更新日:2025年2月5日
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山梨県笛吹市にある「健康科学大学産前産後ケアセンターママの里(以下「産前産後ケアセンターママの里」という)」は、産後4カ月までのママと赤ちゃんが宿泊しながら専門家のケアを受けられる施設だ。助産師たちによる育児相談やメンタルサポートを受けられるだけでなく、温泉の足湯やお風呂でリラックスした時間も過ごせる。施設の概要や利用者の声を紹介する。
赤ちゃんが生まれて最初の数カ月は、喜びと同時に不安や疲れも感じやすいとき。この時期をママと赤ちゃんが安心して過ごせる環境をつくろうと、山梨県では「宿泊型産後ケア事業」を実施している。その場所が山梨県笛吹市石和町にある「産前産後ケアセンターママの里」だ。ここではママと赤ちゃんが宿泊しながら、母体の心身のケア、育児に関する相談、沐浴や授乳などの育児指導を受けることができる。
対象は県内在住の産後4カ月までのママと赤ちゃんで、年間の宿泊数は約1,200泊。年間延べ利用者数約500人で、出産したママの1割強が使っている。最近は第1子で使って満足し、第2子以降にリピートするママや、知り合いに聞いて利用する人も多い。
産後4カ月くらいまでのママは、「授乳がうまくいかない」「赤ちゃんが昼間に寝てくれない」「自分の体調も戻らず不安」などいろいろな悩みを抱えがち。施設には助産師や保健師、保育士、心理士などの資格をもつスタッフがいるので、ちょっとした悩みや不安も気軽に相談できる。
ママと赤ちゃんが安心して過ごせる「産前産後ケアセンターママの里」は新米ママの強い味方
部屋は個室。あえてテレビは置いていない。子どもとゆっくり向き合ってほしいという思いからだ。山梨県でも最大規模の温泉地、石和温泉郷にあるこの施設は、庭に温泉の足湯があり、利用者同士の交流もできる。ちなみにお風呂のお湯も温泉だ。料金は1泊2食付きで、自己負担額0円~3,600円(市町村によって料金が異なる※昼食代別途必要)。
利用パターンは3泊4日が最多。入所日に簡単なヒアリングがあり、どんなふうに過ごしたいかを伝えた上で、滞在中のスケジュールを一緒に組む。骨盤体操や授乳相談など希望に応じたサポートを受けながら、基本的には赤ちゃんとゆっくり過ごす。
初めての子育ては特に不安が大きく、2人目、3人目でも子どもは一人ひとりちがうので新たな悩みがあるかもしれない。山梨県の「宿泊型産後ケア事業」は、そうした母親の一助になればとスタートした事業でもある。2016年当時は、全国的にも先進的な取り組みで、全国知事会で人口減少対策分野の優秀政策として表彰された。今も全国の自治体からの視察が相次いでいる。
日当たりのいい足湯でリラックスタイム。母親同士、また施設スタッフとの何気ない会話に癒やされる
宿泊型ケアに加えて日帰り型ケアもあり、お悩みをピンポイントでサポートしてもらうのによい。通常料金は14,000円(昼食代別途)だが、甲府市・南アルプス市・中央市では助成がある(※2024年12月現在。各市の申請が必要)。そのほか、有料の個別ケアも実施しており、母乳や育児相談、心理相談などもできる。
ママやパパ、妊婦さんに向けたイベント「健康教室」も開催している。母乳育児について教えてくれるクラス、抱っことおんぶのコツを教えてくれるクラス、ママたちの足湯交流会など、多彩なクラスを用意。気軽な交流や相談の場として活用されており、パパ向けのベビーマッサージ教室なども実施されている。
広々とした多目的スペースで行う骨盤体操。体を動かしてリフレッシュ
利用者に話を聞いた。産後4カ月で今回初めて3泊4日で利用したという渡邊永里菜さんは、市でもらったチラシでこの施設を知り、知り合いから「身体も休まるし、悩んでいることがあれば相談できるよ」と勧められたことで利用を決めたそうだ。
