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ページID:113018更新日:2024年2月15日

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令和6年2月県議会知事説明要旨

 令和6年2月定例県議会の開会に当たり、提出いたしました案件のうち、主なるものにつきまして、その概要を御説明申し上げますとともに、私の所信の一端を申し述べ、議員各位並びに県民の皆様の御理解と御協力をお願い申し上げたいと存じます。

 2期目のスタートとなる昨年は、新たな総合計画のもと、「ふるさと強靱化」と「『開の国』づくり」に向けた政策が具体化され、次々と実行フェーズに移行し始めた1年となりました。

 令和6年においても、これらの施策を着実に実行し、県民の皆様に成果として還元していくことを強く意識し、県政運営に当たって参ります。

 一方で、現在、我が国は、国全体として「斜陽化」が危惧される状況となりつつあります。

 そのような状況にあっては、当然のことながら、私たちも、国からのサポートを期待し待つだけで自ら動かないようでは、現状の維持すらままならないことは明らかです。

 もはや、「豊かさ」とは、誰かから与えられるものではないことを覚悟しなければなりません。

 山梨県は、積極果敢・自主独立の気概をもって、我々世代と、そして次世代のために「豊かさ」を追い求め続けるべきであります。

 本県がこの先も豊かさを追い求め続けていくためには、外部変動に対しても、可能な限り平常を維持できる社会をつくる「ふるさと強靱化」と、県民全ての可能性に道を拓き、豊かさの元となる価値を創出する「開の国づくり」という基本方針のもと、各施策を前進させていく必要があります。

 山梨県は現在、水素などの最先端技術、人口減少危機対策、少人数学級の推進、富士五湖自然首都圏構想、富士山登山鉄道構想など、幅広い分野にわたって、既成概念を打ち破る挑戦を進めています。 

 こうした革新的歩みのプロセスにおいては、いわば必然の産物として意見の相違も生じ得ますが、それすら、「山梨県にとっての豊かさとは何か」という土俵で交わされる限りにおいては、多様性の発露であり、「集合知」の形成に不可欠なものと考えます。

 また、この革新的歩みには、当然のことながら、失敗のリスクもつきものです。

 しかしながら、その失敗は、次なる挑戦を支える「経験値の蓄積」と捉えるべきであり、更なる前進の糧とするべきであると考えます。

 「山梨県にとっての豊かさとは何か」という命題に対し、社会を構成する全ての方々が、多様な視点をもって、様々、建設的な意見をぶつけ合い、施策を紡ぎだしていく。

 そして、それを実行し、絶えず現実を踏まえて改善を図っていく。

 この姿勢こそが、我々の目指す「失敗を恐れず挑戦でき、困難な状況にあっても前進し続ける山梨」を実現するために、不可欠なものであります。

 この基本的な考え方のもと、「県民生活の強靱化」を強力に進めるために編成した令和6年度当初予算は、一般会計で5145億円余となっております。

 また、当初予算に加え、本年度2月補正予算についても、会計年度任用職員の給与の遡及改定などを盛り込み、今定例県議会に提出しております。

 はじめに、喫緊の課題への対応について、御説明いたします。

 先ず、防災・減災対策の推進についてです。

 コロナの5類移行後、初めてのお正月、久方ぶりの家族団らんを、突如、地震が襲いました。

 改めて、今般の能登半島地震によりお亡くなりになられた方々の御冥福をお祈りし、被災された方々に心からお見舞いを申し上げます。

 また、被災地の復興に向け、尽力されている方々に対し、深い敬意と感謝の意を表すところです。

 これまで、本県からは、DMATのほか、多くの専門家の皆さんが現地支援に参加してくださっているとともに、現地の医療機関における感染症対策のため、陰圧装置を備えた医療コンテナを提供するなど、人的・物的支援を惜しみなく行っております。

 また、甚大な被害を受けた日本航空高校石川については、複数の運動部に対して練習場を提供しております。

 このうち、春の選抜大会に出場する野球部には、旧増穂商業高校グラウンドにおいて、思う存分練習し、甲子園という夢の舞台で大きく躍動いただくことを心から願っております。

 その活躍が、現在も大変な避難生活を強いられている被災者の方々の心に、希望の灯をともすものと信じる次第であります。

 被災者の方々の日常が一日も早く戻るよう、引き続き山梨県としても全力で支援して参ります。

 一方、今回の災害は、決して対岸の火事ではなく、その教訓を本県の施策に生かしていかなければなりません。

 先ず、発災時には、迅速に応急対策を実施できるよう、いち早く被害状況を収集し、全容を把握することが重要となります。

 現在、総合防災情報システムや防災行政無線、携帯電話回線を利用した無線機などの情報伝達手段を確保しているところですが、発災直後の断絶リスクや、詳細な被害状況を的確に把握するための情報伝達容量について懸念が残るところです。

