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ページID:96110更新日:2020年8月27日

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遺跡トピックスNo.517_酒吞場遺跡の土偶のんさん~三十三番土偶札所巡り~

縄文時代の土偶に関するトピックス

0018金生遺跡-中空土偶-2005年9月14日~2005年9月20日

0024大木戸遺跡-前期土偶-2005年10月26日~2005年11月2日

0111桂野遺跡-前期土偶-2007年9月12日~2007年9月18日

0218金の尾遺跡-土偶-2009年12月9日~2009年12月15日

0252大木戸遺跡-中期土偶-2010年8月18日~2010年8月31日

0260安道寺遺跡-土偶2010年10月20日~2010年10月27日

0350一の沢遺跡-みんなで応援しよう!「ミュージアムキャラクターアワード2012」のいっちゃん-2012年8月15日~2012年8月21日

0363唐松遺跡-炉と土偶-2013年1月9日~2013年1月23日

0451一の沢遺跡の土偶いっちゃん2_2016年10月31日~2016年11月9日

 

日本遺産「星降る中部高地の縄文世界」

 

 日本遺産とは、地域の歴史的魅力や特色を通じて我が国の文化・伝統を語るストーリーを文化庁が認定するものです。山梨県・長野県の豊かな縄文文化が評価され、「星降る中部高地の縄文世界」(ほしふるちゅうぶこうちのじょうもんせかい)として日本遺産に認定されています。

~ストーリー~ 

 日本の真ん中、八ヶ岳を中心とした中部高地には、ほかでは見られない縄文時代の黒曜石(こくようせき)鉱山があります。鉱山の森に足を踏み入れると、そこには縄文人が掘り出したキラキラ輝く黒曜石のカケラが一面に散らばり、星降る里として言い伝えられてきました。

 日本最古のブランド「黒曜石」は、最高級の矢じりの材料として日本の各地にもたらされました。ふもとのムラで作られたヒトや森に生きる動物を描いた土器やヴィーナス土偶を見ると、縄文人の高い芸術性に驚かされ、黒曜石や山の幸に恵まれて繁栄した縄文人を身近に感じることができます。

 数千年をさかのぼり、黒曜石鉱山と縄文人に出会う旅に出てみませんか?

 御朱印めぐりにLet's go!

 日本遺産「星降る中部高地の縄文世界」(以下、「星降る」といいます)の構成文化財は、山梨県・長野県合わせて18館の博物館等の展示施設に展示されています。

(詳しくは、「星降る」のホームページをご確認ください。→https://jomon.co

 

土偶札所巡りチラシ

 

 それぞれの博物館には、その地域で発掘された縄文時代をはじめとする考古資料が展示されており、その造形の美しさ、かわいらしさ、力強さに驚かされます。これらの博物館をもっと回りやすく、日本遺産のストーリーをわかりやすくするため、今年度から「三十三番土偶札所巡り」がスタートしました!

 

土偶札所巡りマップ

学芸員が語る土偶のみどころ付きのマップもついてくる!

 中部高地には、国宝「縄文のビーナス」(長野県茅野市)をはじめ、縄文時代の精神文化の豊かさや美術センスの高さを感じさせる多くの土器・土偶があります。これらの中で特に優れたもの、特筆すべきもの33点の御朱印ができました!

御朱印がある博物館は、全部で17館!オリジナル御朱印帳は、山梨県立考古博物館や釈迦堂遺跡博物館などの施設でご購入いただけます。展示をご覧いただき、土偶や土器とのご縁を結んだ証として御朱印を集めてみてください!

 

 さて、当センターが発掘調査を行って発見された資料は、すべて山梨県立考古博物館に収蔵され、そのなかの優れたものが展示されます。

そんな山梨県立考古博物館でもらえる土偶御朱印は、札所の一・二番。考古博物館のイメージキャラクターである笛吹市一の沢遺跡出土土偶の「いっちゃん」と北杜市酒呑場遺跡出土土偶の「のんさん」です!

土偶御朱印帳

御朱印はこんな感じ!かわいい!

