更新日:2025年2月28日

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自然の恩恵を受けながら、安全・安心な放牧豚を育てる【後編】

中嶋 千里氏

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1985年に『ぶぅふぅうぅ農園』を始めて以来、ストレスの少ない環境で家畜を飼育する『アニマルウェルフェア』に視点を置いた養豚を行ってきた中嶋さん。この功績が認められ、第53回日本農業賞・個別経営の部において特別賞を受賞しました。【後編】となる今回は、繁殖から肥育まで一貫した養豚を行うとともに、自社加工場を持ち、精肉加工と販売までも手がける中嶋さんに、ぶぅふぅうぅ農園で育てた豚肉の味の魅力やこの先への思いなどを伺いました。

アニマルウェルフェアの視点が引き出す放牧豚の美味しさの魅力

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家畜にとってストレスの少ない環境で長年飼育を実践してきた優れた功績が評価され、第53回日本農業賞の個別経営の部において特別賞を受賞した中嶋さん。生後10日目から出荷までの全期間放牧、抗生物質の不使用といった、これまで日本ではほとんど行われていなかった養豚技術を確立し、エコフィードを使った自家配合飼料も作ってエサの国産化率80%も達成しています。このように食の安全や環境問題、そして『アニマルウェルフェア』にも目を向けた中嶋さんが育てる豚は、その味わいも格別です。
「豚肉が苦手という方は豚特有の匂いが嫌だと言われることが多いですね。でも、豚舎と放牧地を自由に行き来し、広い放牧地で元気に走り回ったり、遊んだりしながらストレスをほとんど感じることなく健康に育った放牧豚は臭みがないんですよ。それに放牧だと豚の運動量が多くて肉が硬くなると思われがちですが、そんなことはありません。肉はとても柔らかく、脂身の甘みも魅力で、食べた方はみなさん臭みのなさと、柔らかさ、美味しさにビックリされます」と中嶋さん。「やはり自然な形で飼育することが大事なんですね」と笑顔で語ります。

自社の加工場を持ち、肉質を見極め、さらなる品質向上につなげる。

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中嶋さんは農園から出荷するすべての放牧豚を自社で加工しています。現在の販売先はオーガニックスーパーや食材にこだわりを持つ飲食店が主で、一般への小売はオンライン販売で対応しています。「自社の加工場で製品にしているため、一頭ごと肉になるまでの生産履歴が明確であり、肉質もしっかり見極められるので、自信を持ってお客さまに提供することができます。また、肉質を確認することは、自家配合飼料の内容など肥育の研究にも役立つので、さらなる品質向上につながっています。私はストイックな性分なので、たとえ壁にぶつかっても、自分の信念を持ってやり続けていきたいんですよ」と力強く話す中嶋さん。そんな中嶋さんにぶぅふぅうぅ農園のお肉の美味しさが1番よくわかる食べ方を聞いてみました。「まずは、何も調味料をつけないで焼いてみてください。臭みが無く、とても良い匂いがするとすぐに分かっていただけると思います。焼いたらそのままか、もしくは少量の塩だけをつけて、食べてみてください。ひと口食べれば一般的な豚肉とは明らかに違う美味しさに気づいていただけるはずです。調理例としてはロースはカツやステーキ、脂が美味しいバラはいろんな食べ方ができますが、まずチャーシューをお試しください。赤身が中心のモモはさっぱり食べたい方におすすめで、カタは煮込み料理に向いています。オンラインショップでは冷凍肉を発送しますので、解凍する際はドリップが出ないように冷蔵庫でゆっくり解凍してください。ドリップには旨み成分や栄養素が含まれているので、半解凍くらいの段階で調理するのが美味しく食べる秘訣です」と教えていただきました。

アニマルウェルフェアを実践するモデルケースとして、後継者の育成も考えていきたい。

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「放牧を始めた当時は、周囲から理解してもらえず変わり者扱いされたこともありました。でもヨーロッパで広まったアニマルウェルフェアが日本でも認知され始めたことにより、私の農園の取り組みも徐々に理解されるようになっていきました。教科書を片手にほとんど独学で養豚技術を確立していったので、失敗も多々ありましたけどね」と振り返る中嶋さん。全国に先駆けてアニマルウェルフェア認証制度をスタートさせた山梨県の取り組みにも関わるなど、中嶋さんはこれまでアニマルウェルフェアの普及に積極的に尽力してきました。現在ぶぅふぅうぅ農園はやまなしアニマルウェルフェア認証基準の最高位である3つ星を取得しています。「ようやくここまで来ましたが、まだまだクリアしなければならない課題はいっぱいあります。豚を商品としてではなく、生き物として愛情を持って扱うことはこれからも大事にしていきたいですね。アニマルウェルフェアが理解され注目されてきたことで、この仕事をやってみたいという若者も出てきました。理想だけでは続かない厳しい仕事ですが、志ある若者を受け入れていく体制を整えて技術を伝え、次の世代に引き継いでいくのがこれからの私のやるべきことだと考えています」と未来を見据える中嶋さん。そのまなざしから、人と動物の共存を願う思いが伝わってきました。

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