○山梨県世界遺産富士山の保全に係る景観配慮の手続に関する条例
平成二十七年十二月二十五日
山梨県条例第四十六号
山梨県世界遺産富士山の保全に係る景観配慮の手続に関する条例をここに公布する。
山梨県世界遺産富士山の保全に係る景観配慮の手続に関する条例
目次
第一章 総則(第一条―第三条)
第二章 技術指針(第四条)
第三章 富士山景観配慮地区(第五条)
第四章 景観配慮の手続
第一節 景観評価の実施(第六条)
第二節 景観配慮書(第七条―第九条)
第三節 事業者見解書(第十条―第十五条)
第四節 景観配慮書等の公表(第十六条)
第五節 対象事業の実施等(第十七条―第十九条)
第五章 対象事業の内容の変更等の手続(第二十条―第二十五条)
第六章 手続の併合等(第二十六条)
第七章 対象事業以外の事業に係る景観配慮の手続(第二十七条)
第八章 雑則(第二十八条―第三十三条)
附則
第一章 総則
(目的)
第一条 この条例は、富士山の有する顕著な普遍的価値が富士山が所在する場所及びその周辺における景観の美しさと密接に関連するものであることから、富士山の保存と活用の調和を図るためには、これらの場所において土地の形質の変更、工作物の新設等の事業を実施しようとする者がその事業の実施に当たりあらかじめ景観評価を行うことが極めて重要であることに鑑み、これらの場所において実施される事業であって景観影響の程度が著しいものとなるおそれがあるものについて景観評価が適切かつ円滑に行われるための手続その他所要の事項を定め、その手続等によって行われた景観評価の結果をその事業に係る景観の保全のための措置その他のその事業の内容に関する決定に反映させるための措置をとること等により、その事業に係る景観の保全について適正な配慮がなされることを確保し、もって富士山の保全に資することを目的とする。
(適用範囲)
第二条 この条例は、その実施に係る区域の全部又は一部が富士山景観配慮地区内である対象事業に適用する。
(定義)
第三条 この条例において「富士山」とは、山梨県世界遺産富士山基本条例(平成二十七年山梨県条例第三号)第二条第一号に規定する富士山をいう。
2 この条例において「富士山の保全」とは、山梨県世界遺産富士山基本条例第二条第二号に規定する富士山の保全をいう。
3 この条例において「顕著な普遍的価値」とは、山梨県世界遺産富士山基本条例第二条第三号に規定する顕著な普遍的価値をいう。
4 この条例において「景観評価」とは、事業(特定の目的のために行われる一連の土地の形質の変更(これと併せて行うしゅんせつを含む。)並びに工作物の新設及び増改築をいう。以下同じ。)の実施が景観に及ぼす影響(以下「景観影響」という。)について調査、予測及び評価を行うとともに、これらを行う過程においてその事業に係る景観の保全のための措置を検討し、この措置が講じられた場合における景観影響を評価することをいう。
6 この条例において「事業者」とは、対象事業を実施しようとする者(委託に係る対象事業にあっては、その事業を委託しようとする者)をいい、対象事業に係る計画を作成しようとする者を含むものとする。
第二章 技術指針
第四条 知事は、景観評価を合理的に行うための手法の選定及び景観の保全のための措置に関する技術的な指針(以下「技術指針」という。)を定めるものとする。
2 知事は、技術指針について常に必要な科学的判断を加え、改定を行うものとする。
第三章 富士山景観配慮地区
第五条 知事は、別表第二に掲げる市町村の区域のうち、富士山の保全を図る上で事業に係る景観の保全について特に配慮する必要があると認められる区域を、富士山景観配慮地区として指定するものとする。
2 知事は、富士山景観配慮地区の指定をしようとするときは、あらかじめ、前項に規定する市町村の長の意見を聴くものとする。
3 知事は、富士山景観配慮地区の指定をしようとするときは、あらかじめ、規則で定めるところにより、その旨を公告し、その案を当該公告の日から二週間公衆の縦覧に供するものとする。
5 知事は、前項の規定により縦覧に供された案について異議がある旨の意見書の提出があったときは、規則で定めるところにより、当該意見書を提出した者の意見の聴取を行うものとする。
6 知事は、富士山景観配慮地区を指定する場合には、その旨及びその区域を告示するとともに、第一項に規定する市町村の長に通知するものとする。
7 富士山景観配慮地区の指定は、前項の規定による告示によってその効力を生ずる。
第四章 景観配慮の手続
第一節 景観評価の実施
第六条 事業者は、技術指針で定めるところにより、対象事業に係る景観評価を行わなければならない。