「普段なかなかゆっくり子どもと向き合う時間がないのですが、こういう時間は大事だなあと実感しました。お風呂も温泉で芯から温まります。足湯では他の子のお母さんともお話できました。近い月齢の子どものママ同士で、いろいろ共感することも多く楽しかったです。周りの人にも勧めたいです」
ちなみに今回、授乳の保護器の使用について相談したところ、滞在中に卒業できたという。
「元気にすくすく育ってほしいですね」と渡邊永里菜さん
産後4カ月で日帰り利用の細川愛奈さんは、1カ月前に3泊4日で利用し、今回がリピート利用。市の乳幼児健康相談で紹介されて利用した。
「誰かが作ってくれたご飯を食べたいと思ったんです(笑)。実際利用してみると、ゆっくりできて、大人と喋れるのも嬉しかったです。滞在中にママ友もできて、ここでのイベントにも一緒に参加しました」
1回目で気に入ったため、すぐにリピートを決めた。「今回は、体重の増え方が緩やかで気になっていたので相談できてよかったです。ネットでいろいろ調べるより、助産師さんに赤ちゃんの状態を見てアドバイスをもらうほうが安心。下の子が生まれたら、また利用したいですね」
「食事はデザートも付いていて美味しかったです」と細川愛奈さん
センター長の坂本富子さんは、産後ママの現状について次のように話す。
「今は昔に比べて出産時の入院期間も短く、ママたちみんなが赤ちゃんのお世話が上手になってから退院できるわけではありません。核家族化も進み、親世代が60代だと現役で働いていることも多く、里帰りをしない人も増えています。労働人口も減少しており、パパが忙しく働く家庭も少なくないでしょう。一人で子育てする中で、産後うつになってしまうママもいます」
だからこそ、この施設をうまく使ってほしいとのこと。
「産後数カ月は、お世話の仕方だけじゃなく、いろいろな悩みや想いが湧いてくる頃。心理士や助産師との何気ない会話にほっとしたり、『これでいいんだ』と自信をつけたりしているママたちの姿を見ると、この場所を利用していただいてよかったなと思います。
手探りで育児をする中で不安を抱えているママはもちろん、疲れてちょっと休みたいなというママにも、ぜひ気軽に使ってほしいと思っています」
センター長の坂本富子さんは「利用は産後3カ月くらいが多いのですが、もっと早く来ればよかったという声はよく聞きます」と話す
山梨県は妊娠中のマタニティライフから出産後まで、健康管理やメンタルサポートに対する幅広い支援体制を整えている。
今回紹介した施設。宿泊の利用にはお住まいの市町村への事前登録が必要。
「産前産後ケアセンターママの里」のinstagramではイベントの情報を発信している。
山梨県民を対象に、24時間365日対応の電話相談サービスを実施。妊娠中からの不安や産後の体調のこと、子育てに関するさまざまなことに助産師が対応する。
山梨県で子育てに関わるすべての方に向けたお役立ち情報を集めたサイト。県内の子育てイベントや子育て支援施設、経済的支援の制度、「やまなし子育て応援カード」の情報など、幅広く掲載。
全国の保育所や認定こども園、幼稚園などの情報を、地域や最寄り駅から検索できるウェブサイト。これから保育所などへ子どもを入れる方や、引っ越しの予定がある方が施設を探すのに役立つ。
核家族化が進み、身近に気軽に相談できる人が少ない今の時代。インターネットには情報があふれすぎていて、逆に不安や戸惑いを生むこともあるかもしれない。そんなとき、専門家に気軽に相談でき、温泉で寛ぎながら赤ちゃんとゆっくり向き合えるこうした施設は貴重な存在。ここでの温かな時間が、ママたちの心に余裕をもたらし、前向きな気持ちで子育てに向かうきっかけになっているように感じた。
取材・文:古屋江美子(山梨県甲府市出身・やまなし大使)
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