 そこで、人工衛星を利用したインターネットサービス「スターリンク」の導入など、災害時にも迅速かつ安定的・効率的に機能する人工衛星を活用した情報収集・共有体制を構築して参ります。

 次に、今回の地震においては、木造住宅の倒壊が数多く発生しておりますが、被害が甚大な地域では、住宅の耐震化率が低いことが判明しております。

 住宅の倒壊は、居住者の生命を脅かすのみならず、大量のがれきが物資の運搬や復旧作業の妨げになるところであり、本県においても、耐震化率の向上が急務であります。
 
 本県の耐震化率は上昇しているものの、4万戸以上が未対応であり、そのうち8割以上が耐震診断さえ受けていないものと推計されております。

 そのため、木造住宅の耐震化について、啓発を強化し、市町村と協力しながら耐震診断の受診を強く促すとともに、自己負担なしで耐震改修を行うことができるよう、上限額を引き上げるなど補助制度を拡充します。

 先ずは、これらの措置による効果を見極めながら、必要に応じて更なる耐震化の促進策も検討して参ります。

 また、物資の確保については、本年度、備蓄すべき物資の種類や数量、輸送方法などの検討を行ってきたところですが、今般の地震を受け、更なる調査を行い、必要な見直しを進めて参ります。

 加えて、本県においては、地震だけでなく、富士山火山防災についても、確実な避難体制を構築する必要があります。

 このため、デジタルデータやAIを活用した避難誘導アプリなどの情報ツールの開発や、情報通信体制の整備を進めて参ります。 

 また、来年度の公共事業においては、県民の生命・財産を守るため、防災・減災対策に資するインフラ整備に重点を置き、経済対策も含めた国制度を積極的に活用しながら、県土強靱化を進めて参ります。

 中部横断自動車道の長坂─八千穂間や、新山梨環状道路北部区間全線の早期事業化、新たな御坂トンネルの整備などにより、海と空に開かれた「開の国」の実現を図るとともに、河川の改修や浚渫をはじめとした流域治水対策など、事前防災対策を充実させて参ります。

 なお、事業量については、中長期的な公共事業の見通しとしてお示ししている、「令和7年度までの6年間で4600億円」という想定量を上回る規模での計上となっております。

 次に、人口減少危機対策についてです。

 県では、昨年6月の危機突破宣言以降、「『将来世代を含めた県民一人ひとり』が豊かさを実感できるやまなし」の実現に向け、取り組みを進めているところです。  

 今後長期にわたり対策を継続的に推進していくため、人口減少危機対策本部事務局を設置するとともに、多くのステークホルダーと連携し、オール山梨体制の構築を図って参りました。

 また、効果的な施策を展開するため、出生率上昇を阻害する要因の調査研究や、内閣官房参与の山崎史郎氏を中心とした専門家グループと連携し、施策の効果検証プロジェクトを行っております。

 こうした取り組みを基礎としながら、いよいよ来年度は本格的な実行フェーズにシフトします。

 本格的な事業展開は、本年度の9月補正予算に計上した基礎調査の結果を踏まえ、6月補正以降に実施する予定ですが、直ちに着手可能な取り組みについては、当初予算に計上しております。

 先ず、若い世代を対象に、将来の妊娠・出産をイメージし、自らの健康や生活に向き合う、プレコンセプションケアを推進して参ります。

 また、働き方が多様化する中、女性が希望通りのキャリアやライフプランを描くためには、妊娠、出産を考える際、本人の意思が十分に尊重され、実現することが大切であります。

 そのため、来年度から、子どもを産み育てたいと望んでいるものの、様々な事情により今すぐには難しい方に対し、保険適用外となっている卵子凍結にかかる費用を助成いたします。

 また、将来の教育費負担への不安を払しょくするため、私立高校等に通う第3子以降の生徒について、授業料の実質無償化に向け、県独自の上乗せ支援を行います。

 更に、人口減少の現状や課題、将来のあるべき方向性について、県内各地で県民の皆様と意見を交え、危機感と将来世代への責任を共有しながら、集合知が発揮できる取り組みを開始いたします。

