HOME > ARTICLE 特集一覧 > 都内の弁護士が山梨県の老舗旅館の若旦那に!二拠点生活に奮闘

更新日:2025年7月8日

ARTICLE

特集

sp23_main_ogp.jpg

sp23_main_sp.jpg

ここから本文です。

都内の弁護士が山梨県の老舗旅館の若旦那に!二拠点生活に奮闘

東京都内で弁護士として働きながら、山梨県では老舗旅館の若旦那として奮闘している山田安人さん。家族で山梨県に移住し、自身は東京都内との二拠点生活。子育ての場所としての山梨県の魅力や二拠点生活の工夫などを聞いた。

都内の弁護士が老舗旅館の「若旦那」を名乗るまで

都内で弁護士として働く山田安人さんが、コロナ禍で苦境に立たされていた湯村温泉の老舗旅館、柳屋の若旦那に就任したのは、2020年8月のこと。以来、弁護士と若旦那という異色の二足のわらじを履いている。

旅館との出会いはコロナ禍前にさかのぼる。「年末年始に家族で泊まりに来たことがあって。庭が美しく、お風呂がとても気持ちよかったのを覚えています」と振り返る。

その後、柳屋が経営難に陥り、運営会社が変わった際、山田さんは弁護士として契約関連の整理を手伝うことになった。一旦はコスト削減とインバウンド客の増加で建て直しに成功するも、直後にコロナ禍に見舞われ、再び経営が悪化した。

「旅館経営は未経験でしたが、ピンチの今なら受け入れてもらえるのではないかと思い、手伝わせてくれないかと申し出ました。

手伝いたかった理由は2つあります。1つは、私が山梨県出身なので、地域にアイデンティティや帰属意識があり、地元のために何かやりたいという思いをずっと持っていたから。もう1つは、弁護士としてベンチャー企業やスタートアップの相談に乗っていると、事業にブレーキをかける立場になることが多かったので、たまには自分もアクセルを踏む側に回りたいと思ったからです」

sp23_01.jpg

甲州湯村温泉 柳屋の若旦那で弁護士の山田安人さん。山梨県甲斐市出身

「肩書きは親しみやすい“若旦那”にしました。旅館といえば“若女将”はよく聞きますよね。その男性版です。特定の役割は設けず、幅広くいろいろやってきましたね」

たとえば当初は食事のサービスには改善の余地があると考え、料理を出すタイミングや説明を改善。マニュアルを作るだけではなかなか浸透しなかったため、約1年間、週末の夜に自ら配膳を担当した。

今は現場に出ることは減り、主に企画を担当。週に数回訪れて、お客様の入り具合を確認し、価格設定やキャンペーンを検討している。そんな山田さんが若旦那として大切にしているのはお客様目線だという。「旅館経営は素人だからこそ、自分が気持ちよく滞在できるかを大事にしています」とにこやかに話す。

sp23_02.jpg

支配人と共に新しい料理プランを確認。メニュー考案にも携わっている

「のびのび子育てをしたい」夫婦の意見が一致して移住

山田さんは奥さんと5歳と2歳の男の子の4人暮らし。柳屋に関わり始めた当初は、山田さんだけが東京都から山梨県へ通っていたが、2023年3月に家族で山梨県に移住した。

「長男の幼稚園入園のタイミングで引っ越しました。山梨県は子育て環境として魅力的。妻とは結婚当初からいつか山梨県に戻りたいという話はしていたんです。コロナ禍で、リモートでも弁護士の仕事を回せることがわかり、移住を決めました」

山田さんは山梨県出身。奥さんは広島県出身で、お互い都会での子育てにはどこか窮屈さを感じていたそうだ。現在山田さんは山梨県の自宅を拠点としながら、週に3日ほど都内の弁護士事務所へ出勤している。

「平日3日は東京です。東京の自宅をそのまま残しているので、都内で働く日は自宅に滞在します。ただ、子どもが小さいので、3日連続にはせず、1泊2日と日帰りを組み合わせています」

sp23_03.jpg

都内の法律会計事務所で同僚と打ち合わせ中

山田さんにとって、山梨県は子育て環境として理想的だという。
「教育方針に共感できる幼稚園が見つかりました。また、家が広くなり、子どもたちものびのび育っています。夏の朝は僕らより早く起きて、庭で虫を追いかけています。都内では絶対にできなかったことですね。休日はドライブで自然が豊かな八ヶ岳方面へ遊びにいくこともあります」

父親の勧めで地元の青年会議所(JC)に入会し、同世代の人間関係も広がった。奥さんも子どもを介してのつながりを広げている。また、英語教育の事業を始めようとしているそうで、単発イベントを通して知り合いが増えているとのこと。