2 前項の規定による景観評価は、景観の保全のための措置が柔軟に講じられるようにするため、対象事業に係る計画の立案の段階その他の対象事業の実施に先立つできるだけ早い段階において行うものとする。
第二節 景観配慮書
(景観配慮書の作成及び送付)
第七条 事業者は、前条の規定により景観評価を行ったときは、規則で定めるところにより、当該景観評価の結果に係る次に掲げる事項を記載した景観配慮書を作成しなければならない。
一 事業者の氏名及び住所(法人にあってはその名称、代表者の氏名及び主たる事務所の所在地)
二 対象事業の名称
三 対象事業の目的及び内容
四 対象事業の実施に係る区域及びその周囲の概況
五 調査、予測及び評価の手法
六 景観評価の結果のうち、次に掲げるもの
イ 調査の結果の概要並びに予測及び評価の結果
ロ 景観の保全のための措置
七 景観評価の全部又は一部を他の者に委託して行った場合には、その者の氏名及び住所(法人にあってはその名称、代表者の氏名及び主たる事務所の所在地)
2 事業者は、景観配慮書を作成したときは、速やかに、規則で定めるところにより、知事にこれを送付しなければならない。
4 知事は、第一項の規定により意見を述べたときは、当該意見書の写しを関係市町村長等に送付するものとする。
(説明の機会の付与等)
第九条 知事は、事業者が前条第一項に規定する意見書を受領した後三十日以内に請求したときは、当該事業者に対し、景観配慮書の記載事項について説明する機会を与えるものとする。
2 前項の規定による説明は、書面により行うものとする。
4 知事は、前項に規定する場合には、説明書の写しを関係市町村長等に送付するものとする。この場合において、知事は必要に応じ、関係市町村長に対し、期間を指定し、説明書について景観の保全の見地からの意見を求めることができる。
第三節 事業者見解書
一 第七条第一項第三号に掲げる事項の修正(事業規模の縮小を除く。第十三条第一項第一号において同じ。) 規則で定める事項を知事に届け出ること。
三 前二号に掲げるもの以外のもの 技術指針で定めるところにより当該修正に係る部分について対象事業に係る景観評価を行うこと。
2 知事は、前項第一号の規定による届出があったときは、当該届出に係る修正が軽微な修正その他の規則で定める修正(以下「軽微な修正等」という。)に該当するかどうかの判定を行い、その結果を事業者及び関係市町村長等に通知するものとする。
二 第一項第一号の規定による届出に係る修正が軽微な修正等に該当する旨の通知 当該届出の内容を事業者見解書に記載すること。
一 第七条第一項各号に掲げる事項
二 第八条第一項の知事の意見
三 事業者が第九条第一項に規定する説明をした場合には、その内容
四 第九条第三項の知事の意見がある場合には、その意見
2 事業者は、事業者見解書を作成したときは、規則で定めるところにより、知事にこれを送付しなければならない。
3 前項の規定による送付は、次に掲げる日のうちいずれか早い日の六十日前までに行うものとする。
一 対象事業に係る行為が文化財保護法(昭和二十五年法律第二百十四号)第百二十五条第一項の規定による許可を要するものである場合には、当該許可の申請をしようとする日
二 対象事業に係る行為が森林法(昭和二十六年法律第二百四十九号)第十条の二第一項の規定による許可を要するものである場合には、当該許可の申請をしようとする日
三 対象事業に係る行為が自然公園法(昭和三十二年法律第百六十一号)第十条第二項の規定による協議の申出、同条第三項の規定による認可の申請、同条第六項の規定による協議の申出若しくは認可の申請、同法第二十条第三項若しくは第二十一条第三項の規定による許可の申請又は同法第三十三条第一項の届出を要するものである場合には、これらの規定による手続のいずれかをしようとする日
六 対象事業に係る行為が景観法(平成十六年法律第百十号)第十六条第一項の規定による届出を要するものである場合には、当該届出をしようとする日
七 前各号に掲げる日のほか、法令の規定による手続で規則で定めるものをしようとする日
(事業者見解書についての知事の意見等)
第十二条 知事は、前条第二項の規定による送付を受けたときは、当該送付を受けた日から起算して六十日を超えない範囲内において規則で定める期間内に、事業者に対し、事業者見解書について景観の保全の見地からの意見を書面により述べるものとする。
2 知事は、前項に規定する場合には、事業者見解書の写しを関係市町村長等に送付するものとする。この場合において、知事は、必要に応じ、関係市町村長に対し、期間を指定し、事業者見解書について景観の保全の見地からの意見を求めることができる。
