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ページID:123571更新日:2025年11月19日
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【山梨県産業技術センタープロポーザル】
産業技術センターをより活用していただくため、センターの研究や設備などをわかりやすく紹介します。
2025年10月15日(水曜日)、当センターと株式会社大沼デザインスタジオが共同開発した「ほうとう用鋳物鍋(製品名:甲州鉄器『ぐつぐつ』)」が、2025年度グッドデザイン賞を受賞しました。
本製品は、山梨の郷土料理「ほうとう」を現代の暮らしに調和させるために開発された鋳物鍋です。山梨県の伝統的な食文化と地場の技術を融合させた“山梨らしさ”あふれる地方創生型プロダクトとして高く評価されました。


■開発の背景
◆ 山梨の暮らしと歴史を活かした製品づくり
本製品の開発は、当センターが令和3~5年度に実施した調査研究「山梨固有のデザインソースの集積と『山梨らしさ』を付加価値とした製品開発」に基づいています。
この研究では、「山梨の暮らし」が自然や文化の豊かさを感じさせる“上質で新しい贅沢”として、多くの人々に受け入れられていることが明らかになりました。
また、山梨県には、南部鉄器の源流とも言われる鋳物職人の歴史があり、こうした地域の技術と文化を活かした新たな価値創造を目指し、江戸時代の旅日記にも登場する郷土料理「ほうとう」に着目しました。
◆ 郷土料理 × 地場産業の新たな挑戦
「ほうとう」は、かぼちゃや根菜、きのこなどを太麺とともに煮込む山梨の代表的な郷土料理ですが、これまで専用の調理器具は存在していませんでした。
そこで当センターは、地元密着型の技術支援機関として、地元の鋳造技術と食文化とを融合させ、現代の暮らしに馴染み、長く使える鋳物鍋の開発に取り組みました。
この取組は、郷土の伝統を未来へつなぎ、日常生活に新たな“作法”を提案する「山梨らしい」プロダクトの創出です。

■製品の特長
◆ 軽量で高機能な「偏肉構造」
鋳物鍋の課題である「重さ」を克服するため、鍋底部は4mm、口縁部はわずか1.5mmという極限の薄さに挑戦した「偏肉構造」を採用。これにより、同サイズの鋳物鍋と比べて30%以上の軽量化を実現しながら、優れた熱効率と保温性を両立しました。
この構造を実現するため、3D CADと3Dプリンターを活用し、従来は職人の勘に頼っていた鋳造設計を精密に可視化・検証。高精度な製品化を可能にしました。

◆ 日常使いに配慮した多機能デザイン
本製品は、日々の使い勝手を追求した細やかな工夫が評価されました。
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●吹きこぼれを防ぐ独自設計の蒸気弁: 上蓋を回すことで蒸気の排出量を調整できる独自の蒸気弁構造を開発しました。吹きこぼれの心配なく、安心して煮込み料理ができます。 |
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●衛生的で自立する上蓋: 上蓋は、一般的な木蓋とは異なり、具材が触れにくいよう中央が膨らんだ形状で衛生的です。さらに、使用中に上蓋をテーブル等に置く際に、蓋裏についた水滴がこぼれにくい縁形状も備えています。 |
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●カトラリーを「ちょい置き」できる取手: 持ちやすさを追求した取手は、調理中に菜箸やヘラなどを一時的に置けるスペースとしても機能します。 |
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●多様な料理と熱源に対応: ほうとうなどの煮込み料理だけでなく、焼く・蒸す・炊くといった幅広い調理に対応します。熱源も、直火とIHの両方でお使いいただけます。 |
■製品情報(参考)
■担当者からのメッセージ
このたびのグッドデザイン賞受賞は、私たちの技術とデザインへの挑戦が評価された結果であり、大変光栄に思います。
本製品は意匠権を取得しており、今後は、製造を希望するメーカーへのライセンス提供を通じて、製品化を進めてまいります。
また、この鍋が単なる調理器具にとどまらず、製造業者、食品加工業者、農業者、教育機関など多様な分野と連携し、新たな食文化や暮らしの作法を生み出すきっかけとなることを期待しています。
当センターはこれからも、地域に根ざした公設試験研究機関として、地場産業の技術と山梨の魅力を掛け合わせた新たな価値づくりに挑戦し続けてまいります。
■連絡先
デザイン技術部
TEL 055-243-6111(代)