 現行の人口ビジョンを県民総参加型で創る「人口ビジョン2.0」に昇華させ、人口減少危機突破を県民運動へと高めて参ります。

 次に、DXの推進についてです。

 県内企業の大半を占める中小企業においては、デジタル技術の活用による生産性向上・経営効率化の余地が極めて大きいものと推測されます。

 このため、本県の中小企業のDXを進めることは、県内経済全体にとっても絶大なインパクトをもたらすことが期待できます。

 このような観点から、本県で進めるべきDXの在り方は、必ずしも大手メーカーが提供する高額な既存パッケージ商品の普及を図るものではなく、本県の中小企業の実情やニーズに合わせた「普段使い」できるサービスを提供する「地域内発型DX」でなければなりません。

 この地域内発型DXを進めるためには、本県の中小企業の実情をしっかりと理解した上で、課題の解決に取り組めるDX人材が必要となります。

 このため、来年度から、DX研修を受講した大学生が、中高生の指導に当たり、指導を受けた中高生が、大学生になった後、今度は指導する側に回る、という自発的な人材育成の循環サイクルを生み出す「DX人材育成エコシステム」の構築を推進して参ります。

 そして、これら大学生が、県内商工会の指導員と連携をしながら、県内中小企業が抱える課題に対し、AIなどを活用しつつ、それぞれのニーズに合った解決策を提案・提供し、中小企業のDXの取り組みを支援して参ります。

 このため、県立大学と都留文科大学をそれぞれ、国中地域と富士・東部地域の核として、全県での人材育成と中小企業支援を展開して参ります。

 この学びと支援のプロセスを通じ、デジタル人材が継続的に育ち、地域に貢献していく体制を構築し、持続可能なものとして後世に残せるよう、尽力して参ります。

 次に、富士山における総合安全対策についてです。

 世界文化遺産登録時のイコモスからの「宿題」を解決するため、これまで登山者数の管理や安全確保に取り組んで参りましたが、今なお抜本的な解決には至っておりません。

 登山者の抑制は言うまでもなく、退避施設がほとんどない下山道の噴石・落石対策についても、早急に強化していく必要があります。

 更に、麓からの富士登山の振興は、富士山の文化的意義の理解促進だけでなく、登山の意識向上や登山者の分散化も期待できます。

 そこで、登山者の安全確保を図るとともに、富士山の文化的な価値を伝承していくため、次の3つの対策により、総合的に取り組んで参ります。

 1つ目は、五合目から上の登山の規制です。

 従前、登山道は道路法に規定する道路であったが故に、登山の規制を行うことは困難でありました。

 このため、登山道の一部を道路法の位置付けから外し、条例に基づく県の施設として下山道とともに管理し、登山の規制を行うことと致します。

 五合目の登山ルートにゲートを設けることとし、弾丸登山を防止するため、毎日、午後4時から午前3時の間、ゲートを閉鎖いたします。

 また、過度な混雑を避けるため、登山者数が4千人に達した時点においても、ゲートを閉鎖することと致します。

 加えて、条例に基づく「富士登山適正化指導員」を配置し、指導権限を付与することで、迷惑行為などに毅然と対応して参ります。

 2つ目は、下山道における噴石・落石対策です。

 これまでに行ってきた調査に基づき、下山道における滞留者の状況を踏まえながら、噴石や落石などの有事の際に、登山者が避難できるシェルターを計画的に設置して参ります。

 3つ目は、麓からの吉田口登山道の復興です。

 麓からの伝統的登山の復興を図るため、富士山信仰を支えた富士講や、「御師」の文化の実態を詳細に把握し、その文化的価値に根ざした麓からの登山に結び付けるため、調査研究を行って参ります。

 これらの対策に要する経費に充てるため、現行の富士山保全協力金とは別に、登山者の皆様には、県施設の使用料として、2千円を御負担いただくことと致します。

 富士登山の総合安全対策を強力に推し進めることで、世界の宝である富士山を未来の世代にしっかりと引き継いで参ります。

 次に、物流の2024年問題への対応についてです。

 本年4月より、トラックドライバーの時間外労働の上限規制が適用されることから、労働時間が短くなり、輸送能力が不足することが懸念されております。

 我々の便利で豊かな生活は、物流という経済の「血液」の流れがあってこそ成り立っており、物流機能が維持できなければ、県民の皆様の日常生活の利便性は大きく低下することとなってしまいます。

 物流業界においても、労働環境の改善や業務効率化が進められておりますが、例えば、消費者としてできることに「再配達を減らす配慮」が挙げられます。

 本県としても、取り急ぎ、再配達を減らすため、荷物を玄関先などに置いておく、いわゆる「置き配」や、ゆとりある配送日時の指定などの普及啓発に取り組んで参ります。

 このほか、物流業界においては、多重下請け構造に起因し、安価な料金設定や劣悪な労働環境などが問題となっております。

 これらの諸課題については、国も対策に乗り出しておりますが、その動向を十分に踏まえながら、より効果的な対策を講ずるべく関係団体と幅広く議論を進めて参ります。

 その上で、6月議会を目標に、県民生活と物流業界の全体最適に向け、県独自の条例制定を検討するとともに、「宅配ボックス」の設置に対する補助制度などを検討して参ります。 

