vol.23(平成22年1月1日発行)
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 各地の農村を見てきた菅原文太さんには、山梨の農業の背景はどんなふうに見えたのでしょう。  「山梨は東京からも近いし、四方を山に囲まれた土地柄。厳しい高冷地から盆地まで、高低差のある地形を生かして特色ある農産物を生産してきた。ブドウやモモ、柿、リンゴなどの果実はよく知られている。南部のお茶や、かつては盛んに作られていたショウガのことなども耳にした。海の物はないが、それぞれの地にローカルな名産はたくさんあったと思う。ひとつひとつ丹念に掘り起こしていくことが大事だ。サルやシカ、イノシシなどの鳥獣被害も半端じゃないから、里山の保全にはかなりの努力がいる。山林の荒廃はもとより、遊休農地もこのままでよいはずがない。全国各地の成功しているノウハウも積極的に導入したらどうかな。頑張れば、山梨は農業再生のモデル地になる可能性は十分あると思う。美しい風景はもちろん、太平洋と日本海を縦につなぐ列島の中央に位置していることも、大きなメリットになるかもしれない」。 所へ。平成21年10月には、北杜市明野町内に農業生産法人を設立し、本格的に農業を始めました。 「かなり前から家庭菜園で農業のまねごとのようなことはやっていた。ここは茅ケ岳の麓に広がる、約3千Gの農場。宿舎も近くにあり、若者達と農業をするには最適。かなり歩いて見た候補地の中からここを選んだ。正面に八ヶ岳、南アルプスの山々も見渡せる」と、気に入った場所にたどりついた喜びが伝わってきました。 「これからは、日本の風土に合った農業をしていかないといけない。若い人が参加することで、いろいろな交流が始まっていく。ここでやっていることが刺激剤となって、地元の人が今以上に元気になって、やる気を起こしてくれれば、いい方向に向かって行くんじゃないかな」。冬も間近な畑には、来春の野菜栽培に向け、ライ麦の種をまいたばかりだとお聞きしました。山梨の多様性ある環境に 農業再生の夢かける  県から農業協力隊のコーディネーターを委嘱されている菅原さんは、若者にも大きな期待をかけています。 「二次産業、三次産業ばかりに目を向け、一次産業がないがしろにされてきたのが戦後の農政の実情。その結果どうなったか。欠陥はもう十分見えてきている。これからは利益だけを先行させる農業は行き詰まる。農業に汗を流す若者が増えることを願っている。若者には、自ら体験して何か学んでいってほしい。誰でも農業に従事できる分かりやすい仕組みづくりも急務」。 明野の農場は、今はわずかなスタッフですが、次第に人手も増やす予定。来年には、隣接する農地も借り受け、さらにたくさんの野菜の栽培に挑戦すると、期待を膨らませていました。農業の大切さを 体験を通して学んでほしい 宿舎に隣接する林の中を散策しながら話を伺いました。ここだけは手を入れ、本来の姿を取り戻したそうです。荒れた森林や野山の維持には、これまで以上の工夫と地道な努力が必要だと力説。 秋も深まる10月下旬、明野の農場ではライ麦の種まきが始まりました。野菜も時間をかけて丁寧に育てたい。来春には新たに約7千Gの農地を借り受けるそうです。この日も、南アルプスや八ヶ岳の雄大な姿が見えていました。 03ふれあい

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