更新日:2022年2月28日

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地球温暖化と向かい合うぶどう農家

小池眞彦氏

地球温暖化と向かい合う、ぶどう農家

桃の生産量日本一を誇る笛吹市。春には雪化粧した南アルプスの山々を遠くに仰ぎ、眼下には鮮やかな桃の花の絨毯が広がる一帯は「桃源郷」と呼ばれていますが、この地は桃だけでなく、ぶどうの生産も盛んで、まさに山梨を代表する果物の産地です。また、ここをはじめとする県内の果物産地では、地球の温暖化防止に向けた取り組みが始まっています。今回は、笛吹市の生産者の一人である、ぶどう農家の小池眞彦さんにお話を伺いました。

果樹王国に迫る、温暖化の現実

果樹王国に迫る、温暖化の現実

『私が就農したのは45年ほど前ですが、当時の夏は今ほど暑くありませんでした。地球温暖化の影響で、昔よりも農作業の時期がかなり前倒しになってきていますね。作業時期の見極めが難しくなっているのを感じます』。小池さんは就農当時を振り返りながら話してくれました。実際にここ数十年間、山梨県においても気温上昇は続いており、農産物の生産にも影響しています。特にぶどう栽培において、気温は剪定や果房管理といった作業のタイミングに関係してくるので、気温上昇は商品の価値を左右する大きな問題なのです。
『黒ぶどうや赤ぶどうを着色させることが難しくなってきています。近年出てきた「ブラックキング(甲斐ベリー3)」など、これからは着色の容易な品種を積極的に栽培していくことも考えています』。農産物は気温など環境変化に左右されやすいため、生産者は常に地球温暖化と向き合っていかなければなりません。今まで通りにはいかない歯痒さを感じることもあるそうですが、小池さんは困難を打開するため毎年のように試行錯誤を繰り返しています。

未来へつなげる「4パーミル・イニシアチブ」

未来へつなげる「4パーミル・イニシアチブ」の取り組み

温暖化への取り組みは生産者だけにとどまらず、地域全体にも広がりをみせています。
山梨県は地球温暖化抑制に貢献する取り組みである「4パーミル・イニシアチブ」に参画し、果樹園から地球温暖化対策を進めています。
「4パーミル・イニシアチブ」とは、土壌中の炭素量を毎年4パーミル(0.4%)増やすことで、人間の経済活動等によって大気中に排出される二酸化炭素の量を実質ゼロにすることができる、という考え方に基づいた国際的な取り組みです。2015年のCOP21(第21回気候変動枠組条約締約国会議)で提案され、2021年9月現在日本を含む623の国や国際機関等が参画。2020年、日本の自治体として初めて山梨県が活動に加わり、県内各地でさまざまな取り組みが行われています。
『我々が普段やっている下草を生やして園地を管理する「草生栽培」や、有機質肥料の投入などは、地球温暖化の抑制につながるということなので、これを地域全体で取り組んでいけばきっとさらに効果があるはずです。私たちの世代には、山梨を果物の産地として維持していく責任があります』。県と生産者が一体となった取り組みに、小池さんも期待を寄せています。

これからのぶどうづくり

これからのぶどうづくり

小池さんは、産地を維持するためのヒントとして、『安全安心で地球環境に優しいぶどうづくりが、産地の生き残りの鍵になるのではないでしょうか。また、消費者がどんなものを求めているのかを早く把握して、生産に活かしていくことも大切です』と語ってくれました。消費者の目は年々厳しくなっています。最近では、使用する肥料や栽培環境といった、商品そのもの以外の、特に安全安心面にも目が向けられるようになってきました。小池さんにとって、消費者のニーズと向き合うこと、そして環境への配慮は、両立させるべき課題なのです。それは決して簡単な道ではありませんが、子や孫の世代に素晴らしい農業を引き継いでいくための土台づくりを行っているという自負が、小池さんの歩みを支えています。まさに種まきともいえる地道な地域の活動が、いずれは花となり、国内外で実を結んでいくのではないでしょうか。

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