ページID:63725更新日:2014年12月10日

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平成26年12月定例県議会知事説明要旨

平成二十六年十二月定例県議会の開会に当たり、提出致しました案件のうち、主なるものにつきまして、その概要を御説明申し上げますとともに、私の所信の一端を申し述べ、議員各位並びに県民の皆様の御理解と御協力をお願い申し上げたいと存じます。

先ず、当面する県政の課題について申し上げます。

はじめに、防災体制の再構築についてであります。

先の豪雪災害を受け、県議会や「山梨県防災体制のあり方検討委員会」等からいただいた御提言などを踏まえ、本県の防災体制の見直しの作業を進めて参りましたところ、去る十月に開催した県防災会議において、地域防災計画の改正案を御了承いただきました。

現在、災害対策本部の運営体制や情報収集体制の強化などに鋭意取り組んでいるところであり、県民の皆様の安全・安心の確保に向け、不断の取り組みを進めて参りたいと考えております。

次に、富士山火山防災対策についてであります。

本年二月に「富士山火山防災対策協議会」において策定した広域避難計画の実効性を検証するため、先般、山梨、静岡、神奈川三県合同の防災訓練を実施致しました。

これまでは、火山性微動など噴火の予兆を捉え、それに基づく噴火警戒レベルに応じ、地域住民等の避難対応を行うという前提で火山防災対策を検討して参りましたが、一方で、本年九月に発生した御嶽山の噴火を踏まえ、突発的な噴火への対策を講じることも必要と考えております。

このため、今後は、国や関係機関、火山専門家等と連携し、突発的な噴火の際の対応についても検討して参ります。

また、噴火時の避難ルートの検討に要する経費など、県として早急に対処すべきものについては、所要の経費を計上致しております。

次に、富士山の保全状況報告書等への取り組みについてであります。

ユネスコから平成二十八年二月一日までの提出を求められている保全状況報告書については、その骨子となる来訪者管理戦略等の各種方針に関し、専門家から成る学術委員会での検討や、国や静岡県、地元関係者等との協議を重ねて参りました。

今月末には、富士山世界文化遺産協議会において、各種方針についての最終的な取りまとめがなされる予定であります。

また、「山梨県世界遺産富士山基本条例(仮称)」については、骨子案をまとめ、現在、パブリックコメントを実施致しております。

パブリックコメントで寄せられる県民の皆様からの御意見や静岡県との調整等も踏まえながら、条例制定の作業を進めて参ります。

次に、豪雪により被災された農家への支援についてであります。

先の豪雪により被災された農家の経営再建が迅速に進むよう、現在、施設復旧対策や減収対策などの様々な支援を全力で実施しております。

これまでに、ハウスの再建などを支援する国の被災農業者向け経営体育成支援事業費補助金について、農家からの要望額を全額確保致しました。

既に、野菜や花きの大型ハウスについては再建が進んでおり、野菜ではキュウリやトマト、花きではミニシクラメンなどが盛んに出荷されております。

現在、果樹ハウスの再建を鋭意促進しているところでありますが、復旧作業については長期化が見込まれることから、今後も、国に対し、複数年での支援の継続を強く働きかけるとともに、市町村、農業団体等との連携を一層強化し、円滑に経営再建が図られるよう、被災農家の支援を進めて参ります。

次に、リニア中央新幹線の開業に向けた取り組みについてであります。

去る十月十七日、国土交通大臣からJR東海に対し、工事実施計画の認可が行われました。

中央新幹線が基本計画路線に決定された昭和四十八年から四十一年という長い期間を経て、夢のプロジェクトが現実のものとなりました。

こうした中、JR東海からは県に対し、円滑な用地取得に向けての協力要請があり、先月十一日、JR東海と用地取得事務の受託に係る協定を締結したところであります。

今後は、JR東海と連携を図りながら、地域の皆様に事業内容などを丁寧に説明し、用地提供等の協力をお願いすることとなります。

また、用地取得などの業務を迅速かつ効率的に行えるよう万全の体制で臨むこととし、明年度から沿線に近い中央市に用地事務所を設置して参りたいと考えております。
さて、先月からは、山梨リニア実験線において、一般の方々を対象とした体験乗車が始まったところでありますが、県では、リニア実験線の建設に当たり様々な協力をいただいている県民の皆様に対し、一般の体験乗車とは別枠でリニアを体験できるよう、JR東海に要望して参りました。

