更新日:2025年3月28日

「宣言」から「実行」へ。働き方改革を加速させ、多様な働き方を山梨県のスタンダードに

人口減少危機突破講演会の様子

ここから本文です。

日本全体が直面する「人口減少問題」。中でも安定的な産業人口の確保は、県産業の持続的な成長に向けての重要課題だ。山梨県では、人手不足の解消や人材確保を目指して、県内企業が働き方を見直し、魅力ある職場環境を整えるための取り組みを推進するために、企業向け人口減少危機突破講演会「未来を創る!働き方改革」を開催した。

大切なのは、今、できることを「実行」すること

山梨県では、日本全体が直面している人口問題に正面から向き合い、危機的な状況を突破していくために、県内市町村や、企業・団体とともに令和5年7月27日に「やまなし人口減少危機突破共同宣言(以下「共同宣言」)」を行った。『やまなし人口減少危機突破共同宣言』マニフェスト(以下「マニフェスト」)は、共同宣言に賛同する県内の企業や団体等に働き方改革や子育て支援などへの取り組みを宣言してもらうことで、働きやすい環境整備を促し、従業員の方々が仕事を続けながら、結婚、妊娠、子育て等の希望を実現できる職場環境の普及を目的としている。現在、100の企業と32の団体に賛同いただいている(令和7年3月15日現在)。企業や団体等から提出いただいたマニフェストはマニフェスト集として山梨県HPに掲載し、働き方改革や子育て支援などへの取り組みを広く紹介している。
今回の講演会は、「宣言」にとどまらず「実行」へとつなげることを目的として、魅力ある職場環境の整備を加速させる狙いがある。定員70名に対し、それを上回る申し込みがあったこの講演会には、人口減少問題への危機意識と働き方改革への強い意欲を持つ多くの企業や団体が集い、会場は熱気に包まれた。

人口減少危機突破講演会の様子1

企業と従業員の実態と意識に関する調査結果を発表する山梨県人口減少調査研究グループの中嶋正樹人口減少調査監

冒頭、山梨県より「働き方改革・雇用改革チーム調査研究中間報告」が発表された。これにより、企業では男性の育児参加促進の取り組みが不足し、従業員側では育児休業取得に際し、職場に迷惑をかけたくない心理が働いていることが分かった。また、従業員のスキルアップの機会や給与・賃金に対する満足度が低い傾向、世帯年収が高いほど子どもの数が多い傾向、子育て支援制度が充実している企業ほど出生率が高い傾向等が報告された。
これらの調査結果から、企業の課題として、子育て支援制度の導入や利用促進、従業員の賃金アップ、そして企業全体で結婚・出産・子育てを応援する雰囲気づくりが大切であることが共有された。そして、県内企業の深刻化する人手不足を解消するためには、若年者の県外流出の抑制に加え、育児や介護など様々な事情を抱える方、高齢者、障害者を含めた多様な人材が活躍できる職場環境の整備が必要であり、働き方改革・雇用改革を推進することが急務である。
講演会の企画・運営を担当した山梨県人口減少調査研究グループ勝俣副主幹は、「経営者の方々に、働き方改革の具体的な取り組みや短時間正社員制度を知っていただき、職場環境のより一層の改善に繋げていただくことが今回の一番の目的です。肝心なのは、今、できることを考え、実行していくことです」と話す。

人口減少危機突破講演会の様子2

講演会を企画した山梨県人口減少調査研究グループ副主幹の勝俣雅也さん

まず、山梨県のジュエリー製造販売業「株式会社光・彩」総務課の戸邊さんより、働き方改革の事例が発表された。同社は有給休暇を取りにくい雰囲気や長時間労働、ライフステージの変化に伴う離職という課題を克服するために、生産性向上と時間外労働削減を柱とする働き方改革をすすめ、有給休暇の平均取得日数は5.3日から10日へ増加、取得率も18.5%から65.9%へと大幅に改善した。
また、一人あたりの時間外労働も月平均28時間から8.2時間に削減。これらの改革を支えたのは独自の時間管理システムである。さらに、成績評価制度の見直しにより、定着率は2024年に9年前の2倍以上となった。

人口減少危機突破講演会の様子3

成功事例を発表した「株式会社光・彩」は、柔軟な働き方を積極的に推進している企業として「令和4年度YAMANASHIワーキングスタイルアワード」優秀賞を受賞

企業成長と従業員の働きやすさを両立させるヒントが満載

次に、株式会社イーハイブ代表取締役平井良明さんによる『働き方改革の延長線上にある「週2正社員」のススメ』というテーマの講演が行われた。これは従業員が週に2日間だけ正社員として働き、残りの日は他の仕事や活動に充てるという柔軟な働き方の提案である。
「週2正社員」により、子育てや介護中の人、定年後の人、障害のある人など、フルタイム勤務が難しい方々に、安定した職の提供が可能となるとともに、企業は人材確保だけでなく、従業員の様々なスキルの活用や社会的責任、企業自体の魅力向上などのメリットが享受できる。平井さんは「『週2正社員』は、人口減少はもちろん、地域問題や少子高齢化といった社会的課題の解決手段であり、働き手、企業、地域全体がともに成長するための新しいモデルとなると思う」と語った。