一 第七条第一項第三号に掲げる事項の修正 規則で定める事項を知事に届け出ること。
三 前二号に掲げるもの以外のもの 技術指針で定めるところにより当該修正に係る部分について対象事業に係る景観評価を行うこと。
2 知事は、前項第一号の規定による届出があったときは、当該届出に係る修正が軽微な修正等に該当するかどうかの判定を行い、その結果を事業者及び関係市町村長等に通知するものとする。
二 第一項第一号の規定による届出に係る修正が軽微な修正等に該当する旨の通知 事業者見解書について所要の補正をすること。
4 事業者は、第一項第三号の規定による景観評価を行った場合には、当該景観評価及び事業者見解書に係る景観評価の結果に基づき、規則で定めるところにより、事業者見解書の補正をしなければならない。
6 知事は、前項の規定による送付又は通知を受けたときは、その写しを関係市町村長等に送付するものとする。
(事業者見解書の内容についての措置要請)
第十四条 知事は、前条第五項の規定による送付又は通知を受けた場合において、当該送付又は当該通知に係る対象事業の実施により景観影響の程度が著しいものとなり、富士山の保全に著しい支障を及ぼすおそれがあると認めるときは、事業者に対し、必要な措置をとるよう求めることができる。
2 知事は、前項の措置をとるよう求めたときは、その旨を関係市町村長等に通知するものとする。
2 知事は、前項に規定する場合において、対象事業に係る許可等を行い、又は特定届出を受理する権限を有する者が知事以外の者であるときは、当該許可等を行い、又は当該特定届出を受理する権限を有する者に対し、当該許可等又は当該特定届出に係る事項の審査に際し、当該対象事業に係る事業者見解書の内容について配慮するよう要請するものとする。
第四節 景観配慮書等の公表
2 知事は、前項の規定により公表するに当たっては、個人及び法人の権利利益を不当に侵害することのないよう配慮するものとする。
第五節 対象事業の実施等
3 知事は、前項の規定による届出があったときは、その旨を関係市町村長等に通知するものとする。
(事業者の景観の保全の配慮)
第十八条 事業者は、事業者見解書に記載されているところにより、景観の保全についての適正な配慮をして当該対象事業に係る工事を行わなければならない。
(対象事業の完了の届出等)
第十九条 事業者は、対象事業に係る工事を完了したときは、規則で定めるところにより、完了の日の翌日から起算して二週間を経過する日までに、その旨を知事に届け出なければならない。
第五章 対象事業の内容の変更等の手続
一 富士山景観配慮地区内において対象事業を実施しないこととしたとき。
二 第七条第一項第三号に掲げる事項を修正し、又は変更した場合において当該修正後の事業又は当該変更後の事業が対象事業に該当しないこととなったとき。
三 対象事業の実施を他の者に引き継いだとき。
2 前項の規定にかかわらず、同項に規定する事業のうち、環境影響評価法第三十条第一項第二号に規定する事由が生じた事業(山梨県環境影響評価条例第五十二条に規定する場合に該当するものを除く。)及び同条例第三十条第一項第二号に規定する事由が生じた事業については、これらの事業が対象事業に該当する場合に限り、それぞれ当該事由が生じた日以後においては、第二十一条第二項から第四項まで及び第五項並びに前二条の規定を適用する。
第六章 手続の併合等
第二十六条 相互に関連する二以上の対象事業を実施しようとする場合は、当該事業に係る事業者は、これらの事業について、併せてこの条例の規定による景観評価その他の手続を行うことができる。
2 二以上の者がこの条例の規定による景観評価その他の手続を行う場合において、これらの者のうちから代表者を定めたときは、当該代表者は、これらの手続を代表して行うことができる。
第七章 対象事業以外の事業に係る景観配慮の手続
第二十七条 対象事業以外の事業(その実施に係る区域の全部又は一部が富士山景観配慮地区内であるものに限る。)であって、その位置及び規模並びに当該区域の周囲の土地利用の状況その他の事情からみて景観影響の程度が著しいものとなるおそれがあるものについては、この条例に規定する景観評価その他の手続を行うことができる。この場合において、当該事業を行おうとする者は、あらかじめ、知事に協議し、その同意を得なければならない。
第八章 雑則
(学識経験者の意見)
