○山梨県犯罪被害者等支援条例

令和四年十二月二十六日

山梨県条例第四十九号

山梨県犯罪被害者等支援条例をここに公布する。

山梨県犯罪被害者等支援条例

(目的)

第一条 この条例は、犯罪被害者等支援に関し、基本理念を定め、並びに県、県民、事業者及び民間支援団体の責務を明らかにするとともに、犯罪被害者等支援に関する施策の基本的な事項を定め、犯罪被害者等支援を総合的かつ計画的に推進することにより、犯罪被害者等が受けた被害の早期の回復又は軽減及び犯罪被害者等の生活の再建並びに犯罪被害者等の権利利益の保護を図り、もって犯罪被害者等を社会全体で支え、誰もが安全に安心して暮らすことができる社会の実現に寄与することを目的とする。

(定義)

第二条 この条例において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。

 犯罪等 犯罪及びこれに準ずる心身に有害な影響を及ぼす行為をいう。

 犯罪被害者等 犯罪等により被害を受けた者及びその家族又は遺族である県民をいう。

 犯罪被害者等支援 犯罪被害者等が、その受けた被害を回復し、又は軽減し、及び再び平穏な生活を営むことができるようにするための取組をいう。

 二次被害 犯罪等による直接的な被害を受けた後に、周囲の者、犯罪被害者等に接する行政機関の職員その他関係者による偏見に基づく又は理解若しくは配慮に欠ける言動、インターネットを利用して行われる誹謗ひぼう中傷、報道機関による過剰な取材等により犯罪被害者等が受ける精神的又は身体的な苦痛、名誉の毀損、日常生活の平穏の侵害、プライバシーの侵害、経済的な損失等の被害をいう。

 民間支援団体 犯罪被害者等給付金の支給等による犯罪被害者等の支援に関する法律(昭和五十五年法律第三十六号)第二十三条第一項に規定する犯罪被害者等早期援助団体その他犯罪被害者等支援を行うことを主たる目的とする民間の団体をいう。

(基本理念)

第三条 全て犯罪被害者等は、個人の尊厳が重んぜられ、その尊厳にふさわしい処遇を保障される権利を有する。

2 犯罪被害者等支援は、犯罪等により受けた被害又は二次被害の状況及び原因、犯罪被害者等の置かれている状況その他の事情に応じ、適切に行われるとともに、当該犯罪被害者等支援により二次被害が生ずることのないよう十分配慮して行われなければならない。

3 犯罪被害者等支援は、犯罪被害者等が被害を受けたときから再び平穏な生活を営むことができるようになるまでの間、必要な支援が途切れることなく提供されることを旨として、行われなければならない。

4 犯罪被害者等支援は、国、県、市町村、民間支援団体その他の犯罪被害者等支援に関係する者による相互の緊密な連携及び協力の下で行うものとする。

(県の責務)

第四条 県は、前条に定める基本理念(次条から第七条までにおいて「基本理念」という。)にのっとり、国、市町村、民間支援団体その他の犯罪被害者等支援に関係する者との適切な役割分担を踏まえ、犯罪被害者等支援に関する施策を総合的に策定し、及び実施するものとする。

2 県は、犯罪被害者等支援において市町村が果たす役割の重要性に鑑み、市町村が相談体制の充実その他の犯罪被害者等支援に関する施策を策定し、及び実施しようとするときは、犯罪被害者等支援に関する情報の提供、助言その他の必要な支援を行うものとする。

3 県は、第一項の規定により犯罪被害者等支援に関する施策を実施するに当たり、二次被害が生ずることのないよう十分配慮し、これを防止するものとする。

(県民の責務)

第五条 県民は、基本理念にのっとり、犯罪被害者等の置かれている状況及び犯罪被害者等支援の必要性についての理解を深め、二次被害が生ずることのないよう十分配慮するとともに、国、県及び市町村が実施する犯罪被害者等支援に関する施策に協力するよう努めなければならない。

(事業者の責務)

第六条 事業者は、基本理念にのっとり、犯罪被害者等の置かれている状況及び犯罪被害者等支援の必要性についての理解を深め、その事業活動を行うに当たり、二次被害が生ずることのないよう十分配慮するとともに、国、県及び市町村が実施する犯罪被害者等支援に関する施策に協力するよう努めなければならない。

2 事業者は、従業員又はその家族が犯罪等により被害を受けた場合には、当該従業員又はその家族がその被害に係る民事、刑事等に関する手続に適切に関与することができるよう、その雇用の継続、労働時間、休暇等について十分配慮するよう努めなければならない。

(民間支援団体の責務)

第七条 民間支援団体は、犯罪被害者等支援を行うに当たり、基本理念にのっとり、専門的知識及び経験を活用し、迅速かつきめ細かな支援を行うとともに、国、県及び市町村が実施する犯罪被害者等支援に関する施策に協力するよう努めなければならない。

(支援体制の整備)

