ページID:127932更新日:2026年11月6日
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山梨県の賃上げ政策は、働く人の技能向上、企業の収益力強化、賃金への還元を一つの循環として進め、県民所得の持続的な向上を目指す取組である。
県はこの仕組みを「豊かさ共創スリーアップ」と名付け、企業、働き手、行政が協力して賃上げの原資と人材育成の基盤をつくることを重視している。(出典:県議会知事説明要旨)
2026年9月議会では、スリーアップの認証企業が6,270社に達したことが報告され、賃上げに踏み切る中小企業への直接支援と生産性向上への設備投資支援が示された。
物価高への一時的な対応にとどまらず、賃金水準、生産性、労働参加率を一体で高める所得構造改革として展開されている。
| 項目 | 内容 |
| 目標 |
物価上昇を上回る持続的な所得向上。 |
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基本的 |
豊かさ共創スリーアップ。 |
| 推進 主体 |
企業・働き手・行政の三者。人材育成と収益力向上を支え、成果を給与につなげる。 |
| 主な 支援 |
学び直し、設備投資、DX、経営改善に加え、2026年9月補正では |
| 政策の 広がり |
賃上げ企業への支援から、学び直し、スリーアップ認証制度、 |
物価上昇が続く中で家計の生活水準を保つには、給料そのものの持続的な引上げが必要だという認識が、政策の出発点にある。
2025年9月の所信で知事は「賃金アップこそ、県民生活強靱化の一丁目一番地であります。」と述べた。
給与の改善を、消費や投資の拡大だけでなく、若者が結婚・子育てに向けて見通しを持ち、山梨で働き暮らすことを支える課題として位置付けている。(出典:2025-09-24所信)
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現金給与総額の対前年増減率(2025年平均・山梨県)
資料:山梨県「令和7年平均 山梨の賃金・労働時間及び雇用の動き」。
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2023年6月の所信では、前年12月の補正予算で、一定の賃上げを行う中小企業の設備投資や人材育成への補助制度を創設したと説明している。
同年6月には、非正規雇用の正規化などに取り組む事業者への補助上限引上げや、対象となる最低賃金の条件緩和を示した。
生活の下支えと、企業が人材を確保・育成するための支援を組み合わせたものである。
(出典:2023-06-20所信)
2023年2月の所信では、物価高騰への対応として賃上げが先行することを見込みつつ、その原資を確保するための技能向上と生産性向上を重視した。
キャリアアップ・ユニバーシティ構想を掲げ、人材育成と企業の収益向上を次の賃上げへつなぐ考え方を示している。(出典:2023-02-27所信)
2025年6月の所信では、2024年度末のスリーアップ宣言企業が626社となった一方、技能向上を働き手個人の責任と捉える企業も多く、十分に浸透していないとの課題を示した。
このため、経済団体との連携や企業への働きかけを強め、取り組みを社会に伝える認証制度を新設する方針を打ち出した。(出典:2025-06-12所信)
同年9月の所信では、賃金水準、生産性、労働参加率(三要素)を同時に改善する考え方を示し、企業の生産性向上への支援を拡充する方針を説明した。
同年12月の所信では、企業・働き手・行政が協力して三つのアップを一体的に実現することを、所得向上策の中核として改めて位置付けている。(出典:2025-09-24所信、2025-12-04所信)
2026年2月の所信では、三要素を所得構造改革の手段として位置付け、人材育成や生産性向上に直結する支援を重点的に講じる方針を示した。
同年6月にはスリーアップ実践企業の認証が3,000社に達したと報告し、さらに県内へ広げるための認証取得促進費を計上した。(出典:2026-02-17所信、2026-06-19所信)
2026年9月25日の所信では、認証企業6,270社を報告し、賃上げ企業への直接支援22億円余と設備投資支援18億円余を補正予算案に計上した。(出典:2026-09-25所信)
スリーアップは、研修受講だけで完結する人材育成策ではない。
身に付けた知識や技能を仕事の改善に生かし、収益を高め、その成果を給与に還元することまでを一体として捉える。
2025年12月の所信で知事は「公正な分配」と「三者協働」を二つの核心として示した。企業が稼ぐ力を高め、働き手が能力を伸ばし、行政がその双方を支えるという役割分担である。
(出典:2025-12-04所信)
働き手の学び直しを支える拠点が、やまなしキャリアアップ・ユニバーシティである。
2026年2月の所信では、業種や職位に応じた専門講座、企業の需要に合わせた訓練、非正規雇用労働者等を対象とする経理人材育成・就労支援を示した。
学んだことが職場の成果やより良い就労につながる仕組みを重視している。(出典:2026-02-17所信)
企業への支援では、生産性を高める設備投資、業務のデジタル化、省エネ・再エネ設備、専門家による経営改善などを組み合わせる。
必要な投資を過度に圧迫しないよう、賃上げの負担を企業だけに委ねず、支援の成果が現れるまでの資金繰りを制度融資で支える考え方も示されている。(出典:2025-09-24所信)
最低賃金については、賃金体系全体を底上げする出発点として重視する。
2025年9月の所信では、企業の収益、雇用・失業、倒産の原因、内部留保などの客観的データを用いて議論する必要性を説明し、山梨労働局と連携を強める方針を示した。
引上げを求めることと、その実現を支える企業支援を一体として進めようとしている。
(出典:2025-09-24所信)
2026年9月議会では、スリーアップ認証企業数が6,270社に達したと報告された。
これを基盤として、認証を受けた中小企業が従業員の時間当たり賃金を50円以上引き上げ、改定後の最低賃金額以上とする場合、増加賃金の約6か月分の5~7割程度を支援する新たな制度が示され、関連経費として22億円余が補正予算に計上された。(出典:令和8年9月県議会知事説明要旨)
賃上げと同時に生産性向上に資する設備投資を行う事業者に対しては、上限300万円、総額18億円余の補助金が用意された。
県が掲げる「賃金水準の引上げ」「生産性の向上」「労働参加率の向上」という三つの取組を連動させる政策である。 (出典:令和8年9月県議会知事説明要旨)
山梨県の地域別最低賃金は、2025年12月1日から時間額1,052円である。
2026年度改定で61円の引上げが決まり、1,113円への改定は2026年11月1日発効となっている。(出典:厚生労働省・地域別最低賃金一覧)
なお、県の毎月勤労統計調査で現金給与総額の伸び率が全国平均を上回ったとの説明がある一方、名目賃金の増加と物価上昇を考慮した実質賃金の改善とは異なる。
県は物価上昇を上回る所得向上を政策課題としている。 (出典:令和8年9月県議会知事説明要旨)
今後の課題は、取組の効果を実際の暮らしの改善へつなげることにある。
2026年2月の所信では、賃金は増加傾向にあるものの、物価上昇を十分に上回っていないとの認識が示された。
認証の広がりや設備投資、人材育成の進展と、物価を考慮した所得改善の到達度は区別される。
また、宣言企業と認証企業は制度上の区分が異なり、企業数を比較する際には発言時点と集計対象をそろえる必要がある。(出典:2026-02-17所信、2025-06-12所信、2026-06-19所信)
・山梨県「令和8年9月県議会知事説明要旨」(2026年9月25日)