更新日:2024年2月9日

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歴史ある産地で受け継ぐ伝統と新たな挑戦!
【後編】

矢崎敦仁氏

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山梨を代表する桃の産地のひとつ山梨市加納岩地区で、桃農家の3代目として活躍する矢崎さん。後編では、みずみずしいレモンが実るハウスを訪ね、矢崎さんが独学で挑戦しているレモンを中心とした柑橘類栽培のこだわりや今後の抱負などを伺いました。

新たな挑戦は、「柑橘類が好き」という気持ちから始まった

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矢崎さんがレモンの栽培を始めたのは、今から15年ほど前。果樹王国と呼ばれる山梨県でも当時レモンを栽培している農家はなく、情報収集・研究を重ねて栽培に挑戦したといいます。「山梨では現在でもレモンを栽培している農家はほとんどいないと思います。そんな中で私がレモンの栽培に挑戦し続けてきたのは、私自身が柑橘類が大好きだからなんです」と笑う矢崎さん。

桃農家としての知識と技を活かし、レモンに適した独自の剪定技術を確立

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レモンは苗木を植えてから実がなり始めるまで約3年かかります。温室ハウス内で苗木を育てていた期間は大きな問題はなかったものの、3年経つ頃から試行錯誤の日々が始まったと言います。「レモンの木はまっすぐ伸びていきます。ですが、まっすぐ伸びたままでは実が付きづらく、スムーズに収穫できません。農家としては、作業性を高めるとともに、収量をしっかり確保するため、枝の誘引と整枝で半球形の樹形に整えていく必要があります。そこには失敗や試行錯誤もありましたが、桃農家として長年培ってきた果樹に関する知識や、積み重ねてきた技術をレモン栽培に応用していくことにより、独自の剪定方法で樹形を整えられるようになりました」と語る矢崎さん。レモンの生育や着果をよく観察し、レモンの結実特性を知ることにより、桃農家の技を応用した独自の剪定技術を確立し、矢崎さんオリジナルのレモン栽培方法は生まれていったのです。そして、その技術は、ほかの柑橘類にも応用されています。

柑橘類の収穫を平準化する技術と資源を活用する農業

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矢崎さんは独自の剪定技術と資材の工夫で植物体そのものが持つ活力を引き出し、安定的に高品質の果実を収穫しています。「一般的に柑橘類にはたくさん収穫できる表年と収穫がすくない裏年がありますが、私のハウスでは毎年安定的にレモンやオレンジを収穫することができます」と話す矢崎さん。さらに「ハウス内の暖房に薪ストーブを導入して、剪定した枝や伐採した桃の幹などを燃料として有効活用しています。これにより燃料費も抑えられますし、地域の資源を活用した農業にもつながっていきます」と地域資源の有効活用にも目を向けています。

柑橘類の新たな魅力を発信!

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現在矢崎さんが栽培している主な柑橘類はレモン(メイヤー、アレンユーレカ)、フィンガーライム、ブラッドオレンジです。「私の農園は桃がメインであり、まだ柑橘類の出荷量はそれほど多くありませんが、その中でも出荷量が1番多いメイヤーレモンは、加工にも適していることから、フレンチのシェフやパティシエの方のご利用が多いです。また、今のところまだ少量栽培のフィンガーライムも、爽やかな香りとプチプチした食感に魅力があることから、料理に添える贅沢なアクセントとしてレストランで使っていただいています」。矢崎さんの柑橘類はまだ流通量は少ないですが、山梨県内の有機食品を扱う店舗や、こだわりの農産物を揃えている一部のスーパーで販売されて人気を博しています。そして、さらに柑橘類の人気を押し上げていくために、矢崎さんが今後に期待を寄せているのがシュガーレモンです。「レモンの爽やかな香りはそのままに、甘さが感じられるシュガーレモンは、皮が緑色のうちは少しだけ酸味がありますが、完熟して皮が黄色になると本当に甘くなります。これから生産量を増やして広めて行く予定なので、皆さんご期待ください!柑橘類は桃と同じくらい本当に奥が深くて面白い」と意気込む矢崎さん。自社でレモンを始めとした色々な柑橘を使った琥珀糖やレモン塩などの加工品の製造も開始して、柑橘類が持つ魅力を発信しています。


「桃を作っていない時期に柑橘類の栽培を行う複合経営は休みもなくて大変ですが、レモン栽培を通して人との縁が広がっていったり、果樹の新しい可能性を発見したり、楽しいことの方が多いです。ベースとなる技をずっと磨き続け、これからも自分がやってみたい事を実現したい」と語る矢崎さん。いつも好奇心と挑戦心を忘れない農業の形がここにあります。

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