要望の結果、明年度には、県民の皆様が優先的に体験乗車できる機会が提供されることとなりました。

このため、具体的な応募方法等を検討の上、公募することとし、明年二月から募集を開始したいと考えております。

次に、産業の振興についてであります。

先ず、ミラノ国際博覧会への出展についてであります。

明年五月一日から、イタリアにおいて、二〇一五年ミラノ国際博覧会が開催されます。

会期中は世界各地から百四十を超える国や地域が参加し、来場者は二千万人が見込まれております。

本県の国際的な知名度の向上を図る絶好の機会として、静岡県と共同で参加することとし、所要の経費を計上致しております。

今回の博覧会は「食」を基本テーマとしていることから、世界的に人気が高まっている「和食」に合う甲州ワインをPRするとともに、日本が誇る世界遺産「富士山」についても広く紹介して参ります。

次に、「ハローキティ」を活用した観光情報の発信についてであります。

本県は現在、世界遺産に登録された富士山や、リニア中央新幹線の整備など、国内外から大きな注目を集めており、この機を逃すことなく、世界に向けて山梨の魅力を幅広くPRしていくことが必要であります。

こうした中、本県出身であり、株式会社サンリオの創業者・代表取締役である辻信太郎氏に対し、私から、同社のメインキャラクターである「ハローキティ」を活用した情報発信強化の提案をしたところ、御協力をいただけるとのお話がありました。

「ハローキティ」は、国内外から高い人気を得ているキャラクターであり、各方面から大きな注目を集めることが期待されます。

そこで、早速、この冬からの観光キャンペーンやホームページなどで「ハローキティ」を「やまなし観光ナビゲーター」として活用し、本県の様々な魅力を大いに情報発信して多くの誘客を図って参りたいと考えております。

次に、クニマスを活用した地域振興についてであります。

七十年ぶりに西湖で発見され、天皇陛下が「奇跡の魚」と呼ばれたクニマスについては、水産技術センターにおいて生態の解明と養殖に関する調査、研究を進めております。

人工受精により誕生した個体については、体長が三十センチ以上となるなど順調に成長しており、来春以降には、第二世代が誕生する見込みです。

今後は、クニマスを活用した地域振興を図るため、富士河口湖町の西湖コウモリ穴管理棟の一部を改修し、クニマスの展示施設を整備することとし、施設の実施設計に要する経費を計上致しております。

なお、この展示施設については、明年度中に改修工事に着手し、平成二十八年度早期の開館を目指して参ります。

次に、保健医療の充実についてであります。

社会保障と税の一体改革が進められる中、本年六月に「地域における医療及び介護の総合的な確保を推進するための関係法律の整備等に関する法律」が成立しました。

この法律により、都道府県は、地域の実情に応じて、医療と介護の総合的な確保のための事業実施計画を作成することとされました。

また、計画に定めた事業を実施するため、消費税増収分を財源として新たな基金を設置する財政支援制度が創設されました。

県では、医師会などの関係団体と協議しながら事業実施計画を作成し、国に交付金を要望していたところ、過日、交付決定がされたところであります。

この国からの交付金を財源の一部として、基金総額十億六千万円の地域医療介護総合確保基金を設置することとし、効率的かつ質の高い医療提供体制の確保や地域包括ケアシステムの構築に努めて参ります。

次に、提出案件の内容につきまして御説明申し上げます。

今回提出致しました案件は、条例案十五件、予算案四件、その他の案件四件となっております。

条例案のうち、主なるものにつきまして申し上げます。

先ず、県職員等の給与に係る条例の改正についてであります。

県職員、学校職員並びに警察職員に係る給与につきましては、去る十月十七日、人事委員会から給料月額及び期末・勤勉手当の引き上げ、給与制度の総合的見直し等を内容とする勧告がありました。