第八条 県は、犯罪被害者等支援に関し、国、市町村、民間支援団体その他の犯罪被害者等支援に関係する者と緊密に連携し、及び相互に協力して、犯罪被害者等支援を推進するための総合的な支援体制を整備するものとする。

2 県は、前項の支援体制を整備するに当たり、犯罪被害者等が国、県、市町村、民間支援団体その他の犯罪被害者等支援に関係するいずれの機関及び団体に支援を求めた場合においても、必要とする支援が受けられるよう努めるものとする。

(協議会の設置)

第九条 県は、県、関係機関その他の犯罪被害者等支援に関係する者の連携の緊密化及び犯罪被害者等支援に関する施策の効果的かつ円滑な実施を図るため、県、関係機関その他の犯罪被害者等支援に関係する者により組織される協議会を置く。

2 前項の協議会においては、県、関係機関その他の犯罪被害者等支援に関係する者が相互の連絡を図ることにより、犯罪被害者等支援に関する課題に係る情報の共有、犯罪被害者等支援に係る取組の状況の報告及び犯罪被害者等支援に関する施策についての協議を行うものとする。

(犯罪被害者等支援計画)

第十条 知事は、犯罪被害者等支援に関する施策を総合的かつ計画的に推進するため、犯罪被害者等支援に関する計画(以下この条において「犯罪被害者等支援計画」という。)を定めるものとする。

2 犯罪被害者等支援計画は、次に掲げる事項について定めるものとする。

 犯罪被害者等支援に関する基本的な方針

 犯罪被害者等支援に関する具体的な施策

 前二号に掲げるもののほか、犯罪被害者等支援に関する施策を総合的かつ計画的に推進するために必要な事項

3 知事は、犯罪被害者等支援計画を定めるに当たり、あらかじめ、犯罪被害者等、市町村及び民間支援団体の意見を聴くとともに、県民の意見を反映させるために必要な措置を講ずるものとする。

4 知事は、犯罪被害者等支援計画を定めたときは、遅滞なくこれを公表するものとする。

5 前二項の規定は、犯罪被害者等支援計画の変更について準用する。

6 知事は、毎年度、犯罪被害者等支援計画に基づく施策その他犯罪被害者等支援に関する施策の実施状況について、公表するものとする。

(相談、情報の提供等)

第十一条 県は、次条第十三条第十五条第十七条及び第十八条に定めるもののほか、犯罪被害者等が日常生活又は社会生活を円滑に営むことができるよう、犯罪被害者等が直面している各般の問題について相談に応じ、必要な情報の提供及び助言を行い、犯罪被害者等支援に精通している者を紹介する等必要な施策を講ずるものとする。

(損害賠償の請求に関する支援)

第十二条 県は、犯罪等による被害に係る損害賠償の請求の適切かつ円滑な実現を図るため、犯罪被害者等が行う損害賠償の請求に関する情報の提供及び助言その他の必要な施策を講ずるものとする。

(経済的負担の軽減)

第十三条 県は、犯罪被害者等が受けた被害による経済的負担の軽減を図るため、必要な経済的支援を行うよう努めるとともに、犯罪被害者等に対する経済的な助成に関する情報の提供及び助言その他の必要な施策を講ずるものとする。

(保健医療サービス及び福祉サービスの提供)

第十四条 県は、犯罪被害者等が心理的外傷その他犯罪等により心身に受けた影響から早期に回復し、及び安心して日常生活又は社会生活を円滑に営むことができるよう、その心身の状況等に応じた適切な保健医療サービス及び福祉サービスが提供されるよう必要な施策を講ずるものとする。

2 県は、前項の施策を講ずるに当たり、犯罪被害者等が十八歳に満たない者その他の精神的に未成熟である者であるときは、その発達段階に応じた十分な配慮を行うよう努めるものとする。

(安全の確保)

第十五条 県は、犯罪被害者等が更なる犯罪等による被害及び二次被害を受けることを防止し、並びにその安全を確保するため、一時保護、施設への入所による保護、防犯に係る指導及び助言、犯罪被害者等に係る個人情報の適切な取扱いの確保その他の必要な施策を講ずるものとする。

(居住の安定)

第十六条 県は、犯罪等により従前の住居に居住することが困難となった犯罪被害者等の居住の安定を図り、並びに更なる犯罪等による被害及び二次被害を防止するため、県営住宅(山梨県営住宅設置及び管理条例(平成九年山梨県条例第十五号)第二条第一号に規定する県営住宅をいう。)への入居における特別の配慮、犯罪被害者等の一時的な利用のための住居の提供その他の必要な施策を講ずるものとする。

(雇用の安定等)

第十七条 県は、犯罪被害者等の雇用の安定を図るとともに、職場における二次被害を防止するため、事業者が犯罪被害者等の置かれている状況及び犯罪被害者等支援の必要性について理解を深め、犯罪被害者等を支えるための職場環境の整備及び改善その他の犯罪被害者等支援を推進することができるよう、情報の提供、啓発その他の必要な施策を講ずるものとする。

