○山梨県環境基本条例
平成十六年三月三十日
山梨県条例第二号
山梨県環境基本条例をここに公布する。
山梨県環境基本条例
目次
前文
第一章 総則(第一条―第六条)
第二章 環境の保全及び創造に関する基本的施策
第一節 施策の策定等に係る指針(第七条)
第二節 環境基本計画等(第八条・第九条)
第三節 環境の保全及び創造を推進するための施策(第十条―第二十条)
第四節 環境の保全及び創造に関する重点施策(第二十一条―第二十四条)
第五節 地球環境保全に関する施策(第二十五条)
第六節 推進体制の整備等(第二十六条―第三十条)
附則
私たちは、富士山、八ヶ岳、南アルプスなどの山々、緑あふれる森林、清らかな水など豊かな自然環境に支えられて良好で快適な生活を営んできた。
しかしながら、県民生活や事業活動から生ずる環境への負荷が増大することにより、将来にわたって良好な環境を維持することが、この山梨においても、次第に難しくなってきており、さらに、地球温暖化、オゾン層の破壊など人類の存続基盤である地球環境にも影響を及ぼしてきている。
もとより、私たちは、良好で快適な環境の下に健康で文化的な生活を営む権利を有するとともに、健全で恵み豊かな環境を将来の世代に引き継いでいく責務を有している。
私たちは、これまで、山梨県環境首都憲章を規範とし、豊かな自然の維持を図り、健康で文化的な生活の確保に努めてきた。今後、その理念や取組を一層推進するとともに、循環型社会を構築することにより、人と自然とが共生することができる山梨を実現するため、一人ひとりがこれまでの日常生活や事業活動を自ら問い直し、環境の保全と創造に取り組んでいかなければならない。
このような認識の下に、私たち山梨県民は、ここに、人と自然とが共生することができるふるさと山梨を実現することを決意し、この条例を制定する。
第一章 総則
(目的)
第一条 この条例は、環境の保全及び創造について、基本理念を定め、並びに県民、事業者及び県の責務を明らかにするとともに、環境の保全及び創造に関する施策の基本となる事項を定めることにより、環境の保全及び創造に関する施策を総合的かつ計画的に推進し、もって現在及び将来の県民の健康で文化的な生活の確保に寄与することを目的とする。
一 環境への負荷 人の活動により環境に加えられる影響であって、環境の保全上の支障の原因となるおそれのあるものをいう。
二 地球環境保全 人の活動による地球全体の温暖化又はオゾン層の破壊の進行、野生生物の種の減少その他の地球の全体又はその広範な部分の環境に影響を及ぼす事態に係る環境の保全であって、人類の福祉に貢献するとともに県民の健康で文化的な生活の確保に寄与するものをいう。
(基本理念)
第三条 環境の保全及び創造は、県民が健全で恵み豊かな環境の恵沢を享受するとともに、その環境を将来の世代へ継承していくよう適切に行われなければならない。
2 環境の保全及び創造は、社会経済活動その他の活動による環境への負荷をできる限り低減することその他の環境の保全及び創造に関する行動がすべての者の公平な役割分担の下に自主的かつ積極的に行われることによって、健全で恵み豊かな環境を維持しつつ、環境への負荷の少ない健全な経済の発展を図りながら持続的に発展することができる社会が構築されることを旨とし、科学的知見の充実の下に環境の保全上の支障が未然に防がれることを旨とし、並びに地域の特性に応じた環境の保全及び創造に関する行動により人と自然とが共生する潤いのある環境が確保されることを旨として、行われなければならない。
3 地球環境保全は、すべての日常生活及び事業活動において積極的に推進されなければならない。
(県民の責務)
第四条 県民は、前条に定める基本理念(以下「基本理念」という。)にのっとり、環境の保全上の支障を防止するため、その日常生活に伴う環境への負荷の低減に努めなければならない。
2 前項に定めるもののほか、県民は、基本理念にのっとり、環境の保全及び創造に自ら努めるとともに、県が実施する環境の保全及び創造に関する施策に協力する責務を有する。
(事業者の責務)
第五条 事業者は、基本理念にのっとり、その事業活動を行うに当たっては、これに伴って生ずるばい煙、汚水、廃棄物等の処理その他の公害を防止し、又は自然環境を適正に保全するために必要な措置を講ずる責務を有する。
2 事業者は、基本理念にのっとり、物の製造、加工又は販売その他の事業活動を行うに当たって、その事業活動に係る製品その他の物が廃棄物となった場合にその適正な処理が図られることとなるように必要な措置を講ずる責務を有する。
