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山梨県の東部、富士山の麓に広がる郡内地域は1000年以上も前から織物業が営まれている織物の産地です。高い技術から生まれる美しい色柄を配した繊細で上質な織物は、かつては「甲斐絹」として知られていましたが、現在は「郡内織物」、「ふじやま織り」と呼ばれ、多くの人を魅了しています。
高級服地やインテリア生地、裏地の産地として発展し、近年はこれまで培ってきた技術やそれぞれの工場の特性を活かして、多くのファクトリーブランドも台頭。傘やネクタイ、ストール、バッグ、インテリア雑貨など、日々の暮らしを彩る多くの製品が生まれ、人気を集めています。
2020年には、オンラインでファクトリーブランドの魅力を楽しみながら商品を購入できる、ECポータルサイト「ハタオリマチ商店街」がオープンし、各ファクトリーブランドの生産の様子なども動画で紹介しています。
また生産者がYouTuberとして織物から製品になるまでを発信する「おうちでハタオリマチ工場見学」のムービーコンテンツも公開。職人が自らカメラに向かい、工場の持ち味や製造工程の裏側まで紹介していて、まるで産地を訪れているように工場見学を楽しめます。ぜひ郡内織物の魅力を、オンラインで体感してみてください。
富士山の麓で、1000年以上つづくハタオリ産地、山梨の楽しみ方
郡内地域と呼ばれる富士吉田市、西桂町、都留市、大月市のエリアは、1000年以上の長い歴史を持つ織物の産地。薄く美しい色柄の上質な高級生地を作ることでその価値と技術を高め、江戸時代には粋を愛する江戸っ子たちが「甲斐絹」と呼ばれる羽織の裏地を好んで使い、郡内地域は織物産地の中心地となりました。戦後は、国内外の高級インテリア・アパレルブランド等に生地を供給する産地として発展。近年は、織物工場がつくる、ネクタイ、傘、ストール、生活雑貨など、さまざまなオリジナル製品のファクトリーブランドが産地から誕生しています。またハタオリ産地の織物や町の魅力を多くの人に知ってもらう『ハタオリマチのハタ印プロジェクト』も展開。毎月第3土曜日には各織物工場がオープンファクトリーを開催します。ぜひハタオリマチの今をのぞいてみてください。
山梨ハタオリ産地の織物の魅力は、伝え継いできた高い技術から生まれる美しさです。染色は富士山の天然水を使用し、手間と時間をかけて糸から染める先染めによって、色鮮やかで深みのある質感を生み出しています。また「細番手」と呼ばれる扱いの難しい細い糸を使うことで薄くきめ細やかな上質な生地ができ、数千本から多いものでは一万本以上の極細の経糸を使って高密度に織ることで、鮮明で緻密な色柄を実現しています。絹織物をルーツに、現在は、絹、綿、麻、ポリステル、キュプラ等々の多様な糸を織る技術があります。また家族経営の小さな織物工場が多く、量より質の丁寧な生産を得意としています。こうした難度の高い織物を得意としてきた山梨ハタオリ産地は多様なニーズに対応でき、今ではインテリア生地、ネクタイ生地、傘地、服地、裏地などさまざまなスペシャリストが生まれています。
織物産業の中心である富士吉田市では、2016年より毎年10月に、山梨だけでなく全国各地から集まったテキスタイル製品や古道具のマーケットをはじめ、フードや音楽会、ワークショップ、まち歩きなど、市民も外から訪れる人も楽しめる2日間のお祭り「ハタオリマチフェスティバル」(通称:ハタフェス)が開催されています。2020年は例年とはかたちを変え、マーケット形式ではなく、10月から3月までの長い期間で、公式ウェブサイトとSNSによる情報発信や写真展、音楽会などを開催し、ハタオリのまちの息吹を伝えます。コンセプトは「つなぐ、織。」産地の人々、そしてこの街に想いを寄せる人たちの想いを紡ぎ、縦糸と横糸のように交差してできた成果を顕在化し、それらを繋ぎ織物を織るように日々をつくりあげます。