トップページ > 就農者の声・モデルケース > 先輩就農者の声① 角田 拓也さん
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更新日:2025年10月23日
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山梨県で夢を叶えた先輩に聞く、就農の準備と3年間の軌跡

「いつかは農業をやりたい」。子どもの頃からの夢を叶えるため、安定したキャリアから農業の世界へ飛び込んだ角田拓也さん。
山梨県市川三郷町で就農して3年目となる2025年は、スイートコーンやナス、野沢菜などを栽培し、着実に経営を軌道に乗せています。
今回は、これから山梨県で就農を目指す方々へ向けて、先輩である角田さんが歩んできたリアルな道のりや就農に必要な準備、そして日々のやりがいと苦労についてお話を伺いました。
目次:
角田さん:子どもの頃から動植物が好きで、漠然と50歳くらいになったら農業をやりたいな、と思っていました。30歳を過ぎた頃に「どうせやるなら心身ともに元気なうちに挑戦したい!」という気持ちが強くなったのが直接のきっかけです。
34歳で本格的に農業の道へ進むことを決意し、まずは山梨県就農支援センターに相談に行きました。そこで紹介された昭和町の農家さんのもとで1年間、次に「株式会社アグリ甲斐」で1年間、合計2年間の実践的な研修を経て、満を持して独立・自営就農を果たしました。

市川三郷町は、主力のスイートコーンやナス、米や野沢菜の生産が盛んな地だ
最初の研修先では、栽培の基本を一から丁寧に教えていただきました。また、農家の日々の生活を間近で見ることができたのも貴重な経験でした。
「株式会社アグリ甲斐」は、JA山梨みらいや市川三郷町などが出資して設立された農業法人で、農産物の生産・加工・販売・農作業の受委託や新規就農者等の担い手への育成を行っています。こちらでは、より大規模な経営や様々な作物に触れることができ、とても勉強になりました。
地域に根差した農家での密な指導と、農業法人での組織的な研修。この2つの経験が、現在の私の農業経営の礎となっていると思います。

独立後もアグリ甲斐の方には相談にのってもらったり、一緒に研修を受けた仲間たちと情報交換したりなど、いい関係性が続いている
角田さん:よかったことは、やはり好きなことなので、毎日が忙しくても夢中になれることですね。朝から晩まで作業に没頭して、夜は疲れてバタッと眠る。そんな毎日ですが、すごく充実しています。
それに、良くも悪くも、結果がすべて自分の責任になるところもわかりやすくてシンプルでいいなと感じています。大変な面もありますが、自分の判断や努力が収穫という目に見える形で直接返ってくるのは、大きなやりがいだと感じています。
逆に一番大変だったのは、最初の1年間です。トラクターなどの機械や、ビニールトンネルの部材、肥料といった資材を揃えるのにお金がかかります。私の場合、初年度の経費だけで500万円近くかかり、売り上げがあっても手元にはほとんど残りませんでした。初期投資と当面の運転資金、そして自身の生活費の確保は、本当に重要だと痛感しましたね。

秋に収穫するとうもろこしの苗の発芽をチェックする角田さん。
基本に忠実だが、新しいことにも積極的にチャレンジするスタンスだ
角田さん:何よりもまず、自己資金の準備が大切です。当面の運営資金とご自身の生活費、最低でも1年間は収入がなくても暮らしていけるだけのお金は必要だと思います。金額で言うと、500万円くらいあると安心してスタートできるのではないでしょうか。
もちろん、公的な支援制度も積極的に活用すべきです。私も国の「経営開始資金」と「初期投資促進事業」を活用しました。「経営開始資金」は、就農初期の収入が不安定な時期の生活費を支援してくれる制度で、本当に助かりました。「初期投資促進事業」は、機械を購入する際の支援制度で、トラクターをもう1台追加購入する際に活用させてもらいました。

「最初の1年は収入がなくても生活できる資金があると農業に集中できて安心」
支援制度は申請のタイミングや要件をよく確認することが大切です。書類の作成は手間がかかりますが、県やJAの方に相談すれば丁寧に教えてもらえますし、早めに動くことで選択肢も広がります。
また、お金の準備と並行して進めてほしいのが、自分に合った研修先を見つけることです。自分が将来どんな農業をやりたいのか、どんな作物を作りたいのかを考えて、それを実践している農家さんや法人のもとで研修を受けるのが一番だと思います。技術はもちろん、その地域の特性や人とのつながりも学べますから。
地元の行事への参加や挨拶、また隣り合う畑では草の管理に気を配るなど、基本的なかかわりの中で少しずつ地域との信頼関係が構築できたかなと思います。

今は使われていないJAの敷地の一部をお借りして出荷作業をしている。
「声をかけてもらえてとてもありがたかった」と角田さんは話す
角田さん:今後の目標は、特定の品目にこだわるというよりは、とにかく数をしっかり出せる農家になることです。
現在はスイートコーン、ナス、野沢菜を柱に、約1ヘクタールの畑を耕しています。出荷は主にJA、他は直売所などでも販売してもらっています。
市場に安定して作物を供給することで、八百屋さんやスーパーの売り場を埋める一助となり、結果としてそれが個人経営としての安定に繋がってくれれば良いなと思っています。地域農業を支えられるような経営が目標です。
これから挑戦する方へのメッセージとしては、まずしっかりとお金の準備をすること。そして、自分がやりたい農業を見つけて、その道の先輩から学ぶこと。準備は大変だと思いますが、それが整ったら、あとは思い切ってスタートを切ることが大切だと思います。始めてみないと分からないこともたくさんありますから。焦らず、早めに自分のスタイルを見つけられるように頑張ってください。

穏やかな中にも強い意思の感じられる眼差しが印象的な角田さん。
新規就農相談のワンストップ窓口です。山梨県農業振興公社内の専用窓口で就農支援マネージャー(専門相談員)が新規就農希望者等の相談にあたっています。
山梨県就農支援センター(外部サイトへリンク)
JA山梨みらいや市川三郷町などが出資して設立された農業生産法人。農産物の生産・加工・販売・農作業の受委託や新規就農者等の担い手への育成を行っています。
株式会社アグリ甲斐(外部サイトへリンク)
国の補助事業。次世代を担う農業者となることを志向する49歳以下の方(就農時点年齢)に対し、就農準備段階や経営開始時の早期の経営確立を支援する資金を交付するものです。
就農準備資金・経営開始資金|農林水産省(外部サイトへリンク)
国の補助事業。就農直後の新規就農者の経営発展のため、農業機械の購入や農業用施設の整備といった初期投資に対して最大4分の3の助成金を交付します。
初期投資への支援|農林水産省(外部サイトへリンク)
新たに農業を始める原則45歳以下の青年等が作成する「青年等就農計画」を市町村が認定する制度です。計画に沿って農業を営む認定新規就農者は無利子の融資制度を初めとして重点的な支援措置を受けることができます。
認定新規就農者制度|農林水産省(外部サイトへリンク)