トップ > レベル1 からレベル5 で身を守れ・・・情報の一体化始まる
ページID:125356更新日:2026年4月14日
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防災の究極の目的は、住民の生命、財産を守ることに他ならない。気象庁から出される注意報や警報といったいろいろな防災気象情報は、それを参考に住民が避難行動を取るなど、自分の身を守るために役立ててもらうためのものだ。一方、市町村も気象災害から住民の生命、財産を守るために避難指示や高齢者等避難といった避難情報を出している。

↑大型で強い台風19号の接近に伴い、大雨特別警報が発令され、22市町村で7670人が避難したことを報じる2019年10月13日付の山梨日日新聞紙面
この流れを住民側から見ると、災害から身を守るための情報として、防災気象情報と避難情報の2 系統の情報が届くことになる。情報は主に言葉で伝えられるものなので、当然のこととして、この2 系統の言葉から受け取る危機感は、直感的に分かりやすく、同じ印象でないと戸惑いが生じてしまう。残念ながら、戸惑う声が多い状況が続いてきた。
これまで、種類が多すぎて理解が追いつかない、名称が分かりにくい、両者の統一感がない、などといった指摘を受け、度々「増改築」を繰り返してきた。しかし、なかなか「合格点」に達しない。気象災害が多発する時代になりもう猶予はない。伝える言葉を簡単にし、防災気象情報と避難情報にどう統一感を持ってもらえるのか。国は抜本的な解決を目指して、2022(令和4)年1 月に防災気象情報に関する検討会を設立。「シンプルで分かりやすい防災気象情報の再構築に向け、防災気象情報全体の体系整理や個々の情報の抜本的な見直し、受け手側の立場に立った情報への改善などの検討事項を中心に議論を行う」(開催趣旨から抜粋)とした。
この検討を踏まえた新しい防災気象情報が、いよいよこの5 月下旬からスタートする。前回触れた線状降水帯直前予測開始もこの一連の動きに沿っている。防災気象情報と避難情報の危険レベルを直感的に共有してもらうために、新しい防災気象情報にはレベル5 とかレベル4 といったレベル数字を付け、避難情報の警戒レベルの数字と共有させた。例えば防災気象情報のレベル3 大雨警報は、避難情報での警戒レベル3 避難に時間を要する人は早めに避難等と、「レベル3」として結びついている。警戒レベル4(危険な場所から全員避難)に結びつける警報として、特別警報と警報の間に、これまで無かった危険警報を新設。レベル5 特別警報、レベル4 危険警報、レベル3 警報、レベル2 注意報という段階に整理し、避難情報の警戒レベルとすべて1 対1 の関係をもたせた。
防災気象情報の種類が多いという指摘には、警報、注意報の対象を大雨、土砂災害、河川氾濫、高潮の4 種類に整理。多様な名称があった気象情報も、気象防災速報と気象解説情報の2 分類とし、かっこ書きで対象の現象を入れることにした。例えば、記録的短時間大雨情報は、気象防災速報(記録的短時間大雨)、顕著な大雨に関する気象情報は、気象防災速報(線状降水帯発生)として発表される。

↑図表は国土交通省の資料より
検討会の座長を務めた京都大防災研究所副所長の矢守克也教授は、運用が始まる新防災気象情報の理解のために3 月12 日に開かれたシンポジウムで「レベル数字がすべて付いているのがポイント。防災気象情報が出されたら、瞬時に私たちは何をすれば良いのかが分かる」と指摘。さらに、地震の震度表現を例に「今は、震度の数字が示されれば、どれくらいの揺れ、危険さがみんなに同じイメージで伝わる。震度表示はいろいろな表現があったが、数字レベル表示に落ち着いた。これが定着するのに100 年くらいかかっている。気象のレベル数字表示はまだ始まったばかり。学んでもらうと同時に課題と思われたことはご意見いただきたい」と呼びかけた。
避難行動の面から見ると、これまで伝えようとしてなかなか伝わらなかった防災気象情報。「伝える」と「伝わる」は、一文字しか違わないが、実はその差はとても大きい。「ジャパネットたかた」を一代にして通販の最大手企業に育てた創業者の高田明さんは、自ら歩んだ道を振り返った自著「伝えることから始めよう」(東洋経済新報社刊)でこう述べている。「『伝える』と『伝わる』は違うんです。お客さまに、伝わるべきことがしっかり伝わっていなければ、お客さまの心は動かないと思います。『伝えたつもり』で終わってしまったら、商品を買っていただくことはできない」。
「自分の命は自らが守る」という時代にあって、貴重な防災気象情報が住民に「伝わり」、身を守る行動に直結するようになれば、防災の究極の目的である、住民の生命、財産を守ることに一歩も二歩も近づく。「今回の見直しはパラダイムシフト」(矢守教授)という大きな変化が定着するように、行政、住民がともに学び、育てていけるようにしたい。
(気象予報士・保坂悟=甲府市在住)