更新日:2025年4月11日

県の施策を浸透させるには?人口減少危機対策アンバサダーと意見を交換

知事と語る山梨県の挑戦と未来1

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どれだけ良い取り組みをしても、届かなければ意味がない。この課題に挑む山梨県では、先ごろ長崎知事と人口減少危機対策アンバサダーの意見公開会を開催。約70名が集まり、若者の心に届く施策の発信の仕方についてさまざまな意見が交わされた。

県の施策を浸透させるには?人口減少危機対策アンバサダーと意見を交換

山梨県では人口減少問題への関心を高めるため、県内のさまざまな分野で活躍する人たちを「人口減少危機対策アンバサダー」に任命し、当事者目線の情報発信を推進している。今回、県の施策をより効果的に情報発信していくため、長崎知事と人口減少対策アンバサダーの意見交換会「長崎知事と語る山梨県の挑戦と未来~若者に向けたパブリックコミュニケーションの高度化~」を開催。人口減少危機対策アンバサダーや県民など約70名が参加した。

第1部は知事と株式会社イマジナ代表の関野吉記さんのディスカッション。冒頭では、長崎知事が人口ピラミッドを示しながら「若い世代がやせ細ってきているのが問題」と危機感を示した。「約20年前には世帯年収300万~350万円で子どもを持とうと思えていたものが、現在では450万~500万円程度の収入がないと子どもを持とうとしない傾向がある。今の若者は社会が上り調子になることを経験しておらず、“今”の収入で判断するようになっています」と説明した。

この課題に対して県が実施しているのが「スリーアップ」の推進だ。働く人のスキルアップによって、企業の収益がアップし、賃金アップにつながるスリーアップの好循環を目指している。スリーアップ推進を宣言した企業に対しては、「やまなしキャリアアップ・ユニバーシティ」など学びの場を提供。すでに県内約600社が参加している。

関野さんから「素晴らしい施策だと思うが、なかなか伝わらないのはなぜか?」と問われると、「自分ごととして伝わっていないのだと思う」と長崎知事。また「若者には成長意欲があるのに、ロールモデルとなる先輩や上司の姿が見えにくい」との指摘には、「まさにその通り。身近な具体例を示していくことが重要です」と答えた。

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人口減少の現状と背景について説明する長崎幸太郎山梨県知事

第2部のパネルディスカッションでは、長崎知事と5名の人口減少危機対策アンバサダーが意見交換を行った。株式会社TryMam代表の早川亜希子さんは「県の施策が、特に忙しい日々を送る女性たちに情報が行き届いていないのが現状。また、情報を得ても学びの時間をどう確保するかが課題です。自分が勉強して企業に還元し、企業の収益が上がればそれが自分に戻ってくるという循環が見えることが重要」との考えを示した。

株式会社パピヨン代表の天野さやかさんは、「経営者として学びの場に行くだけでなく、スタッフも一緒に参加することで会社の成長スピードが変わります。私が学んだことを社内で伝えるより、スタッフが直接学ぶ方が思いも伝わりやすいし、社員同士が交流するプラットフォームにもなります」と語り、今回も自社のスタッフと共に参加していた。

株式会社きっかけデザイン研究所代表の白石秀典さんは「スリーアップ宣言企業として登録していますが、2~3人の小さい会社なのでなかなか学びの場に行けていませんでした。今回、知事から直接この取り組みの背景や想いが聞けて、熱量も受け取り、より発信がしやすくなります」と話した。

梅鉢不動産株式会社代表の梅原颯太さんは「アンバサダーになるまでスリーアップという言葉を知りませんでしたが、山梨イノベーションベース(YNIB/県内経営者向けの学びと交流の場)で学んだことで視座が高まり、固定概念がいい意味で壊れました」と学びの効果を語った。

有限会社ニムバス社長の山村智直さんは「若者への発信には、目標となるロールモデルが重要。他のジャンルでうまくいっている施策を応用し、成功事例を示すことも必要ではないでしょうか」と提案した。

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20~30代の参加者割合が約半数を占めた

こうした意見を聞いた長崎知事は、施策が喜んでもらえているのに広がらないもどかしさを口にしつつ、社員と経営者が一緒に学ぶ場の創設や男女がフラットにパートナーを選べる社会づくりなど、対話の中で出たアイデアを県の施策の参考にしていく意向を示し、「今後も皆さんのお知恵を借りながら一緒に作り上げていきたい」と述べた。

その後、第3部では人口減少危機対策アンバサダーと参加者がイベントでの学びを総括し、会を締めくくった。

参加者へ事後アンケートでは、全体の約9割が「スリーアップ」の取り組みについて理解できたと言い、96.5%が「自分も県の取り組みに関わってみたい」と回答。「知事から直接思いを聞けて良かった」「とても良い取り組みだと思う」など肯定的な声が多く寄せられた。一方で、改善点としては「具体的な内容がわからない」「売上に直結する講座がほしい」などの意見も。また「アンバサダーにアドバイスをもらえるような窓口があったらいい」「人口減少危機対策アンバサダーの名称変更、担当課の名称もポジティブで明るいイメージのものに変更しては」など具体的な提案もあった。