これを踏まえて、勧告に沿った対応を行うこととし、必要な改正案を提出致したところであります。

また、特別職等につきましても、一般職の期末・勤勉手当の改定等に鑑み、必要な措置を講ずることと致しております。

次に、山梨県立富士・東部小児リハビリテーション診療所設置及び管理条例の制定についてであります。

富士・東部地域における障害児の福祉の増進を図るため、県立富士・東部小児リハビリテーション診療所を明年四月から富士河口湖町の富士ふれあいの村内に設置しようとするものであります。

次に、山梨県地域医療介護総合確保基金条例の制定についてであります。

地域における医療及び介護の総合的な確保を推進するため、国からの交付金を財源の一部として、基金を設置しようとするものであります。

次に、予算案のうち主なるものにつきまして申し上げます。

先ず、職員の給与費等につきましては、先に御説明申し上げましたとおり、所要の改定を行うこととし、八億円余を増額致しております。

次に、JR東海から受託するリニア中央新幹線の用地取得事務に係る人件費や、新たに設置する用地事務所の改修に要する経費を計上致しております。

このほか、既に申し上げました、富士山火山防災対策の実施、ミラノ国際博覧会への出展、クニマス展示施設の整備、地域医療介護総合確保基金の設置及び同基金を活用した事業の実施に要する経費などを計上致しております。

以上の内容をもって編成しました結果、一般会計の補正額は、二十六億円余、既定予算と合わせますと四千七百六十五億円余となり、前年度同期予算と比較して、一・三パーセントの増となっております。

この財源と致しましては、繰越金十億円余、繰入金九億円余、国庫支出金五億円余などとなっております。

また、特別会計については、人件費に係る集中管理特別会計で八億円余を計上し、恩賜県有財産特別会計及び流域下水道事業特別会計で繰越明許費を設定しております。

その他の案件につきましては、いずれも、その末尾に提案理由を付記しておりますので、それによりまして御了承をお願い致します。

なにとぞ、よろしく御審議の上、御議決あらんことをお願い申し上げます。

さて、私の任期も残すところ二箇月余となりました。

平成十九年二月、多くの県民の皆様の御支持をいただき、県政執行の重責を担うこととなってから八年間、不偏不党、公正・公平を旨として、全力で県政運営に当たって参りました。

何事にも自ら先頭に立つとともに、広く県民の声に耳を傾け、県民との対話を重視しながら、県民に開かれ、県民とともに創る県政を進めて参りました。

また、大胆に改革し、挑戦していく姿勢を忘れず、創意工夫をこらして県政を推進するよう職員に対して徹底してきたところであります。

この間、世界的な金融危機に端を発する、戦後最悪ともいわれる不況や、未曾有の被害をもたらした東日本大震災の発生など、内憂外患こもごもの課題が山積し、悪戦苦闘を強いられましたが、幸い、県議会及び県民の皆様の御協力をいただき、県政の各分野において成果を挙げ、やまなし発展の芽を育てることができたと考えております。

先ず、その第一は、富士山の世界文化遺産登録であります。

昨年六月二十二日にカンボジアで開催されたユネスコ世界遺産委員会において、県民の長年の夢であった富士山の世界文化遺産登録が実現致しました。

世界遺産委員会において、各国からの強い推薦の言葉をいただき、満場一致で登録が決定した瞬間は、生涯忘れ得ぬ感激でありました。

富士山の特に山梨県側においては、観光業など生業を営んでいる方々が多いために、世界遺産登録に伴い、様々な規制が厳しくなるのではないかという懸念が地元に根強くありました。

しかし、地元市町村とともに丁寧な説明を続けた結果、地域住民の皆様の御理解も深まり、世界遺産にふさわしい地域づくりに向けての住民運動が高まっていることは、誠に喜ばしい限りであります。

登録に至るまでには幾多の困難もありましたが、地元の皆様をはじめ多くの関係者の御支援や御協力をいただき、実現することができたものであり、改めて感謝を申し上げます。

私たちは、富士山が世界遺産になったことで、地元として、この富士山をしっかりと保全して、次の世代に引き継いでいかなければならないという大きな責任も負うことになりました。