 次に、北杜市武川町における廃棄物処理法違反の事案について、その現状を御報告いたします。

 本事案については、違反事実を解消させるため、昨年11月に改善命令を発し、その履行が確実なものとなるよう、徹底的な監視を行っており、継続的な指導を進めて参ります。

 一方、本事案に係る県のこれまでの指導の在り方について、第三者委員会において、中立かつ客観的に検証いただいているところです。

 その検証結果を踏まえ、所要の改善を図り、今後このような事案が発生しないよう、毅然とした態度で取り組むとともに、県民が良好な生活環境を享受できる地域社会を実現して参ります。

 次に、県政の主要課題について、予算に計上いたしました事業を中心に、御説明申し上げます。

 はじめに、公約の第一の柱、「ふるさと強靱化」に関する取り組みについて申し述べます。

 先ず、地域経済基盤の強靱化に向けた取り組みについてです。

 人々が将来の見通しに確信と安心を持てる社会を構築するためには、地域経済が将来にわたり安定して成長する経済体質の獲得が不可欠であります。

 これまで、物価高騰など、地域経済を取り巻く情勢が厳しい中においても、経済活動に支障が生じないよう、より堅固でしなやかな強さを備えた経済基盤を構築するべく、安定して成長する産業分野を積極的に取り込んで参りました。

 先ず、メディカル・デバイス・コリドー構想については、昨年11月、推進計画を「2.1」にバージョンアップし、製造に特化した「ファウンドリー」の医療機器版を地域全体で目指すことと致しました。

 推進センターに専任のコーディネーターを配置し、ファブレス企業とのマッチングを強化することで、部材供給で培った技術力や信頼を、更なる受注につなげて参ります。

 また、より巨大な市場から、より大きな利益を安定的に得られる体質獲得に向け、世界最大の市場を持つ米国への進出を図り、成功モデルを早期に創出できるよう、伴走支援を強化いたします。

 次に、水素社会実現に向けた取り組みについてです。

 国においては、水素の供給・利用体制の早期実現を図るべく、水素と天然ガス等の既存燃料との価格差を支援することとしており、来年度上半期には具体的な事業の募集を行うことが見込まれています。

 いよいよ、水素社会の実現に向け、供給網とその周辺市場が生まれることとなり、グリーン水素のトップランナーたる本県の真価を発揮するときが近づいております。

 今月、北杜市内のサントリー白州工場において、国内最大規模のP2Gシステム導入に向けた工事を開始するなど、グリーン水素の製造拠点の整備に鋭意取り組んでおります。

 加えて、国の支援制度を活用しつつ、水素供給網が形成できるよう、着実に準備を進めるとともに、周辺市場に県内企業が参入できるよう、その土壌の醸成に努めて参ります。

 更に、強靱な経済体質を獲得するためには、本県と親和性が高く、成長性のある分野を数多く確保する必要があり、医療、水素にとどまることなく、新たな分野にも果敢に挑戦していく所存です。

 航空宇宙防衛関連産業は、航空需要の回復や、防衛力強化による市場拡大が見込まれており、県内企業の精密加工技術との親和性も高いことから、この分野への参入を新たに支援して参ります。

 「ふるさと強靱化」の第二として、生活基盤の保障に向けた取り組みについてです。

 県民誰もが、身近な地域で、必要な医療・福祉サービスを受けることができる体制を整備し、維持していくことは、社会基盤の厚みを着実に積み重ねる「ふるさと強靱化」の極めて大きな柱であります。

 先ず、救急医療体制については、近年、医師の高齢化等により、夜間・休日の在宅当番医制の維持が困難となりつつあります。

 また、重症の救急患者に対応すべき二次救急病院が、多くの軽症患者を受け入れざるを得ない状況が続いており、救急医療全体のひっ迫が課題となっています。

 このため、軽症患者を広域的に受け入れる「初期救急医療センター」を、市町村と共に設置することとしており、本年5月の開設に向け、着実に準備を進めて参ります。

 次に、障害者福祉の充実についてです。

 現在、富士・東部圏域を中心に、入所施設や医療型短期入所施設等が不足し、重度の障害者向けサービスの地域偏在が生じております。

 地域偏在の解消に向けては、施設の新規開設を早急に進めるとともに、開設までの間のサービス不均衡に対し、暫定的な支援を行っていく必要があります。

 このような観点から、入所施設の新規開設を促すべく、施設整備に対する補助金の補助率を引き上げることとし、来年度、事業者の選定を行って参ります。

 また、富士・東部圏域の医療型短期入所施設の開設を促進するため、介護ヘルパーの派遣などを行い、夜間の運営体制の構築を支援するほか、同圏域の医療的ケア児・者に対する相談体制を整備するため、医療的ケア児支援センターのサテライトを設置いたします。

