ここから本文です。

百瀬 健

0131

 

「et momo JAPON(エ モモ ジャポン)」は宝石研磨業の老舗である百瀬貴石株式会社から生まれた、天然石と18金をメインにした大人の為の「可愛さ」と「ワクワク」が溢れるジュエリーブランド。

健さんはデザイナーとして、世界観を表現するために、作品のデザインだけでなくディスプレイの作成なども自ら手掛け、作品によっては天然石の原石を研磨してet momo ならではの「可愛い石の形」をデザインに取り入れている。

ブランドのイメージやコンセプトを教えてください。

「夢の中」や「おとぎの国」といったファンタジーな世界に迷い込んだような雰囲気を大切にしています。「可愛い」だけではなく、懐かしさやメランコリックな空気感もあるブランドだと思います。

また、作品を見たときに、ひとりひとりがそれぞれに「物語」を思い描けるような「絵本的」要素もこのブランドのコンセプトのひとつ。

指輪、ペンダント、と少しづつアイテムを足していくごとにストーリーが変化していくような「絵本的」なジュエリーの楽しみ方をしていただければ嬉しいです。

健さんの職人としてのこだわりは何ですか?

まず「職人」という言葉の響きから皆さんがイメージするのは、昔気質で技術にストイックな格好良さだと思うのですが、恥ずかしながら僕の場合は修行を積んで技術を身につけた、という経歴はありません。

研磨を始めたのは、頭の中で作りたいジュエリーを思い浮かべた時に、原石からこんな形が作れたら面白いのにな、というイメージ通りのものがなかったので、自ら作ってみよう、というのが出発点です。

ですから僕のこだわりとして言えることがあるとすれば、先ずは「ありそうでないもの」を作るという事になるのかもしれません。また、ジュエリー全体のイメージありきの研磨なので、石の形が完成形ではなく、あくまでも大切な1パーツとして作成するという事も大事な事だと思っています。

デザインや造りの特徴は?

一言で表現するのは難しいですが、温かみやぬくもりを感じるフォルムや仕上げにこだわっています。

例えば、金の細工に関して言えばピカピカに磨くのではなく、トロンとしたマットな質感。カッチリとした美しさではなく、いびつな歪みを美しく見せるようなフォルム。石に関して言えば、上記に加えて自然な原石の表情をそのまま活かすなど、天然石と金が同じような温度感を持つ、というところが特徴と言えるかもしれません。

「美しい歪み」というのはデザイン画で表現するのが難しくはないですか?

ジュエリーのデザイン画というとミリ単位の繊細な線できっちりと描く、というイメージがあるかもしれませんが、et momo のデザイン画は絵本の挿絵のようなもの。デザイン画をぱっと見たときに感じる「イメージ」が伝わることの方が大切なブランドだからです。

デザイン画では足りない情報は、立体的な三面図ではなく、粘土や金色の紙で形作った模型を用いたりします。これは先に述べた「いびつさ」や「歪み」を表現するためにも有効です。単なる「歪み」ではなく、そこには非常に微妙なバランスや可愛さがなくてはならないので、2次元的なものではまず、伝わりません。

この象が登っているラピスラズリも原石を使うことによって、ストーリーをより強く感じられる気がしますね。原品を作品に使う上で難しい部分はどのようなことでしょうか?

そうですね。皆さんがご存知のラピスの色は瑠璃色だと思いますが、原石の中で瑠璃色一色の部分はそれほど多くはありません。白色や黒色が混ざりあった部分が殆どですし、または「カン」という自然のヒビ割れも多く入っています。

ですから、その中から原石の風合いとして活かせる部分はそれほど多くなく、同じ形、色合いのものは二つと出ないので、それに合わせて当然ストーリーやデザインも変わっていきます。それが楽しさでもあり、難しさでもあるところでしょうか。もちろん、原石そのままで使えることは殆どないので、尖りすぎている部分などは研磨したり、金属との融合部分を削ったり、穴をあけたりと、原石のイメージを崩さないように人の手を入れることも難しさの1つです。石の種類によって硬度も違うので、それぞれの性質に合ったデザインにすることも必要です。 

こちらの「タイガーアイのくま」のペンダントは、まるで木で作られているようですが、タイガーアイという石だと聞いて驚きました。石なのに、木のような温かみがあると感じさせるポイントは何でしょう?

