ページID:93432更新日:2020年2月17日

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令和2年2月定例県議会知事説明要旨

令和2年2月定例県議会の開会に当たり、提出致しました案件のうち、主なるものにつきまして、その概要を御説明申し上げますとともに、私の所信の一端を申し述べ、議員各位並びに県民の皆様の御理解と御協力をお願い申し上げたいと存じます。

私が知事に就任してから、本日でちょうど1年となります。

この間、国、他県、そして諸外国と、新たな関係構築を進める中で、山梨県のプレゼンスを高める努力を精力的に行って参りました。

また、山梨の未来に想いを巡らせ、各地域で多くの県民の皆様と様々な意見を交わさせていただく中で、今後の県政運営の羅針盤として、総合計画を策定致しました。

いわばこの1年は、山梨に新しい芽を吹かせるため、種をまき、土台を作ることに注力した期間でありました。

そして、2020年、いよいよオリンピックイヤーを迎えました。

本県においては、県史上初めて、オリンピック競技である自転車競技ロードレースが開催され、富士山を背景とした美しい風景が、全世界に発信されるという、今後またとないチャンスが到来します。

また、来年度は、中部横断自動車道の山梨・静岡間の全線開通や、須走道路・御殿場バイパスの開通による東富士五湖道路と新東名高速道路の接続が予定されております。

かつて、中央自動車道が、本県の発展に大きく寄与したことと同様、この絶好の機会を、山梨の変化を促す大きな起爆剤としていかなければなりません。

後世から見て、私の知事在任期間が、山梨再生に向けて動き出したターニングポイントであったとの御評価をいただけるよう、この重要な1年、成果を出すことに徹底的にこだわり、大きく歩みを進めて参ります。

そこで先ず、令和2年度当初予算の編成に当たりまして、その基本的な考え方を申し上げます。

令和2年度当初予算は、私が知事として編成した初の通年予算であり、県民生活の豊かさの実現に向けて、検討段階から実行段階へと移行させ、施策を本格展開させるための予算であります。

少人数教育の導入や、医療機器関連産業の集積などの主要施策についても、躊躇なく実行フェーズに移し、県民の皆様に、具体的な成果を速やかにお届けすることを最優先に、取り組みを進めて参ります。

一般会計の総額としては、4577億円の規模であり、本年度予算に引き続き2年連続で、積極型予算を編成致しました。

県民の皆様の御期待に応えるためには、予算の内容が充実したものであることはもちろんのことでありますが、その一方で、未来にわたる財政の持続可能性に対する御信認をいただくことが大前提であります。

そうした点から、私が特に意を用いたのは、厳しい財政状況の中、積極型予算の編成と、財政の健全性の確保を両立することであります。

最小の県負担で、最大の事業効果を追求する、いわばレバレッジの効いた予算の編成を心掛け、歳出面において、限られた財源や人的資源を重点的に配分することはもちろんのこと、歳入面では、有利な国制度の積極的な活用に加え、新たな収入源の開拓など歳入確保の取り組みも強化して参ります。

これにより、県債発行を抑制するとともに、財源対策のための基金取り崩しも改善させ、財政の持続可能性の確保に向け、一歩踏み出した内容と致しました。

公共事業等については、過日、素案を公表致しました第4次社会資本整備重点計画において、令和4年度までの3カ年で総額2200億円規模の公共投資を行うという目標を設定致しましたが、今後の予算編成においても、実質的な県負担を伴う県債等残高の水準に十分留意しながら、国制度の積極的な活用により県負担を抑制しつつ、掲げた事業量の水準の確保に向け、全力で取り組んで参ります。

令和2年度当初予算に加え、先月成立した国の補正予算を最大限活用した本年度2月補正予算につきましても、今議会に提出しており、このうち経済対策分として173億円を計上しております。

その主な内容は、防災・減災、国土強靭化等を強力に推進するための公共事業費でありますが、国予算の伸び率を上回る内示をいただいたところであり、令和2年度当初予算と一体的に執行し、速やかに事業効果の発現を図って参ります。

今回編成致しました予算のうち、防災・減災対策及び教育・子育て環境の充実については、未来への投資として極めて重要であると考え、特に重点的に予算計上致しましたので、この点について御説明申し上げます。

先ず、防災・減災対策の推進についてであります。

本年度は、春先のひょう害から始まり、モモせん孔細菌病、台風15号・19号、CSF、そして後程述べます新型コロナウイルスなど、一連の危機に見舞われ、そして今なお現在進行形であります。

