更新日:2022年9月26日

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自慢の長なすで食卓に笑顔を

石原三郎氏

長なす生産者の石原氏

山梨県甲府盆地の中央南部に位置する中央市は、富士山をはじめとする美しい山々に囲まれ、市内を流れる笛吹川と釜無川が穏やかな時間を刻む自然豊かな地。肥沃な土壌と豊富で良質な水を生かし、米や野菜を中心に農産物の生産が盛んに行われています。野菜はトマト、スイートコーン、きゅうりなどが作られており、なすも特産品のひとつ。県内外の食卓へと届けられています。
今回は、令和3年度山梨県野菜共進会「長なす(夏秋栽培)の部」で最優秀賞を受賞した石原三郎さんに、長なす栽培への想いを伺いました。

恵まれた風土とチャレンジ精神

長なすの畑

石原さんは、笛吹川にほど近い田園地帯が広がる中央市玉穂地区で、長なす、米、スイートコーンを作っています。
収穫の時期を迎えた畑を訪れると、整然と植えられた長なすが、V字に組まれた支柱と紐に沿って枝葉を伸ばし、さんさんと降り注ぐ太陽の光を受け止めていました。

「豊かな水と長い日照時間に恵まれたこの地域では、昔からなす栽培が行われています。私が農業を始めたときも、千両なす(注1)を作っていました」
2007年、建設関係の事務所で設計の仕事をしていた石原さんは、奥様の実家の農業を受け継ぐことを決意。最初のうちは知らないことばかりで、お義父さまや近所の農家さんから学びながら、無我夢中で農業に取り組んだといいます。
「あるとき、地元の農協から長なすの栽培を勧められ、地域でも珍しかったので作り始めてみたんです」石原さんのチャレンジ精神から始まった長なす栽培は、令和3年度に山梨県野菜共進会「長なす(夏秋栽培)の部」で最優秀賞を受賞しました。

(注1)千両なす:もっとも多く流通している長卵形のなすの一種。

きめ細かな作業で長なすを守る

枝の誘引

長なす栽培の魅力のひとつは、「育ちが早くて長く収穫ができること」だといいます。6月上旬に収穫が始まる石原さんの長なすは、8月中旬に出荷の最盛期を迎え、ピーク時の出荷量は1日約3,000本、重さにして約400kgにのぼります。
「早朝4時半から行う収穫作業は、1本1本大事に手作業で行う重労働。でも、まっすぐ美しい濃紫色に育った長なすを目にすると、一生懸命に手間ひまをかけたことの成果を実感できる」と嬉しそうに話します。
長なすは育ちが早い反面、実に傷がつきやすいという特徴があるそうです。実に傷がつかないようにするためには、支柱の紐にこまめに枝を誘引して固定したり、実に当たるような葉を除去したり、わき芽を切り戻して幹に近いところに実がなるようにしたりと、きめ細かな作業をし続けなければならなりません。とてもきれいに管理された長なす畑は、何事にも手を抜かない几帳面な石原さんの性格を映し出しているようでした。
「長なすは、焼きなすや麻婆なすにしてよく食べています。肉質がやわらかく煮崩れしにくいので、煮物にしてもおいしいですよ」と誇らしげに笑顔を見せてくれました。

土づくりや管理に工夫を凝らす

美しい長なす

「健康な長なすを育てるのには、土づくりが大事」と話す石原さんは、長年の経験を基に、肥料のやり方を決めています。なすを植える前の肥料は、稲わらを原料とした堆肥を中心にして、窒素分(注2)は控えめにするそうです。
「最初のうちに窒素分をたくさん与えると、なすの木や葉ばかりに成長が偏り、花の芽がつきにくくなってしまいます。1枚1枚の葉に効率よく太陽の光を浴びさせるためにも、葉は小さくさせておきたいんです」と教えてくれました。窒素分をたっぷり与えるのは実がなり始める6月頃。おいしい長なすがたくさん収穫できるようにと、願いを込めながら肥料をまきます。

なすは同じ畑で繰り返して栽培すると、土壌中の養分が偏り生育が悪くなったり、土壌病害の発生が多くなったりと、連作障害が起こりやすくなります。この予防のために、石原さんは、長なすをつくる畑と米をつくる田んぼを、毎年入れ替える輪作を行っています。
その他にも、乾燥や泥はね防止のために長なすの根元に敷いていた藁(わら)を防草シートに代えることで、ナメクジやダニの発生を防止するなど、管理にも工夫を凝らし、まっすぐで高品質な長なすを消費者の食卓に届けています。

(注2)窒素分:植物体を構成する成分であるタンパク質をつくるのに必要な栄養分。

やりがいを肌身に感じられる職業

石原三郎氏

石原さんのまなざしの先にはいつも食卓を囲む人々の笑顔があります。
「私の長なすが、一番良いものだと胸を張って言えるようでありたい。農業は、確かに苦労が多いかもしれません。けれど、農作物を自分の手で一から育てることができるし、手をかけた分だけ素直に育ってくれる。やりがいを肌身に感じることができる職業だと思います」と目を輝かせます。
農業に携わることで、地域に仲間が増え、世代を超えたつながりもできたという石原さん。地域の農業の未来を担っていく若い生産者が増えることを期待しながら、変わらぬ信念を胸にその歩みを進めていきます。

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