 その一方で、入所施設等の開設までには一定の期間を要することから、開設までの暫定的な支援として、隣接都県のグループホーム利用に対する助成や、御家族や事業所の送迎に係る負担軽減措置を実施いたします。

 次に、介護待機者ゼロ社会の実現に向けた取り組みについてです。

 「介護待機者ゼロ」を令和8年度までに実現するべく、その受け皿の拡大に努めておりますが、これに伴う介護人材の確保及び定着も、大変重要な課題と認識しております。

 この課題への対応に向けては、外国人材の活用は不可欠であり、従って、外国人から「選ばれるやまなし」になっていかなければなりません。

 そのため、特定技能制度等により介護職に就労する外国人が、介護先進国日本の優れた技術や理論を体系的に学ぶことができるよう、県独自の「キャリアアップ認証制度」を創設します。

 併せて、県内の介護施設への就職を目指し、日本語学校等で学ぶ外国人留学生に対し、奨学金を給付する制度を創設いたします。

 このように、外国人が安心して働ける環境を整備し、外国人を含むあらゆる住民が、不安なく生活し、活躍できる共生社会化の推進は、「ふるさと強靱化」と「『開の国』づくり」の両面から取り組むべき政策と位置付けております。

 この点、行政としては日本初の取り組みとして、介護分野に限らず、本県の外国人労働者の方々が、母国に残してきた御家族を医療面から支える保険制度の構築に取り組んで参ります。

 また、その保険料負担についても、企業と連携して軽減を図り、安心して働き暮らせる環境づくりを推進して参ります。

 次に、公約の第二の柱、「『開の国』づくり」に関する取り組みについて申し述べます。

 はじめに、県内全域の高付加価値化についてです。

 先ず、富士五湖自然首都圏構想については、「富士五湖自然首都圏フォーラム」において、新たに「富士五湖グローバルビレッジ構想」と「富士グリーン水素コミュニティ」という2つの国際コンソーシアムが立ち上がり、数多くの国際共同プロジェクトを創出するべく、尽力しております。
 
 また、この構想は、100年先を見据えた富士北麓地域のあるべき姿、すなわちグランドデザインを描く取り組みでもあります。

 オーバーツーリズム等の目下の諸課題を解決するにとどまらず、世界からの憧憬を集める地域とするために、官民が連携し、富士山にふさわしい観光エコシステムの実現に向けた検討に取り組んで参ります。

 このうち、富士山登山鉄道構想は、新たな交通システムを基盤とし、観光ビジネスと地域の有機的連携を図るものであり、過日対談した世界的なアルピニストの野口健さんからも賛同を頂き、大変心強く感じたところです。

 一方、富士北麓地域の全市町村において実施した住民説明会においては、私自ら説明を行い、多くの質問や御意見をいただく中で、まさに「集合知」の形成に向けた歩みを感じております。

 噴火や雪崩への対応、採算性への懸念の声もあり、これらをしっかりと受け止め、より良きものを築き上げる覚悟を新たにしたところです。

 一方、「富士山を訪れる時間を価値ある時間にしてほしい。そのために登山鉄道はふさわしい手段」といった御意見や、富士北麓地域の観光の在り方について、地域と一体となって考えていくべきとの御意見も頂いたところです。

 これらはまさに、私が考える現状の課題解決と世界レベルの観光地づくりという富士山登山鉄道構想の射程と軌を一にしているものであります。

 このため、来年度は、富士北麓地域の実情把握や、地域経済、交通、観光の将来予測などの調査を実施するとともに、ホスピタリティやレジャーの国際的視点を持つ事業者の知見も取り込み、この地域における観光の在り方を中心としたビジョンの策定を行います。

 また、100年先を見据え、富士山における新たな交通システムを構築していくべく、登山鉄道について、継続・追加調査を行うとともに、LRT以外の交通手段との比較検討も改めて実施して参ります。

