○山梨県主要農作物種子条例

令和四年三月二十九日

山梨県条例第二十五号

山梨県主要農作物種子条例をここに公布する。

山梨県主要農作物種子条例

稲、麦、大豆といったいわゆる主要農作物は、私たちの食生活を支える基幹品目である。私たちは、先人たちから受け継いだ農業及びその関連産業や文化を決して絶やすことなく、次世代に引き継ぐ使命を担っている。主要農作物種子は一度失うと二度と取り戻すことのできない貴重な資源であり、その生産の根幹となるものである。このことに鑑み、本県における当該種子の生産についての基本理念を明らかにし、優良種子を安定的に生産することによって、主要農作物に係る農業及びその関連産業並びに文化が将来にわたって途切れることのないように、この条例を制定する。

(目的)

第一条 この条例は、主要農作物の種子の生産及び普及に関する基本理念を定め、もって本県の主要農作物の品質の確保及び安定的な生産並びに気候変動をはじめとする環境危機の中で県民の食を守る持続可能な農業の推進に寄与することを目的とする。

(定義)

第二条 この条例において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。

 主要農作物 稲、麦類及び大豆とし、種子の生産及び供給を行う品種は、知事が指定した奨励品種とする。ただし、知事が必要と認める場合は、この限りでない。

 種子生産者 主要農作物の種子を生産する者をいう。

 種子管理団体 第五条の規定により知事が指定した団体をいう。

(基本理念)

第三条 主要農作物の種子の生産及び普及は、本県の農業の持続的な発展及び良質な主要農作物の安定的な供給に資することを旨として行わなければならない。

2 主要農作物の種子の生産及び普及は、県、種子生産者その他の関係者が相互に連携し、及び協力することにより推進されなければならない。

(県の責務)

第四条 県は、優良な種子の生産、普及及び安定供給に関する施策を計画的に推進するとともに、職員の育成をはじめとする必要な体制の整備を図るものとする。

2 県は、県内の気候、風土等の自然条件に適した主要農作物の品種の調査、選定及び育成を行うものとする。

3 前二項に規定する責務を果たすため、県は種子生産者及び種子管理団体との連携を図るとともに、種子生産者及び種子管理団体への情報提供、助言等の必要な支援を行うものとする。

(種子管理団体の指定)

第五条 知事は、次条第一項及び第二項並びに第九条第一項及び第二項に規定する業務を適正かつ確実に行うことができると認められる団体を種子管理団体として指定するものとする。

(種子計画の策定)

第六条 種子管理団体の長は、毎年度、県内の種子の需給状況に応じた種子生産供給計画(以下「種子計画」という。)を知事と協議して策定するものとする。

2 種子計画の策定に当たっては、次に掲げる事項を定めるものとする。

 県内の種子の需要

 種子の供給方法及び供給量

 種子の生産地、ほ場及び生産者

 その他必要な事項

3 知事は、種子計画が策定されたときは遅滞なくこれを公表しなければならない。

(情報提供及び連携体制)

第七条 県は、種子生産者及び種子管理団体に対し、優良な種子の生産及び普及のために必要な情報の提供を行うよう努めるものとする。

2 種子生産者は主要農作物の適正な栽培を行うことにより、優良な種子を安定的に生産及び供給を行うことができるよう、県と緊密な連携ができる体制を作り、役割分担を明確にして実施するものとする。

(原種の供給及び原原種の確保)

第八条 県は、種子計画に基づく品種の原種(種子の生産を行うために必要な種子をいう。以下同じ。)の生産を行い、これを適正に供給するものとする。

2 県は、原種の生産及び供給に必要な知識及び技術を有する者の確保に努めなければならない。

3 県は、原種の生産について、種苗法(平成十年法律第八十三号)第六十一条第一項に規定する指定種苗の生産等に関する基準を適用するものとする。

4 県は、原原種(原種の生産を行うために必要な種子をいう。)の確保について必要な措置を講ずるものとする。

(種子生産ほ場及び種子の審査)

第九条 県及び種子管理団体は、種子の品質を確保するため、種子計画による種子を生産するほ場(以下「種子生産ほ場」という。)の審査及び種子生産ほ場において生産された種子の審査を実施するものとする。

2 県及び種子管理団体は、必要かつ明確な役割分担の下で、適切な種子生産ほ場及び種子の審査ができるように努めるものとする。

3 県は、種子生産ほ場及び種子の審査に必要な審査基準その他の必要な事項を定めるものとする。

(伝統的に栽培された在来種の保存と管理、活用)

第十条 県は、伝統的に栽培されてきた在来種の保存及び適正な管理、並びにその活用に努め、生物多様性の確保を高めることとする。

2 県は、前項の目的を果たすために、在来種の種子の確保及び生産者の自家採種の支援に努めるものとする。

3 県は、在来種の交雑を防ぐために、外来種、遺伝子組み換え品種、ゲノム編集品種等の使用規制の基準を設けるものとする。

(県民の理解の促進)

第十一条 県は、地域の農業及び農村の根幹を支える主要農作物の優良な種子が県民の貴重な財産であるとの基本認識の下に、持続可能な農業の推進の機運を醸成するとともに、主要農作物の優良な種子の生産の重要性について県民の理解を促進するため、啓発活動に継続して努めるものとする。

(財政上の措置)

第十二条 県は、主要農作物の種子の生産及び普及並びに品種の選定及び育成に関する施策等を推進するために必要な財政上の措置を講ずるものとする。

(委任)

第十三条 この条例に定めるもののほか、この条例の施行に関し必要な事項は、知事が別に定める。

(施行期日)

1 この条例は、令和四年四月一日から施行する。

(経過措置)

2 この条例の施行の際現に策定されている種子計画は、第六条第一項の規定により策定された種子計画とする。

山梨県主要農作物種子条例

令和4年3月29日 条例第25号

(令和4年4月1日施行)