この石は磨くと光の角度によって「虎の目」のような効果が出ることから「タイガーアイ」と呼ばれているのですが、実は磨き上げずに艶消しにすると、本当に木のような質感になるのです。どんな石も研磨の仕上げ方で見え方が変わるので面白いですよね。そして、もともと硬い石を、柔らかいフォルムに形づくることができるのも研磨ならではの特徴かもしれません。この「くまシリーズ」の面白いところは、更に、一匹一匹が同じ表情や体形にはならないところ。その個体差も温もりにつながっていると思います。

この道に入ったきっかけを教えてもらえますか?

最初に自らデザインしようと思ったのは、まだ百瀬貴石が宝石のルースだけを取り扱っていた頃で、当時は僕もいろいろなデザイナーさんの元へ営業に回っていたのですが、その方々の作品を見せていただくうちに、自分だったらこうするな、ああするな、とイメージが浮かぶようになってきたからです。

本格的なデザイナーとしてのきっかけは、山梨グッドデザイン賞を頂いた少し後に、ある方とのご縁でデザイナーとして発表の場を与えていただいた事です。新しいアイディアを形にし、お客様に喜んでいただける楽しさを実感した事が何よりも大きなきっかけでしたね。

これからデザイナーを目指したいと思っている方に、アドバイスはありますか?

時々、デザイナーをやりたいけど絵に自信がない、という理由で不安に思っている方がいるのですが、絵を描く仕事がデザイナーの仕事ではなく、如何に頭の中にある自由な発想やイメージを作品として表現できるかを考える事こそ、デザイナーの仕事だと思います。なので、表現したいものがある人ならば、自信をもって取り組んで欲しいです。

最後に、健さんの今後の展望やこれから目指すところを教えてください。

 これからのジュエリーは価値で満足する為だけではなく、もっと心の部分にリンクするような物にもなっていくと思います。元来、装飾品はお守り的な役割を持っていたことからも分かるように、持つ方それぞれの「想い入れ」が「宝物」としての価値になるのではないでしょうか。身につけている事で、自分自身も周囲も笑顔になれるような、心を彩るジュエリーがたくさん増えたらいいな、と思います。

僕自身について言えば、1つのブランドのデザイナーである以上、そのブランドの世界観を確立し、誰が見てもその作品は「et momo 」のだ、と分かっていただけるような物を作っていくのが理想だと考えています。

時代のニーズに合わせて変化する部分も必要かとは思いますが、ぶれない部分はしっかりと持ちながら、作品も僕自身も進化していきたいと考えます。

ステキなメッセージをありがとうございました。これからも応援します。今日はありがとうございました。 

 2011年7月13日 インタビュー掲載

企業情報

名    称:百瀬貴石(株)

住    所:山梨県甲府市中央4-5-3

T  E  L  :055-232-5050

E-mail  :momosekiseki@gmail.com

H     P:http://et-momo.com/index.html

事業内容:オリジナルブランドet momo JAPONの企画・製造・販売。

  

  

otukisamapendanto

お月様のペンダント

 

momose3

 ラピス 

 

rapisurazurizou

ラピスラズリハシゴを上るゾウ

 

 taigaainokuma

 タイガーアイのくま

 

momose5

天然石の家

百瀬 健

山梨県出身。●宝石の販売を通して実践で知識を身に着けながら、デザインに興味を持つ。●自らデザインしたCARTAシリーズが山梨県グッドデザイン賞を受賞。●これを機に2005年から「et momo JAPON」ブランドをスタート。

より良いウェブサイトにするためにみなさまのご意見をお聞かせください

このページの情報は役に立ちましたか?

このページの情報は見つけやすかったですか?