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更新日:2024年3月18日

YAMANASHI INNOVATION NIGHT

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「YAMANASHI INNOVATION NIGHT」は2023年11月9日(木曜日)、CIC Tokyoで行われるVenture Café Tokyoのフラッグシップ・プログラム、Thursday Gatheringの一環として開催されました。山梨県の先進的な取り組みを知るとともに深い関係を築くきっかけとなるような、山梨県の魅力が詰まったイノベーティブなイベントとなりました。

告知ビジュアル 全体集合

開催プレスリリース

開催後プレスリリース

ハイクオリティやまなし掲載記事

開催レポート

YAMANASHI INNOVATION NIGHTでは、以下の8つのセッションが行われました。

1.山梨県のスタートアップ支援施策の紹介

2.TRY!YAMANASHI!採択企業と語る山梨から始まる事業成長

―山梨県知事によるウェルカムメッセージ

3.「迷ったときはどっちが正しいか考えちゃダメ!どっちが楽しいかで決めなさい」~eスポーツのファーストペンギンの東証マザーズへの道のり~

4.山梨から考える新たなモビリティ社会

5.Mt.Fujiイノベーションキャンプ10年の歩みとこれから

6.地域発スタートアップによる社会的インパクトの創出

7.VUCA時代における人材育成とは

8.山梨SAKEイノベーション

オープニングでは、Venture Café TokyoのミッションやYAMANASHI INNOVATION NIGHTの楽しみ方、ネットワーキングのコツやマナーなどの話があり、セッションに移りました。

山梨県のスタートアップ支援施策の紹介

山梨県からリニア開通に向けた取り組みやスタートアップ支援策が紹介されました。

スタートアップ支援策紹介

登壇者

  • 齊藤 浩志 氏 = 山梨県庁 知事政策局 リニア未来創造・推進グループ 政策補佐
  • 森田 考治 氏 = 山梨県庁 産業労働部 スタートアップ・経営支援課 主査

はじめに、山梨県のリニア未来創造・推進グループに所属する齊藤さんから、山梨県の立地や気候の特徴、産業などの話があり、スタートアップ支援事業についても紹介されました。続いて、リニアと山梨県の未来について語りました。

「山梨県甲府市にリニアの駅ができると、東京・品川まで約25分、名古屋まで約45分で移動が可能になります。すると山梨県のポジションが非常に変わっていくのかなと。山梨県ではリニアの開通によって人の交流が活発になるということを期待して、2020年3月に「リニアやまなしビジョン」を策定しました。最先端技術で未来を創るオープンプラットフォーム山梨を掲げ、山梨県をいろいろな新しい技術やサービスの実証できる場所にしていこうと。」

「未来に向けて、新しいチャレンジをする人たちをどんどん山梨に呼び込みたいと思っています。リニア開業に向けて、イノベーティブな人たちと山梨県との関係人口を増やしていくことが、リニアの山梨県駅に降りていただく理由になるんじゃないか、と取り組みを進めています。」

今年4月から新設された山梨県のスタートアップ・経営支援課に所属する森田さん。「この課の新設は、県をあげてスタートアップを支援していくという意気込みの表れです。山梨県では、アイディア検討から成長加速、実証実験など、資金調達からオフィスの提供まで切れ目のない支援をしています。」

「資金調達サポート事業が、当課の特筆すべき事業です。山梨県が株主になって直接スタートアップに出資します。スタートアップにとっては、山梨県の出資企業だと名乗ることで信用を向上させられます。他にも営業活動や宣伝活動なども支援して、スタートアップが成長するために山梨県の職員が全力で伴走していきます。」と山梨県の本気度を伝えました。

山梨県の魅力や将来性、スタートアップに対する真剣な姿勢を理解できるセッションとなりました。

TRY!YAMANASHI!採択企業と語る山梨から始まる事業成長

2021年にスタートしたTRY!YAMANASHI!実証実験サポート事業はこれまでに35社を採択し、山梨県をフィールドにした社会実証プロジェクトを全面的にサポートしてきました。このセッションでは、採択スタートアップ3社にお集まりいただき、TRY!YAMANASHI!の価値やTRY!YAMANASHI!をきっかけとした事業成長について、ディスカッションしました。