これらの危機対応としては、県民生活への影響を最小限にとどめる観点から、スピード感を持った対応が必要であり、特に台風19号の発生時には、上陸前から災害対策本部を立ち上げるなど、先手での対応を特に心掛けて参りました。

この台風19号の事例のように、自然災害の中でも、特に台風や豪雨などは、地球温暖化を背景に、今後も頻発化・激甚化するとの想定の下で、先を見据えた対策を講じていくことが必要であります。

そこで、公共事業の中でも、県民の生命・財産を守るための防災・減災対策に資するインフラ整備に特に重点を置き、経済対策も含めた国制度を積極的に活用しながら、最大限の事業費を計上致しております。

また、県民生活を支える電力などのエネルギー、道路・鉄道などの各種インフラについて、災害時の途絶リスクを極力軽減するため、国や関連事業者、有識者等の方々の御意見を伺いながら、これらの生活インフラの強靭化に向けた取り組みを進めて参ります。

更に、山間地においては、災害発生時に孤立する可能性が高く、こうした地域で避難所運営に支障をきたさないよう、ハイブリッド式の非常用発電機等の整備を促進するとともに、本県を訪れる外国人観光客に向けた、災害情報の多言語での発信や、宿泊施設での災害情報の伝達など、きめ細かな対応に努めて参ります。

これらに加え、富士山を擁する本県としては、本年度に引き続き、火山防災対策にも力を入れて参ります。

ハザードマップについては、現在、国や静岡県、火山専門家等とともに、最新の火山研究の成果を踏まえ、その改定作業を進めておりますが、検討過程において、溶岩流が市街地へ極めて短時間で到達することが想定されるとともに、影響範囲が従前のものから大きく広がる見込みであり、被害想定の深刻度が増しております。

このため、地域住民や観光客等が迅速かつ確実に避難できるよう、本年度末には広域避難行動計画を策定するとともに、来年度は、計画に基づく実動訓練を行い、その結果を計画に反映させ、PDCAサイクルをしっかりと回すことにより、避難対策の実効性の向上に努めて参ります。

また、本年度、本県が主導して立ち上げた、火山防災強化推進都道県連盟を軸に、国に対し、引き続き財政支援と法整備について提言・要望を積極的に行い、国の関与も引き出す中で、火山防災の強化を図って参ります。

更に、これらの施策をより効果的に行うためには、高度な専門知識を持つ職員が欠かせないため、火山防災に関する業務を担う専門職員を全国で初めて採用し、その科学的知見を十分生かした、噴火の事前対策を充実させて参ります。

このほか、本年度の夏山シーズンに発生した落石事故も踏まえ、富士山登山者の安全確保の一環として、噴石や落石から登山者を守るためのシェルター等の設置についても、新たに富士山保全協力金を活用し、検討に着手して参ります。

これら一連の防災・減災対策の推進は、県民生活を守る上で基礎となるものであり、先ずはこれらの対策をしっかりと講じることで、県民の皆様の安心・安全な生活を担保して参ります。

次に、教育・子育て環境の充実についてであります。

人づくりこそが、地方創生の原点であり、中でも、未来の山梨を支える原動力である子どもたちにとって、一人ひとりの可能性を最大限発揮できる環境が必要であることは、論をまちません。

児童生徒一人ひとりに向き合った質の高い教育の実現に向けた、少人数教育の計画的・段階的な導入については、昨年7月以降、有識者などで構成する検討委員会において議論を重ねていただき、過日、報告書が提出されたところであります。

この内容を踏まえ、先ず来年度については、教育現場からの強い要請も踏まえ、特別支援学級の1学級当たりの児童生徒数を8人から7人へ引き下げ、このための教員の増員を行うこととし、教育上の支援が必要な児童生徒に対し、よりきめ細かく対応ができるよう、体制を強化して参ります。

また、令和3年度からは、全国初となる25人学級を小学校1年生に導入することとし、他県に類を見ない少人数教育の推進を図って参ります。

これらの教員の増員に必要な経費については、企業局からの繰入金の増額により対応することとし、今後の少人数教育の拡大については、教員の確保や教育上の効果など教育現場に与える影響や、財政上の見通し、そして東京圏からの子育て世帯の移住促進効果等を総合的に勘案する中で、決断して参りたいと考えております。

