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俳優・工藤阿須加さんが山梨県北杜市で農業を始めて5年。農業関連の仕事も広がり、東京都と山梨県を行き来する暮らしもすっかり日常になっている。5年間の変化や今後の展望を聞いた。
俳優。1991年生まれ。埼玉県出身。2012年ドラマ『理想の息子』で俳優デビュー。近作にドラマ、日本テレビ『良いこと悪いこと』(25)、テレビ朝日『無能の鷹』(24)、NHK BS『おいち不思議がたり』、NHK『いちげき』(23)、映画『ゴールデンカムイ』(24・26)、『緊急取調室 THE FINAL』(25)、『てっぺんの向こうにあなたがいる』(25)。Netflixシリーズ『御手洗家、炎上する』が配信中。2021年より山梨県北杜市内で農業を始め、日本テレビ系の番組『有吉ゼミ』では「工藤阿須加 楽しい農園生活」のコーナーに出演中。
山梨県北杜市で2021年に農業を始めて5年。「まさかこんなにも農業関係の仕事が増えるとは思っていませんでした。僕はただやりたいことをやっているだけなので、そこに面白いと興味を持っていただけるのはありがたいですね」と5年間を振り返る。
山梨県北杜市で農業を始めて5年目を迎えた俳優・工藤阿須加さん
「農作業は息抜きにもなっていますが、やらなければならないことでもあります。多くの人に農業の魅力を届けるチャンスが増えたことで、俳優も農業もやり続けたいという思いがより強まりました」
俳優と農業、2つの仕事があることで心のバランスが取りやすくなった。役者の仕事でも集中力が増している実感があるという。
農業関連の仕事は増えているが、「日本の農業をなんとかしよう」といった大きなことは考えていないという。
「一人でできることは限られていますから。まずは応援してくださる皆さんに、農業の魅力や食の大切さを伝えて、その輪が広がっていけばいいなと。そんな気持ちでいようと思っています」と肩の力が抜けた笑顔を見せた。
山梨県にいるときは、作業がない日でもほぼ毎日畑に足を運ぶ
5年間の二拠点生活で、地域の人との関係性も深まったそうだ。
「基本的に、近所のおじちゃんおばちゃんと若い青年みたいな感じです。俳優・工藤阿須加というより、一人の人間として接してもらえるのがすごくありがたいですね」
印象的なエピソードを聞くと、「近所のおばちゃんが家に入ってきたこともありますね。『いるー?』って」と笑う。交わす会話も「今年は寒くなるのが遅いな」「今日は何時に起きた?」など、たわいもない日常の話ばかりだ。
地域の子どもたちとの交流もある。テレビ番組の企画で夏祭りを開催した際には遊びに来てくれて、それ以来「来年はどんな野菜を作るの?」「美味しかったからまた作ってね」などと声をかけられることも増えたという。
「山梨は土地も広くて、気持ちの開放感も違います」と工藤さん
5年も通えば土地勘も身についてくる。「アイスバーンを見つけるスピードは速くなりましたね(笑)。友人が来るときは『この道は凍りやすいから遠回りしておいで』なんて案内できるようになりました」
東京都から山梨県まで片道約2時間半。移動中は自分のセリフを録音してリピート再生している。「流し聞きですが、音楽を口ずさむ感覚で何十回も聞いていると、セリフが頭に入るんですよ。もともと運転が好きなので、移動自体がリフレッシュにもなっています」
年間トータル2〜3か月は山梨県に滞在。「東京だと俳優・工藤阿須加を意識する時間が長いんですが、山梨県へ来ると肩書きが外れて、素の自分になっている感覚がありますね」
山梨県の豊かな自然や美しい景色も気に入っている。
「特に冬が好きですね。星がきれいで空気が澄んでいて、景色が遠くまで見える。北杜市は八ヶ岳、南アルプス、富士山が同時に見える贅沢な場所です。日本名水百選に選ばれた水源地が3カ所もある。全国的にも珍しいですよね。水の良さは食べものの美味しさにも直結していると思います」
「郷に入っては郷に従え」の気持ちで地域の人と関わっている
5年間で30種類以上の野菜を栽培してきた。俳優業との両立で畑に行ける回数は限られるため、長期保存しやすい野菜を中心に選んできた。「お金を出して買ってもらう 一商品である以上、品質を保証できないものは出せない」という思いがある。
収穫した野菜は山梨県内のスーパーや直売所で販売している。「地域の人たちが買ってくれるからこそ、この山梨県で農業ができる。まずは地元の方々へ届けたいという思いがあります」
最近は工藤さんの影響で、父親で元プロ野球選手の工藤公康さんも北杜市で農業を始めた。それをきっかけに親子の会話も増えたという。「父も農業のことがわかってきて、『こうやったほうがいいんだよ』って教えてくるんです。『それ、さっき俺が言ったんだけどな』と思いつつ、なんだか可愛く見えてきちゃいますね(笑)」
トウモロコシやジャガイモ、サツマイモ、冬は大根や白菜、ほうれん草など
工藤さんが畑を借りている井上農場の井上能孝さんと、ここまでの5年間を振り返ってもらった。
──5年間一緒にやってきて、工藤さんに変化は感じますか。
井上能孝さん(以下、井上):最初は「食べて美味しい」という消費者目線だったのが、2年目以降は農業経営の視点も加わってきましたよね。農業に対する視野がどんどん広がっていると思います。
工藤阿須加さん(以下、工藤):井上さんは年齢や経験に関係なく、フラットな目線で接してくれる。それがすごくありがたいです。
井上:私の中ではずっと「仲間」という感じです。畑で作業をしながらの話も、最近は経営者同士みたいになってきて。有機農業や山梨県という枠を超えて、日本全体で食の楽しさや大切さをどうシェアするか、なんて話になることもありますね。
工藤:野菜作りでいうと、正直、納得できるものにはまだ遠いですね。5年なんてまだまだです 。ニンニクなんて1年に1回しか出会えないので、作りながら「あと何回出会えるんだろう」と思うこともあります。
井上:農業で100点を取るのは難しいし、僕自身もゴールは設定していません。常にいいものを目指すところに楽しさや面白さがあると思います。
井上農場を運営する株式会社ファーマンの井上能孝さん
井上:以前、工藤さんの舞台を観に行ったんですが、野菜を作るシーンのセットがリアルで驚きました。「阿須加くんが指導したに違いない」と確信しましたね。
工藤:恥ずかしい(笑)。でも、そういう細かいところもリアルに見えるといいなと思って。
井上:あと、役作りで筋肉をつけたいときは、農作業の力仕事をトレーニング代わりにしていましたよね。農業と俳優業がうまくつながっているなと思います。ただ一つアドバイスするなら、軽トラで撮影現場には行かないほうがいい(笑)。
工藤:でもみんな興味津々でしたよ。「いいよな、軽トラ」って盛り上がりましたけどね(笑)。
タイミングが合えば一緒に草取りや生育状況を確認しながら話をする二人
──今後、一緒にやりたいことはありますか?
井上:子どもたちを呼んで農業体験をやりたいという話はずっとしていますね。
工藤:1日のプチ体験ではなく、数日間かけてじっくりと。収穫だけでなく、雑草を抜く工程も体験してもらって、自然の魅力も大変さも感じてもらえるようなものができたらいいですね。
山梨県は本当に素敵な場所なので、もっと人が増えてほしい。将来的には自分の畑も持って、そういう活動の場を広げていきたいです。いい土地があればぜひ教えてください(笑)。
「山梨県が盛り上がるなら何でも協力したい」と語る工藤さん
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