の一つである‘プティ・マンサン’を用いた試験醸造を行いましたが、「山梨県の新しいブレンド白ワインに関する研究」では、従来から県内でも栽培されている‘デラウェア’や‘シャルドネ’、‘ソービニヨン・ブラン’等、のべ11品種について検討し、醸造に関するデータを報告しています。
本県のブレンド白ワインに関する検討は始まったばかりですので、本研究のデータを、ワインの品質向上ためのソースの一つとし、是非ご活用いただければ幸いです。
■連絡先
ワイン技術部
TEL 0553-44-2224