3 前二項に定めるもののほか、事業者は、基本理念にのっとり、物の製造、加工又は販売その他の事業活動を行うに当たって、その事業活動に係る製品その他の物が使用され又は廃棄されることによる環境への負荷の低減に資するように努めるとともに、その事業活動において、再生資源その他の環境への負荷の低減に資する原材料、役務等を利用するように努めなければならない。
4 前三項に定めるもののほか、事業者は、基本理念にのっとり、その事業活動に関し、環境の保全及び創造に自ら努めるとともに、県が実施する環境の保全及び創造に関する施策に協力する責務を有する。
(県の責務)
第六条 県は、基本理念にのっとり、環境の保全及び創造に関する基本的かつ総合的な施策を策定し、及び計画的に実施する責務を有する。
2 県は、県民、事業者及び市町村と連携し前項の施策を実施するものとする。
第二章 環境の保全及び創造に関する基本的施策
第一節 施策の策定等に係る指針
第七条 この章に定める環境の保全及び創造に関する施策の策定及び実施は、基本理念にのっとり、次に掲げる事項の確保を旨として、各種の施策相互の有機的な連携を図りつつ総合的かつ計画的に行わなければならない。
一 人の健康が保護され、及び生活環境が保全され、並びに自然環境が適正に保全されるよう、大気、水、土壌その他の環境の自然的構成要素が良好な状態に保持されること。
二 生態系の多様性の確保、野生生物の種の保存その他の生物の多様性の確保が図られるとともに、森林、水辺地、農地等における多様な自然環境が地域の自然的社会的条件に応じて体系的に保全されること。
三 人と自然との豊かな触れ合いが保たれる等快適な生活環境が創造されること。
第二節 環境基本計画等
(環境基本計画)
第八条 知事は、環境の保全及び創造に関する施策の総合的かつ計画的な推進を図るため、環境の保全及び創造に関する基本的な計画(以下「環境基本計画」という。)を定めなければならない。
2 環境基本計画は、次に掲げる事項について定めるものとする。
一 環境の保全及び創造に関する総合的かつ長期的な施策の大綱
二 前号に掲げるもののほか、環境の保全及び創造に関する施策を総合的かつ計画的に推進するために必要な事項
3 知事は、環境基本計画を定めるに当たっては、山梨県環境保全審議会の意見を聴かなければならない。
4 知事は、環境基本計画を定めたときは、遅滞なく、これを公表しなければならない。
5 前二項の規定は、環境基本計画の変更について準用する。
(環境の状況等の公表)
第九条 知事は、毎年、環境の状況並びに環境の保全及び創造に関し講じた施策及び講じようとする施策を取りまとめ、これらを公表しなければならない。
第三節 環境の保全及び創造を推進するための施策
(資源の循環的な利用の促進等)
第十条 県は、廃棄物及び一度使用され、若しくは使用されずに収集され、若しくは廃棄された物品(現に使用されているものを除く。)又は製品の製造その他の人の活動に伴い副次的に得られた物品(以下この条において「廃棄物等」という。)の発生が抑制され、廃棄物等のうち資源となるものの再使用、再生利用等の循環的な利用が適正に行われることが促進され、並びに廃棄物等のうち資源とならないものの適正な処分が確保されるように、必要な措置を講ずるものとする。
(自主的な環境管理の促進等)
第十一条 県は、自ら環境管理(事業活動の実施に当たって、環境の保全及び創造に関する方針及び目標を定め、その方針及び目標を達成するための計画を策定して実施し、並びにその実施状況を点検して必要な是正の措置を講ずる一連の取組をいう。以下この条において同じ。)を実施するとともに、事業者及び市町村が自主的に行う環境管理の実施の促進に努めるものとする。
(環境の保全及び創造に関する教育、学習等)
第十二条 県は、環境の保全及び創造に関する教育及び学習の振興並びに環境の保全及び創造に関する広報活動の充実により県民及び事業者が環境の保全及び創造についての理解を深めるとともにこれらの者の環境の保全及び創造に関する活動を行う意欲が増進されるようにするため、必要な措置を講ずるものとする。
(県民等の自発的な活動の促進)
第十三条 県は、県民、事業者及びこれらの者が組織する民間の団体(以下「県民等」という。)が自発的に行う緑化活動、再生資源に係る回収活動その他の環境の保全及び創造に関する活動を促進するため、必要な措置を講ずるものとする。
(規制の措置)
第十四条 県は、環境の保全上の支障を防止するため、次に掲げる規制の措置を講じなければならない。
一 事業活動その他の人の活動に伴って生ずる大気の汚染、水質の汚濁、騒音等公害の原因となる行為に関し、公害を防止するために必要な規制の措置