更に、増加傾向にある、いじめや不登校への対応として、来年度からは、子どもの心の悩みを受け止めるスクールカウンセラーの配置を大幅に充実させ、子どもたちが安心して学校に通える環境づくりに努めて参ります。

また、今後のICT教育の基盤となる校内無線LANを全県立学校に整備するほか、生徒やその保護者から強い要望のあった、特別教室へのエアコンの設置や、トイレの洋式化について、速やかに整備を進め、快適な学習環境を構築して参ります。

これら教育面からのアプローチにとどまらず、子どもたち一人ひとりが、誰でも、そしてどのような家庭環境にあっても、生き生きと成長できるよう、支援を必要とする子ども達に対するサポートを更に充実させて参ります。

近年、発達障害や虐待などにより、心のケアを必要とする子どもが増加する中、医療、福祉、教育など総合的な支援を行う拠点として、本年4月に「子どものこころサポートプラザ」を開設し、この施設を核として、全県的な心のケアのネットワークを構築して参ります。

また、経済的に余裕のない状態に置かれている子どもたちに対する支援として、子ども食堂など子どもの居場所づくりに取り組む団体への支援や、スポーツ少年団の全国大会への参加費用に対する助成、更には就職に有利となる職業系の資格取得に向けて勉学に励む高校生に対する支援など、多面的にサポートして参りたいと考えております。

こうした次世代への積極的な投資は、本県を支える貴重な人材の育成につながることはもちろんのこと、恵まれた教育・子育て環境を求めて、本県への子育て世帯の移住・定住促進の効果も期待できるものと考えております。

以上、今回編成致しました予算の基本的な考え方について、御説明申し上げました。

次に、県政の主要課題について、予算に計上しました主要事業を中心に、御説明申し上げます。

第一に、リニア中央新幹線の開業を見据えた取り組みについてであります。

リニア開業により、直ちに本県にバラ色の未来が到来することは決してなく、漫然と開業を待つのみでは、逆に人口流出の装置となることは今更言うまでもありません。

そうした観点から、山梨100年の大計を考え、リニアの活用については、十二分に、戦略的視点で取り組む必要があります。

駅位置については、先般、甲府市大津町とし、加えて身延線小井川駅とのシャトルバスの運行により、リニアの開業効果を最大化させ、全県に波及させることが可能となり、これがベストな選択であると判断致しました。

そこで、来年度は、シャトルバスの運行に向け、自動運転や燃料電池バスなどの次世代交通システムの導入も含め、具体化の検討に着手して参ります。

また、現在、リニア開業を機に、富を確実にこの山梨に呼び込み、県民生活の豊かさに直結させるための指針である「リニアやまなしビジョン」の年度内の策定に向けて、鋭意取り組んでいるところであります。

ビジョンの概ねの方向性としては、豊かな自然環境に囲まれながら、大都市とアクセスしやすくなるという立地環境の強みを最大限に生かし、山梨を先端技術の実証試験の場とし、望むべくは世界に先駆けて新たな価値を創造する近未来の窓口としての地位を確立して参りたいと考えております。

来年度からは、このビジョンに基づき、最先端企業等を本県に誘致するための活動を強力に展開するとともに、災害時における国機関の代替機能や物資拠点の誘致に向けた検討など、リニア開業効果の最大化に向けて具体的な取り組みを進めて参ります。

第二に、本県の成長を支える産業分野の振興についてであります。

県内企業が更なる成長を遂げ、厳しい地域間競争を勝ち抜いていくためには、本県の産業界の持つ潜在力を最大限に生かした新たな展開が必要であります。

特に、水素・燃料電池関連産業については、山梨大学を始めとする研究・評価機関が集積しているという本県の優位性に鑑みると、先ほど言及致しましたリニア開業を見据えた実証試験の場として最有力の分野であると言えます。

現在も、水素・燃料電池関連産業の集積地である「やまなし水素・燃料電池バレー」の実現を目指し、産学官金が連携して取り組みを進めているところでありますが、来年度は、県・山梨大学・県内企業等がクラスターを形成し、人材育成や企業間のマッチングに取り組むなど、水素・燃料電池関連産業の集積を更に促進して参ります。

また、高度な技術力を有する本県の機械電子産業の医療機器関連産業への参入・集積を目指す「メディカル・デバイス・コリドー構想」の実現に向けては、先般、静岡県と協定を締結するなど、今後の施策推進に必要な基盤を固めて参りました。