 

いっちゃんは過去の遺跡トピックスでも紹介され、2018年に開催した埋文シンポジウム「山梨県土偶の魅力を語る」でも取り上げられた考古博物館のマスコットキャラクターです(^o^)

いっちゃん正面写真 いっちゃんだよ♪

遺跡トピックスNo.350

遺跡トピックスNo.451

 

さて、今回ご紹介したいのは、これまであまり大々的に取り上げられることのなかった「のんさん」です。

酒吞場遺跡の土偶ということで、「のんさん」と名付けられました。

御朱印に選ばれた理由は、お顔が大きいからだそうです (゜□゜ )エッ

 

 北杜市酒吞場遺跡

 酒呑場遺跡(さけのみばいせき)は、北杜市長坂町、八ヶ岳南麓の標高710m前後にある小高い丘の上にあり、東西約150m、南北約300mの巨大な遺跡です。発掘調査は山梨県酪農試験場の増改築工事に際して実施され、1994年から2001年、2017年と5次にわたり、合計約104,900平方メートルの面積の発掘調査が行われました。

 発掘調査の結果、遺跡東側に縄文時代前期後半(約6,000年前)を中心とした住居跡群、

北側には縄文時代中期前半(約5,500~5,000年前)の住居跡群、南側には縄文時代中期後半(約5,000~4,500年前)の住居跡群が見つかりました。

 酒呑場遺跡は、縄文時代前期後半から中期後半という、約1,500年にわたる大きな集落(環状集落:環状をなす住居跡群)だったことがわかったのです。発掘された出土資料のうち、土器や石器、土偶などの計683点は国の重要文化財に指定されています。

遺跡トピックスNo.237

遺跡トピックスNo.308

遺跡トピックスNo.316

遺跡トピックスNo.319

遺跡トピックスNo.328

遺跡トピックスNo.399

 

調査機関:山梨県埋蔵文化財センター

報告書:山梨県埋蔵文化財センター調査報告書

 第135集(1997年刊行)、第136集(1997年刊行)、第209集(2003年刊行)、

 第216集(2004年刊行)、第320集(2019年刊行)

 

のんさん

 酒呑場遺跡では、土偶が計154点見つかっています。縄文時代中期前半から後半のものが多く、とくに前半のものが多くみられます。

のんさんは重要文化財のうちのひとつ(ひとり)です。縄文時代中期半ばの土偶です。

 酒吞場遺跡土偶のんさん斜め

プロカメラマンかっこよく撮影してもらい、誇らしげなのんさん。

 

 顔は三角形状で、真横に広げた両手の先には3本指が表現されています。両耳には縦に貫通するあながあき、おしゃれに何かを差していたのかもしれません。胸の下で折れており、下半身は見つかりませんでしたが、割れ口をよく見ると体の中心を通るように細い縦のあながあいています。

酒吞場遺跡土偶のんさん下から

 のんさん「いやん、下から見ないで。」

 このあなは「芯棒痕」(しんぼうこん)といい、土偶を作る時につけられたものです。釈迦堂遺跡(しゃかどういせき)博物館に行った方は、展示を見たことがあるかもしれませんね。

 縄文時代中期の土偶は、「分割塊技法」(ぶんかつかいぎほう)という方法で作られている場合が多いです。特に、山梨県の土偶はバラバラに壊れた状態で見つかることが多いのですが、その要因にこの作り方があると考えられています。

30秒でわかる!「分割塊技法」

1.粘土をこね、頭・胸・腕・おなか・おしり・脚…と、土偶のパーツごとに粘土を丸め、

 おおまかなかたちを作ります。

2.それぞれのパーツをくっつけます。この際、各パーツを細い棒などで差してつなげます。

 この手順により、焼いた後に土偶の体には穴があきます。

3.表面をなめらかにつなぎ、顔や文様(模様)をつけます。

4.焼きます。

5.完成\(^o^)/

 土偶分割塊技法模式図

 分割塊技法の模式図

 この分割塊技法は、山梨県だけでなく、各地で作られる土偶にみられます。しかし、この技法を発見するに至った理由は、先ほども話にあがった山梨県釈迦堂遺跡がきっかけだったのです。

