トップ > 線状降水帯を補足せよ・・・直前予測を開始へ

ページID:125337更新日:2026年4月7日

ここから本文です。

防災コラム温故知災

◆線状降水帯を捕捉せよ・・・直前予測を開始へ

 雨のいろいろな呼び名を紹介する「雨の名前」(小学館発行)に、山梨県で豪雨のことを表す言葉として「たて洪水」という言葉が紹介されている。「たて」は縦のことかと思っていたら、「雨のことば辞典」(講談社発行)にも「縦洪水」という項目があり、「山梨県南巨摩・長野県諏訪地域などで大雨が激しく降りそそぐことをいう」とあった。そして、河川が氾濫して平面に広がる普通の洪水に対し、空から降りかかる大量の雨水をしゃれて言ったか、と推測している。今風に言えば、土砂降り、集中豪雨、局地的大雨のことだろうが、大雨の表現として山梨にもユニークな言葉があるものだと感心するとともに、古来から大雨が恐れられてきた歴史も感じる。


 大雨への警戒は近年、一段と強まっている。その象徴的存在が、今は線状降水帯と言える。発生すると大規模な土砂崩れや河川のはん濫を引き起こし、大勢の犠牲者が出る脅威の現象である。この現象を捕捉しようと、気象庁をはじめ気鋭の気象学者らが日夜調査研究を進めている。その成果が着々と出始め、線状降水帯発生の直前予測をこの5 月下旬から始めると、気象庁からアナウンスされた。直前とは2~3 時間前のことで、合わせて気象庁のホームページに、そのおおまかな領域を図上に示した「線状降水帯予測マップ」を掲載し、具体的な場所を視覚的に把握できるようにするという。
 予測精度はまだ発展途上で、予測が必ず当たるとは限らないが、線状降水帯は災害に直結する極めて危険な雨だけに、気象庁には「見逃しを恐れず」に発表する姿勢、受け取る我々側は、発生しなくても「空振りで良かった」と受け止める寛容さが必要と言える。


 線状降水帯は、2014(平成26)年8 月20 日に広島市北部を襲った豪雨による土砂災害で、甚大な被害をもたらした元凶としてクローズアップされ、広く世間に知られるようになった。新興住宅地など人家が密集する局地的な領域に、未明から夜明け前にかけて記録的な大雨が数時間も降り続いた結果、背後の山々のあちこちで同時多発的に大規模な土石流が発生、多数の人家が巻き込まれ、70人を超える犠牲者を出した。その後も15(平成27)年9 月の関東・東北豪雨、17(平成29)年7 月の九州北部豪雨、18(平成30)年7 月の西日本豪雨、20(令和2)年7 月の熊本豪雨、24(令和6)年9 月の能登豪雨など、甚大な被害が出た豪雨には、必ず線状降水帯の存在があった。


 線状降水帯と、集中豪雨、局地的大雨とはどこが違うのか。発達した積乱雲がもたらす激しい雨という点は変わらない。局地的大雨は、雷を伴って短時間に狭い範囲で激しく降る雨で、昔風に言えば夕立、今風に言えばゲリラ豪雨となる。集中豪雨は同じような場所で数時間にわたり強く降り、100 ㍉から数百㍉の雨量をもたらす雨。集中豪雨のうち、次々に発生する発達した積乱雲が列をなし、数時間にわたってほぼ同じ場所を通過または停滞することで作り出される、線状に延びる長さ50~300km 程度、幅20~50km 程度の強い降水を伴う雨域を線状降水帯という。一つの積乱雲の寿命は概ね1 時間程度と言われるが、線状降水帯は、選手交代のごとく次々と新しい発達した積乱雲が頭上にやってくるので、同じ場所に数時間も延々と激しい雨が降り続く。


 ポイントは、雨の元になる水蒸気の供給にある。海上からの湿った空気が、同じ場所に同じ方向から長時間供給されないと線状降水帯にはならない。容易に想像が付くが、海沿いではこの現象は起きやすいが、山梨のような四方を高い山に囲まれた内陸県、山岳県では、水蒸気が同じ場所に同じ方向から長時間供給されるという条件は地形的に維持されにくい。このため、山梨では線状降水帯は、まず発生しないと思われていた。

 

 ところがどっこいである。2017(平成29)年8 月7 日、桂川沿いに県内初の線状降水帯が発生して、関係者を驚かせた。当時の天気状況を確認すると、非常に動きがゆっくりの台風5 号の外側の雲列(アウターバンド)が、都留から大月にかけて桂川沿いに長時間流入したことが原因だった。およそ4 時間、猛烈な雨が降り、大月のアメダス観測では午後2 時から午後6 時までに244.5 ㍉もの雨量を観測。大月の8 月1カ月間の雨量平年値(当時)は216.2 ㍉なので、わずか4時間で平年の1カ月を上回る豪雨となった。あちこちで土砂崩れが起きたが、どれも人里から離れた山中だったため、幸いなことに人的被害が出なかったのは奇跡としか言いようがない。

 

                 線状降水帯①   

 ↑ 線状降水帯が発生し、都留、大月市で

   記録的な豪雨となったことを伝える

   2017年8月8日付の山梨日日新聞紙面

                                                           

                                                                            線状降水帯2

                                                                                                              ↑ 都留、大月市での記録的豪雨の際、

                                                                                                                           線状降水帯が長時間滞在したことを報じる

                                                                                                                    2017年8月9日付の山梨日日新聞紙面

 

 山梨の地形を細かく見ると、海側からの水蒸気が直線的に流入しやすいポイントは富士山の両側にある。
一つは上記の山中湖からの桂川沿い。もう一つは富士川沿いとなる。特に富士川沿いは、幅は狭いが駿河湾からの水蒸気がストレートに入りやすい地形なので、県内最大のウィークポイントになる。過去に何回も線状降水帯になりそうな降水状況が発生し、ドキドキしながらウォッチしたことを覚えている。条件さえそろえば、山岳県山梨でも、線状降水帯は発生する。


 線状降水帯発生のメカニズムや大量の水蒸気供給の仕組みなど、地道な調査研究は今も進んでいる。気象庁は、2021(令和3)年から線状降水帯が発生したことを知らせる情報の提供を皮切りに、その雨域を図上に楕円で囲んで表示、翌22(令和4)年からは地方単位での半日前予測を開始、2 年後の24(令和6)年にはその予測範囲を府県単位へと絞り込んできた。今後の計画では、29(令和11)年を目標に、半日程度前に市町村を把握できる格子形式の分布図を示す計画という。

気象予報士・保坂悟=甲府市在住)

このページに関するお問い合わせ先

山梨県防災局防災危機管理課 
住所:〒400-8501 甲府市丸の内1-6-1
電話番号:055(223)1431   ファクス番号:055(223)1429

同じカテゴリから探す

より良いウェブサイトにするためにみなさまのご意見をお聞かせください

このページの情報は役に立ちましたか?

このページの情報は見つけやすかったですか?

このページを見た人はこんなページも見ています

県の取り組み

pagetop