 なお、地域の高付加価値化に向けた取り組みは、富士北麓にとどまるものではありません。

 富士北麓における取り組みをモデルに、県内各地域に横展開を図り、各地域が持つ独自の歴史や文化、風景などを最大限活用し、「上質な空間」を県全域に拡げて参ります。

 先ず、峡北地域においては、小淵沢エリアの振興に向け、北杜市や民間企業などとともに、先般、振興検討委員会を立ち上げたところです。

 次に、峡南地域においては、そのゲートウェイとなっている「道の駅富士川」の活用を検討しております。

 来春のコストコの開業により、中部横断自動車道の利用拡大が見込まれることから、これを好機として、来訪者に本県のブランド価値を強く訴求し、消費拡大や滞在時間の延長につなげる仕掛けを模索して参ります。

 甲府地域においては、北部の森林公園「武田の杜」について、甲府盆地を一望できる素晴らしい眺望を有しており、豊かな自然と相まって、今後の有望な観光資源となる可能性を大いに秘めた場所と考えております。

 武田の杜の価値を更に向上させ、近隣の観光資源との相乗効果も生み出すことができるよう、地元関係者や有識者による委員会を立ち上げ、検討を進めて参ります。

 次に、「『開の国』づくり」の第二として、教育の充実についてです。

 ここ山梨で育つ子どもたちは、誰でも、どのような境遇や経済状況にあっても、誰一人取り残されることなく、夢や希望の実現にまい進できるよう、教育の充実を進めております。

 来年度は、公立小学校の25人学級を4年生まで拡大した上で、5年生以降の少人数教育の在り方について、中学校との接続も見据えながら、本格的に検討して参ります。

 次に、「『開の国』づくり」の第三として、地域経済の収益力向上に向けた取り組みについてです。

 冒頭申し上げたとおり、現状での停滞とは、すなわち衰退への道であり、常に新たな一歩を模索しなければなりません。

 そして、この「開の国」は、あらゆる挑戦に対してオープン、かつフレンドリーであるべきです。

 山梨県は、この「開の国」における、あらゆる挑戦を強く応援して参ります。

 この確固たる信念のもと、スタートアップや「ものづくり」といった枠組みにとらわれず、様々な「新たな挑戦」と、その実現を支援して参ります。

 製造業のみならず、幅広い分野での新たな事業の創出は、若者の転入促進や雇用の創出につながり、地域活性化の呼び水となることが期待されます。

 県では、テストベッドの聖地化を目指し、令和3年度から、本県をフィールドに行う実証実験を、事業者に寄り添ってサポートしてきました。

 その結果、全国に事業展開する企業や、本県に拠点を設置する企業も出てきているところです。

 来年度からは、県内で本格的な事業を展開するに当たっての支援制度を創設し、いち早い社会実装に向けても手厚く支援して参ります。

 更に、観光や食の分野も含め、事業分野や事業ステージを問わず、社会的意義のある新たな価値の創出に対する支援を強化し、「挑戦に近い山梨」の地位を確固たるものにして参ります。

 このほか、創業期の資金調達や成長期における集中的なメンタリング、製品の研究開発助成など、各段階において切れ目のない支援を実施するとともに、新たな支援拠点の整備に関しても、新規事業の創出に効果的なコミュニティ形成を図って参ります。

 次に、観光消費額増加に向けた取り組みについてです。

 国内外から人が集い、地域に活力を生む観光の振興は、「『開の国』づくり」の重要な要素の一つであります。

 現在、富士北麓地域を中心に、インバウンドは回復しつつありますが、これまで本県が行ってきた「稼げる観光」を引き続き推進し、観光消費額を更に増加させていく必要があります。

 そのため、先ず、滞在時間の延長を図るべく、レンタカー事業者などと連携し、インバウンドの利用者に、県内周遊を促す取り組みを行って参ります。

 また、ムスリムやヴィーガンの方々が安心して食品を購入できるよう、県独自の認証基準を作成し、食の多様性に対応することで、消費を促進して参ります。 

 次に、本県農業の更なる振興についてです。

 県産農産物のブランド価値を引き上げ、生産者の所得を向上させるため、引き続き、生産・流通・販売を三位一体で高度化して参ります。

 生産面に関しては、品質及び生産性の向上のため、データ農業の技術開発と普及を図っておりますが、来年度は、モモについて、篤農家の匠の技の見える化などに取り組んで参ります。