来年度はこの動きを一層加速させ、やまなし産業支援機構にメディカル・デバイス・コリドー推進センターを新たに設置し、医療機器関連産業への参入を目指す企業へワンストップ支援を行うなど、本県の医療機器関連産業の進展に向けた取り組みを強力に進めて参ります。

第三に、東京オリンピック・パラリンピックへの対応についてであります。

オリンピックイヤーを迎え、続々と本県ゆかりの選手の出場が内定しております。

このことは、県民の誇りであり、選手の皆様へ、先ずはお祝い申し上げるとともに、大会における御健闘を、心よりお祈り申し上げます。

さて、東京オリンピック・パラリンピック大会は、世界的な注目を、日本、そして本県に集める契機となるばかりではなく、スポーツに対する関心を世界レベルで高めるとともに、障害のある方や外国の方々に対する理解を深める絶好の機会であります。

目下、本県で開催される自転車競技ロードレースや、6月27日から28日にかけて本県を通過する聖火リレーの成功に向けて準備を着実に進めているところであり、2月補正予算や当初予算に必要な経費を計上し、これらのイベントの成功に向けて、万全の体制で取り組んで参る所存であります。

また、大会の成功はもちろんのこと、これを一過性のイベントとして終わらせることなく、今後の山梨発展のきっかけの1つとするべく、国が目指している15兆円のスポーツ市場を本県に積極的に取り込んでいくべきであり、そのための体制を整えて参ります。

そこで、現在のオリンピック・パラリンピック推進局を再編し、新たにスポーツ振興局を設置することにより、スポーツによる地域活性化や健康管理に向けた各種施策を一元化し、強力に推進して参ります。

なお、総合球技場については、運営上の収益、採算性確保、更には「スポーツで稼ぐ県づくり」という観点から、引き続き、その在り方を検討して参りたいと考えております。

第四に、国際交流・海外展開の強化についてであります。

来年度は、四川省とは友好県省締結35周年、アイオワ州とは姉妹県州締結60周年となる節目の年であり、これら姉妹都市との関係強化を図る絶好の機会であります。

これまで、これらの地域との交流は、政治・行政レベルを中心とした友好関係の構築という性質が強かったように感じますが、今後は、民間レベルでの具体的な交流へと深化させ、共に新たな価値を生み出す「姉妹都市2.0」とも言うべき新たな段階へと展開して参りたいと考えております。

先ず、四川省とは、連携協定の締結も視野に、経済、文化、人材等の民間レベルでの交流の深化を図って参ります。

具体的には、本県ゆかりの産業である印章や和紙に絡めた、書道等を通じた学生同士の交流、県産の食材やワイン、日本酒と四川料理との融合を図る料理人同士の交流など、新たな切り口での交流を実施して参ります。

このキックオフとして、8月の記念式典には、幅広い分野からなる300人規模の交流団を派遣し、その後の民間同士の持続的な交流の契機としたいと考えております。

また、アイオワ州は、スマート農業やバイオテクノロジーなどの分野を中心に、本県として学ぶべき取り組みが非常に多いと考えており、友好関係をより強固なものとするため、来年度は記念式典を本県で開催し、お互いの豊かさにつながるような関係を構築していきたいと考えております。

このほか、オリンピック・パラリンピック大会の事前合宿を通じたフランスやドイツとの交流、山梨PR大使による中東諸国の大使館等へのPR、医療機器関連産業や水素・燃料電池関連産業といった成長分野における県内企業の中国進出へのサポート、中国やUAEに向けた県産果実のプロモーションなど、各分野で強みを生かし、世界のマーケットに対して戦略的にアプローチして参ります。

いずれの取り組みも、決して旧来型の儀礼的な友好関係の構築にとどめることなく、いかにして県民生活の豊かさに結びつけるかという観点から、具体的な成果を出すことにこだわり、相互にとって利益をもたらすような実務的施策を展開して参ります。

第五に、山梨ブランドのプロモーションについてであります。

昨年は、知事就任後、改めて県内をくまなく回り、多様な分野で御活躍されている方々と言葉を交わす中で、山梨の可能性を改めて発見した1年でありました。

同時に、山梨をひとたび離れれば、本県の認知度に課題があることは隠しがたい事実として突きつけられ、本県の優れた地域資源をできる限り発掘し、磨きをかけ、光をあて、他県の方々の目を引くような発信の工夫を凝らすことの重要性を痛感しました。