TRY!YAMANASHI!から始まる事業成長

登壇者

  • 田路 圭輔 氏 = 株式会社エアロネクスト 代表取締役CEO
  • 川島 壮史 氏 = INNFRA株式会社 代表取締役|U3イノベーションズ合同会社 ダイレクター
  • 沖田 大 氏 = アイリス株式会社 執行役員
  • 齊藤 浩志 氏 = 山梨県 知事政策局 リニア未来創造・推進グループ 政策補佐

モデレーター

  • 松島 香織 氏 = 有限責任監査法人トーマツ 地域未来創造室 マネージャー

モデレーターの松島さんより「本日はTRY!YAMANASHI!に参加したお話を、登壇者のお三方に率直に話していただければと思います。」とセッションは元気いっぱいにスタートしました。

まず、3名の登壇者の自己紹介がありました。田路さんは、新しい空域の経済化をビジョンに掲げるドローンのテクノロジースタートアップで、ドローンが飛ぶ地上から150mの空域を経済活動の場に変えようと奮闘しています。川島さんは、インフラの社会課題を解決するスタートアップでありながら、ファンドも設立。2021年からはCIC Tokyoと一緒に環境エネルギーエネルギーイノベーションコミュニティの運営にも携わっています。沖田さんはAI医療機器のベンチャーで、ひらかれた医療を実現するためにプロダクトを開発しています。

それぞれの自己紹介が終わるとトークセッションに移り、松島さんから「TRY!YAMANASHI!はいかがでしたか?」と質問が投げかけられました。率直な感想や事業の成長にどのように役立ったか、実証実験を成功させるために行ったことなどについて語られました。

沖田さんは「我々のような、立ち上がって間もないベンチャーが大病院や公立病院で一緒に仕事をするためには通常は準備に半年ぐらいかかるんですけど、今回は採択いただいてから2ヶ月くらいで立ち上げられたのは大きな成果でした。」と述べました。

川島さんは山梨県の支援に衝撃を受けたと言います。「自治体とスタートアップの距離感で本当にワンチームでやれるのかなと思っていましたが、想像以上のインパクトを出せたのは山梨県が他とは本当に何か違うと感じましたね。」

「山梨県の一番のすごさは一体感というか垣根のないところで、フォローアップする力の大きさだと思います。基礎自治体で始めたサービスを県がしっかり後ろ支えする力強さをすごく感じています。」と、田路さんは自社の物流サービスを山梨県全域の市町村に声かけて広域化してもらった経験を踏まえて話しました。

最後にそれぞれの今後の展望を聞きました。「物流は国や県、自治体が一体になって公共サービス化する必要があると思っています。民間任せにせずに、県が介入して未来の物流を一緒に作ってくれるような仕組みをぜひご検討いただきたいなと思っています。」と田路さん。

インフラ事業の川島さんは「インフラは民間だけで成り立たず、地域の住民と行政が手を取り合う領域だと思っています。僕らの一歩目が1年足らずで踏み出せたのは、山梨県の皆さんやTRY!YAMANASHI!事業に背中を押してもらったからだなと思っています。」と話しました。

沖田さんは「我々のプロダクトは感染の広がりを予防するために事前に手軽に検査をしておく、という感染抑止のデバイスだと思っていて、介護施設や学校等でも使用してもらえ、感染症にかかって困る人を減らしたいと考えていますが、医療機関以外では現在の法律の枠組みだと実験ができないんです。そういったハードルを超えるために、行政との連携を進めながら取り組んでいければいいなと思っています。」と今後に期待を込めました。

採択されたスタートアップそれぞれの率直な感想を聞くことができ、事業の価値が伝わるセッションとなりました。

山梨県知事によるウェルカムメッセージ

採択されたスタートアップによるセッションに続いて、長崎幸太郎山梨県知事が登壇し、「山梨県はチャレンジを歓迎する土地です。そしてチャレンジする実証実験の場としては、かなりふさわしい土地ではないかと思っております。投資家の皆さんをはじめ様々な方にすぐに見に来ていただけるのは大きなメリットだと思いますし、何よりも人口80万人とちょうどいいサイズとなっています。県をあげて地域をあげて、皆さんの新しい取り組みやチャレンジを私たちも一緒に仲間として伴走させていただきたいと思っております。皆さんには、何か新しいことやるのであれば山梨県を考えてみようと思っていただけたら嬉しいです。」とメッセージを送りました。