(刑事に関する手続及びその進捗状況に関する情報の提供)

第十八条 県は、犯罪被害者等がその被害に係る刑事に関する手続に適切に関与することができるよう、刑事に関する手続及びその進捗状況に関する情報の提供その他の必要な施策を講ずるものとする。

(保護、捜査等の過程における配慮等)

第十九条 県は、犯罪被害者等の保護、その被害に係る刑事事件の捜査等の過程において、名誉、生活の平穏その他犯罪被害者等の人権に十分な配慮がなされ、及び犯罪被害者等の負担が軽減されるよう、犯罪被害者等支援に従事する者に対する犯罪被害者等の心身の状況、その置かれている環境等に関する理解を深めるための訓練及び啓発活動、専門的知識又は技能を有する職員の配置等必要な施策を講ずるものとする。

(大規模事案等における支援)

第二十条 県は、犯罪等により死傷者が多数に上る事案その他重大な事案が県内で発生した場合において、当該事案により被害を受けた者及びその家族又は遺族に対して支援を行う緊急の必要があるときは、市町村、民間支援団体その他の犯罪被害者等支援に関係する者と協力して、当該事案に対応するための態勢を整え、及び当該事案により被害を受けた者及びその家族又は遺族に対して情報の提供、病院への付添い、心理に関する支援その他の必要な支援を当該事案の発生後直ちに実施するものとする。

(県内に住所を有しない者等に対する支援)

第二十一条 県は、県内で発生した犯罪等により被害を受けた者又はその家族若しくは遺族が県内に住所又は居所を有しない場合には、民間支援団体その他の犯罪被害者等支援に関係する者と連携して、当該犯罪等により被害を受けた者又はその家族若しくは遺族が直面している各般の問題について相談に応じ、必要な情報の提供、助言その他の必要な施策を講ずるものとする。

2 前項の施策は、当該犯罪等により被害を受けた者又はその家族若しくは遺族が住所又は居所を有する都道府県、当該都道府県に所在する民間支援団体その他の犯罪等により被害を受けた者及びその家族又は遺族に対する支援に関係する者と連携して講ずるものとする。

(県民の理解の増進等)

第二十二条 県は、犯罪被害者等の置かれている状況、その名誉又は生活の平穏に対する配慮の重要性、犯罪被害者等支援の必要性等について県民の理解を深めるとともに、二次被害を防止し、及び犯罪被害者等が地域社会において孤立することのないよう、広報活動、啓発活動及び教育活動の充実その他の必要な施策を講ずるものとする。

2 県は、年齢、発達段階、障害の程度、被害を受けた犯罪等の性質等の事情により自ら被害を受けた旨を申し出ることが困難な犯罪被害者等が必要な犯罪被害者等支援を受けることができるよう、啓発活動、被害について相談しやすい環境の整備その他の必要な施策を講ずるものとする。

(学校における教育の実施等)

第二十三条 県は、小学校、中学校及び高等学校の設置者及び校長と連携し、児童及び生徒に対して犯罪被害者等の置かれている状況、その名誉又は生活の平穏に対する配慮の重要性、犯罪被害者等支援の必要性等について理解を深めるための教育、二次被害を防止するための教育その他の必要な施策を講ずるものとする。

(人材の育成等)

第二十四条 県は、犯罪被害者等支援の充実を図るため、相談、助言その他の犯罪被害者等支援に従事する者を育成するための研修の実施、犯罪被害者等支援に関する活動への県民の参画を促進するための取組その他の必要な施策を講ずるものとする。

(調査研究)

第二十五条 県は、犯罪被害者等支援に関する施策を効果的に実施するため、犯罪被害者等支援に関する情報の収集、分析等の必要な調査研究を行うものとする。

(民間支援団体等に対する支援)

第二十六条 県は、民間支援団体その他の犯罪被害者等支援に関係する者が適切かつ効果的に犯罪被害者等支援を行うことができるよう、犯罪被害者等支援に関する情報の提供、助言その他の必要な施策を講ずるものとする。

(個人情報の適切な管理)

第二十七条 県は、犯罪被害者等支援に従事する者に対し、犯罪被害者等支援における犯罪被害者等に係る個人情報の保護の重要性を理解させ、及び犯罪被害者等に係る個人情報を適切に管理するよう求めるものとする。

(財政上の措置)

第二十八条 県は、犯罪被害者等支援に関する施策を推進するために必要な財政上の措置を講ずるよう努めるものとする。

(施行期日)

1 この条例は、公布の日から施行する。

(山梨県安全・安心なまちづくり条例の一部改正)

2 山梨県安全・安心なまちづくり条例(平成十七年山梨県条例第一号)の一部を次のように改正する。

〔次のよう〕略

山梨県犯罪被害者等支援条例

令和4年12月26日 条例第49号

(令和4年12月26日施行)

体系情報
第1編 規/第8章の4 安全・安心なまちづくり
沿革情報
令和4年12月26日 条例第49号