 また、世界的な潮流となっている有機栽培を推進するとともに、高品質な赤ワイン用新品種「ソワノワール」の早期産地化に取り組んで参ります。

 流通面に関しては、県産食肉の販路拡大を図るため、海外の高度な衛生管理基準に対応した食肉処理施設の整備に向け、基本計画の策定に対して助成を行って参ります。

 販売面に関しては、高品質な生産物としてのプロモーションに加え、美酒・美食体験の中においても、その素材としての魅力を発信して参ります。

 一方、こうした中にあって、ふるさと納税サイトで、一部の事業者が、返礼品に値しない県産果実を送付している事案が確認されました。

 このことは、これまで脈々と積み上げてきた本県のブランド価値を一瞬にして貶めるものであり、決して見過ごすことはできません。

 このため、昨年、市町村やサイト運営事業者等とともに協議会を立ち上げ、出荷基準を定めるなど、高品質な県産品を確実に届ける体制の構築を進めております。

 以上のとおり、「ふるさと強靱化」と「『開の国』づくり」に向け、積極果敢に取り組むべく、「県民生活強靱化予算」を編成いたしました。

 今後も、我々自身が挑戦者として歩み続けるためには、健全かつ持続可能な行財政運営という土台が不可欠であります。

 行政運営については、行政ニーズが多様化・高度化し、膨れ上がっている中にあっても、眼前の業務に忙殺され、思考停止に陥るようなことがあってはなりません。

 職員一人ひとりが本来業務に注力し、公益の増進にまい進できる土壌があってこそ、我々が、時代の変化に機動的に対応しつつ、政策立案と検証を高い水準で重ねていく集団たりえるものと考えております。

 本予算においては、業務の外部委託や効率化に向けたアプリケーションの導入などに充てる「業務改善枠」を新設するとともに、内部管理業務の効率的な執行に向け、総務事務センターの設置準備に要する経費を計上しております。

 同センターは、給与や旅費の支払いなどの事務を集約化し、外部委託も活用しつつ、一元処理する組織であり、限られた人的資源を、県民向けサービスや事業の企画立案に重点的に振り向けられる体制構築を目指して参ります。

 今後、出納業務などについても検討を重ね、行政運営の更なる効率化を図って参ります。

 次に、財政運営については、県有資産の高度活用による独自財源の確保を引き続き図って参ります。

 恩賜県有財産の貸付については、条件の緩和を漸次進めて参りましたが、未だに利活用の主体と方法は固定的であり、なかなか新たな貸付につながっていない状況にあります。

 県民の皆様からお預かりしたこの財産を最大限に活用し、そこから得られる収益を県民の皆様に還元することこそ、財産の管理者たる県の責務であり、御下賜の御心にも沿うものと考えます。

 そこで、来年度から、恩賜県有財産の新規貸付条件を更に緩和し、地域振興に必要と認められる場合には、貸付を可能と致します。

 この門戸開放は、公平・公正で、かつ透明性の高い貸付制度の実現を図るものであり、貸付に当たっては、有識者や保護団体の意見も聴取しつつ、丁寧なプロセスで実施して参ります。

 また、一度貸し付けた後、現在は利活用されていない土地については、使途の制限なく貸付を可能と致します。

 これらの取り組みにより、周辺環境と調和した質の高い利活用を進めることで、地域ブランド力の向上と県収入の更なる増加を図って参ります。

 最後に、県有地の賃料改定に向けた取り組みについて、現状を御報告いたします。

 富士急行株式会社と締結している全ての土地賃貸借契約について、昨年12月に御議決いただいた債務負担行為に基づき、弁護士と賃料交渉に係る委任契約を締結したところであります。

 このうち、山中湖畔県有地については、借地借家法に基づき、将来に向けた賃料改定を求め、他の案件については、賃料改定に先立ち、契約条項を含む法律関係の解釈を巡り、協議を進めております。

 今般、山中湖畔県有地以外の1件について、不動産鑑定を行う準備が整ったことから、この鑑定に要する経費を計上いたしました。

 同社とは合意点を見出す努力を重ねつつ、賃料の適正化を早期に実現するため、引き続き交渉を行って参ります。

 次に、提出案件の内容につきまして御説明申し上げます。

 今回提出いたしました案件は、条例案30件、予算案25件、その他の案件9件となっております。

 先ず、条例案のうち、山梨県部等設置条例の改正についてです。

 女性、外国人など、多様な主体が積極的な社会参画を行い、活躍する社会の実現に向け、共生社会推進施策と労働施策の連携強化を図るため、男女共同参画・共生社会推進統括官を再編し、多様性社会・人材活躍推進局を設置するものであります。

 次に、山梨県富士山における登山の適正化に関する条例ほか2条例についてです。

 山梨県富士山における登山の適正化に関する条例については、富士登山の適正化に関し、県及び登山者の責務を明らかにするとともに、市町村等との連携や富士登山の適正化のための措置などを定めるものであります。

 このほか、山梨県富士山吉田口県有登下山道設置及び管理条例により、公の施設として県有登下山道を設置するとともに、山梨県富士山吉田口県有登下山道整備等事業基金条例により、登下山道の整備等を円滑に推進するための基金を設置いたします。