知事メッセージ 知事・登壇者集合写真

「迷ったときはどっちが正しいか考えちゃダメ!どっちが楽しいかで決めなさい」~eスポーツのファーストペンギンの東証マザーズへの道のり~

谷田様 鈴木様 スペシャルセッション集合写真

登壇者

  • 谷田 優也 氏 = ウェルプレイド・ライゼスト株式会社 代表取締役
  • 鈴木 秀 氏 = 株式会社ホリプロデジタルエンターテインメント 代表取締役社長

谷田さんは、「ゲームをきっかけに人と社会をHAPPYにする」をミッションにゲーム・eスポーツを軸とした事業を展開し、日本最強のゲーミングライフスタイルカンパニーとして業界のさらなる発展に寄与することを目指しています。「スタートアップは事業のミッションを軽視しがちですが、そこに時間とお金とリソースをすべて懸けるべきだと思っています。問題や壁に当たった時に”決断”をしていくために必要なんですよね。」と切り出しました。

プログラマーやWebディレクターを経てプロデューサーになったという谷田さん。「ゲームが上手いプレイヤーはたくさんいて、でも彼らはゲームを作っている側よりも圧倒的に稼げてないし、いい思いもしてない状況を目の当たりにしていました。数千時間の努力の先に表現されるプレイは、他のスポーツやアーティストと変わらず、人の感動を生み出すと知っていますし、信じています。日本にはゲームの世界で努力している人たちが評価される世界自体がなかったので、それを日本国内で確立させようと今の会社を作りました。」

大学院生の時に動画のSNSを開発したという鈴木さん。「10年前の話ですが、何百万も再生されるような人々に影響があるおもしろい動画が1円もお金にならないのはおかしいと思っていました。」それに対して、谷田さんも「違和感を感じて、その環境を変えたいと思ったときにビジネスの可能性があるんじゃないかと思います。」と共感を示していました。

「eスポーツの大会は手段なんです。」と谷田さん。「ただ面白いだけなら無料で遊べるゲームがたくさんある中で、明日もこのゲームで遊ぼうかと理由を作るにはゲームの外側にも遊び続ける理由を提供しなきゃいけない。それができる会社には価値があるだろうなと考えました。時代のニーズにフィットした仕事の提供はできていると思っています。」

谷田さんは、自社ともう1つの会社を合併して上場すると決断し、さまざまな困難を経て実現させました。難題を乗り越えられた理由は何だったのでしょうか。

「今日のトークテーマでもありますが、どちらが楽しいかだけで決めました。社訓に”挑戦こそゲームのように”と掲げています。面白がって楽しめているときが一番いいパフォーマンスを出せるんです。面白ければ、あらゆる難しいことや面倒くさいこと、嫌なことも全部ぶっ飛ばしながら仕事ができる。難しい問題の解決や決断をしなければならない時に、頑張れる強さになると思っています。」

「eスポーツがオリンピックの正式な種目になる未来が見えています。誰もが無理だな、できないなと思うことこそがむしろチャンスなんです。今日、皆さんに一番に伝えたいですね。」と谷田さん。

時間が惜しまれつつ、次のセッションへ移りました。

山梨から考える新たなモビリティ社会

「空飛ぶクルマ」がリニアのある山梨に実装されると、どのような社会が待っているのでしょうか。このセッションでは、空飛ぶクルマやリニアなど次世代のモビリティ分野に精通した方々が、山梨県における新たなモビリティ社会の未来やポテンシャルについて議論しました。

次世代モビリティ_トーク 次世代モビリティ_集合

登壇者

  • 手塚 究 氏 = 株式会社AirX 代表取締役CEO
  • 高橋 祐児 氏 = デロイトトーマツコンサルティング合同会社 航空宇宙・防衛セクタ― シニアマネジャー
  • 河野 整 氏 = 東海旅客鉄道株式会社 総合技術本部 技術開発部 イノベーション推進室 担当課長
  • 宮川 新一 氏 = 山梨県 知事政策局 リニア未来創造・推進グループ 主任

モデレーター

  • 岩本 学 氏 = 株式会社日本政策投資銀行 産業調査部 兼 航空宇宙室 調査役

モビリティ分野で活躍される登壇者のそれぞれの活動について紹介がありました。空のモビリティプラットフォームを作っている手塚さん、JR東海でシビルエンジニア(Civil Engineer)として技術革新を目的としたイノベーション推進活動をしている河野さん。航空宇宙防衛業界を担当するコンサルタントの高橋さんは、空飛ぶクルマやドローンの領域に取り組み、経営コンサルティングファームとして産業エコシステム作りに貢献しています。