二 自然環境を保全することが特に必要な区域における自然環境の適正な保全に支障を及ぼすおそれのある行為に関し、その支障を防止するために必要な規制の措置
2 前項に定めるもののほか、県は、環境の保全上の支障を防止するため、必要な規制の措置を講ずるように努めるものとする。
(環境影響評価の推進)
第十五条 県は、土地の形状の変更、工作物の新設その他これらに類する事業を行う事業者が、その事業の実施に当たりあらかじめその事業に係る環境への影響について自ら適正に調査、予測又は評価を行い、その結果に基づき、その事業に係る環境の保全について適正に配慮することを推進するため、必要な措置を講ずるものとする。
(環境の保全上の支障を防止するための経済的措置)
第十六条 県は、環境への負荷を生じさせる活動又は生じさせる原因となる活動(以下この条において「負荷活動」という。)を行う者がその負荷活動に係る環境への負荷の低減のための施設の整備その他の適切な措置をとることを助長することにより環境の保全上の支障を防止するため、その負荷活動を行う者にその者の経済的な状況を勘案しつつ必要な経済的措置を講ずるように努めるものとする。
(環境の保全に資する施設の整備等の推進)
第十七条 県は、生活排水の処理施設その他の環境の保全上の支障の防止に資する公共的施設の整備その他の事業を推進するため、必要な措置を講ずるものとする。
2 県は、公園、緑地その他の公共的施設の整備その他の自然環境の適正な整備及び健全な利用のための事業を推進するため、必要な措置を講ずるものとする。
3 県は、前二項に定める公共的施設の適切な利用を促進するための措置その他のこれらの施設に係る環境の保全上の効果が増進されるために必要な措置を講ずるものとする。
(調査及び研究の実施)
第十九条 県は、環境の状況の把握、環境の変化の予測又は環境の変化による影響の予測に関する調査その他の環境の保全及び創造に関する施策の策定に必要な調査及び研究を実施するものとする。
(監視等の体制の整備)
第二十条 県は、環境の状況を把握し、並びに環境の保全及び創造に関する施策を適正に実施するために必要な監視、巡視、観測、測定、試験及び検査の体制の整備に努めるものとする。
第四節 環境の保全及び創造に関する重点施策
(富士山及びその周辺地域の環境の保全に関する施策)
第二十一条 県は、富士山及びその周辺地域(富士箱根伊豆国立公園の区域のうち県内の区域をいう。)の多様な自然及び優れた景観を良好な状態に保全するため、必要な措置を講ずるものとする。
(森林の保全等)
第二十二条 県は、森林の保全及び整備並びに緑化の推進を図ることにより森林等の有する地球温暖化の防止、水源のかん養、人と自然との豊かな触れ合いの機会の提供等の機能を発揮させるため、必要な措置を講ずるものとする。
(水環境の保全等)
第二十三条 県は、水環境(河川、湖沼等及びこれらの周辺において水、水生生物等が一体的かつ有機的に構成された環境をいう。以下この条において同じ。)を良好な状態に保全するため、及び水環境における人と自然との豊かな触れ合いの機会を提供する機能を発揮させるため、必要な措置を講ずるものとする。
(環境の保全に資する農業の促進)
第二十四条 県は、農業の有する水源のかん養、自然環境の保全等の機能を発揮させ、及び肥料の適正な使用等により環境への負荷の低減を図るため、環境の保全に資する農業の促進に関し必要な措置を講ずるものとする。
第五節 地球環境保全に関する施策
第二十五条 県は、地球環境保全を図るため、二酸化炭素の排出抑制、フロンの回収等必要な施策を推進するものとする。
第六節 推進体制の整備等
(推進体制の整備)
第二十六条 県は、環境の保全及び創造に関する施策を推進するため、必要な体制の整備に努めるものとする。
(国及び他の地方公共団体との協力)
第二十七条 県は、環境の保全及び創造に関する施策を講ずるに当たっては、国及び他の地方公共団体と相互に協力するものとする。
(施策の策定等に当たっての配慮)
第二十八条 県は、環境に影響を及ぼすと認められる施策を策定し、及び実施するに当たっては、環境の保全及び創造について配慮しなければならない。
(県民からの意見の聴取)
第二十九条 県は、環境の保全及び創造に関する施策に県民の意見を反映できるように、県民から意見を聴くための措置を講ずるものとする。
(財政上の措置)
第三十条 県は、環境の保全及び創造に関する施策を推進するために必要な財政上の措置を講ずるように努めるものとする。
附則
この条例は、平成十六年四月一日から施行する。