第二十八条 知事は、次の各号のいずれかに該当する場合には、世界遺産(世界の文化遺産及び自然遺産の保護に関する条約第十一条2の世界遺産一覧表に記載された文化遺産をいう。)又は景観に関する学識経験を有する者の意見を聴くことができる。
一 技術指針を定め、又は改定しようとするとき。
2 前項に規定する学識経験を有する者について必要な事項は、規則で定める。
(報告及び検査)
第二十九条 知事は、この条例の施行に必要な限度において、富士山景観配慮地区内において事業を実施し、若しくは実施しようとする者その他の関係者から報告若しくは資料の提出を求め、又はその指定する職員に、これらの者の事務所若しくは事業所若しくは当該事業に係る土地若しくは工作物に立ち入り、帳簿書類その他の物件を検査させ、関係者に質問させ、若しくは景観の保全のための措置の実施の状況を調査させることができる。
2 前項の規定により立入検査をする職員は、その身分を示す証明書を携帯し、関係者に提示しなければならない。
3 第一項の規定による立入検査の権限は、犯罪捜査のために認められたものと解釈してはならない。
(関係市町村長等との協力)
第三十条 知事は、この条例の目的を達成するため必要があると認めるときは、関係市町村長等に対し、必要な資料又は情報の提供、意見の開陳その他必要な協力を求めることができる。
一 事業者がこの条例の規定に違反して景観評価その他の手続の全部若しくは一部を行わないとき、又は虚偽の内容によりこれらの手続を行ったとき 当該事業者
五 事業者が事業者見解書に記載された事項と異なる内容で工事を実施したとき 当該事業者
2 知事は、前項の規定による勧告を受けた者が正当な理由がなくて当該勧告に従わないときは、その旨及びその勧告の内容を公表することができる。
3 知事は、前項の規定による公表をしようとするときは、あらかじめ、当該勧告を受けた者に対し、意見を述べる機会を与えなければならない。
(適用除外)
第三十二条 この条例の規定は、次に掲げる事業については、適用しない。
一 災害対策基本法(昭和三十六年法律第二百二十三号)第八十七条の規定による災害復旧の事業又は同法第八十八条第二項に規定する事業
二 建築基準法(昭和二十五年法律第二百一号)第八十四条の規定が適用される場合における同条第一項の都市計画に定められる事業又は同項に規定する事業
三 被災市街地復興特別措置法(平成七年法律第十四号)第五条第一項の被災市街地復興推進地域において行われる同項第三号に規定する事業
四 その他災害の防止のために緊急に実施する必要があると知事が認める事業
五 環境影響評価法第二条第二項の第一種事業又は同条第三項の第二種事業(同法第三条の十第一項後段の規定による通知がされたものに限る。)
六 前各号に掲げるもののほか、規則で定める行為に係る事業
附則
(平成二八年規則第五号で平成二八年六月二四日から施行)
(平成二八年規則第五号で平成二八年三月二四日から施行)
二 施行日前に補助金等に係る予算の執行の適正化に関する法律(昭和三十年法律第百七十九号)第二条第一項第一号の補助金又は同項第二号の負担金の交付の決定を受けた事業
三 施行日前に都市計画法(昭和四十三年法律第百号)第十七条第一項の規定による公告が行われた同法の都市計画に定められた事業
四 施行日から起算して六月を経過する日までに環境影響評価法第四条第一項の規定による届出が行われる事業
五 施行日から起算して六月を経過する日までに山梨県環境影響評価条例第六条第一項の規定による届出又は同条例第七条第三項の規定による送付が行われる事業
六 施行日から起算して六月を経過する日までに工事に着手される事業
七 前各号に掲げるもののほか、規則で定める事業
別表第一(第三条関係)
一 建築物その他の規則で定める工作物の新築及び増築の事業
二 道路の新設及び改築の事業
三 ダム、堰及び放水路の新築及び改築の事業
四 鉄道及び軌道の建設及び改良の事業
五 飛行場及びその施設の設置又は変更の事業
六 廃棄物処理施設の設置並びにその構造及び規模の変更の事業
七 公有水面その他の水面の埋立て及び干拓の事業
八 土地区画整理事業
九 住宅団地の造成事業
十 都市基盤の整備事業
十一 流通業務団地の造成事業
十二 土石又は砂利の採取事業
十三 墓地又は墓園の造成事業
十四 学校用地の造成事業
十五 レクリエーション施設用地の造成事業
十六 前各号に掲げるもののほか、これらに準ずるものとして規則で定める事業
別表第二(第五条関係)
一 富士吉田市
二 南巨摩郡身延町
三 南都留郡西桂町
四 南都留郡忍野村
五 南都留郡山中湖村
六 南都留郡鳴沢村
七 南都留郡富士河口湖町