○山梨県がん対策推進条例

平成二十四年二月二十二日

山梨県条例第二号

山梨県がん対策推進条例をここに公布する。

山梨県がん対策推進条例

がんは、依然として県民の疾病による死亡の最大の原因であり、県民の生命及び健康にとって重大な課題となっている。

本県では、長きにわたる肝炎・肝がん対策への取組、また全国に先駆けた子宮頸がん予防ワクチン接種への助成制度の創設など様々な施策を講じてきたところであり、今後更に、県を挙げて温かみのある適切ながん対策を推進することにより、県民が生涯にわたって健やかに安心して暮らせる山梨を築くことを決意し、この条例を制定する。

(目的)

第一条 この条例は、がん対策の一層の充実を図るため、がん対策に関し、県、保健医療従事者、県民及び事業者の責務を明らかにし、並びにがん対策の推進に関する計画の策定について定めるとともに、がん対策の基本となる事項を定めることにより、がん対策を総合的かつ計画的に推進することを目的とする。

(定義)

第二条 この条例において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。

 がん医療 科学的知見に基づく適切ながんに係る医療をいう。

 保健医療従事者 医師その他の保健医療に従事する者をいう。

 がん対策関係者 保健医療従事者、がん対策に関する啓発活動に取り組む団体その他のがん対策に主体的に取り組むもの(国、県及び市町村を除く。)をいう。

(県の責務)

第三条 県は、がん対策に関し、本県の特性に応じた施策を策定し、及び実施する責務を有する。

2 県は、前項の施策を実施するに当たっては、その効果的な実施を図るため国、市町村及びがん対策関係者と連携を図るものとする。

(保健医療従事者の責務)

第四条 保健医療従事者は、がんの予防若しくは早期発見又はがん医療に関する技能の向上に努めるものとする。

2 保健医療従事者は、県及び市町村が実施するがん対策に関する施策に協力するよう努めるものとする。

(県民の責務)

第五条 県民は、喫煙、食生活、運動その他の生活習慣が健康に及ぼす影響、がんの原因となる恐れのある感染症等がんに関する正しい知識を持ち、がんの予防に必要な注意を払うとともに、がん検診を積極的に受けるよう努めるほか、がん患者に関する理解を深めるよう努めるものとする。

(平二九条例三五・一部改正)

(事業者の責務)

第六条 事業者は、次に掲げる環境の整備に努めるものとする。

 従業員ががんを予防し、又は早期に発見することができる環境

 従業員ががん患者となった場合に、当該従業員の雇用の継続等への配慮がされ、及び当該従業員が安心してがんの治療を受け、又は療養することができる環境

 従業員の家族ががん患者となった場合に、当該従業員が安心して当該家族を看護することができる環境

2 事業者は、県及び市町村が実施するがん対策に関する施策に協力するよう努めるものとする。

(平二九条例三五・一部改正)

(がん対策推進計画)

第七条 知事は、がん対策に関する施策の総合的かつ計画的な推進を図るため、本県におけるがん患者に対するがん医療の提供の状況等を踏まえ、がん対策の推進に関する計画(以下この条において「がん対策推進計画」という。)を策定するものとする。

2 知事は、がん対策推進計画を策定するに当たっては、市町村及び県民の意見が反映されるよう必要な措置を講ずるものとする。

3 知事は、がん対策推進計画を策定したときは、遅滞なく、これを公表するものとする。

4 知事は、本県におけるがん医療に関する状況の変化を勘案し、及び本県におけるがん対策の効果に関する評価を踏まえ、少なくとも六年ごとに、がん対策推進計画に検討を加え、必要があると認めるときには、これを変更するものとする。

5 第二項及び第三項の規定は、がん対策推進計画の変更について準用する。

(平二九条例三五・一部改正)

(がんの予防の推進)

第八条 県は、がんの予防に資するため、市町村、がん対策関係者及び事業者との連携を図りつつ、次に掲げる施策その他の必要な施策を講ずるものとする。

 喫煙、食生活、運動その他の生活習慣が健康に及ぼす影響、がんの原因となるおそれのある感染症並びに性別、年齢等に係る特定のがん及びその予防等がんに関する正しい知識の普及啓発を行うこと。

