○山梨県電話詐欺等被害撲滅に関する条例
令和二年三月三十日
山梨県条例第三十号
山梨県電話詐欺等被害撲滅に関する条例をここに公布する。
山梨県電話詐欺等被害撲滅に関する条例
近年、電話その他の通信手段を用い、親族、公共機関の職員等を名乗り被害者を信じ込ませ、現金やキャッシュカードをだまし取るなどの電話詐欺等が多発しており、本県においても、特に高齢者を狙った犯行による被害が後を絶たず、県民生活に極めて深刻な影響を与えている。
もとより、安全で安心して暮らせる社会を実現することは、県民すべての願いであるとともに、県の重要な責務であり、県では、電話詐欺等による被害の防止に向けた様々な取組を進めてきたところであるが、ますます巧妙化かつ多様化する犯行の手口による被害の防止を図るためには、県による一層の施策の推進が急務となっている。
一方、平穏な県民生活を守るためには、私たち県民一人ひとりが防犯意識の更なる向上を図っていくとともに、高齢者など特に被害を受けやすい者については、身近な家族等がより注意深く見守ることができる環境を整えるなど、電話詐欺等による被害を防止するための県民自らの主体的な取組も不可欠である。
このような認識のもと、私たち県民は一丸となって、電話詐欺等による被害の防止に取り組むことにより、その被害の撲滅を目指すことを決意し、この条例を制定する。
(目的)
第一条 この条例は、電話詐欺等による被害が多数発生し大きな社会問題となっていること及び電話詐欺等が県民生活に悪影響を及ぼしていることに鑑み、電話詐欺等による被害の撲滅を図るため、電話詐欺等による被害の防止に関し、県の責務及び県民、事業者等の役割を明らかにするとともに、電話詐欺等による被害の防止に関する施策の基本となる事項を定めることにより、電話詐欺等による被害の防止に関する施策を総合的かつ計画的に推進し、もって県民の財産等の保護に寄与することを目的とする。
(定義)
第二条 この条例において、「電話詐欺等」とは、詐欺(刑法(明治四十年法律第四十五号)第二百四十六条の罪をいう。)又は電子計算機使用詐欺(同法第二百四十六条の二の罪をいう。)に当たる行為のうち、面識のない不特定の者を電話その他の通信手段を用いて対面することなく欺き、指定した預貯金口座への振込みその他の方法により、財物を交付させ、又は財産上不法の利益を得、若しくは他人にこれを得させるもの又は面識のない不特定の者を電話その他の通信手段を用いて対面することなく欺いた上で、窃盗(刑法第二百三十五条の罪をいう。)、強盗(刑法第二百三十六条の罪をいう。)又は恐喝(刑法第二百四十九条の罪をいう。)に当たる行為をすることをいう。
(県の責務)
第三条 県は、電話詐欺等の被害の防止に関する施策を総合的かつ計画的に推進する責務を有する。
(県民の役割)
第四条 県民は、電話詐欺等による被害の防止に対する関心と理解を深めるとともに、電話詐欺等による被害を受けないよう、新たな手口により電話詐欺等による被害が相次いで発生している状況を十分に認識し、電話詐欺等による被害の防止に必要な注意を払うよう努めるものとする。
2 県民は、県及び市町村が実施する電話詐欺等による被害の防止に関する施策に協力するとともに、次条第三項の規定により事業者が講ずる電話詐欺等による被害の防止に関する措置に応ずるよう努めるものとする。
2 事業者は、その供給する商品又は役務が電話詐欺等の手段として利用され、又はそのおそれがあるときは、これらが電話詐欺等の手段に利用されないようにするための措置を講ずるよう努めるものとする。
3 事業者は、その営業の用に供する店舗等において、電話詐欺等による被害を受けるおそれがあり、又は受けたと認められる者を発見したときは、当該者の注意を喚起する等電話詐欺等による被害の防止に関する措置を講ずるよう努めるものとする。
(青少年の育成に携わる者の役割)