その取り組みの一環として、昨年「ワイン県」宣言を致しましたが、これは、ワインをきっかけに、県内外の多くの方に本県の持つ様々な資源の潜在力に気づいていただき、県全体の活性化を図りたいという想いを込めたものであります。

来年度は、東京のアンテナショップ「富士の国やまなし館」を、県産酒と食の魅力を体感できる拠点としてリニューアルするとともに、リニューアルを記念したワイン県副知事によるPRイベントや、ワイン県としての県内の受入環境の充実を図るなど、更なる誘客促進につなげて参ります。

また、コーセーの大型生産拠点の南アルプス市への進出や、NECネッツエスアイの陸上養殖施設の西桂町への進出など、本県の良質な水を求めて企業が拠点を設ける例が続いており、本県の自然が、住みよい暮らしの基盤となるばかりでなく、本県経済に具体的な富をもたらすことを改めて認識したところであります。

そこで来年度は、「水」を切り口として、本県の優れた環境をPRし、企業誘致や移住・定住、誘客等につなげて参ります。

次に、当面する県政の課題として、新型コロナウイルスへの対応について申し上げます。

中国・武漢で発生が確認された後、連日、国内での感染者の情報が報じられるなど、県民の皆様に不安が広がっております。

発生の確認と、中国における春節の時期が重なったことから、県としては、宿泊施設への消毒液の配置や、外国人観光客や医療機関・宿泊施設等への注意喚起を徹底することに加え、県民の皆様の不安の声にお応えするための専用相談ダイヤルの開設など、常に先手での対応に心掛けてきたところであります。

感染の広がりは刻一刻とその状況が変化しておりますが、「正しく恐れ、正しく備える」という観点から、県としても、最新の医学的判断により、県民の生命、健康を守るための必要な情報については、一定の基準に基づき、速やかに公表するとともに、今月10日、帰国者・接触者外来及び相談センターを設置し、感染疑い例への対応に万全を期して参ります。

また、友好都市である四川省からの要請に応え、防護服及び医療従事者用マスクを緊急発送するとともに、県内企業からの寄附を活用させていただく中で、県内宿泊施設にマスクとその着用を推奨する文書を送付し、観光客に接する従業員の方々の三次感染対策を強化したところであります。

一方で、宿泊キャンセルが相次ぐなど、観光面の影響が現に生じていることに加え、今後、世界的なサプライチェーンの停滞による、産業面の影響も懸念されるところであります。

そこで、緊急観光キャンペーンの実施や、台風19号対策として創設された「ふっこう割」の活用、更に中小企業者に対する県の経済変動対策融資の活用促進など、あらゆる策を速やかに講じ、影響を極力緩和できるよう努めて参ります。

今後も、本県経済の状況や、国の動向等も十分踏まえ、追加的に必要となる施策につきましては、柔軟かつ速やかに実施して参ります。

次に、条例案のうち、主なるものについて申し上げます。

先ず、山梨県部等設置条例の改正についてであります。

知事就任2年目を迎え、いよいよ実行の年として、様々な施策を加速させるため、県庁の組織再編を行います。

様々な政策課題に迅速、柔軟かつ機動的に対応するため、現在の総合政策部を再編し、政策の立案や有機的連携の推進に特化した組織として、知事政策局を設置するとともに、文化財を含む地域資源を磨き上げ、本県の観光誘客力を更に高めることを狙いとして、観光行政と文化行政を一元化し、観光文化部を設置致します。

このほか、先に述べましたスポーツ振興局の設置などを行うものであります。

次に、山梨県自転車の安全で適正な利用の促進に関する条例の制定についてであります。

昨今、自転車の悪質な運転や、自転車事故に伴う高額賠償請求事件が社会問題化していることに鑑み、自転車の安全で適正な利用に関する基本理念等を定めるとともに、自転車の利用者に対し、自転車損害賠償責任保険への加入義務等を定めるものであります。

次に、山梨県職員の勤務時間、休日及び休暇に関する条例等の改正についてであります。

仕事と家庭が両立できる職場環境を整備するため、男性・女性を問わず、新たに学校行事に参加するための休暇と不妊治療のための休暇を創設するとともに、育児休業の取得要件の弾力化を図るものであります。

