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ページID:126274更新日:2026年6月8日
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【山梨県産業技術センタープロポーザル】
産業技術センターをより活用していただくため、センターの研究や設備などをわかりやすく紹介します。
産業技術センターでは、宝石鑑別におけるAIの実用化に向けて、様々な照明、カメラ環境下でも、宝石に内包されるインクルージョンを自動で検出できるAIの開発に取り組みました。
実際に使用する顕微鏡に合わせた“データ拡張”を適用することで、従来よりもAIの性能を向上させることに成功しました。
産業技術センターでは令和5年度~6年度にかけて「宝石鑑別支援ツールの開発」という研究テーマで、宝石に内包されるインクルージョンを自動で検出するAIを開発しました。
宝石の内部には他の鉱物結晶や液体・気体の二酸化炭素、水などが含まれていることがあり、これらはインクルージョンと呼ばれます(図1)。これらインクルージョンは産地や処理を推定するヒントを与えるため、宝石鑑定士は宝石顕微鏡を使用して宝石内部のインクルージョンを観察します。これまでの研究では、YOLOというAIにルビーの顕微鏡観察像を学習させ、インクルージョンの大まかな分類が可能であることを確認しました。しかし、AIの学習に用いた画像とAIの性能評価(テスト)に用いた画像はいずれも同じ顕微鏡で撮影しており、異なる顕微鏡で撮影した画像ではAIの性能が著しく低下していました。

図1 宝石中のインクルージョンの一例(結晶インクルージョンの一種であるカルサイトが確認できる)
そこで、成果普及につなげるため、フォローアップ事業により、異なる宝石顕微鏡でも利用可能なAIの開発を行いました。
■事業概要
一般的にAIの学習には大量のデータが必要となりますが、インクルージョンには多くの種類があるため大量の画像を集めることは困難です。そこで、本事業ではこれまで不足していたインクルージョンの画像を重点的に収集するとともに、画像処理によって元データを水増しする“データ拡張”を行いました。
データ拡張では最初に学習画像とテスト画像の色相や明度などヒストグラムで比較し、それぞれの特徴を可視化しました。今回、テスト画像は共同研究者から提供された画像とし、異なる顕微鏡への汎用性を評価できるようにしました。図2は学習画像とテスト画像の色相(Hue)のヒストグラムです。学習画像は0°付近で赤系の色相、テスト画像の最頻値は330°付近で紫系の色相であることが分かります。したがって、画像処理により学習画像の色相を30°変えればテスト画像の色相に近づけることができます。このようにして、学習画像とテスト画像の特徴を明らかにし、それに適した画像処理を施すことでデータ拡張しました。


図2 学習画像とテスト画像の色相のヒストグラム
次に、光学顕微鏡で撮影した元画像と、データ拡張で生成した画像を合わせてYOLOに学習させました。事業開始時点の従来のAIと新たに学習したAIのそれぞれでテスト画像の予測をさせたところ、正解率は従来よりも5ポイント以上改善し、データ拡張の効果が確認されました。
■担当からひと言
製造業においては、製品の異常検知などでAIの活用が進められていますが、宝石は形状や色、大きさが様々で工業製品とは性質が異なります。また、宝石顕微鏡による観察では複数の照明を使い分けるなど特殊な環境と言えます。
宝石鑑別におけるAIの活用はまだまだ進んでいませんが、今回得られた知見が宝石鑑別におけるAI普及に寄与できれば幸いです。
■連絡先
甲府技術支援センター
食品酒類・研磨宝飾技術部 研磨・宝飾科
TEL 055-243-6111