山梨県のリニア未来創造・推進グループの宮川さんは、空飛ぶクルマを担当。山梨県が取り組んでいる空飛ぶクルマについて紹介しました。「山梨県が抱える車の渋滞や高齢者の移動の問題、また、将来のリニア中央新幹線の開業に向けて、新しい交通のあり方を検討する上で空飛ぶクルマの社会実装に向けて取り組んでいます。山梨の地域特性を整理した上でのコンセプト作り、それを基にした将来のビジョンやロードマップの作成を進めています。また、コンセプトムービーを作ったり、イベントを開催したり、空飛ぶクルマが山梨県の生活に溶け込んでいけるように、山梨県における空の移動革命の推進を図っているところです。」

山梨での空の移動革命がまさに始まろうとしています。高橋さんは「空は移動手段として利便性が高く、まだまだ開拓の余地があります。既存のインフラに従うことなく、Point to Pointで直線的に移動できるため、時間短縮になるのも特徴です。空を飛ぶことは非常に価値があると思っています。」と述べました。

ヘリを全国各地あちこち飛ばしている手塚さん。「インバウンドの観光客が増えているんですけども、富士山に行くだけじゃなくて、食事やお酒も楽しみたいという要望があるんですね。ヘリコプターの値段でも山中湖や甲府に行かれる方が多いので、山梨県と空の掛け合わせはポテンシャルが高いだろうと感じています。」

鉄道会社に勤めている河野さんには空飛ぶクルマというモビリティがどう映っているのでしょうか。「飛行機のような騒音はないでしょうし、自動飛行ができれば手軽なエアモビリティになりますよね。離発着ポイントさえあれば、道路やレールを敷かなくてもあらゆるところへ移動できることが魅力的です。一方で、エアモビリティ単体で何かを新しい交通を生み出すというのはなかなか現実的ではないと考えます。なので、エアモビリティを新しい交通体系として捉えていくのが大事だと思います。」

山梨の空の可能性について高橋さんは「甲府のリニア駅をハブにして、山梨県の各地を結んで経済発展に繋げるモデルが組めないかなと思ったりします。空ならまったく新しいコンセプトでルートを作れるんじゃないかと。富士山見て、富士Qハイランドに行って、トレッキングして、最後にワイナリーでお酒飲んで帰りますみたいな。今のレンタカーじゃできないことが、新たなモビリティサービスならできるのかと考えると、とても面白いルートが見えてきますよね。」と大きな可能性を語りました。

リニアの開業をきっかけに人の移動も物の移動も間違いなく増えていく山梨県。空飛ぶクルマの実装にも期待が高まる、熱いセッションとなりました。

Mt.Fujiイノベーションキャンプ10年の歩みとこれから

山梨県から起業家や新規事業を生み出す取組「Mt.Fujiイノベーションキャンプ(通称:イノキャン)」。自身のやりたいことやビジネスプランと徹底的に向き合うイノキャンをきっかけに、その後の人生が大きく変化した参加者や関係者も少なくありません。このセッションでは、イノキャンの仕掛人と参加者がイノキャンの価値を語り合いました。

イノキャン_トーク イノキャン_集合

登壇者

  • 藤村 慎一 氏 = 株式会社オゥルテス 代表取締役
  • 塩島 諒輔 氏 = 株式会社スクーミー 代表取締役CEO
  • 勝部 陸羽 氏 = 山梨県立大学 国際政策学部 2年

モデレーター

  • 戸田 達昭 氏 = 一般社団法人Mt.Fujiイノベーションエンジン 理事・事務局長

はじめに、モデレーターの戸田さんからイノキャン(Mt.Fujiイノベーションキャンプ)の紹介がありました。2014年にスタートし、今年で10年目となるイノキャンは「新たに起業または新事業の展開を望む方のための、スタートアップの祭典」です。動画にまとめられた活動の様子から、その雰囲気が感じられました。

「我々のイノキャンの特徴は、共創パートナーと呼ばれる大企業や県内の企業が参加している点です。企業側はオープンイノベーションのネタ探し、スタートアップは協業先や資金調達先を探しているので、実際の事業展開に繋がっています。次に、メンタリングが充実していること。イノキャンでは評論家がいないんですね。メンターの皆さんがプレイヤーとしても来ているのが特徴です。」と戸田さん。