現在、様々な富士山保全対策に取り組んでおりますが、平成二十八年二月一日までにはユネスコの要請に基づく保全状況報告書を提出することとなっております。

今月には、保全状況報告書の提出に向けて、保全のための各種方針案を取りまとめる予定であり、今後は、これに沿って、着実に取り組みを進めていく必要があります。

そして、この保全対策をしっかりと実行することによって、世界遺産富士山を擁する世界有数のグレードの高い国際観光保養地が実現していくものと考えております。

第二は、リニア中央新幹線であります。

空港や新幹線駅を持たない本県にとって、リニア中央新幹線により大都市圏と短時間で結ばれることは長年の悲願でありました。

こうした中、JR東海は、去る十月十七日、国から工事実施計画の認可を受け、平成三十九年の品川・名古屋間の開業に向けて事業に着手しました。

ここに至るまで、私は、リニア山梨県駅の位置決定や新駅整備の費用負担などの諸課題に対し、全力で取り組んで参りました。

特に、三百五十億円ともいわれていた新駅の建設費については、JR東海が地元に全額の負担を求めていたのに対し、鉄道施設については全額事業者負担とすべき旨を強く主張し、これを実現することができました。

また、リニア開業を見据えた対策を早め早めに講じる必要があると考え、平成二十五年三月に策定した「山梨県リニア活用基本構想」において、リニア開業後の本県の目指すべき将来像を展望し、その実現に向け、リニア新駅周辺整備や県内各地とのアクセスの強化、リニアを生かした活性化施策の方向性などを明らかに致しました。

この基本構想を踏まえ、本年度中には「山梨県リニア駅周辺整備基本方針」を策定し、新駅周辺が本県の新たな玄関口にふさわしいものとなるよう、その整備方針を示していくこととしております。

更に、リニアに関する知識の普及や啓発を図るとともに、本県の新たな観光拠点となるよう、都留市にある県立リニア見学センターのリニューアルを行ったところであり、新しく建設した「どきどきリニア館」には、これまで、当初の想定を大幅に上回る二十一万人を超える方々にお越しいただきました。

東京、名古屋間、更には大阪までのリニア開業により、人口七千万人の巨大都市圏が形成されていく中で、山梨の新しい可能性が大きく開かれていくものと考えております。

第三は、高速道路の整備であります。

高速道路は、大規模災害時において県民の命を守る緊急輸送路、すなわち「命の道」となるものであり、着実に整備を進めていかなければなりません。

中部横断自動車道増穂以南については、平成二十九年度の完成に向けて、工事が最盛期を迎えており、これが開通すれば、昭和五十七年の中央自動車道開通以来、三十五年ぶりに県外への新たな交通のパイプが開かれることになります。

この道路の整備には、当初、約百八十億円という大きな県民負担が想定されておりましたが、知事就任直後から国の関係機関に対し粘り強く交渉を重ねた結果、地方交付税の特例措置により約百四十五億円の県民負担の軽減を図ることができました。

中部横断自動車道の長坂以北についても、清里の南側を通るルートが決定され、環境アセスメントの後、整備計画区間への格上げを経て、事業に着手されることとなります。

大動脈である中央自動車道の小仏トンネルより東側の渋滞については、本県の経済や観光にとって大きなネックとなっていると考え、この現状を打破するため、渋滞解消のための対策について、沿線都県や市区町村で構成する協議会を結成し、あらゆる機会を通じて要望活動等を行って参りました。

その活動が実り、二〇二〇年の東京オリンピック・パラリンピック開催までに調布インターチェンジ付近の渋滞解消が図られることとなり、小仏トンネル付近については、去る六月、国土交通省のワーキンググループにより渋滞解消の対策案が示され、本年度内には具体的な内容が取りまとめられることとなりました。

こうした高速道路の整備は、周囲を山に囲まれた本県が外部との交流を活発化し、発展していく上で不可欠なものであり、今後、山梨の発展の礎になるものと確信をしております。