 学校、病院その他の多数の者が利用する施設における望まない受動喫煙(健康増進法(平成十四年法律第百三号)第二十八条第三号に規定する受動喫煙をいう。)の防止を図るための対策を推進すること。

(平二九条例三五・令二条例一九・一部改正)

(がんの早期発見の推進)

第九条 県は、がんの早期発見に資するため、市町村、がん対策関係者及び事業者との連携を図りつつ、次に掲げる施策その他の必要な施策を講ずるものとする。

 がん検診の受診率の向上を図るため、がん検診に関する普及啓発を行うこと。

 がん検診に携わる保健医療従事者の資質の向上を図るため、研修の機会を確保すること。

 がん検診の事業評価について、市町村及びがん検診に関する機関に対し、技術的な助言を行うこと。

 がん検診によってがんに罹患している疑いがあり、又は罹患していると判定された者が必要かつ適切な診療を受けることを促進するため、必要な環境の整備を行うこと。

 前四号に規定する施策を効果的に実施するため、がん検診の実態の把握のために必要な措置を講ずるよう努めること。

(平二九条例三五・一部改正)

(がん教育の推進)

第十条 県は、学校その他の教育機関及びがん対策関係者との連携を図りつつ、がんの予防及び早期発見の重要性等に関する児童及び生徒の理解と関心を深めるため、がんに関する学習活動を推進するものとする。

(がん医療の充実)

第十一条 県は、がん患者がそのがんの状態に応じた適切な医療を受けることができるようにするため、次に掲げる施策その他の必要な施策を講ずるものとする。

 がん診療連携拠点病院(国が定める指針に基づき、専門的ながん医療の提供を行う医療機関として厚生労働大臣が指定したものをいう。次号において同じ。)の機能を強化すること。

 がん診療連携拠点病院と他の医療機関との連携協力体制を整備すること。

 放射線治療及び化学療法を受けることができる環境の整備を推進すること。

 手術、放射線治療、化学療法その他のがん医療に携わる専門的な知識及び技能を有する医療従事者を育成し、及び確保すること。

 がんの治療の効果を高めるため、がん医療と歯科医療との連携を支援すること。

 がん患者の状況に応じた良質なリハビリテーションの提供を確保すること。

(平二九条例三五・一部改正)

(緩和ケアの推進)

第十二条 県は、緩和ケア(がんその他の特定の疾病に罹患した者に係る身体的若しくは精神的な苦痛又は社会生活上の不安を緩和することによりその療養生活の質の維持向上を図ることを主たる目的とする治療、看護その他の行為をいう。以下この条及び次条において同じ。)の推進を図るため、次に掲げる施策その他の必要な施策を講ずるものとする。

 がん患者の状況に応じて治療の初期の段階から緩和ケアを受けることができる環境を整備すること。

 緩和ケアに携わる専門的な知識及び技能を有する医療従事者を育成し、及び確保すること。

(平二九条例三五・一部改正)

(在宅医療の推進)

第十三条 県は、がん患者が居宅等において適切ながん医療及び緩和ケアを受けることができるようにするため、次に掲げる施策その他の必要な施策を講ずるものとする。

 居宅等でのがん医療及び緩和ケアに携わる医療従事者と介護従事者との連携協力体制の整備を支援すること。

 居宅等でのがん医療及び緩和ケアに携わる医療従事者並びに緩和ケアに関する知識を有する介護従事者を育成し、及び確保すること。

(がん患者等の支援)

第十四条 県は、がん患者及びその家族(以下この条及び第二十三条において「がん患者等」という。)の療養生活の質の維持向上及び社会生活上の不安等の軽減に資するため、医療機関との連携を図りつつ、次に掲げる施策その他の必要な施策を講ずるものとする。

 がん患者がセカンドオピニオン(治療法の選択等に関する担当医師以外の医師による助言をいう。)を取得しやすい環境の整備その他のがん患者等に対する相談支援の体制の充実を図ること。

