てくてくvol.18
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 山梨県東部の郡内地域は古くから織物業が盛んで、その歴史の始まりは千年以上前とされています。この地域の豊かな自然の中、富士山の伏流水を使って作られる郡内織物は「甲斐絹」と呼ばれ、江戸時代にはブランドとして高い評価を得ていました。時は流れ、今もなお伝統の技と職人たちの感性は産地に息づいています。その歴史ある産地から新たに誕生したのが「やまなし縄文シルクスカーフ」。県産業技術センターと山梨大学の共同研究による特許技術を活用し、大正10(1921)年創業の前田源商店が織り上げた逸品です。 「このスカーフのデザインは、笛吹市で発掘された『大型深鉢(渦巻文)土器』がオリジナルで、山梨県に伝わる造形や文様、色彩などのデザインソースをデジタル化して配信する県のプロジェクト『山梨デザインアーカイブ』に登録された図案の中から採用しました。山梨は『縄文王国』と呼ばれるほど、縄文文化が栄えていました。太古の文化を物語るデザインが現代の技術で再現されるのは、感慨深いです。 素材には県産のシルクを100%使っています。山梨はかつて全国有数の生糸の生産量を誇りましたが、現在は養蚕農家もごくわずかとなってしまいました。ですが農家の方々が一生懸命作った生糸は大変質が良く、希少価値があります。その生糸を使い郡内織物を受け継ぐ職人の技と、土器の文様をデジタル化する最新の技術を融合して織られているのが『やまなし縄文シルクスカーフ』です。この技術は自然なグラデーションをジャカード織りで表現することが可能で、これにより立体感のある織物を生み出すことができるようになりました。今後世界に向けて、山梨の織物の魅力を発信する上で第一歩となる技術革新といえるでしょう」 「山梨の織物産地は、長い歴史の中で伝統を守りながらも技術革新を行い、新しさを追求して時代のニーズに応えてきました。近年はOEMとして一流ブランドの製品を作ることも多く、その中で技術が高まった部分もあります。ですが今、私たちは、これまで培った技術を生かして独自のブランドを作りたいという強い思いを持っています。織物産業は自分たちで価値を創り出せる産業だと感じているのです。最近は若手職人の活躍も目立つようになってきています。また、若手デザイナーとコラボレーションしたり、山梨大学と共同研究を行ったりすることで、若い人たちとの交流も活発化しています。このような交流を通してデザインや技術などが向上すれば、これまで以上に良いものが生み出せます。 山梨の織物は柄や肌触りなどで顧客のさまざまなニーズに応え、使う人の気持ちに寄り添える織物だと思います。このように職人や顧客の創造力が刺激されるさまざまな織物を作ることで、織物業界がより発展していけると考えています」文様・シルク・職人技・最新特許技術100%山梨の魅力あふれる織物山梨の織物で目指す、使い手の思いに応えるものづくり株式会社 前田源商店 代表取締役株式会社 前田源商店富士吉田市下吉田2-25-24TEL.0555-23-2231前田 市郎さ んか い き15

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