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ページID:125490更新日:2026年4月21日

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防災コラム温故知災

◆避難所は「我慢」するところ?TKB48への期待

 地元自治会が行った避難訓練に参加したことがある。防災行政無線からの「マグニチュード9の巨大地震が発生」を合図に、避難所になっている近くの中学校体育館に「避難」した。時期は11月上旬。時間は午前9時ごろ。館内の空気はヒンヤリしていて、スリッパを履いていたが板張りの床の冷たさに驚いた。「真冬の夜だったら、この程度では済まないな」と思いつつ、消火栓操作、マンホールトイレ設置など規定の訓練を終えた。

 

避難所記事

 

↑真冬の避難所での安全な過ごし方を考えた、重症心身障害児と家族らの防災訓練の様子を伝える2026年2月8日付の山梨日日新聞紙面

 

 日本の陸地面積は世界の約0.25%に過ぎない。にもかかわらず、世界で発生したマグニチュード6以上の地震のうち20.5%は日本で発生、活火山は世界全体の7.1%が日本に集中している(参照:地震情報サイトJIS)。地震・火山大国であり、さらには台風にも度々襲われる地域とあって、日本は世界でも指折りの災害大国である。当然ながら、大規模災害に伴い避難所が開設されることが多い。だが、その避難所の生活環境レベルの評判は、必ずしもよくない。板張りの床の冷たさに驚いたのは、ささやかだがまさにその一端でもある。

 

 災害後、多くの人は「みんなひどい目に遭った。災害の後だから、わがまま言わずに我慢しなくては」という意識が強い。だが、その我慢が、災害関連死が無くならない原因にもなってしまう。精神的にも、肉体的にも大きなダメージを受けて避難してくる被災者。命を守るための一時的な避難場所としての避難所はともかく、多くの被災者が避難生活を送らざるを得ない避難所にあって、さらなる我慢を強いられては、ダメージの回復はおぼつかない。避難所は我慢するところであってはならない。

 

 では、快適な避難所とはどんなものか。医療・福祉関係者、防災研究者、防災関連用品メーカーのスタッフなどが集まる一般社団法人避難所・避難生活学会(水谷嘉浩代表理事)は、「TKB48!」を提唱し、避難所の二次健康被害ゼロを目指している。TKB48とは、トイレ(T)、キッチン(K)、ベッド(B)を、避難所に48時間以内に整えることを常識にする、という取り組みのキャッチフレーズ。その参考例がイタリアにあるという。

 

 イタリアでは1980年に南部を襲った大地震で、情報が混乱して適切な支援ができなかった教訓から、国が支援の専門組織(市民保護局)を設置して支援を統括、備蓄拠点や支援体制の整備を進めてきたという。ポイントは必要な機材のユニット化と被災自治体の職員は避難所運営を行わないという仕組み。災害が起きると最寄りの備蓄拠点から、コンテナをうまく利用したトイレ・シャワー(T)、キッチンカーやキッチンコンテナ(K)、カーペットが敷かれ家族分のベッドがあるテント(B)などが、ワンセットで一緒に届き、すぐに利用環境が整う。避難所運営には、自身も被災し負担も大きい地元自治体職員は関わらず、専門職種のボランティアが駆けつける。衛生的なトイレを使い、温かく栄養のある食事で元気を取り戻し、テントの中のベッド、生活空間で安心して過ごせる。ユニットは標準化されていて、どの避難所でも同じ質の支援ができるようになっている。同学会は「イタリアは災害支援、特に避難所に関しては先進国」と評価する。イタリア式避難所は、日本でも最近は注目が高まり、各地でイタリア式での実証訓練も行われ始めている。

 

 山梨でも、避難所を快適にする取り組みが出ている。県畳同業組合連合会が、昨年(2025年)10月5日に甲府駅北口のペデストリアンデッキで行った「山梨たたみ祭り」で使用した畳100枚を、災害時に避難所などで活用してもらおうと甲府市に寄贈した。市は、有事の際に避難所となる体育館や教室に敷いて活用するという。体育館の板張りの床の冷たさを経験した身とすれば「あそこに畳が敷かれていたら、どれほどありがたいことか」と思う。

畳祭り

↑JR甲府駅北口のペデストリアンデッキで開かれた「山梨たたみ祭り」で、会場に敷き詰められた100枚の畳。祭りで使用された畳は災害時に避難所などで活用してもらおうと、甲府市に寄贈された(写真・山梨日日新聞提供、2025年10月5日撮影)

 

 避難所に畳を届ける運動は、「5日で5000枚の約束。」というプロジェクトが全国の畳店有志の手で10年以上前から全国的に展開されている。同プロジェクトのホームページによると、山梨の畳店も19店舗が参加している。個人的には「避難所に畳」は、日本ならではの素晴らしい一手に思える。

 

 また、甲府市が市内の小中学校36校など40施設の体育館に空調設備を整備する事業を本年度から始めた。「災害時には避難所にもなる体育館の良好な生活環境の確保にもなる」とし、2029(令和11)年度までに整備を終えるという。甲府盆地の夏の危険な暑さ、冬の底冷えを思うと、広く積極的に進めてほしい取り組みだ。

 

 打ちひしがれている時の温かい食事、待たずに使える衛生的なトイレ、安心して眠れるベッドと畳のある生活空間。災害大国日本の避難所が、世界一快適な避難所と早く言われるようになってほしい。この11月に発足が予定されている国の防災庁の手腕に期待したい。                      

(気象予報士・保坂悟=甲府市在住)

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山梨県防災局防災危機管理課 
住所:〒400-8501 甲府市丸の内1-6-1
電話番号:055(223)1431   ファクス番号:055(223)1429

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