今年はイノキャンが民営化し、新たな取り組みとして”イノキャンウィーク”を展開。拠点である甲府を中心に地元の皆さんとも連携して、まちづくりに発展させた経緯が話されました。

過去に3回、イノキャンに参加している塩島さん。2020年に念願だった最優秀賞を取り、今は小型コンピュータを開発しています。「初めて参加した後に戸田さんから香港の話をされ、すぐに行ってみたことで世界観が大きく変わりました。」と経験を話してくれました。

藤村さんは今年初めてイノキャンに参加しました。「ビジネスモデルの見直しや自分の会社の弱点を指摘されたことで、鍛えられたなと感じています。イノキャン中にとても育てられた実感があり、最優秀賞までいただいてしまいました。」と、充実した4日間だったと感想を述べました。

大学2年生の勝部さんは、戸田さんの授業を受けたのをきっかけに、軽いノリで参加したそうです。「何もない状態で、何やろうか?が出発点でしたが、イノキャンに参加して自分のやりたいことが一つ決まりました。」と事業の展望を話しました。

「イノキャンでは最終日のピッチコンテストが特徴的で、最初に審査員がピッチするんです。一般的なピッチコンテストは、審査員は紹介があって、参加者に対して”君はどうなってんの”みたいになるじゃないですか。我々はそれをフェアじゃないと思っていて、今年も山梨中央銀行の頭取さんをはじめとした審査員にピッチしてもらいました。」と戸田さんは審査の特徴を説明しました。

最後に、勝部さんは「イノキャンは、正直つらいです。4日間のプログラムは6時くらいに終わるんですけど、その後の自由時間が自由じゃない。ほとんどの参加者がずっと事業について考えていて、本当に全員本気で熱量が高くて。何か夢を語るとこれ無理だよ、できないでしょ、みたいなこと言う人も世の中にはいると思うんですけど、それが誰もいないんですね。足引っ張る人がいなくて、全員が絶対いけるよって後押しして一緒に進める雰囲気でした。それに、キャンプが終わって終わりじゃないんですよ。ここからが自分のビジネスの始まりなので、どうやっていくかを考えなければならない。イノキャンは、終わった後も苦労しなきゃいけない前代未聞のイベントと思っています。」と熱を込めて語りました。

最後に、登壇者から未来の参加者への一言をもらい、セッションを終えました。

地域発スタートアップによる社会的インパクトの創出

インパクトスタートアップに注目が集まる一方で、都市では産み出せないような地域課題からビジネスを創出するスタートアップが生まれています。このセッションでは、社会的インパクト創出に取り組む山梨発スタートアップが集まり、その意義や可能性について議論しました。

インパクト_トーク インパクト_集合

登壇者

  • 丸山 桂佑 氏 = アグベル株式会社 代表取締役
  • 増田 貴史 氏 = 山梨県立大学 特任教授
  • 丸谷 篤史 氏 = 株式会社LOOOF 取締役副社長

モデレーター

  • 古市 奏文 氏 = 一般財団法人 社会変革推進財団(SIIF) インパクト・エコノミー・ラボ インパクト・カタリスト

日本のインパクト投資を普及させるために活動している古市さんがモデレーター。セッションの前提として、インパクト投資は、通常の投資活動に対してプラスアルファの概念としてインパクトを加えて、リスク・リターン・インパクトという3つの観点から投資活動の判断や評価をする一連の投資活動である、と共有しました。

はじめに登壇している起業家の皆さんに事業と自己紹介をいただきました。「アグリカルチャーに新時代のベルを鳴らす」を掲げる丸山さん。「家族経営のブドウ園を継承したところからスタートしました。取り組みとしてはバリューチェーンの改革・生産規模の拡大・輸出・農業を始めたい若い人へ伴走型の支援の4点に力を入れて活動しています。」

山梨県立大学の増田さんは半導体の技術を使って高機能な天然素材を作る、大学発のベンチャー企業を作りました。「アパレル産業は世界で2番目の環境破壊産業と言われています。石油からじゃなくて森から洋服が作れたら、何かすごく美しいと思いませんか。そのために半導体の技術を使って、洋服を作っています。」