 がん患者等が組織する民間団体その他の関係団体が行うがん患者等の療養生活の質の維持向上及び社会生活上の不安等の軽減に資する活動を支援すること。

(平二九条例三五・一部改正)

(女性に特有のがん対策の推進)

第十五条 県は、女性に特有のがん対策の推進に資するため、市町村、がん対策関係者及び事業者との連携を図りつつ、がんに罹患しやすい年齢に応じてがんの予防及び早期発見を行うことの重要性その他のがんに関する正しい知識についての普及啓発その他の必要な施策を講ずるものとする。

(平二九条例三五・一部改正)

(肝炎・肝がん対策の推進)

第十六条 県は、肝炎・肝がん対策の推進に資するため、市町村、がん対策関係者及び事業者との連携を図りつつ、次に掲げる施策その他の必要な施策を講ずるものとする。

 肝炎・肝がん医療に携わる専門的な知識及び技能を有する医療従事者を育成し、及び確保すること。

 肝炎ウイルス検診を促進すること。

 肝炎ウイルス感染者及び肝炎ウイルス治療の終了者への支援の充実を図ること。

(平二九条例三五・一部改正)

(がん登録の推進等)

第十七条 県は、適切ながん対策の企画及び立案並びにがん医療の向上に資するため、がん登録等の推進に関する法律(平成二十五年法律第百十一号)第二条第二項に規定するがん登録(その他のがんの罹患、診療、転帰等の状況の把握、分析等のための取組を含む。以下この条において同じ。)、当該がん登録により得られた情報の活用等を推進するものとする。

2 県は、がん登録を推進するに当たっては、がん患者の個人情報の適切な管理のために必要な措置を講ずるものとする。

(平二九条例三五・一部改正)

(がん研究の推進)

第十八条 県は、がんの罹患率及びがんによる死亡率の低下に資する事項並びにがんの治療に伴う副作用、合併症及び後遺症の予防及び軽減に関する方法の開発その他のがん患者の療養生活の質の維持向上に資する事項についての研究が促進され、並びにその成果が活用されるよう必要な施策を推進するものとする。

(平二九条例三五・一部改正)

(情報の提供)

第十九条 県は、県民に対し、がんに関する正確かつ適切な情報を提供するものとする。

2 県は、市町村及びがん対策関係者によるがんに関する情報提供の充実を図るものとする。

(がん患者の雇用の継続等)

第二十条 県は、がん患者の雇用の継続又は円滑な就職に資するよう、事業者に対するがん患者の就労に関する啓発及び知識の普及その他の必要な施策を講ずるものとする。

(平二九条例三五・追加)

(がん患者における学習と治療との両立)

第二十一条 県は、小児がんの患者その他のがん患者が必要な教育と適切な治療とのいずれをも継続的かつ円滑に受けることができるよう、必要な環境の整備その他の必要な施策を講ずるものとする。

(平二九条例三五・追加)

(民間団体の活動に対する支援)

第二十二条 県は、民間の団体が行うがん患者の支援に関する活動、がん患者の団体が行う情報交換等の活動等を支援するため、情報提供その他の必要な施策を講ずるものとする。

(平二九条例三五・追加)

(県民運動の推進)

第二十三条 県は、市町村、がん対策関係者、がん患者等、学校その他の教育機関及び事業者との連携を図りつつ、がんの予防及び早期発見その他のがん対策に関する県民の理解と関心を深めるための取組を推進するものとする。

(平二九条例三五・旧第二十条繰下)

(財政上の措置)

第二十四条 県は、がん対策を推進するために必要な財政上の措置を講ずるよう努めるものとする。

(平二九条例三五・旧第二十一条繰下)

この条例は、平成二十四年四月一日から施行する。

(平成二九年条例第三五号)

この条例は、公布の日から施行する。

(令和二年条例第一九号)

この条例は、令和二年四月一日から施行する。

山梨県がん対策推進条例

平成24年2月22日 条例第2号

(令和2年4月1日施行)