その他の案件につきましては、いずれも、その末尾に提案理由を付記しておりますので、それによりまして御了承をお願い致します。

最後に、今回の新型コロナウイルスの事案に関連して、感染症への対応に関する私の想いを付言させていただきたく存じます。

私は、感染症に対する向き合い方として、適切な治療体制の確保及び感染拡大の防止と同時に、患者さんや御家族が生活する地域社会において不安のない環境を積極的に構築していくことも、県民の皆様を守るべき立場にある者として、常に心得ておくべき姿勢であると考えています。

昨年、東京・東村山市にありますハンセン病療養施設、多磨全生園を、知事として訪れて参りました。

全生園の歴史は明治42年に遡り、旧感染症法のもと、患者さんや御家族に強いられた苦しみの象徴としての「悲しみの森」であります。

昨年11月、改正ハンセン病問題基本法が成立し、元患者さんや御家族の一層の名誉回復が図られております。

しかしながら、全生園には現在もなお多くの元患者さんが暮らしておられ、そのうち多くの方々は、決して身体的、経済的理由のみで、とどまっておられるわけではありません。

今なお、全生園で暮らされている方のお言葉として、次のようなものがあります。

「社会の差別がなくなっても、身内の差別のほうが根深いんです。社会の差別は、表面では制度が解消します。ですが、身内からの差別、これが実は極めて厄介なんです。たとえ、制度や法律が変わっても、人々の心が変わらなければ差別はなくならないんです。」

また、こうおっしゃられる方もいらっしゃいました。

「家族はときに、自分たちの子どもを亡くしたことにしたり、遠くに行ったことにしたり、家族の中から消し去ろうとしました。太平洋戦争中は出征して戦死したことにしてしまったり。」

こうした過去の体験と記憶は今なお、元患者さんらの心の中で悲しみとともに生き続け、現在でも、自身の親兄弟らの葬儀に参列を許されない方もおられます。

親が亡くなった知らせとともに、故郷の最寄り駅まで行き、実家の方に手を合わせ、そして再び駅から戻ってくる。

そんな方が、現在でもまだ多くいらっしゃるのです。

ある御夫婦はこうもおっしゃられました。

「ハンセン病患者であったことで絶縁された、兄弟姉妹との交流が自由にできるようになるかどうかは、まだまだ先が見えない。」

知事として、今なお救済されない悲しみがあることを改めて強く心に刻んで参りました。

現在もなお、そこは「悲しみの森」でありました。

歴史を紐解けば、ここ山梨においてもハンセン病のみならず、古くはコレラの流行から、いわゆる「地方病」に至るまで、多くの辛く悲しい経験があります。

県立博物館にも「共生する社会」というテーマで、関連の展示もしております。

私たちは、これらの経験に対する反省をしかと踏まえ、現在、そして未来に向き合わなければなりません。

行政における感染症対応とは、治療と感染拡大防止とともに、患者さんらの社会復帰、更には医療従事者とその御家族への配慮をも含んだ、生活圏全体の心理的な安寧の確保という、医療拠点から拡げた射程において取り組むべき課題であると、決意を新たにしております。

以上縷々申し上げましたことも含め、本議会には、令和2年度当初予算案をはじめ、条例案など、多くの案件を提出しております。

これらに込めました私の想いとしましては、来年度、施策を本格的に展開させ、県庁の活動量を増やすことで、県全体の活性化と強靱化につなげて参りたいということであります。

どこか閉塞感のあったこの山梨県でありますが、ありがたいことに、中部横断自動車道の県負担削減などを契機に、県民の皆様から、今後の県政に対する御期待の声をお寄せいただける機会が増えて参りました。

しかし、これに決して満足せず、県庁の動きを更に活発化させ、県民の皆様から一層の信頼を勝ち取り、山梨再生・飛躍に向けた想いを共有させていただく中で、真の豊かさの実現に向け、県民の皆様と共に歩んで参りたいと考えております。

今後も、粉骨砕身、努力を傾け、県民の皆様とパートナーシップを構築する中で、県政を推進して参りたいと考えており、その代表たる県議会議員の皆様には、引き続き私の県政運営に対する深い御理解と御協力をお願い致します。

なにとぞ、よろしく御審議の上、御議決あらんことをお願い申し上げます。

令和2年2月17日

山梨県知事 長崎 幸太郎

このページに関するお問い合わせ先

山梨県知事政策局広聴広報グループ 
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山梨県総務部財政課 
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