丸谷さんは、地域のホテルの企画から設計・運用まで一貫した事業を行っています。「ホテル運営とパートナー事業で多店舗展開していくという機能を持ち、物作りもできるのが特徴です。僕たちは仕組みを作って文化を連鎖させていくことを大事にしていますので、地域で作ったシステムや仕組みを多くの県で展開していきたいと思っております。」

それぞれの紹介を聞いたあと、インパクトに対する向き合い方について聞かれた丸山さんは「家族経営が当たり前の農業は、高齢化で人が減って担い手がいません。それは誰もが理解していて、このままでは日本の農業は衰退していく一方です。だからこそ僕らは企業として、農業をビジネス産業として捉えて、どうやったら稼げるようになるのかを追求しています。」と答えました。

増田さんは、インパクトスタートアップと括られることに対して「全部が山梨県で作られた素材を使った服なら、プラスチック未使用で当然環境汚染や廃棄数もなくなっていいことずくめだよね、というのが表向きの理由です。ただ僕らの本当の目的は、山梨の人口流出を止めること。そのために、木材から糸を作る技術と高機能な天然染料を作る技術が必要だったから事業を立ち上げて、山梨県にそういう構造を作ったのが僕らのインパクトの姿になっています。」と話しました。

「地域に入れたお金が他のところに行くんじゃなくて、その地域の中で活用されて地域が育っていくというところで、インパクト投資が今すごく注目されている状況です。」と古市さん。

ソーシャルインパクトについて丸谷さんは「ソーシャルインパクトや社会起業家はそろそろ次のステップに進まなくちゃいけなくて、本当のインパクトをどう作り出すかと考えていくと、やっぱり産業化になるんですよね。僕たちの世代でそういう起業家や事業を増やして、結果的に社会が良くなってるよね、という構造になるのが大事なような気がしています。」と述べました。

「地域ですでに事業化している起業家さんとこれだけ揃ってお話できるのはとても珍しいですし、山梨県には社会的インパクトとの相性やポテンシャルが強くあるんだと感じました。」古市さんがこのセッションでの感想を話しました。

山梨県で実際に活躍するスタートアップの話を聞き、山梨の魅力を再認識するセッションとなりました。

VUCA時代における人材育成とは

山梨県では、イノベーションの礎となる技術の発展と人材育成を担う大学において、先進的な教育プログラムが多数立ち上がり、時代を牽引する若い感性や突破力の育成を行っています。このセッションでは、甲府市内の国公私立の大学が取り組む人材育成と、大学を核にしたオープンイノベーションの可能性について議論しました。

VUCA_トーク VUCA_集合

登壇者

  • 青山 貴子 氏 = 山梨学院大学 学長
  • 西田 継 氏 = 山梨大学大学院 総合研究部 生命環境学域環境科学系・国際流域環境研究センター 教授

モデレーター

  • 杉山 歩 氏 = 山梨県立大学 教授・学長補佐

モデレーターの杉山さんは冒頭で「山梨県の大学進学率は東京・京都に次いで全国第3位、甲府市は人口が最も少ない県庁所在地でありながらも18歳の人口が流入している市です。意外かもしれませんが、山梨県は多数の大学が集積し、若者が日々の暮らしと学びを楽しんでいる地域なのです。オープンイノベーションに研究シーズのみを求めるのであれば大型の研究大学が有利ですが、地域のコミュニティといった豊富なソーシャルキャピタル=社会関係資本があるから、山梨県で学生、若者を交えたオープンイノベーションを起こせます。」と説明しました。

青山さんは山梨学院大学のVUCA時代における教育のポイントを3つ紹介しました。「1つ目は、学校自身がどのくらい挑戦しているのか、挑戦する組織体であるか。学生に背中を見せる意味でも重要だと考えています。2つ目は、圧倒的に違う他者と出会って、時には対立しながら自分と向き合う経験をすること。そういった環境を大学としてどう作るかを大切にしています。最後3つ目は、オーセンティックな課題をいかに提供できるか。それらに即して山梨学院大学の取り組みも進めています。」

山梨大学の西田さん。「水の研究からはじまり、水が大事な資源である農業の研究を経て環境人類学に広がっています。地産地消について研究を始めて1年くらいのところ、地元の高校生と今年から、地元の子供たちを招きながら田んぼをこしらえて稲を収穫し、お米をみんなで精米して炊いて食べるという共同研究を始めました。地元の竹筒で採れたお米を炊いて学びを深めるという活動です。他にも小学生、中学生とも共同研究を行っています。」と自身の取り組みを紹介しました。

