更新日:2025年10月24日

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美しく整った棚下に豊かな実り。匠が育てる「貴陽」の物語

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山梨県果樹共進会最優秀賞・農林水産大臣賞を受賞。安定した収穫量と高い果実の質を実現し続ける浅川豊さんのすもも園。その豊かな実りを支えるのは、作業効率に優れる棚栽培。かつてのぶどう畑をすべてすもも園に切り替えて30年、この地域で育まれてきたすももの棚栽培が、風味豊かで大玉のすもも「貴陽」をつくり出しています。

「実をならせる」ための知恵と工夫

浅川さんが育てる「貴陽」という品種は簡単に実をつける果樹ではありません。それは、すももは自分の花粉で実を結ばない性質があるうえ、その中でも特に貴陽は実がつきにくい品種だから。十分な実をならせるためには丁寧な人工授粉が欠かせないといいます。

「栽培を始めたばかりの頃は全然ならなかった。だから、まずは実をならせることが技術なのだと思い知りました」とかつてを振り返る浅川さん。

どのようにしてたくさんの実をならせるか…と追求した結果、浅川さんは授粉の時期にポイントがあると考えるようになりました。

「肝心なのは、開花している花の時期です。昔は咲き始めから6回ほど花粉をつけていましたが、なかなか実がならなかったんです。でも経験を積むうちに、満開のときと花びらが散り始めたときの、この2回だけでいいと分かりました。授粉作業の回数はぐんと減りましたが、以前よりもずっとたくさん実がなっています」

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また、授粉に使う道具にも工夫があります。浅川さんが選んだのは、ふわふわの羽で花を撫でると花粉が外に飛び出しやすい「ダチョウの羽」の毛ばたきです。

「昔は水鳥の羽の毛ばたきを使っていたのですが、どうしても花粉が羽の中にこもってしまってうまく授粉させられませんでした。ダチョウの羽の毛ばたきを使うようになってから、実ができる確率が大きく改善しました」と笑います。

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また、近年は雨除けのビニールをかけて雨の多い時期でも授粉作業ができるようにも工夫。こうした試行錯誤の積み重ねが、現在の豊かな実りにつながっています。

土づくりが果実の甘さを決める

すももの味を大きく左右するのが「土」。浅川さんのすももには、実をならせる工夫に加えて、「土づくり」にもこだわりがあります。

浅川さんは毎年、樹の根元から一定の距離にタコツボと呼ばれる穴を掘り、牛糞堆肥や骨粉、カルシウムなどを独自に配合した肥料を入れているそう。5年かけて樹の周りを一巡するように、毎年少しずつ場所を変えて繰り返すのがこだわりです。

「樹の周りを一周するように、毎年少しずつ場所を変えて肥料を入れることを繰り返しています。土はすももの色と甘さに繋がる要素。とくに骨粉のバランスによって実の色や甘さがぐっと良くなるんです」と教えてくれました。

また、畑の樹の寿命を考慮し、計画的に植え替えることも忘れてはいけないことのひとつ。20年を過ぎると実の張りが悪くなるため、古い樹は切り、新しい苗に植え替えていきます。新しい樹を植えてから実がなるまでには数年かかるのですが、「品質を落とさないためには避けられない」と語ります。

「本当に美味しい」と思える果実だけを届ける

浅川さんの貴陽は、毎年楽しみにしているリピーターに直接届けられることが多いそう。しかし、今年は収穫直前の雨の影響で味が落ちたため、残念ながら出荷の多くを見送る苦渋の決断をしたと聞かせてくれました。

「糖度は十分あって、しっかり甘い。ただ、水っぽくなってしまったものが多くありました。包丁を入れた瞬間に果汁が出るんです。それは雨の水分が入り過ぎた果実でした」

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品質を保つための厳しい判断の一方で、納得のいく果実が採れたときはとても嬉しく達成感を感じられるものだと聞かせてくれる浅川さん。

「冷蔵庫で1〜2時間冷やしてから食べるのが美味しいですよ」と楽しみ方まで教えてくれます。

棚いっぱいに実る大玉の貴陽には、浅川さんの知恵と工夫、そして「本当に美味しいものを届けたい」という強い思いが込められています。

 

 

 

 

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