第四は、エネルギーの地産地消であります。

山梨は、豊富な水資源、日本一の日照時間など再生可能エネルギーに恵まれており、こうしたクリーンエネルギーの活用を積極的に進めて参りました。

平成二十四年一月には、甲府市米倉山に、内陸地では有数の規模を誇るメガソーラー発電所が稼働致しました。

太陽光発電は、日照時間によって発電量が左右されるため、これを安定的な電力とするためには蓄電システムの開発が極めて重要であると判断し、鉄道総合技術研究所等と協力して、米倉山において最先端の技術である超電導フライホイール蓄電の実証実験を行うこととしております。

また、県内で必要な電力をすべて県内のクリーンエネルギーで賄う、エネルギー地産地消を二〇五〇年までに実現するため、平成二十五年に「やまなしエネルギー地産地消推進戦略」を策定し、クリーンエネルギーの導入と省エネルギー対策に取り組むことと致しました。

更に、水素社会の到来を見据えつつ、究極のクリーンエネルギーといわれる燃料電池の普及にも取り組みました。

山梨大学においては、燃料電池の最先端の研究が進んでいることから、平成二十年には知事公舎の跡地を山梨大学燃料電池ナノ材料研究センターの建設地として提供し、水素と燃料電池の活用についての最先端の研究に取り組んでいただいております。

また、今月には、燃料電池自動車の一般販売が開始されることから、県として燃料電池自動車普及促進計画を策定し、甲府市内に大都市圏以外では初めてとなる水素ステーションを誘致して、水素・燃料電池先進県を目指す取り組みも進めて参りました。

今後とも、山梨の環境・自然を生かし、再生可能エネルギーやクリーンエネルギーを活用する取り組みは、大きく発展していくものと考えております。

第五は、地域産業のブランド化等であります。

先ず、本県産業の振興を図るため、平成二十三年に「山梨県産業振興ビジョン」を策定するとともに、起業促進のための「やまなし新事業応援ファンド」の創設、雇用の促進のための「山梨県雇用創出奨励金」の創設を行い、成長産業の育成と雇用の創出を図りました。

次に、観光についてでありますが、本県経済の発展を図る上で、観光産業の重要性がますます増してきたことから、平成二十三年に「おもてなしのやまなし観光振興条例」を制定し、県民総ぐるみで「おもてなし」を進めて参りました。

また、この八年間、外国人観光客の誘致を図るため、東アジアや東南アジア地域において、私自身が先頭に立って、本県の観光や農産物のトップセールス、プロモーション活動などを十八回行い、本県の魅力を発信して参りました。

このような取り組みの結果、外国人も含めた本県への観光客は順調に増加しており、特に、富士北麓地域は富士山の世界遺産効果もあり、大きく観光客が増えてきております。

今後は、富士北麓地域から県内他地域への周遊を促進するとともに、日帰り観光が多い現状から宿泊滞在型の観光への転換を図る必要があります。

農業については、本年二月の豪雪により甚大な被害を受けた果樹農業の復旧に全力で取り組みました。

被災当初、ハウス栽培を続けることができないと考えていた農家の方も多かったところですが、国に対して手厚い支援策を要望するとともに、県としても様々な復旧支援策を講じたところ、被災された農家の約八割の方が、復旧に取り組み、今後も農業を続けていただけることになりました。

また、本県農業を一層発展させるため、若者や企業など幅広い多様な担い手の確保にも力を入れてきた結果、昨年度の新規の就農者数は二百四十八人と、知事就任前の平成十八年の七十一人と比べて約三倍になりました。

更に、六次産業化による高収益農業の実現に向けた「美味しい甲斐開発プロジェクト」を実施するとともに、県産農産物のブランド力向上とトップセールスにより、輸出をはじめとする販路拡大に取り組みました。

加えて、先日逝去された菅原文太氏の御協力を得て、有機の郷づくりを推進する全国大会を三年にわたり開催するなど有機農業の推進にも取り組んで参りました。

林業の振興については、本県は県土の約八割が森林であり、豊富な森林資源を有効活用する観点から、県有林がFSC森林認証を受けているブランド力を活用する中で、需要拡大にも取り組んで参りました。