山梨県の取り組みを杉山さんが紹介しました。「大学の枠を超えて、4大学1短大で150名の学生が参加して36のプロジェクトを山梨県の民間の企業・団体と一緒にやっています。中には山梨県庁とか甲府市役所も入っているプロジェクトがあったり、”コストコをどうやって作るか”を学生と一緒にやるプロジェクトがあったり、高校生も大学生も社会人もみんな一緒にやっています。山梨県は、みんなで学ぶとか、みんなで何かアクションを起こす、ということがやりやすい土地柄なんです。」

「山梨は大学同士の学部がかぶってないので、競合しないんですよね。ライバルというより、協力関係が築きやすいところにポテンシャルがあるのかなと。いろいろな領域の方と繋がりやすい環境は、イノベーティブなことをしたいとなった時にスピーディーに進められると思っています。」と青山さん。

最後に、参加していた大学の卒業生に感想を聞きました。「大学同士が近くて接点があるのと、大学や高校だけでなく民間企業との繋がりもあるのが魅力だと思います。私が山梨で働いていた時期に感じたのは、産学官連携はもちろん、何をやるにしても周りからのサポートが手厚いし、悩んだときに民間の視点からも行政の面からも学問の面からもすぐに相談できる場があり、何か挑戦するのはすごくいい環境です。」

山梨県が取り組むVUCA時代における人材育成とオープンイノベーションの可能性を充分に伝え、セッションを終えました。

山梨SAKEイノベーション

山梨県は雨や雪は少なく日照時間は長く、太陽と水に恵まれた美酒の産地です。このセッションでは、当日会場で提供されたワイン、クラフトビール、クラフトジンの造り手が登壇し、山梨で酒造りを始めたきっかけや酒造りにかける思いを語りました。

SAKE_トーク SAKE_集合

登壇者

  • 有賀 翔 氏 = 勝沼醸造株式会社 製造部 栽培課長
  • 岸川 勇太 氏 = 株式会社GEEKSTILL 代表取締役
  • 細貝 洋一郎 氏 = Far Yeast Brewing株式会社 取締役副社長

モデレーター

  • 深澤 麻里子 氏 = 山梨県庁 産業労働部 産業振興課 主任(ソムリエ)

モデレーターに山梨県庁で酒類産業の振興を担当し、ソムリエでもある深澤さんを迎えてセッションがはじまりました。パネリストとして、甲州市勝沼でワイナリーを営む有賀さん、小菅村でクラフトビールを製造している細貝さん、甲州市塩山でクラフトジンの会社を立ち上げた岸川さんが登壇し、それぞれの事業とお酒が紹介されました。

山梨県で酒造りを始めたきっかけは何だったのでしょうか?

有賀さんは「実家がワイナリーだったんです。大学生の時に参加したワイン会で自社のワインを飲んだ時に衝撃を受けたのがきっかけでした。飲み物で人の心を動かすことができるなら、そんな仕事がしたいという思いでワイン造りの世界に入りました。」と経験を語りました。

細貝さんはもともとビール好きだったそうです。「大学卒業してから日系のメーカーで働いていたんですが、あるクラフトビールを飲んでからどんどんクラフトビールにのめり込んでいきました。クラフトビールが自分のやりたいことなんだと感じたタイミングで、今の会社が人材を募集していて入社させていただくことになりました。」

岸川さんは「お酒造りとも農業ともまったく関係ないエンジニアをしていましたが、農業にはすごく憧れを抱いていました。自宅のすぐ近くの耕作放棄地を借りてですね、自分自身でブドウを作り始めてみたんですが、うまくいくはずもなくて、食べていくために何かやらなくてはと蒸留酒にたどり着きました。」と話しました。

ワイン産地の山梨県ならではのコラボレーションが、違う種類のお酒で生まれているそうです。「蒸留酒を樽に詰めてエイジングする際にワイン樽を使ってみたいと思っていますし、現在ではワインの搾りかすを利用させてもらっています。」と岸川さん。それを受けて「他にもワインを発酵した樽を使っていただいたりとか、お酒のジャンルの垣根を超えた連携は材料の提供だけでなく、容器の貸し借りだったり、取り組めることがいろいろありますね。」と有賀さんが述べました。

それぞれのお酒の感想や将来のビジョンを聞き、本日最後のセッションも幕を閉じました。