ページID:5830更新日:2022年2月15日
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試験研究の背景と目標
本県農業は、内陸特有の気象条件や平坦地から高冷地まで栽培が可能な自然条件に加え、首都圏の大消費地に近い有利な立地条件を活かして果樹、畜産、野菜、水稲、花き等多様な農畜産物の生産が行われている。しかし、近年は農業後継者不足や担い手の高齢化の進行に伴う耕作放棄地の増加、輸入農産物の増加に伴う価格の低迷、原油価格の高騰による生産・流通コストの増大など多くの問題を抱えている。
こうした中、県では、平成27年12月に本県の農業振興の指針となる「新・やまなし農業大綱」を策定し、「戦略的なマーケティングで販路を広げる」、「生産の効率化、高付加価値化を進める」、「高品質化、低コスト化で産地を強化する」、「耕作放棄地を減らし農地を有効活用する」、「成長産業化を支える担い手を育てる」、「観光など様々な分野との連携により農村地域を活性化する」「新たな課題に対応する」を施策の方向とし、重点的に推進している。また、試験研究については、平成29年3月に「山梨県農業の試験研究推進構想」が8次改訂され、農業関係試験研究機関が目指す研究開発の基本的方向として、「本県農業の振興方向に沿った施策を実現する技術の開発」、「生産現場の課題解決を迅速に進める技術開発」、「分野横断的研究・産学官連携の推進による効果的・効率的な技術の開発」の3項目が示されている。
このような状況を踏まえ、総合農業技術センターにおいては、試験研究部門と専門指導スタッフ、農業技術普及部、調査部が密接な連携を図りながら、作物、野菜、花き等に関する生産性向上や持続可能な農業生産に寄与する農業技術の開発を目指し、以下の6項目を柱として試験研究に取り組む。また、当センターの恒常的業務として、水稲、大豆の原種生産や肥料品質確保法及び飼料安全法に基づき肥料、飼料の分析検査を行う。
県産農産物のブランドづくりを推進するため、水稲、麦類、大豆の優良品種の選定をはじめ、野菜・花きにおいては夏秋どりイチゴ、ピラミッドアジサイの新品種育成と安定生産技術の確立に取り組む。
低コスト生産技術を確立するため、水稲では除草作業の省力化と強害雑草の効率的な防除を目的に新規及び既存の除草剤の効果を明らかにする。野菜では、平坦地における冬期を中心とした省力品目の導入や新規作型の開発による栽培期間の拡大技術に取り組む。
持続的な農業生産を維持するため、果菜、葉菜類の有機栽培におけるマメ科緑肥の利用技術について取り組み、環境保全型農業の確立を図る。また耕地の地力変動を把握するための調査を地域別に実施する。このほか、栄養調整飼料の給与から得られた堆肥の施用効果を明らかにする。
農業生産上、問題となる障害を回避するため、スイートコーンでは、平坦地の早だし栽培で問題となっている早春の低温障害を軽減するための栽培管理技術、また、富士北麓地域における夏秋どり栽培の倒伏軽減技術の確立を行う。また、作物、野菜、花きに発生する原因不明の症状について実態調査を行い、対策技術を確立する。
地域特性を活かした農業の実施に向け、高標高地においてアスパラガスの伏せ込み栽培技術、切り花の新作型技術を開発する。また、近年、農業生産にも利用されているLED照射によるコチョウラン開花調節技術の確立やシンビジウムの高温障害対策に取り組む。さらにこの地域を中心に深刻な被害となっている鳥獣害に対しては、既存技術の改善による獣害防止効果の向上について取り組む。このほか、中山間地域で法人を中心に産地化を目指して栽培が始まっているヤマトイモについて種イモの効率的増殖技術や貯蔵技術の確立を行い、6次産業化に結びつける。
気象変動の影響で、近年、水稲では夏期の高温により胴割粒や白未熟粒の被害が多発していることから高温登熟障害の対策に取り組む。
このほか、業務的課題として、当センターで育成した野菜、花き類の維持・保存や本県に在来する地域特有の農産物についてその特性を調査する。また、法令や条例に基づいた土壌および肥料・飼料の検査を行う。