第六条 青少年の育成に携わる者は、青少年が電話詐欺等による被害から身近な高齢者等を保護する上で重要な役割を果たしていることに鑑み、電話詐欺等による被害の防止に関する青少年の知識及び理解を深めるための教育及び啓発を行うよう努めるものとする。
(市町村との連携等)
第七条 県は、電話詐欺等による被害の防止に関する施策の推進に当たっては、市町村と連携を図るとともに、市町村が行う電話詐欺等による被害の防止に関する施策の推進について、情報の提供、助言その他の必要な支援を行うものとする。
(普及啓発等)
第八条 県は、電話詐欺等による被害の防止についての県民及び事業者の関心と理解を深めるため、電話詐欺等による被害の防止に関する広報活動、学習の機会の充実等を通じて普及啓発を図るよう努めるものとする。
2 県は、電話詐欺等による被害により財産上の損害を受け、又は精神的苦痛を被った者が当該被害から早期に回復できるようにするため、必要な情報の提供、助言その他の必要な支援を行うよう努めるものとする。
(県民等の自主的な活動の促進)
第九条 県は、県民等が自主的に行う電話詐欺等による被害の防止に関する活動を促進するため、必要な措置を講ずるものとする。
(地域における被害防止のための取組)
第十条 県民は、近隣住民との間で相互に注意を喚起すること等自己又は近隣住民が電話詐欺等による被害を受けないようにするために必要な地域における取組を行うよう努めるものとする。
(家庭における被害防止のための取組)
第十一条 県民は、日常生活において家族相互で緊密に連絡を取り合うこと等その家族が電話詐欺等による被害を受けないようにするために必要な家庭における取組を行うよう努めるものとする。
(通報)
第十三条 県民は、次の各号のいずれかに該当するときは、警察官又は事業者への通報その他の適切な措置を講ずるよう努めるものとする。
一 自己又は家族、近隣住民その他の身近な者が電話詐欺等の疑いがある不審な電話、郵便物等を受けたとき。
二 電話詐欺等による被害を受けるおそれがあり、又は受けたと認められる者を発見したとき。
(建物の貸付けにおける留意)
第十四条 県民及び事業者は、県内において所有する建物の貸付けを行うに当たっては、当該建物が電話詐欺等に利用されることがないよう、十分に留意するものとする。
(個人情報データベース等の提供における留意)
第十五条 県民及び事業者は、個人情報データベース等(個人情報の保護に関する法律(平成十五年法律第五十七号)第十六条第一項に規定する個人情報データベース等をいう。)を第三者に提供するに当たっては、当該個人情報データベース等が電話詐欺等に利用されることがないよう、十分に留意するものとする。
(令四条例一・一部改正)
(県民運動の推進)
第十六条 県は、電話詐欺等被害撲滅推進月間を設ける等電話詐欺等による被害の防止に対する関心と理解を深めるための取組を推進するものとする。
2 県は、前項の取組を行うに当たっては、県民等、青少年の育成に携わる者及び市町村と一体となった電話詐欺等による被害の防止に関する県民運動として広く展開していくことを旨とするものとする。
(推進体制の整備等)
第十七条 県は、電話詐欺等による被害の防止に関する施策を推進するために必要な体制を整備するものとする。
2 県は、電話詐欺等による被害の防止に関する施策を推進するために必要な財政上の措置を講ずるよう努めるものとする。
(適用上の注意)
第十八条 この条例の適用に当たっては、国民の権利を不当に侵害しないように留意しなければならない。
附則
(施行期日)
1 この条例は、公布の日から施行する。
(見直し)
2 この条例は、この条例の施行後適当な時期において、この条例の施行の状況、電話詐欺等による被害を取り巻く状況の変化等を踏まえ、必要な見直しを行うものとする。
附則(令和四年条例第一号)
この条例は、デジタル社会の形成を図るための関係法律の整備に関する法律(令和三年法律第三十七号)第五十条の規定の施行の日(令和四年四月一日)から施行する。