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深澤陽一

イメージをそのまま形に!

甲府の新しい名所として誕生した甲府駅北口のオブジェ「クリスタルアース」。
制作に携った職人たちのリーダーを務めたのが宝石研磨職人の深澤陽一氏だ。
今回は、本業以外に山梨県立宝石美術専門学校で非常勤講師も務める氏に取材を行った。

クリスタルアース(※1)、とても綺麗ですね!

LEDが当たってキラキラ反射するように32面体カットにしてるんだ。職人が一つひとつ手作業で研磨したんだよ。そして、この32面体は甲府が発祥のカットなんだ。

(※1)クリスタルアース:水晶やワインなどの地場産業をPRするため、甲府駅北口のペデストリアンデッキに設置された水晶のモニュメント。32面体カットの水晶約7,000個で構成され、直径は約1.2メートル。球体内部の紫水晶はブドウを表現している。

印伝の携帯ストラップ(※2)、センサーにかざしてきました。光と音のステキな演出でした!

でしょ?1本だと一日一回までで、演出パターンは6種類あるんだ。しかも、二つのストラップを同時にかざすと一つの時とは違った演出が見られるんだよ。二つの場合は相手が変われば一日何回でもできるんだ。ここだけの秘密だけど10回目にはウエディングソングが流れるんだよ。

(※2)印伝の携帯ストラップ:山梨を代表する伝統工芸「印伝」に水晶をあしらった携帯ストラップ。モニュメントの設置費用を賄うために、山梨経済同友会と県水晶宝飾連合会で構成される「輝きのスポットを創る会」が募金活動を実施。協賛者に対してこのストラップが贈られた。

それはいいことを聞きました!制作にはだいぶ苦労したのでは?

そうだね、もう全部が苦労だった(笑)。石の大きさを揃えるために一つひとつ確認しながら選別したよ。そのおかげで0.5mm以下の誤差しかないからすごくキレイ。あと上から細長いワイヤーで吊るしてあるんだけど、絡まらないようにするのがすごく大変だった。実際、作業途中に5、6ヶ所絡まっちゃって解くのに4時間くらいかかったよ。

それは大変でしたね。皆さんいつ作業をしてたんですか?

日中の仕事が終わってからだよ。みんな1ヵ月半も毎晩あそこに集まって作ってたから終わるとちょっと拍子抜けした感じ(笑)。でも北口を訪れた人たちがあれを見て感動してもらえればもう十分なんだ。素晴らしいメンバーと周囲のサポートのおかげで最高の物ができた。

深澤さんのリーダーシップがあったからでしょうね。

だといいけどね(笑)。実はこの仕事を受けたのにはもう一つ理由があって。甲府駅改札出てすぐ上にでっかい貴石画があるんだけど、あれは25年前に俺の親父(深澤博士さん)が作ったんだ。これもなんかのめぐり合わせかなって。今回俺がリーダーをやらせてもらって嬉しかった。ちょっと親父に近づいたぞ、って。親父には言わないけどそう思ったよ。

ところで職人の道を選んだきっかけは?

親父は俺が小さいときから仕事をしていて、工場がすぐ裏だから常に一日の生活の中にあったんだ。だけど中学の時はミュージシャンになるって思ってて(笑)。でも、これだけの道具があってやらない手はないだろうって、だんだんその気になっていったんだ。宝石美術専門学校に行くって決めたのもその頃。やりだしたらドップリはまったんだ(笑)。

これは水しぶきが凍ったみたいなネックレスですね。

それはKoo-fu2009コレクションで作ったんだよ。イメージしたものを水晶でそのまま形にしているんだ。3つのパーツを組み合わせて作ってるんだけど、全部が曲線で構成されている。その曲線を隙間なくピッタリ合うように、立体的に考えながら削っていくんだけど、それがかなり難しくてね。

着けてみるとすごい肌触りがいい!高度な技術が詰まっているんですね。 

うん。一つの水晶で作ろうとしてもここまで表現できない。接合部分をこれほど丸く削れないんだ。展示会でこれを見せると、あまりに滑らかにできているから「どうやって溶かしたの?」って聞かれるよ。「これガラスじゃなくて水晶だよ」って言うとみんなビックリしてる(笑)。

これは置物?

それはぐい呑みだよ。凹凸がいくつもあるでしょ?そこを持つんだけど、不思議と誰でも必ずしっかり指に馴染むポイントがあるんだ。しかも、つや消し加工を施していて、冷酒を注ぐと器が冷えて透明度が増すんだ。光が入ってきて綺麗でしょ? 水晶の良さっていうのは一番はその神秘性なんだけど、光が中に入って思わぬ反射をしたり、周囲の風景を移し込むところにもあるんだよね。

これでお酒呑んだら美味しいでしょうね(笑)

うん。指で感触を楽しんで、見た目で楽しんで、好きなお酒が飲めれば最高。そういう所有する喜びをくすぐるようなもの作りを心がけているよ。

もの作りをする上でお父様の影響って大きいですか?

親父は常に頭の上にある存在。だから意図的に違うものを作ろうとは思ってる。親父の後を継ぐにしても精神だけを継いで、自分オリジナルのもの作りをしていくつもりだよ。だけど俺も親父も宣伝活動に力を入れるより作品そのもので勝負したいっていう気持ちが強くてね。やっぱり作品自体を評価してもらいたいんだ。宝石美術専門学校でも講師として教えているんだけど、生徒にはビジネスを意識し過ぎないもの作りをしてほしいと思ってるよ。

最後に学生へのメッセージをお願いします。

何でもチャレンジしてほしい。そして決めたら即行動してみる。もしダメだったら別の方法を探せばいい。考えて悩みながら進んでいくことが大事なんだ。あと、つまらない生活を送ってほしくないね。俺は趣味でバンドを3つもやってるけど、それがもの作りにいい影響を与えている。趣味が多い分、人のつながりも多いんだけど、それも財産。違う方向を見ている人と接すると刺激になるからね。色々な経験をして人として大きくなってもらいたい。

クリスタルアースの制作の裏話や学生へのメッセージなど、ありがとうございました!これからも若手職人のリーダーとして、宝石美術専門学校の講師として、ご活躍を期待しています。

2010年11月24日 インタビュー掲載

企業情報

名  称:ジュエリークラフト・フカサワ

住  所:山梨県甲府市青葉町15-23

T E L:055-232-1214

F A X:055-222-8541

Instagram:http://instagram.com/youichi_fukasawa

事業内容:甲州貴石切子等、宝石、貴石の彫刻研磨 オリジナルジュエリーの製造販売 

自社の強み:一級宝石研磨士、伝統工芸士などの資格を持った職人が研磨しております。デザインの段階から地金・石の加工など完成品に至るまでを自社工房で行えます。石の穴あけやリングの磨き直しなど、一個単位からの注文も受け付けます。

  

 

 

甲府駅北口に設置されたクリスタルアース

 

「印伝」の携帯ストラップ

協賛者に贈られたストラップ。全5種類。

 

 

Koo-fuコレクション2009

 

 

生き物のような形のぐい呑み 

 

深澤陽一

●1967年生まれ。●山梨県立宝石美術専門学校卒業。●山梨県知事認定宝石加工ジュエリーマスター、一級宝石研磨士、伝統工芸士。●山梨県立宝石美術専門学校、日本宝飾クラフト学院、山脇美術専門学校の非常勤講師を務める。●Koo-fuプロジェクト2009に参加。

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