人口減少危機突破講演会の様子4

福岡市に拠点を置く株式会社イーハイブ代表取締役平井良明さんは、全国の中小企業を対象に経営相談などを行う。著書は『週2正社員のススメ』など

講演に参加した株式会社大伴リゾート副社長の公子さんは、「今日の講義を聞いて、今まで自分たちが手探りでやってきたことは間違ってなかったんだという答え合わせができて安心しました」と語った。現在、勤務の仕組みや評価制度を整備中であり、今回の講演会にヒントを求めて参加したという。
同社は、社員40名とパートタイムスタッフ25名体制の中、週5日の勤務が難しい社員には週4日勤務、小学生の子どもを持つ社員にはオフィス勤務とリモート勤務を組み合わせたハイブリッドワークを提案し、家庭と仕事の両立をサポート。また、専門的なスキルを持つ遠隔地の人との協業も進めている。さらに各種研修や勉強会で従業員のスキルアップの機会を提供し、360度評価の導入で評価制度の透明性を高め、会社の目的や価値観を全社員で共有する取り組みも行っているという。代表取締役の伴さんは、「講演で得た新しい気づきやアイデアは早速社内で検討しようと思う。小さな会社だからこそのフットワークの軽さを活かし、社員の満足度向上と持続的成長を実現したい」と意気込んだ。

人口減少危機突破講演会の様子5

河口湖周辺で「旅の駅」など観光事業を幅広く展開している株式会社大伴リゾートの代表取締役の伴 一訓さん(右)と副社長の伴 公子さん

また「週2勤務などの短時間労働制度について、特に障害者雇用の観点から新たな可能性を感じた」と話すのは、山梨ユ二フォーム株式会社の岩下専務。同社は平均年齢が36.7歳と若手が活躍している会社だ。昨年から専務ら3名で他部署と連携しながら業務改善プロジェクトを始動。働きやすい職場づくりと有給休暇の取得率向上のために奮闘している。

「当初は仕事が属人化していて取得しにくい状況だったが、アプリの導入など仕組み化を推進し、機能別組織への改編を進めた結果、取得率はほぼ100%に近い状態となった」と胸を張る。さらに、運動会やフットサル大会などを通じ社内コミュニケーションを活発化し、若手の視点を取り入れた新規プロジェクトも進めている。「講演に参加して、彼らが結婚や子育てしながら長く働き続けられる環境づくりを、よりスピード感をもって推進する必要性を再認識しました」と熱心に語った。

その他の参加者からは、「多様性の時代、どのような対応を取るべきか、選択肢を増やすことができそう」という声や「発見が多く、具体的なアイデアをたくさんもらった」、「ダイバーシティを目指している中で、週2正社員という面白い仕組み作りができる可能性を感じた」などといった意見が寄せられた。
今回の講演会では、多様な働き方の実践が人口減少危機の突破の鍵となるとの認識が改めて共有された。そして山梨県が「ずっと働き続けたい、住み続けたい」魅力ある地域として成長するため、みんなで一体となって取り組もうという機運が醸成され、具体的なムーブメントに発展する可能性が感じられる、有意義な会となった。

人口減少危機突破講演会の様子6

山梨ユニフォーム株式会社専務取締役岩下純一さん。同社は「令和5年度YAMANASHIワーキングスタイルアワード」で奨励賞を受賞

働き方・職場環境をめぐる課題解決に向けた取り組みをサポート

山梨県では、働き方改革を推進するための支援体制を整えながら、魅力ある働き方、職場づくりに注力する企業が参画する取り組みも行っている。

企業版「やまなし人口減少危機突破共同宣言」マニフェスト

「やまなし人口減少危機突破共同宣言」マニフェスト集。現在100の企業と32の団体が参画し、働き方に関する現行の取り組み内容や今後の取り組み予定などを紹介している。

YAMANASHIワーキングスタイルアワード

山梨県では働きやすい職場環境づくりや育児・介護等に関する支援、多様な人材の活用などを積極的に進めている企業等を表彰し、その取り組み内容等を優良事例として広くPRしている。

副業・兼業人材の活用について

「山梨県プロフェッショナル人材戦略拠点」サイト。県内企業の社長や人事の方へ向けて、副業・兼業人材の活用事例や人材活用支援事業費補助金などの情報を掲載している。

障害者雇用支援

山梨県などの関係機関は、障害のある方の就業・就労に対する相談・支援や企業等が障害のある方を新たに雇用した場合または既に雇用している場合の支援制度などを紹介している。

山梨県の男性育児休業取得促進の取り組み

山梨県は、男性が育児休業を取得しやすい職場環境づくりを促進するため、県内中小企業事業主が実施する雇用環境整備の措置に要する経費に対して助成を行っている。

取材を終えて

今回の講演会は、参加企業にとってヒントが多く実りある内容であったとともに山梨県が「ずっと働き続けたい、住み続けたい」と思える魅力ある地域を目指す方向性が体現されていると感じた。山梨県と県内企業・団体が一丸となり、働きやすい環境づくりや子育て支援、時間外労働の削減など、働き方改革に挑む姿勢は、現代社会が抱える課題解決に対する強い意志が感じられるものだった。

人口減少危機突破講演会の様子7

人口減少危機突破講演会の様子8

人口減少危機突破講演会の様子9

人口減少危機突破講演会の様子10

このページに関するお問い合わせ先

山梨県人口減少危機対策本部事務局人口減少危機対策課

住所:〒400-8501 甲府市丸の内1-6-1

電話番号:055(223)1845

ファクス番号:055(223)1851

より良いウェブサイトにするためにみなさまのご意見をお聞かせください

質問:このページの情報は役に立ちましたか?

質問:このページの情報は見つけやすかったですか?

トップ > 組織案内 > 人口減少危機対策本部事務局 > 人口減少危機対策課 > 山梨県人口減少危機対策特設サイト > 特集記事一覧 > 「宣言」から「実行」へ。働き方改革を加速させ、多様な働き方を山梨県のスタンダードに