 最後に、山梨県立やまなしパラスポーツセンター設置及び管理条例の制定についてです。

 パラスポーツに取り組む機会と場を提供することにより、障害者の生きがいの創出及び社会参加の促進を図り、あわせてパラスポーツに対する県民の理解を促進し、もって共生社会の実現に資するため、やまなしパラスポーツセンターを令和7年3月に設置しようとするものであります。

 その他の案件につきましては、いずれも、その末尾に提案理由を付記しておりますので、それによりまして御了承をお願い致します。

 なにとぞ、よろしく御審議の上、御議決あらんことをお願い申し上げます。

 さて、繰り返しとはなりますが、2期目の知事就任も2年目を迎えるに当たり、これまでを顧み、今後に臨む想いを申し述べたいと思います。

 昨年はようやく、コロナ禍が明け、人々に笑顔が戻り、社会に活気が戻って参りました。

 そして、ここ山梨県政にあっては、1期目、コロナ禍の中でも撒き続けてきた、数多くの施策の種を大きく花開かせる好機が再来と、大いに期待を膨らませた1年目でもありました。

 同時にそれは、「ふるさと強靱化」と「開の国」という、新しい将来構想の具体化に向けた、いわば土壌改良に努めた時期ともなりました。

 一方で、物価高騰、介護離職や賃金上昇など不透明な時代状況は、なおも根強く、県民生活に不安をもたらしております。

 その上で、人口減少という構造的難題もいよいよ顕在化してきております。

 いずれにしても、県内のみならず、日本全体を取り巻く社会情勢を俯瞰すれば、コロナ禍による社会的な停滞の反動もあり、変化はこれまで以上に加速しているように見受けます。

 日本は今、これまでにない社会不安の時代に突入したのやもしれません。

 しかしながら、ここ山梨県にあっては、不安の拡大が生活を侵蝕することがないように心配りを行うことはもちろんのこと、「これまで以上に加速する変化」を「これまで以上に飛躍する好機」へと活かしていくべく、施策に創意を、挑戦に躊躇なく、コロナ禍後という時間を県民生活発展のために最適期と位置付けて前進し続けております。

 本県は、あらゆる社会課題や社会変動の兆候を日本の他の地域のどこよりも早く感知し、県民生活における希望と期待を個々人にあって最大にすべく、必要施策を展開させて参ります。

 そこで新たに、これまでの施策の成果を、県民個々人の生活レベルでの実感へと還元するため、本年を「県民生活強靱化元年」と位置付け、あらゆる取り組みを生活の強さにつなげて参ります。
 
 日本で最も先端をいく「25人学級」も、いよいよ小学校全学年まで拡大を視野に入れ、具体的な課題解決策を議論していく所存です。
 
 スキルアップが生産性アップ、そして賃金アップと連環することを目指す「豊かさ共創」施策は、IT人材育成などを皮切りに、いよいよ現実的かつ具体的な好循環の始まりとして動き出させます。
 
 本県独自のDX施策は、特に小規模事業を営む皆さんにとって、驚くほどの便利さと効果の実感をもたらすことでしょう。
 
 水素・燃料電池や防衛関連産業の「地場産業化」を目に見える形で進めていくとともに、農業分野においても、これまでの果樹栽培に加えて、水稲や野菜はもちろんのこと、水産、畜産業、そして花き栽培などを新たな本県農業の柱への育成に取り組み、安定した地域経済の体質強化に注力して参ります。

 このほかにも、取り組みを進める各種施策が、それぞれの分野にかかわる方々の生活実感に対して、目に見える効果を及ぼすように努め、結果、総体としての県民生活全体に豊かさの実感をお届けできるように尽力して参ります。

 ふるさと山梨の未来を築く次の世代へと、可能な限りの資源を投入するとともに、現役世代の収入、就職、生活、あらゆる日常局面の環境を向上させるため、施策と生活との間に「見える橋」をかけて参ります。

 県民生活強靱化とは、これすなわち、県政施策と生活局面との間に橋をかけていくことに他ならず、それこそが、本年の県政推進の基本路線であるべきと考えます。

 県民の皆様、そして本議会の全ての皆様とともに、本県を滞留することのないポストコロナの上昇気流に乗せ、県民の皆様をお一人として取り残さずに豊かさへと橋渡しするべく、力を合わせて参ります。

 豊かさと成長をもれなく身近なものとする。
 
 それが、県民生活強靱化元年に臨む決意です。

 令和6年2月15日

 山梨県知事 長崎 幸太郎

このページに関するお問い合わせ先

山梨県総務部財政課 
住所:〒400-8501 甲府市丸の内1-6-1
電話番号:055(223)1381   ファクス番号:055(223)1385

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