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株式会社イマジナ代表の関野吉記さんは山梨イノベーションベース(YNIB)の代表理事を務めている

人口減少危機対策アンバサダーの想い

今回イベントに参加した人口減少危機対策アンバサダーは、半年の任期で16名が活動してきた。今回のイベント参加のほかにも勉強会で県の取り組みについて学び、SNSやコミュニティでの情報発信を行っている。

株式会社TryMam代表の早川亜希子さんは、「地元山梨県の深刻な課題に貢献できる光栄さと、責任の重さを感じました」と任命当初を振り返る。アンバサダー活動の一環として参加した勉強会の中で特に印象に残っているのは「女性デジタル人材育成」の回だったという。「デジタル技術を活用することで働き方の選択肢が広がり、女性や子育て世代がより柔軟に仕事を続けられると実感しました」。自社では以前からオンライン会議や業務管理ツールを導入していたが、AI活用もスタート。子育て中のスタッフが働きやすい環境を充実させた結果、「社内の雰囲気が変わり、情報共有がスムーズになり、新しいアイデアも生まれています」と手応えを感じている。

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女性のための人材マッチングやイベント企画などを行う株式会社TryMam代表の早川亜希子さん

“夢みるセラピスト”として活動する福原千晶さんは「わからないことだらけでしたが、一歩踏み出してみようと思いました」と話す。10カ月の息子さんを育てながら、オンラインと対面のバランスを取りつつ活動を続けてきた中で、「女性デジタル人材育成」の取り組みには特に共感。「子育ても仕事も諦めない。育児と仕事の両立の先に、子どもと働くママの笑顔があることが大事だと思う」と言い、託児付きオフィスやベビーシッターなど環境整備の充実が必要だという考えを示した。

また勉強会での学びを通じて、特に20~40代における様々な選択が人口減少対策の鍵だと実感したそうだ。「男女のあり方も多様化している中で、男性だから、女性だからということではなく、女性だって育児をしながら仕事していいし、男性だって当たり前に育休を取っていい、という文化を創っていくことが重要。よりよく生きるための選択を応援する企業が増えていくと良い」と考えているとのこと。

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限界集落の空き家を活用した一棟貸し【まるっと舎era】を運営し、“夢みるセラピスト”としても活動する福原千晶さん

約半年間の人口減少危機対策アンバサダーとしての活動を振り返り、早川さんは「多くの方との交流が私の財産になりました。これからもデジタルや多様な働き方を通じて山梨県の未来に貢献していきたい」と意欲を見せる。福原さんも「子連れで参加しても温かく迎えてくれる。この心遣いこそが、人口減少対策の突破口になるかもしれません」と期待を寄せた。

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人口減少危機対策アンバサダーの勉強会は全6回開催

山梨県が推進するスキルアップ、企業収益アップ、賃金アップのスリーアップ

山梨県は、働き手のスキルアップが企業の収益アップ、賃金アップにつながる「スリーアップ」の好循環の実現によって、人口減少問題の解決を目指している。

豊かさ共創スリーアップ推進協議会

働き手のスキルアップが、企業の収益アップ、賃金アップにつながる「スリーアップ」の好循環が広く県内に波及するよう活動している。

やまなしキャリアアップ・ユニバーシティ

山梨県の企業で働く人を対象に、DX講座やコミュニケーション講座、経営マネジメント講座など、さまざまな講座を開催している。

人口減少危機対策アンバサダー

若者等の理解・共感の獲得を目的とし、県内の各分野で活躍する方や本県に縁のある方々を人口減少危機対策アンバサダーに任命。アンバサダーのメンバーと活動内容を紹介している。

一般社団法人山梨イノベーションベース

山梨県内のメディアや金融、行政、国内最先端の技術を有する会社などが、アントレプレナーシップを持つ山梨県民に、新たな成長の場を提供する「山梨イノベーションベース」のサイト。

取材を終えて

「知事から直接思いを聞いて熱量を受け取った」というアンバサダーの声で、情報発信における人の力の大切さを改めて感じた。素晴らしい施策も、それを届ける人の想いや熱意があってこそ、自分ごととして響くのだろう。人口減少という課題に向き合うには、制度づくりと同じくらい、その思いを伝える方法や場が重要なのかもしれない。
文:古屋江美子(山梨県甲府市出身・やまなし大使)

このページに関するお問い合わせ先

山梨県人口減少危機対策本部事務局人口減少危機対策課

住所:〒400-8501 甲府市丸の内1-6-1

電話番号:055(223)1845

ファクス番号:055(223)1851

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