更に、荒廃の進む民有林の整備を進めるために、平成二十四年に森林環境税を導入し、県民の皆様に御負担をいただきながら、森林の整備に取り組んでおります。

地場産業については、ワインやジュエリー、織物に代表される地場産品は長期低落傾向が続いておりましたが、これらの地場産品を将来にわたり持続的に発展させるため、全国にアピールし、ブランドの確立に取り組んで参りました。

特に、ワインについては、本県産ワインの品質向上が著しく、甲州ワインをはじめとして国内外で評価を高めており、昨年七月には、国税庁により地理的表示「山梨」がワインとして初めて指定され、本県が世界公認のワイン産地となりました。

ジュエリーについては、伝統産業の人材を育成し、技術を継承していくため、愛宕山の中腹にあった宝石美術専門学校を甲府市中心部のココリへ移転し、カリキュラムを二年制から三年制に移行するなどの改革を行うとともに、消費者へのPRを図るために、県庁防災新館の一階にジュエリーミュージアムを開設致しました。

織物については、下請けからの脱却を図るために、オリジナルブランドの開発や海外見本市への出展などを支援して参りましたが、その結果、いくつかの若手企業グループが全国的に認められるようになって参りました。

地域の発展は、産業とそれを支える雇用が大きな基礎となるものであり、今後とも、産業の振興には他県に負けない、たゆまぬ努力が重要であると考えております。

第六は、教育文化の振興であります。

教育について、先ず取り組んだのは少人数学級の導入を一層進めることであり、本年度までに、全国に先駆けて小中学校の全学年への導入を完了致しました。

私が知事に就任した当時、本県は不登校の児童・生徒の割合が全国で一番高くなっておりましたが、スクールカウンセラーを全ての中学校と必要な小学校に配置するなどの取り組みを進め、不登校問題については大きく改善を図ることができました。

また、障害のある子どもたちの教育環境を整えるため、職業教育に特化した初の高等支援学校である桃花台学園を開設することとし、わかば支援学校の改築などと併せて特別支援教育の充実を図りました。

文化振興については、昨年開催した「富士の国やまなし国文祭」は、全国初の通年開催として、二百八十万人を超える来場者を得て、大成功のうちに終了することができました。

平成二十四年十一月には、本県の新たな知の拠点となる新県立図書館を開館し、館長に就任していただいた直木賞作家・阿刀田高氏の「山梨に読書文化を広める」という御努力もあって、全国二位となる年間九十七万人の方々に利用していただきました。

第七は、医療福祉の充実であります。

知事に就任した当時、医師不足が喫緊の課題でありましたので、就任直後の平成十九年に、山梨で働く医師を確保するため、医師修学資金貸与制度を設けるとともに、山梨大学の御協力をいただき、医学部の定員を百名から現在の百二十五名まで逐次増やして参りました。

このような取り組みの結果、医師総数については、概ね確保の見込みが立つこととなりました。

また、私が知事に就任した頃、県立病院は全国の公立病院と同様に非常に苦しい経営状況にありました。

これを改善し、医療の質を上げて、県民のニーズにあった医療を提供できるようにするべく、平成二十二年四月に、県庁とは別の組織である地方独立行政法人山梨県立病院機構を設立し、理事長に肝臓がんの世界的な権威である小俣政男東大名誉教授を招聘致しました。

小俣理事長には経営改革を進めていただき、独立行政法人化の初年度から黒字化を達成するとともに、医療サービスの質も向上させることができました。

また、県立中央病院にがん対策を進めるため通院加療がんセンターを開設するとともに、遺伝子の解析を行うゲノム解析センターを設置し、高度ながん治療にも取り組んで参りました。

更に、平成二十四年四月には、県民の救命率の向上を図るためドクターヘリを導入し、その後平成二十六年八月からは静岡県、神奈川県との三県広域連携も始まり、県民の安心を高めることに大いに貢献しております。

高齢者福祉については、本県は、計画的に介護基盤の整備を進めたことにより要介護者に対する特別養護老人ホームの定員数の割合が全国十位と、かなり充足されている状況になっております。

