更新日:2022年2月18日
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保坂香里氏
北杜市白州町にある広大な農園は、甲斐駒ヶ岳などの山々に囲まれた自然豊かな地域にあります。この地域は日本名水百選に選定された北杜の名水の一つ、尾白川の恩恵を受けており、ミネラルバランスの良い水が育まれています。
今回は、サツマイモやニンジン、レタスなどを栽培している有機野菜の生産者である「北の杜FARM」の保坂さんに、安全安心な野菜作りへの想いを伺いました。
有機農業とは、自然との関係を大切にし、化学肥料や農薬に頼らず、環境への負荷をできるかぎり低減して行う農業のことです。有機農業で栽培された農産物は、環境にはもちろん、人にも優しい食の安全に配慮して作られた農産物となります。長年この農法を実践している保坂さんは、『私自身がこれまであまり薬などを飲まずに生活してきました。野菜にも同じように、薬に頼らずに自然の力で、美味しく育って欲しいのです』と、語ってくれました。
しかし、安全安心な野菜づくりは簡単ではありません。保坂さんこだわりの肥料は、全て自身の目や鼻で確認できるものを使用しているそうです。『近所の牛に野菜を食べてもらい、その牛の牛糞堆肥を使っています。お米の収穫時期になると、お米から出る米ぬかや、もみ殻、稲わらをもらって畑にすき込んだりしています。さらにそのもみ殻を使って薫炭を作っています。冬の時期になると、山に落ち葉を拾いに行って、畑に入れたりもしています』。当たり前のように語る保坂さんでしたが、自分の目の行き届く範囲でしっかりと管理をしているからこそ、そのこだわりが実現しているのです。
『ここ白州の土地も薬に頼らずに、一緒に健康に暮らして行きたいと思いました』。自然のためにできることは何か、そして人にとって良いことは何か、を常に第一に考える保坂さん。そんな保坂さんにとって、この白州の地は野菜づくりにうってつけです。甲斐駒ヶ岳は花崗岩層で出来ており、そこに降った雨や雪がその地層を通ってミネラル豊富な水が出来上がります。その水を野菜が体全体で吸って美味しく育っているのです。
しかし保坂さんは『野菜はただ美味しいだけではダメなのです』と話してくれました。
農産物を安心して消費者に食べてもらうためには、生産者のこだわりだけでなく、公的な認証も必要と考えた保坂さんは、有機JASを取得しました。有機JASの認証を受けるためには、農産物の生産から出荷までの工程を日々記録する「生産工程管理記録」をつけなければなりません。それらの書類や野菜を作っている畑を検査員が審査し、検査員が有機JASに適していると判断してはじめて認定されます。しかも、こうした審査は毎年行われると言うことです。
そのストイックな姿勢が保坂さんの農業を支えています。
『安全安心は自分や他者を想う気持ち。そういったことを野菜の栽培を通じて、教えられました。これからも、家族そして地域環境が、愛情の循環で長く暮らしていける環境が続くといいなと思っています』。いま世界中で唱えられている「持続可能な社会への取り組み」のヒントが、保坂さんの言葉に隠されているのではないでしょうか。
『薫炭をつくるというお話しをしましたが、薫炭に収穫したサツマイモを入れて焼くとすごくおいしくて、それを再現した焼き芋をみなさんに届けたいなって思っています』。
保坂さんが語る夢には、ほっこりした焼き芋のような、あたたかい想いが込められていました。
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