「ようやく人のつながりも増え、暮らしが整ってきました。今住んでいるのは、昔からの住宅街で年配の方が多く、みなさん優しいんですよ。子どもの園バスへの送り迎えの途中では毎日声をかけてくれるし、ときには庭で採れた果物をくれることもあります。

移住後の変化として実感するのは、家族でゆっくり過ごす時間が増えたこと。家の広さにも余裕があり、庭でバーベキューを楽しむなど、過ごし方の選択肢も広がりました」

sp23_04.jpg

「山梨県は子育てに理想的。しいていうなら、ベビーシッターなどのサービスが充実するとさらに便利になりますね」と山田さん

魅力の多い二拠点生活、ポイントは移動時間の過ごし方

家族の中では、自分だけが二拠点生活を実践している山田さん。その魅力について次のように話す。

「2つの地域の文化に触れられるのがいいですね。やはり東京は圧倒的に情報のスピードが速い。インターネットがあっても人伝いの情報は濃度が違います。自分のやりたい仕事や興味は東京に集中しています。

一方で、暮らす場所としては山梨県が理想です。運転中に富士山が見えると、うれしくなるし、同時に落ち着きます。作り物ではない自然の中で生活していることを実感できる山梨県での暮らしは、自分が本能的に求めているものだと思いますね」

二拠点生活のハードルとしては移動時間を挙げた。
「山梨県は東京に隣接していて近いのですが、それでも約1時間半かかります。その時間をどう使うかがポイントかなと。私の場合は、移動中に雑務をスマホでこなしたり、動画視聴や睡眠など、リフレッシュに充てたりしています。

二拠点生活のハードルはそれくらいなので、迷っているなら、やってみればいいと思います。やる前に諦めて後悔するのはもったいない。結局やってしまえば、できないことはないと思いますよ」

他の人にも移住先として山梨県をおすすめできるという山田さん。
「住居費が安く、都内の駐車場代くらいの金額で家が借りられるほどです。足りないのはデパ地下で総菜などを買う楽しみくらいでしょうか(笑)。実際に移住した人からよく聞くのは、人が温かいという声。最初はもしかすると少し閉鎖的に感じることがあるかもしれませんが、一度深くつきあうとおせっかいなくらい面倒を見る県民性があると思います」

sp23_05.jpg

弁護士としては事務所での勤務以外に、客先や出張へ行くこともある

子どもたちに山梨県を「ホーム」だと思ってほしい

柳屋の若旦那として、将来の展望を聞いた。
「まずは滞在している方に最高の体験を提供できる旅館にしたいですね。建て直しのような大きなことはすぐには難しいので、まずはサービスなどのソフト面を充実させて、体力をつけていきたいです。

そして湯村温泉全体の活性化にも貢献していきたいですね。柳屋は139年の歴史がありますが、次の100年を見据えるなら、温泉街ごと生き残っていくことが大切。いくら一軒だけがいい経営をしても、温泉街がなくなったら続かないと思っています」

sp23_06.jpg

柳屋のある甲府湯村温泉郷は武田信玄公のかくし湯としても知られる

プライベートでは「山梨県の家は広い駐車場があるので、フットサルコートにして子どもたちとボールが蹴れたら」と近い将来の夢を語る。もっと先の未来については、とくに決めず、柔軟に考えているそうだ。

「私自身、15歳まで山梨県で過ごし、サッカーをするために東京の高校へ進学しました。子どもたちが今後、県外や海外に出て、いろいろな世界を見にいくこともあるでしょう。ただ、どこで暮らしていても、今こうやって家族で暮らしている山梨県を自分たちのアイデンティティやルーツだと思ってくれたらうれしいですね。私自身にとっても、山梨県はずっとホームです」

sp23_07.jpg

美しい日本庭園は山田さんが手入れをすることも

お問い合わせ先

二拠点生活・移住に関するご相談はこちら

やまなし暮らし支援センター(個人専用)※山梨県が運営する相談窓口です。

〒100-0006 東京都千代田区有楽町2-10-1 東京交通会館8階(NPOふるさと回帰支援センター内)

電話番号:03-6273-4306

問い合わせフォーム

オフィス移転・サテライトオフィス開設等に関するご相談はこちら

山梨県二拠点居住推進センター(法人専用)

〒102-0093 東京都千代田区平河町2-6-3 都道府県会館13階(山梨県 東京事務所内)

電話番号:03-5212-9033

問い合わせフォーム

その他のお問い合わせはこちら(本メディアに関するコメント等)

山梨県人口減少危機対策本部事務局人口減少危機対策課

〒400-8501 山梨県甲府市丸の内1丁目6-1

電話番号:055-223-1845

問い合わせフォーム