 釈迦堂遺跡は、1980年から山梨県埋蔵文化財センターが発掘調査を行った縄文時代前期後半から後期初頭まで続く大きな集落で、土偶が1,116点見つかったことで知られています。ほとんどが破片である土偶をくまなく観察したことにより、この技法の存在が浮かび上がったのです。先輩職員である研究者の方はすごいです。

 釈迦堂遺跡の出土資料は、甲州市・笛吹市釈迦堂遺跡博物館に収蔵・展示されています。三十三番土偶札所巡りの土偶が3体いますので、ぜひ行ってみてください!

なぞのあな

  私ものんさんをじっくり観察しました。すると、欠けただけだと思っていたおでこにも小さなあながあることに気づいたのです。な、なんだこれ!

 酒吞場遺跡土偶のんさん上から

上から見たのんさん。分度器じゃないのよ。 

 小石が抜け落ちた痕だと思っていた口の窪みもよくよく見ると、上下につながるあなのように見えます。

 酒吞場遺跡土偶のんさんの口

 のんさん「まさか口だけ拡大されるとは思わなかったわよ!」

 

そして、このあなのラインを線で結ぶと・・・

 酒吞場遺跡土偶のんさんあなの位置

点線があなのラインよ。

 

なんと、一直線につながるのです!

 芯棒痕は、通常外側に見えず、割れ口で確認されることがほとんどです。しかし、のんさんは何があったのか、表面に見えてしまっているのです。本来は欠けたおでこ部分に何か装飾があり、それが剥がれたために芯棒痕が見えてしまったのか、それとも別の理由であなをあけていたのか・・・。

 そして、本当にこのあなはつながっているのか・・・。なぞ多きあなです。

 全国各地の色々な時期の土偶には、からだのさまざまな位置にあながあけられています。

 あなに羽根などを差して飾ったのではないか、棒を差して現在のフィギュアのように立たせたのではないか・・・。なかには、口とお尻のあなが貫通するものもあり、「消化器」を表現しているのではないかと考えられているものもあります。

 土偶のあなにはひとつの意味だけでなく、色々な意味があったのかもしれません。

 

かわいい、かわいい土偶たち。

 土偶はヒトのかたちをしているため、パッと見たときにその表情や体型が印象に残り、「かわいい」や「ぶさいく」など多くの方に愛されています。研究的な視点を外し、ゆるキャラを愛でるような気持ちで感想を書いてみます(#^_^#)

 いっちゃんはつり目だけど少し垂れ目気味なところや鼻の穴、ちょっと小さく開いた口がとてもかわいいです。つやつやお肌もたまりません。

 のんさんは朗らかな笑顔を連想させる目や鼻の穴、大きく開いた口、ダブルスリーピースが明るいイメージを醸し出しています。

 お気づきになられた方がいらっしゃるかもしれませんが、私は土偶の鼻の穴が好きです!

 土偶には高確率で鼻の穴があいているので、三十三番土偶札所巡りの際は土偶の鼻の穴をチェックしてみてください!もちろん、鼻の穴だけでなく、土偶のからだをすみずみまでよーく見ると、土偶に表現された細かな造形から、縄文人のこだわりを垣間見ることができます。

 三十三番土偶札所巡りでお気に入りの土偶や土偶の好きなところ、そして土偶を作った縄文時代の人々の技術力、表現力を見つけてみてください!

 

〈参考文献〉

山梨県埋蔵文化財センター編1986『釈迦堂1.』山梨県埋蔵文化財センター調査報告書第17集

山梨県埋蔵文化財センター編1987『釈迦堂2.』山梨県埋蔵文化財センター調査報告書第21集

山梨県埋蔵文化財センター編1987『釈迦堂3.』山梨県埋蔵文化財センター調査報告書第22集

 

 

 

 

 

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山梨県観光文化・スポーツ部埋蔵文化財センター 
住所:〒400-1508 甲府市下曽根町923
電話番号:055(266)3016   ファクス番号:055(266)3882

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