子育て支援においては、本県は保育所待機児童数がゼロであり、広域入所保育や病児・病後児保育などを推進する先進的な取り組みを進めて参りました。

更に、子育てをする母親に安心を与えるために、平成二十年四月から、市町村と協力して乳幼児医療費窓口無料化を実施するとともに、平成二十年十月には、これまで甲府市だけに設置していた小児初期救急医療センターを富士吉田市に開設致しました。

加えて、明年度には、出産直後の母親のケアや妊婦の支援体制を強化するために、笛吹市に産前産後ケアセンターを開設することとしております。

こうした取り組みによって、県内どこでも安心して医療や福祉を受けることができる体制の整備を進めることができたと考えております。

最後に、行財政改革であります。

多くの政策を実行していくに当たっては、足腰となる県の行財政の再建を図ることが大きな課題でありました。

特に、知事就任当時、県債残高が大きすぎることが財政上の大きな問題であると考え、思い切った経費節減を実施致しました。

その結果、平成十九年度から二十六年度までの八年間に、将来の県民負担となる通常の県債等残高を十七パーセント、千五百億円程度削減するとともに、県職員数を十二パーセント、千八百人程度削減致しました。

これらの取り組みにより、県財政の貯蓄とも言うべき主要三基金の残高は三十三パーセント、百五十六億円増加しており、財政再建に一定の道筋をつけることができたと考えております。

また、長年の県政課題についても、放置すれば更に県民負担が増加してしまう状況にあったことから、何としても私の任期中に解決の道筋をつけなければならないという思いで、取り組んで参りました。

明野産業廃棄物最終処分場問題や林業公社、土地開発公社及び住宅供給公社の抜本改革、中小企業高度化資金の処理などについては、県議会の皆様、県民の皆様の御理解・御協力の下、解決に向けての方向性を定めることができたと考えております。

ただし、これらの問題の処理に当たり、結果的に多額の県費を投入せざるを得ないことは痛恨の極みであり、県政の責任者として県民の皆様には大変申し訳ないという思いであります。

このような中ではありましたが、以上申し上げた取り組みの結果、「チャレンジ山梨行動計画」に掲げた項目については、概ね順調に目標を達成することができる見込みであります。

しかし、時代は我々の予想を超える速度で変化を続けており、本県の未来を確実なものとしていくには、課題も残ることとなりました。

本県の主力産業である機械電子産業は、グローバル化により、厳しい経営環境に置かれているため、本県の産業構造を、足腰の強い多様性のある構造に変え、良質な雇用を確保していかなければなりません。

急速に進む人口減少に対しても、自然減、社会減ともにストップさせ、本県の活力を低下させないようにしていかなければなりません。

若者の大都市への流出に歯止めをかけるためにも、県都甲府市の中心部の活性化が必要であり、甲府駅南口の再整備や防災新館をはじめとした県庁敷地の再整備を行って参りましたが、今後も更なる努力が必要であります。

また、今後想定される大規模地震や、地球温暖化の影響を受けた異常気象による災害などにも備えていかなければなりません。

このように残された課題があるとはいえ、新知事の新たな発想とリーダーシップの下、県民の英知を結集すれば、必ずや難題を克服し、未来における本県の繁栄を築いてゆけるものと信じております。

私は、今期をもって引退致しますが、知事を辞した後も、郷土山梨の発展を心より願っております。

最後になりますが、知事就任以来、厳しい時にも励まし、多くの御支援をいただいた県議会の皆様に対し、改めて厚くお礼申し上げますとともに、これまで私を支えてくださった県民の皆様、市町村長の皆様、また県職員の皆さんに対し、この八年間に賜りました御厚情に衷心より感謝を申し上げます。

以上をもって、私の所信表明と提案理由の説明と致します。

平成二十六年十二月十日

山梨県知事内正明

このページに関するお問い合わせ先

山梨県知事政策局広聴広報グループ 
住所:〒400-8501 甲府市丸の内1-6-1
電話番号:055(223)1336   ファクス番号:055(223)1525

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